- Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087732344
感想・レビュー・書評
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中編小説、といえるこの親しみやすいうすさのおかげもあり、ひさびさに1日でまるごと一冊読み終えました。
クンデラの小説、似たような題名だったりどれも抽象的なことばの題名なので、なにを読んでなにを読んでいないのかがよくわからない。しかも内容もけっこう似通っていて、カートヴォネガットの小説群みたいに、読み返してみてなおよくわからない笑
これは初めて読みました!いつものごとく、最初に言葉のほうの定義があり(緩やかさ、とは)、それからそれを説明するように(実際はお話が先にあり、言葉はまとめ上げるようなものであるけれど)お話がつづく。今回読んでみて、クンデラは絶対評論を書くのがうまいだろうな!と思った。この人は章を細かく区切って、一見関連性がないような話たちをうまくまとめるのが上手なんだけど、その手腕はきっと論文を書くときに大いに役立つだろう。小説のスタイルそのものが、論文的(形式がしっかりしている点において)といっても差し支えない。
それでも、この人は小説家である。一人称と三人称がまじる文章は『不滅』でも用いられていたが、あの小説と同様に、一人称の「自分」が夢想した内容が、三人称の内容となってあらわれる。しかしそれらの境界線は曖昧で、一人称の場面で、三人称の内容が及ぼす影響があらわたりする。(妻の夢にあらわれたり)こういうのは不思議な感覚だけど、(現代の何かの小説で見たことあるような)おもしろかった!
一物くんがしゃべりはじめるのが一番おもしろい笑 カートヴォネガットと似たものを感じました笑 よく考えたら似てるかもね、ユダヤ的なアイロニーと東欧的なユーモア(?)は似てるのかも!!!詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
クンデラがフランス語で直接書いた小説であると解説されていた。すぐに読める薄い本である。スマホアプリではいくら検索してもヒットしない、ということはスマホのアプリのプログラムがPC版とかなり異なっているということを示している。
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私たちの時代は忘却の願望に取り憑かれて、その為に速さの魔力に身を委ねているっていう話。
文章が自分には合ってなかったのか、文字から情景を想像するのが難しかった。
『穏やかさと記憶、速さと忘却のあいだには、ひそかな関係がある。ある男が道を歩いているという、これ以上ないほど平凡な状況を想起してみよう。突然、彼は何かを思い出そうとするが、思い出せない。その時彼は機械的に足取りを緩める。
逆に経験したばかりの辛い事故忘れようとする者は、時間的にはまだあまりにも近すぎるものから急いで遠ざかりたいとでもいうように、知らぬ間に歩調を速める。』
『私たちの時代が足取りを速めるのは、もう自分のことを思い出してもらいたくないと、自分で自分にうんざりし、自分で自分に嫌悪を催しているのを感じ、ゆらめく記憶のちいさな炎をふっとかき消したいと私たちに理解させるためなのだ。』 -
交錯する物語。
簡単な文体でありながら、深い思想を孕んでいる文章。
これは一度読んだだけではわからない。
再読必須。 -
人間の本質の根幹を成す「緩やかさ」「快楽」への憧憬が、やはり「緩やか」に表現された作品。
安易な現代批評に走らずに(これこそがこの作品の本質だと思うのですが)、「緩やか」に、ゆったりと、人間関係や歴史に秘められた悲劇性、そして(ここからがクンデラさんの意匠でありスタイルでしょう)それから派生する滑稽さを描いた本。私は好きです。