冬に子供が生まれる

著者 :
  • 小学館
3.20
  • (7)
  • (25)
  • (34)
  • (18)
  • (2)
本棚登録 : 598
感想 : 40
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (370ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093867078

作品紹介・あらすじ

著者七年ぶりの新作長編!直木賞受賞第一作 その年の七月、丸田君はスマホに奇妙なメッセージを受け取った。現実に起こりうるはずのない言い掛かりのような予言で、彼にはまったく身におぼえがなかった。送信者名は不明、090から始まる電話番号だけが表示されている。彼が目にしたのはこんな一文だった。今年の冬、彼女はおまえの子供を産むこれは未来の予言。起こりうるはずのない未来の予言。だがこれは、まったく身におぼえのない予言とは言い切れないかもしれない。これまで三十八年の人生の、どの時代かの場面に、「彼女」と呼ぶにふさわしい人物がいるのかもしれない。そもそも、だれが何の目的でこの予言めいたメッセージを送ってきたのか。丸田君は、過去の記憶の断片がむこうから迫ってくるのを感じていた──。三十年前にかわした密かな約束、二十年前に山道で起きた事故、不可解な最期を遂げた旧友……平凡な人生なんていったいどこにあるんだろう。『月の満ち欠け』から七年、かつてない感情に心が打ち震える新たな代表作が誕生。読む者の人生までもさらけ出される、究極の直木賞受賞第一作!

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • ある夜、丸田優は誰かわからない謎のメッセージを受けて…。
    その後、丸田誠一郎の葬儀があり…。

    丸田優(マルユウ)と丸田誠一郎(マルセイ)は、幼馴染であり、そこに佐渡理が転校してきたことにより、似ている丸田の区別をつけるための呼び名がマルセイとマルユウになった。
    しかし、高校になると2人を間違って覚える同級生もあって…それが大人になってからもあり、混同しがちである。
    だが、それはこの3人の男児が小学生の頃に「UFOの子供たち」と呼ばれていたからで、そのあと18歳のときに天神山の事故で何かあったのでは…と。
    この事故の後からマルセイとマルユウの違いが明確でなくなるような不思議な感覚になってくる。

    不思議といえば、なにかしら車に関係してきて…
    運転免許を持たないままだったこと。
    そういえば湊先生も…だ。
    最後も気になるメッセージが残されていた。
    これは誰から…。
    最後まで謎めいている。

    今、UFOなのか?という気持ち。
    そして、なんとも捉えどころのない不思議な感覚にどう消化したらいいのかわからないでいる。


  • 丸田優(まさる)と丸田誠一郎は小学生の頃からの親友でいつも一緒にいた。二人は髪型も背格好も履いている靴まで一緒。まるで双子の兄弟のようで同級生や先生たちもよく二人を間違えた。

    転校生の佐渡くんは 二人の丸田くんを前にして困惑した。そして二人に「マルユウ」「マルセイ」と渾名をつける。三人はすぐに仲良くなる。

    高校生になったマルユウとマルセイは同じ高校に進学するも、部活や趣味の違いから段々と口もきかなくなり 卒業してからは思い出すこともない程に疎遠になっていた。


    大人になった「丸田くん」の携帯に1通のメールが届く。
    『今年の冬、彼女はおまえの子供を産む』
    全く身に覚えのない内容、差出人のわからないメール。『彼女』とは誰のことなのか?

    その頃、佐渡くんは「丸田くん」の葬儀に参列していた。


    小学生の頃『UFOの子どもたち』と呼ばれる経験をした三人。

    そして十年後、不思議な体験を再現しようと集められた三人を襲った不運な交通事故。

    第三者の目から語られる「マルユウ」と「マルセイ」の数奇な人生。

    【自分の人生の記憶は、本当に自分が経験してきた人生なのか?】

    ✎┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
    うーむ。実に不思議な物語だった。
    これは「マルユウ」と「マルセイ」どちらの人生の話なんだ?と何度も混乱した。 この話を語る「私」の正体も途中までは明かされず。そして訪れるUFOの存在。読んでる間ずっとモヤモヤと霧のかかったような感じだった。いや、話の核心にふれてからも「『事実』とは一体 何なんだ?」と思っている。
    一読しただけでは読みとれない。(でもきっと再読はしない笑)

    常識では説明のつかない不思議な出来事。それは普通の顔をしてとなりにあるのかもしれない。それに気づくか気づかないか。

    UFO見たことある?

    佐藤正午さんの本は初読みでした。
    「鳩の撃退法」が本棚にあるんだけど、下巻しか持ってないから読めない笑

    • しずくさん
      佐藤正午さんは地元の作家さんで応援したいのですが(ローカルニュースで新作が出ると紹介される)、手出しするたびに相性が悪いのでしょうか、残念な...
      佐藤正午さんは地元の作家さんで応援したいのですが(ローカルニュースで新作が出ると紹介される)、手出しするたびに相性が悪いのでしょうか、残念ながら読了に至ったことがありません( *´艸`)。
      それで映画で「月の満ち欠け」を観たのだけど、やはり納得いかなかった・・・
      新作「冬に子供が生まれる」のゆーき本さんの感想を読んで、やはり正午さんのプロットにそそられます。面白そうって!
      2024/03/28
    • ゆーき本さん
      しずくさんこんにちは⟡.·

      こちらのお話、なんとも不思議な世界観でしたよ
      日常と非日常がごっちゃになったような

      初めましての佐藤正午さん...
      しずくさんこんにちは⟡.·

      こちらのお話、なんとも不思議な世界観でしたよ
      日常と非日常がごっちゃになったような

      初めましての佐藤正午さんでしたが、
      「鳩の撃退法」も「月の満ち欠け」もレビューを読むと どの作品も脳が混乱しそうな感じですね

      しずくさんは映画でも納得いかなかったんですね笑

      実は「身の上話」も買ってあるんです(*´`)
      宝くじが高額当選したら…なんて面白そう!と思いながらなかなか読み始められずにいます笑
      2024/03/28
    • ゆーき本さん
      おう!ギャンブラー!
      (タイムリーな話ですね笑)
      予約本を読み終えたら読んでみ、、ようかな(´▽`*)
      おう!ギャンブラー!
      (タイムリーな話ですね笑)
      予約本を読み終えたら読んでみ、、ようかな(´▽`*)
      2024/03/28
  • 終始、不穏な空気感が漂う物語だった。
    ラストはこんな感じだろうなと途中でみえてきて、実際にそのようになるんだけど、なんだかすっきりしない読後感。
    でも、これが佐藤正午さんらしさという気もする。

  • 【今週はこれを読め! エンタメ編】佐藤正午7年ぶりの新作『冬に子供が生まれる』がすごい! - 高頭佐和子|WEB本の雑誌(2024年2月26日)
    https://www.webdoku.jp/newshz/takato/2024/02/26/120740.html

    「冬に子供が生まれる」 混乱する記憶 終わらない物語 朝日新聞書評から|好書好日(2024.03.02)
    https://book.asahi.com/article/15184746

    皮肉こもった「文明批評」[評]酒井信(明治大准教授)
    <書評>冬に子供が生まれる:北海道新聞デジタル
    https://www.hokkaido-np.co.jp/article/988625/

    佐藤正午さん『冬に子供が生まれる』インタビュー改め、インタビューふうリポート | 小説丸(2024/02/03)
    https://shosetsu-maru.com/interviews/authors/fuyuko_report

    Komako Sakai office(@komakosakai_office) • Instagram写真と動画
    https://www.instagram.com/komakosakai_office/

    冬に子供が生まれる | 小学館
    https://dps.shogakukan.co.jp/fuyunikodomogaumareru/

    冬に子供が生まれる | 書籍 | 小学館
    https://www.shogakukan.co.jp/books/09386707

  • 独特の雰囲気の中で淡々と進んでいく物語。
    マルセイとマルユウの違いで混乱したり、難しめではあったけれど、謎が謎を読んで面白かった。
    考察しだすときりがなくなりそうな奥深い話。

  • 『鳩の撃退法』では、どこまでが現実の話で、どこまでか小説の話なのか理解するのに苦労した。
    『月の満ち欠け』では、誰が誰の生まれ変わりなのか理解するのに苦労した。
    そして本書『冬に子供が生まれる』では、どれがマルユウでどれがマルセイなのか理解するのに苦労した。
    でも仕方ない。作者がそういう風に書いているのだから仕方がない。小説は、一度で理解できるように書かなければいけないという決まりはない。あえてミスリードするように書いているとすれば、それは登場人物たちの混乱を、そのまま伝える意味もあると思う。
    しかし、それでもやっぱり謎は残る。この小説の書き手である湊先生も真相は知らないし、マルセイとマルユウの証言も不明瞭だ。作者は古くからの文学の作法に則り、読者に解釈の余地を残してくれている。長くなるが、以下はこの作品に対する私なりの「考察」である。


    〈要点整理〉
    ★マルユウ(丸田優)
    子供のときから野球が得意
    右利き左投げ
    高校では野球部のエース
    大学進学後、野球への興味を失う
    現在は医療事務の仕事に就く

    ★マルセイ(丸田誠一郎)
    ギターが上手く、高校で注目を集める
    ワッキーと一緒にバンドを結成するが、上京後に突如脱退
    大学を中退して職を転々とする
    ビルの最上階から転落して死亡


    〈考察〉
    小学二年生(8歳)のとき、2人の丸田少年と佐渡君は、天神山でUFOを目撃する。それが地元の新聞に載り、ちょっとしたニュースになる。
    (補足すると、新聞の取材は当然ながら目撃の当日ではなく、取材時に佐渡君は入院のため不在だった。だから写真には2人の丸田少年しか写っていない。)
    高校卒業間近(18歳)、当時取材した記者が再び3人を天神山に連れ行く。しかし、そこで事故が起き、記者とバイクで先導した先生が死亡。3人だけが無事に助かった。
    この事故のとき、マルユウとマルセイが「混線」した。明白な「入れ替わり」ではなく、本人たちも混乱していた。マルユウは真秀と親密な関係になりつつあったにも関わらず、大学進学後に高円寺まで尋ねてきた彼女を冷たくあしらった。そのときの彼の態度は明らかに「マルセイ」だったが、本人には自覚がないようだ。そのため、2人のやり取りはちぐはぐなものとなる。
    マルユウが「マルセイ」になったとすれば、マルセイも「マルユウ」になっていたはずである。マルセイが突然バンドを辞め、マルユウも野球を辞めてしまった理由はここにある。そして「マルユウ」が乗り移ったマルセイと、真秀は結婚する。
    マルセイが湊先生と再会したときも、彼は同時に「マルユウ」だった。しかし、本人はやはり混乱していて、「自分が自分じゃないような気がする」「マルユウの人生を代わりに生きてるんじゃないか」などと語る。
    その後、湊先生を脳梗塞の危機が襲う。マルセイはそれを超自然的な力で救う。その力は右手首の痣がもたらしたものだった。この痣は、もともとマルユウのものである。それが18歳のときの天神山の事故で、マルセイに複写された。この痣には不思議なパワーが宿っており、マルセイはそのパワーを使ってバンドをメジャーデビューさせ、また真秀と結婚した。だが、パワーを使ったせいか痣は薄れていき、「マルユウ」は再びマルセイに戻っていく。
    マルセイはその後ショッピングモールの駐車場から転落して死亡する。理由はわからない。事故なのか自殺なのかもわからない。ただ、マルセイは自分の死を予感していたようだ。
    マルセイが語った「悪を成敗しました」というのも、何のことなのかはっきりしない。もしかしたら杉森先生が想像したように、真秀はN先生にレイプされ、子供を孕ってしまったのかもしれない。それを知ったマルセイが、ジェダイのフォースパワーでN先生を消し、お腹の子供を遺伝的な意味でもマルユウの子供に変えてしまったのか。それが冒頭の「今年の冬、彼女はおまえの子供を産む」につながるのか……。
    いやいや、それは穿ち過ぎだろう。お腹の中の子供はマルセイの子で、マルセイは「マルユウ」でもあったのだから、「おまえの子供」でもあるという意味なのだ。そう思いたい。
    この物語に正解はない。マルセイは死んではいなかったのか。そうでなければ、ボルボとメモの書き足しはどう説明すればいいのか。しかし、本文に書かれている通り、不思議というものはそれに気づいた者にとってのみ不思議なのだ。弁当箱の握り飯が柏餅に変わっていたとしても、「いやいや、自分が入れてきたのは柏餅だ」と言い聞かせてしまえば、不思議でもなんでもない。ボルボとメモ書きにしたって、他の人なら何か理屈をつけて説明してそれで終わりだろう。
    人生は結局、無意味なのかもしれない。湊先生が誰に何をどう説明したところで、それを信じてもらうことができないとしたら、無意味ではないか。またマルセイやマルユウたちにとって先生は部外者でしかなく、真実を共有できる相手ではないとしたら、なんと無力なことだろう。しかし、無意味でも無力でも生きるしかない。それが人生なのだ。先生は、マルセイからそういうメッセージを受け取った。だから泣くしかなかった。シーシュポスのように、転がり落ちた岩を何度も押し上げるしかない。愚かしくも悲しい涙だ。

  • 7月の雨の夜、丸田君の携帯にSMSが届いた。「今年の冬、彼女はおまえの子供を産む」。まったく身に覚えのない内容に彼は戸惑う。そこから始まるノンストップスリラーだ。
    『月の満ち欠け』で第157回直木賞を受賞した佐藤さんの、実に7年振りとなる長篇小説である。もともとが寡作の人だし、直木賞作家という気負いもあまり感じられない本作はしかし、小説を読む愉しさに満ちている。あちこちに仕掛けられた伏線やミスリード、読者を煙に巻くような章題、そして謎に満ちた真相。
    ……でも、一般受けはしなさそうだなあ(^_^;)。

  • これは読みにくい小説ですねえ。

    最初は、何とも曖昧で、一人称の当人も入れ替わり立ち替わりで事態が呑み込めません。勿論、これは意図的な書き方であり、上手いのですが、その分鬱憤が溜まります(^_^;)

    読んでいくうちに分かってくる?いえいえ、ますます混乱が増すばかり。えっ、丸田君が入れ・・・

    終盤になってようやくこういうことらしい、とは分かるものの、とんでもない内容なので。

    今まで見たことのない小説でした。決して読みやすくはないものの、途中で放り出すわけにもいきませんでした。少しでも真実、いや話の本質を知りたくて・・・

  • 実用書ばかり読んでいたときに直木賞受賞された佐藤正午さん。20年以上前に『ジャンプ』を読んで名前を覚えていた。ずいぶんと時間経ったけど直木賞受賞後の一冊目読んでみたい

    #冬に子供が生まれる
    #佐藤正午
    24/1/30出版

    #読書好きな人と繋がりたい
    #本好き
    #読みたい本

    https://amzn.to/3Oouz1h

  • マルユウとマルセイが混乱してしまうし、読後感ももやもや…。
    結局何なの?誰なの?どうして?

    はっきりとしたことは書かれていないため、読者の想像でしかない。
    だから、読む人によっていろんな解釈ができるのかもしれない。
    考え出したら止まらない所とか、謎すぎる所が面白いかも。

全40件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1955年長崎県佐世保市生まれ。『永遠の1/2』ですばる文学賞、『鳩の撃退法』で山田風太郎賞受賞。おもな著作に『リボルバー』『Y』『ジャンプ』など。

「2016年 『まるまる、フルーツ おいしい文藝』 で使われていた紹介文から引用しています。」

佐藤正午の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×