新版 動的平衡: 生命はなぜそこに宿るのか (小学館新書 ふ 7-1)

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  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784098253012

感想・レビュー・書評

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  • 動的平衡の概念が生命感のパラダイムシフトと謳われているが一理ある。生き物を複雑な機械仕掛け装置の延長とイメージする価値観は根強く、安易にサプリに頼ったり、遺伝子を操作することに抵抗を感じなかったり、脳を模倣してAIをプログラムで実現できると考えたり・・
    分解を先行させ、合成を伴うことでエントロピー増大に逆行しているモデルは非常に面白い

  • 医師のオススメ本として冬休みから読み始めてたらあっという間に新型コロナウイルスで世界が大変なことになってタイムリーな読書となった。ウイルスは分解と合成を繰り返して私たち生物にサスティナブルに生存していく。読んで後悔しない大変秀逸な一冊。

  • 面白かった。日常に関わる内容から、生命という概念の内容までどれも納得させられた。

  • (要約)

    「汝とは、汝の食べた物そのものである」という西洋の諺はは、生物学的にも正しい。私たちの身体はどんな細部であっても、それを構成するものは元をたどると食物に由来する元素である。私たちは、動物にしろ植物にしろ、他の生命を奪ってまでタンパク質を摂り続けなければならない。摂取されたタンパク質は消化管に送り込まれる。消化管は口から肛門まで身体の中を通っているが、空間的には外部とつながるチクワの穴のようなもの。消化管で消化酵素によって「分解」されたアミノ酸は、消化管壁を通過して初めて「体内」に入り、血液に乗って全身の細胞に運ばれ、細胞内で新たなタンパク質に「合成」される。私たちの身体は、タンパク質を貯蔵することができない。生命活動とは、アミノ酸というアルファベットによる不断のアナグラム、「合成」と「分解」の「動的平衡」の上に成り立っている。だからもし、食物の中に生物の構成分子以外の化学物質が含まれていれば、私たちの身体の動的平衡に負荷をかけることになる。それらを分解し、排除するための余分なエネルギーが必要となり、平衡状態の乱れを引き起こすからだ。

    現在はバイオテクノロジー全盛期である。生命をパーツの集合体として捉え、パーツが交換可能な一種のコモディティと考える背景は、生命現象はすべて機械論的に説明可能だと考えたルネ・デカルトを信奉するカルティジアンの存在があり、その延長線上に臓器移植やES細胞確立の先陣争いがある。それに対して筆者は、シェーンハイマーが唱える「ダイナミック・ステイト(動的な状態)」概念を拡張し、生命とは可変的でサスティナブルな「動的平衡」にあるシステムだと提唱した。つまり生命は行く川のごとく流れの中にあり、この流れを止めないために私たちは食べ続ける。私たちの身体は分子的な実体としては、数か月前の自分とはまったく別物になりながら、かろうじて動的平衡を保っているのである。しかし、生命は不可逆的であり、「エントロピー増大の法則」に逆らうことはできない。動的平衡によりエントロピー増大の法則と折り合いをつけながら、やがて追い抜かれてしまい、個体の死を迎える。その時にはすでに、DNAの複製により次の世代にバトンタッチされ、生命は連綿と維持され続けたのである。

  • 生命とは何か、考え方の基礎から
    揺るがす本。

    新型コロナで、社会が迷走中だが
    こういう生命観を持つと少し、対策も変わってきそう。

  • 人間の体をシンプルに機械的なシステムとみなしてはいけない。
    ヒアルロン酸をとったところで、あまり意味はない。完全に分解して、栄養を作り直すからだ。

  • 「生物と無生物のあいだ」に引き続いて読了。
    生物とは何か?という問いに、俯瞰的にかつ非専門家にも非常にわかりやすく書かれた良書です。

  • 何年越しかの積読をやっと…!

  • p80 〜合成と分解との動的な平衡状態が「生きている」ということであり、生命とはそのバランスの上に成り立つ「効果」である〜。
    合成と分解の平衡状態を保つことによってのみ、生命は環境に適応するよう自分自身の状態を調整することができる。〜サスティナブル(〜)とは、常に動的な状態のことである。
    p260 〜私たちの生命を構成している分子は、プラモデルのような静的なパーツではなく、例外なく絶え間ない分解と再構成のダイナミズムの中にある〜私たちが食べ続けなければならない理由は、この流れを止めないため〜この分子の流れが、流れながらも全体として秩序を維持するため、相互に関係性を保っている〜。
    p261 分子は環境からやってきて、いっとき、淀みとしての私たちを作り出し、次の瞬間にはまた環境へと解き放たれていく。〜その流れ自体が「生きている」ということなのである。
    p262 「生命とは動的平衡にあるシステムである」〜。〜生命というシステムは、〜つまり構成分子そのものに依存しているのではなく、その流れがもたらす「効果」であるということだ。〜サスティナブルなものは常に動いている。
    #社会や企業、事業にも当てはまる、非常に示唆に富む視点。
    p269 太母は、この鯨に会いにきていたのだ。海で最も大きな生き物と、陸で最も大きな生き物が、ほんの100ヤードの距離で向かい合っている。そして間違いなく、意思を通じあわせている。
    p282 渦巻きは、おそらく生命と自然の循環性をシンボライズする意匠そのものなのだ。〜私たちが線形性から非線形性に回帰し、「流れ」の中に回帰していく存在であることを自覚せずにはいられない。
    p288 〜生命とは〜「容れ物」ではではなく、容れ物自体が流れゆく動的な存在だからである。多摩川を多摩川と呼ぶのは、〜絶えず流れゆく水の流れそのものだからである。

  • 生物と無生物のあいだに引き続き。

    福岡伸一さん、文章書くの本当にうまい。
    面白くて面白くて読みふけった。
    一文一文に感動。

    生きるとはつまり動的平衡。
    生命って神秘だなぁと改めて。

    プリオン説はほんとうかも絶対読もう。

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著者プロフィール

福岡伸一 (ふくおか・しんいち)
生物学者。1959年東京生まれ。京都大学卒。米国ハーバード大学医学部博士研究員、京都大学助教授などを経て、青山学院大学教授。2013年4月よりロックフェラー大学客員教授としてNYに赴任。サントリー学芸賞を受賞し、ベストセラーとなった『生物と無生物のあいだ』(講談社現代新書)、『動的平衡』(木楽舎)ほか、「生命とは何か」をわかりやすく解説した著書多数。ほかに『できそこないの男たち』(光文社新書)、『生命と食』(岩波ブックレット)、『フェルメール 光の王国』(木楽舎)、『せいめいのはなし』(新潮社)、『ルリボシカミキリの青 福岡ハカセができるまで』(文藝春秋)、『福岡ハカセの本棚』(メディアファクトリー)、『生命の逆襲』(朝日新聞出版)など。

「2019年 『フェルメール 隠された次元』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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