- Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101006017
感想・レビュー・書評
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太宰治の処女作品集。全15編。当時27歳。
自殺を前提に遺書のつもりでせめて自分の一生を書き残したいと懸命に書かれた作品。
劣等感や罪悪感。生きることへの絶望はありながらも、悲壮感や切迫感はあまりなく、むしろ"死"より"生"を強く感じた。
太宰治の繊細な内面が、一編ごとに違ったテーマで様々な技法を駆使して描かれており面白い。
「道化の華」では「人間失格」の主人公が出てくるなど作品同士の繋がりが嬉しく、「ロマネスク」は特徴的な三人の童話風の話が印象に残り、「雀こ」は津軽弁で語られる故郷と井伏鱒二への愛を感じた。
彼の生き方に共感できるかは別として、彼の弱さは誰もが心のどこかに持っているもののような気がする。
太宰治のことをもっと知ってから読むともっと深く読めるのかな。
少しずつ読み進めます。 -
タイトルは『晩年』だが、太宰の処女小説集。昭和5年の心中未遂(相手の女性のみ死亡)後、もとから一緒になりたがっていた芸者の初代と結婚、本書に収録されてる作品を発表しはじめるも、昭和10年に今度は単独での自殺未遂。つまりこれらの初期作品群を太宰は遺書として書いており、20代半ばにしてすでに自分は「晩年」のつもりでいた。
民話調の変身譚「魚服記」、ちょっと不条理な「猿ヶ島」は好き。あと「陰火」の中の「尼」という作品は、夢十夜風というか悪夢的な不条理でとても良い。「雀こ」は太宰にしては珍しく青森の方言で書かれているせいか、同じ東北(岩手だけど)の宮沢賢治味を感じました。
「地球図」はシロオテという異国の宣教師が新井白石に尋問される時代物。どこかで聞いたような話だなと思ったら、小栗虫太郎の『紅殻駱駝の秘密』(https://booklog.jp/item/1/4309416349)にも登場する実在の宣教師シドッチ(ジョヴァンニ・バッティスタ・シドッティ)のことだった。すっかり忘れていたけれど、坂口安吾の『イノチガケ』(https://booklog.jp/users/yamaitsu/archives/1/4061960571)にも登場している(表記はシローテ)。作家の間でシドッチブームでもあったのだろうか。
「道化の華」作者がちょくちょく顔をだす奇妙な作品。主人公の名は葉蔵なので「人間失格」の雛型かと思いきや、心中に失敗した葉蔵が結核療養院に入院することになり、そこに友達がやってきて看護婦さんとわいわい楽しく数日すごすという謎展開、どちらかというと「パンドラの匣」の雛型か。
創作過程の作者の独白が混じり込んでくる「猿面冠者」など実験的な作品も面白い。単純に読み物としては、私小説色の薄い「ロマネスク」や「彼は昔の彼ならず」が面白かった。とくに「ロマネスク」は、仙術太郎だの喧嘩次郎兵衛だのの独自の自己鍛錬方法がなんだかちょっとクスっと笑えて不思議なおかしみがあるのが良いですね。
※収録
葉/思い出/魚服記/列車/地球図/猿ヶ島/雀こ/道化の華/猿面冠者/逆行(蝶蝶/盗賊/決闘/くろんぼ)/彼は昔の彼ならず/ロマネスク(仙術太郎/喧嘩次郎兵衛/嘘の三郎)/玩具(※未完)/陰火(誕生/紙の鶴/水車/尼)/めくら草紙 -
第一創作集、そのタイトルが「晩年」。そこだけでもいろいろと抱えちゃってるのがうかがえる。
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太宰文学ってパンチ力が凄まじい
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「お前はきりょうがわるいから、愛嬌だけでもよくなさい。お前はからだが弱いから、心だけでもよくなさい。お前は嘘がうまいから、行いだけでもよくなさい。」
一番好きな一節。胸に刺さったなあ。 -
15の話による短篇集。
「葉」★3
作品が一つの樹木であるとしたら、これは葉の集まり。すなわち断片集。
「死んでしまおうか」と「でも生きよう」を行ったり来たりする覚束ない生を感じる。
「思い出」★5
太宰の原点とも言える作品。自伝なのだろうと思う。繊細なナルシシズムを抱えながら、それを堂々と文章に落とし込める大胆さ。クスッと笑える表現。屈折したコミュニケーション。太宰の良さが詰まっている。哀れで、惨めで、愛らしい。
太宰がいかに自己愛を投影させた世界で、孤独に生きていたかということを思わずにはいられない。最後の文章からは、太宰が好意を持つ女性に叔母の姿を見ていることがはっきりと分かる。
「魚服記」★1
自分にはほとんど感じられるところがなかった。また折に触れて読みたい。
「列車」★2
列車の出発(とそれに伴う人の別れ)をこれほど気まずく、侘しく描けるのが凄い。
「地球図」★1
これは実話なのだろうか。シロオテに降りかかる理不尽に「この人は何のために生きてきたのだろうか」と、ただ悲しくなった。
「猿ヶ島」★4
道化として振る舞うことを処世術としていた太宰がこれを書いたのは興味深い。自分はあくまで人を「笑わせる」のであって、「笑われる」見せ物ではないのだという自負を強く感じる。極めて芸人的。
また、猿ヶ島から「彼」を連れて逃げる選択は、太宰自身の女性を連れた心中に思える。太宰にとって、この世は猿ヶ島のごとく、憐れな場所だったのだろうか。
「雀こ」★1
はないちもんめのような遊びが題材。最後まで残される子の孤独感。東北の方言が強くて、読むのに少し時間がかかった。
「道化の華」★4
ある女性と入水自殺をして一人生き残ってしまった男(大庭葉蔵。『人間失格』の主人公と同じ名前)の、療養院での話。他でもない太宰自身の体験談から来ているのだろう。そこに、メタ的に作家太宰の語りが入る構成になっている。
「この小説を書きながら僕は、葉蔵を救いたかった」
どの作品でも、太宰は主人公に強く自分を投影させ、その人物を救いたくて小説を書いていたのかもしれない。
「猿面冠者」★2
ある男が「風の便り」という小説を書く話。
第一の風の便りを受け取って少女を死なせたのは、小説家であり続けたい太宰の気持ちが反映されているのだろうな。
「逆行」★3
「蝶蝶」「盗賊」「決闘」「くろんぼ」の4章から成る物語。翔同士の関連性はないように思われる。
「決闘」では芸人太宰が感じられて、声を出して笑ってしまった。
現在、読み進め中。
随時更新。 -
人間らしい太宰治の事が色々書かれてあったり。
よくわからない話もあったり(自分の読解力が足しないのかも?)
またいつか読み返したらもっと何か分かるのかもしれない。 -
太宰の内面が赤裸々に書かれていて、1人の人間の感情の機微に触れる事が出来ます。
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言の葉
習作
太宰エッセンスを楽しむ -
何度目かの再読。遺書のつもりで書き綴った処女作品集。何度読んでも味わい深くて「ああ良いなあ」と思う。ユーモラスな「ロマネスク」や「彼は昔の彼ならず」、作品の冒頭を飾る「葉」、見る者と見られる者の逆転を描いた「猿ヶ島」などがお気に入り。
『走れメロス』に続いて読み進めていますね
( ̄ー ̄)ニヤリ
『走れメロス』に続いて読み進めていますね
( ̄ー ̄)ニヤリ
着々と読み進めてますよ~( *´艸`)ウフフ
太宰さん、遺書のつもりでこんな多彩な物語を書かれていたとは驚きでした~
着々と読み進めてますよ~( *´艸`)ウフフ
太宰さん、遺書のつもりでこんな多彩な物語を書かれていたとは驚きでした~