デッドライン (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 341
感想 : 21
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101041612

作品紹介・あらすじ

2001年の春、僕は大学院に進んだ。専門はフランス現代思想。友人の映画制作を手伝い、親友と深夜にドライブし、行きずりの相手とセックスをする日々を送りながら、修士論文の執筆が始まる。テーマはドゥルーズ――世界は差異からできていると唱えた哲学者だ。だが、途中までしか書けないまま修論の締め切り(デッドライン)が迫ってきて……。気鋭の哲学者が描く青春小説。芥川賞候補、野間文芸新人賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • やっぱり千葉さんの書くモノは好きだなと思った。
    自分と本とが重なる感覚がある。登場人物が自分と重なるとかそういう意味ではなく、あくまで本と重なっている。
    この感覚がすごくなんともいえなくてすごく好き。

    読み終わった今ふとした時に、もうあの本読み終わっちゃったんだもんなって気持ちになる。

  • 正直な感想は序盤は退屈かつ、時系列が複雑な場面転換についていけず読みづらかった。
    しかし、最後まで読むと、序盤〜中盤までのつかみどころのない話が意味を持つ。
    繰り返して読みたい作品のひとつになった。
    はっきりとした起承転結があるわけではないので、他の感想でもあるように退屈と感じるかもしれない。王道の小説(事件があってそれを解決するような)が好きな人には向かない作品だなとは思う。

    裕福な家庭の〇〇(主人公)が大学院で修論を書きながら、大学院の友人たちとの交流やハッテン場で相手を探し行為をいたすのはとても詳細だが淡々としていて、失礼ながら「THE自堕落な生活」。
    その中で、フランス思想や荘子など哲学が入り乱れるので、アンバランスさを感じる。
    ネタバレになるので細かくは書かないが、後半、窮地に立ち始めると主人公がちゃんと血の通った人物に感じ、急に人間味を帯びてくる。
    だからといって、困難を乗り越えるようなサクセスストーリーが展開されることはない。
    我々の日常事件はあっても、目に見えた起承転結もあるはずもなく、その中でどう考え、どう生きていくのか、そんなリアルさをもった作品だとも感じた。

    そこを経て、再読するとまた深みが生まれそうな予感がするので、間を開けてまた読みたい。

  • おもしろかった。何が面白かったってとてつもない衝撃があったわけでも、特段感動があったわけでもないが、この小説でしか感じられない不思議な、ある種「放り投げだされた」感覚になる。それがまた面白いのだ。だって、小説が読者を放り出すのだから。しかし、これは、少しの哲学の知識か、著者千葉雅也の他の書籍などを読んでいると面白さは倍になる気がした。

  • 長らく積読の状態で読めていなかった、千葉雅也さんの小説デビュー作『デッドライン』を読んだ。ページをめくり始めてから、最後まで止まらなくなる。こうした小説に出会える機会は年々減っているから、初めて読書の悦びに目覚めた中学生の頃を思い出して嬉しくなる。ありていに言ってしまえば、全ての私小説は当人にしか書けない。それは当たり前にしても、『ライティングの哲学』などでも披瀝されていたように、“書く”ことを“書く”ことのメタ的な次元で実践してきた千葉さんだからこそのスタイルが、物語の形で表現されていたのは瞠目した。散文的でありながら、真正面の哲学が文学と絡み合うように、溶け合っている。思想と文学の両方を愛する読者からすれば、垂涎の物語ではないだろうか。

  • TwitterのTLで気になって手に取りました。不思議な読み心地の作品でした。ドゥルーズの修士論文を書く「僕」の大学生活と哲学的論理思考が展開されてゆく。ゲイであることの視点=身体論なども新鮮な思考に触れたように感じました。一人称で書かれた小説であるのに、唐突に三人称視点が挿入される点も巻末の町屋良平の論考が無ければその意味が理解できませんでした。とても面白かったです。他の作品も読んでみたい。

  • 哲学を学んでいる主人公が、自身のマイノリティである性別について、荘子の話を盛り込みながらも 自分なりに分析しており面白かった。

  • 作家がゲイなだけあってリアル感がすごい。BLに落とし込んでないところもすごく印象が良くて好きだけどちょっと硬いです笑

  • 哲学者の小説としても疑問符がつく。突然三人称になるのを後書きで解説してるが苦しい

  • 小説についてではなく、主人公について。
    主人公は、男同士の肉体関係を結ぶ、相手はハッテン場で出会った男、肉体関係を持った男と付き合うことはないようだ。
    誰でもいいわけではなく、顔、身体、仕草、振る舞い、に好みがあるという。
    親友Kが、彼女ができたと伝えたとき、主人公は自分が男と付き合わないことについて、精神的には親友Kとの関係で満足してしまっていると記している、また、職人の男と付き合う可能性もあったがそこに踏み入れなかったとも。

    中学の頃、好きな女の子がいたという。
    グラビア写真で自慰もしたという。
    その女性器を気持ち悪いと思ったという。
    橋の上から魚を見て楽しそうだと思った、という話に関連して、その女性器に挿入したいというかその女と近くなり同じになって挿入したいようなことを言っていた。
    その辺りの感覚が私にはよく分からないものだから、興味深く読んだ、もう一度読まないとよく分からない。

  • 図書館で並んでて適当に手に取った。正直読んでて分からなかったし面白く無かった。話が進んでる感じがあんまりしなかったなぁ(哲学とプライベートを行ったり来たりしてたせいもあると思う)

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著者プロフィール

1978年生まれ。立命館大学大学院先端総合学術研究科准教授。
著書に『意味がない無意味』(河出書房新社、2018)、『思弁的実在論と現代について 千葉雅也対談集』(青土社、2018)他

「2019年 『談 no.115』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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