天草の雅歌 (新潮文庫 草 68F)

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  • Amazon.co.jp ・本 (439ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101068060

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  • 長崎で通辞を務める上田与志(うえだ・よし)という男が、ポルトガル人の血を引くコルネリアという女性との愛をえがくとともに、朱印船貿易家と糸割符仲間との抗争が二人の運命を引き裂く顛末を語る歴史小説です。

    しだいに鎖国体制が整備されていくことになる江戸時代初期の長崎を舞台に、さまざまな人びとの思惑が入り乱れるさまがえがかれています。主人公の上田はやや地味な人物像ではありますが、激変する時代の波に翻弄されながらもコルネリアへの純愛をつらぬき、物語を読むことのたのしみをあじわえる作品です。

    著者のもうひとつの歴史小説である『安土往還記』では、キリスト教の布教のために海を越えて日本へやってきた南蛮人と、たぐいまれな合理的知性をもつ織田信長が、共通の「意志」(ヴォランタ)によって共感で結ばれるさまがえがかれていましたが、本作はそうした「意志」が日本からうしなわれていく時代をえがいたということができるかもしれません。

  • 商品の説明
    鎖国体制完成を目前にした江戸初期の長崎に、通辞として赴いた上田与志。役人としての確実な立身を望んでいたはずの彼は、いつしか鎖国派と海外交易派の政争の渦に巻きこまれていく。混血の美女コルネリアの愛を支えに、閉塞していく状況を憂い、時代の権力に挑戦したその悲劇の生涯を描く。物語のもつ魅力を充分に取り入れ、史実をふまえて構築された壮大な歴史ロマン。 (解説頁・篠田一士)

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著者プロフィール

作家。1925年、東京生まれ。57年から61年までフランスに留学。63年、『廻廊にて』で近代文学賞を受賞。こののち、『安土往還記』『天草の雅歌』『背教者ユリアヌス』など、歴史小説をつぎつぎと発表。95年には『西行花伝』により谷崎潤一郎賞を受賞。人物の心情を清明な文体で描く長編を数多く著す一方で、『ある生涯の七つの場所』『楽興の時十二章』『十二の肖像画による十二の物語』など連作短編も得意とした。1999年没。

「2014年 『DVD&BOOK 愛蔵版 花のレクイエム』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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