悪女について (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (528ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101132198

感想・レビュー・書評

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  • どうも自分は多視点の物語が好みのようだ。
    主人公の女性の視点は一切描かれず、彼女と関わった人々がそれぞれの主観で物語を語るスタイル。
    それぞれは見たことを語るだけなのだが、章が進むうちに人間の主観の偏りや小さな嘘が明らかになっていく。そこが面白い。そして主人公の多面性。
    騙された男たちはある意味で自己評価が高い。自惚れているとも言える。
    下品にならずに人間の下衆な面を描いている作品。

  • おもしろくて夢中で一気に読んだ。のめり込んで読んだ。
    結末はちょっと拍子抜けだったかもしれない。
    あ、でも、造花は?!造花は誰が?

    この頃の文化、人々の様子、好きだなー。

  • 果たして彼女は悪女だったのだろうか。富小路公子について27人が語る。「まあぁ」が面白い。もう40年以上前の小説なのに古くない。たとえ悪女であっても好きです富小路公子。

  • 謎の死を遂げた美貌女性実業家(富小路公子、鈴木君子)について、関わりのある27人のインタビューが小説になっている。
    27人を通しての公子が描かれいて同じ人物なのに違った見方をしているのがおもしろい。
    そして、亡くなっているので本人が自分のことを語っていないから真実はやはりわからないというのがおもしろい。(本人が語っていたとしても真実は言わなそうだけど…)
    公子はひどいことをしているけれど、自分なりの正義があったように感じた。自分が被害に合わなければ、私も公子を「素敵な人でした」とインタビューで答えていたんじゃないかな〜。

  • 結局彼女は悪女だったのか。
    人によってその人の印象が全く違う。こんなに違うものなのか⁈

  • 途中で読むのやめてる

  • 人間は、その人自身の捉え方によっていい人にも悪い人にもなり得ることを教えられた気がした。ミステリー要素もあり最後まで物語に没頭した。
    主人公は人を殺したわけでも、犯罪を犯したわけでもない。人は悪人にもなり得るし善人にもなり得る。果たしてキミコは悪女だったのだろうか。

  • 美貌の女実業家、富小路公子が、転落死。自殺か他殺か、富小路公子(鈴木君子)の死の真相を探るため、彼女を知る27人へのインタビューで構成された本書。じわじわと明らかになる公子の生き様…真偽も善悪も、読めば読むほどわからなくなる。男心を巧みに操り、土地を転がし金を生み、 事業を拡大していくその手腕は誠にあっぱれで、時に爽快ではあるが…ぞわぞわと怖いときも頻繁にあり。どの面下げてそんな嘘まみれの台詞を言ってるのかと、背筋が寒くなる。そして…この辺の関係、並行してたよね!?こういうことしてた裏で、こんなこと言ってたよね!?というところ、把握するため時系列で書き出したい!!
    狐につままれるという言葉があるが、これまで読んだ本でも上位の「狐につままれる」感。これは確かに、映像で観たい。何度か映像化されるのも納得の名作だが、機会があれば、原作の昭和の香りを感じられる昭和の映像化作品で堪能してみたい。

  • 関係を持った男たちが皆「愛し合っていた」「処女だった」と口を揃えて証言する滑稽さよ。それほど人の心を掴み、信じ込ませる力がすごいのだろうな。
    公子の言葉遣いが上品で美しいからどんどん読み進めたくなった。母親にまでも「私が男なら、惚れて惚れぬいて締め殺したんじゃないかと思うよ。」と言わせる彼女の底知れない魅力をこの目で見てみたいと思う。

  • 謎の転落死を遂げた女実業家富小路公子
    彼女を知る27人の人物へのインタビューという形式で語られる本作

    そこには
    富小路公子自身の姿は出てこない
    出てくるのは、その人その人のフィルターを通した富小路公子の姿であり
    その話の中で語られる彼女は時に食い違う
    同じ出来事でも違う人を通して語られた話では
    全く違う彼女の姿が浮かび、
    それはその語り手の嘘なのか、それとも公子が嘘をついていたのか
    誰にも分からず謎が深まっていくばかり
    ある人は聖女のように語り、ある人は悪女として語る
    彼女はいったい何者だったのか
    彼女の死の理由は何だったのか


    公子は誰の前でも一貫として「美しいものが好き」と言い
    誰のことも悪く言わず、目の前にいる人に尽くしている

    タイトルは「悪女について」であり、小説紹介にも
    「男社会を逆手に取り、しかも女の魅力を完璧に発揮して男たちを翻弄しながら、豪奢に悪を愉しんだ女の一生」
    とあるが、私にはどうにも公子が「悪女」には感じなかった

    その言葉には嘘はあったのかもしれないし、
    その嘘は虚言癖もしくは、二重人格かとも思うようなものもあるが
    相手を騙すためではなく、相手の理想であろうとする、相手に尽くそうとするがゆえの献身の姿に思えてしまうのだ

    悪女なのに悪女と思わせない稀代の悪女なのかもしれないけれど…

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著者プロフィール

昭和6年、和歌山市生まれ。東京女子短期大学英文科卒。昭和31年『地唄』で芥川賞候補となり、文壇デビュー。以降、『紀ノ川』『華岡青洲の妻』『恍惚の人』『複合汚染』など話題作を発表し続けた。昭和59年没。

「2023年 『挿絵の女 単行本未収録作品集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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