橋のない川(一) (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 49
  • Amazon.co.jp ・本 (688ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101137025

作品紹介・あらすじ

級友が私だけを避け、仲間はずれにする。差別-その深い罪について人はどれだけ考えただろうか。故なき差別の鉄の輪に苦しみ、しかもなお愛を失わず、光をかかげて真摯に生きようとする人々がここにいる。大和盆地の小村、小森。日露戦争で父を失った誠太郎と孝二は、貧しい暮しながら温かな祖母と母の手に守られて小学校に通い始める。だがそこに思いもかけぬ日々が待っていた。

感想・レビュー・書評

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  • 著者が60歳から執筆を始めたシリーズ。ご本人も仰ってましたが、もう少し早くから書き始めていたら、物語のずっと先まで読むことができたのに、と残念です。
    私の祖父母は農業で、小説に出てくるような暮らしをしていた最後の世代だと思うのですが、主題の差別の問題より、農村の暮らしを描かれているところに愛着を感じました。主人公の成長を最後まで見たかったです。

  • 明治、大正、昭和初期という激動の時代、考えられないような差別に虐げられてきた被差別部落に生きる幼い兄弟、誠太郎と孝二。日露戦争で父を失った彼らを通して、差別、貧困、戦争を問い、人間とはなんなのか? ほんとうの幸福とは? スケールの大きな作品で、今の時代にも多くの人に読んでもらいたいです。

    作者の住井すゑさん(1902年~1997年)は、あらゆる命のきざしに対して、好意に満ちたまなざしを向けています。読みながらほろと涙が零れるような、温かい作品を残してくれました。55歳から90歳超えても書き続け、徹底的な取材を重ねたその労苦と勇気に、心から称賛をおくります。

    1961年に第1部発行。1979年までに81版を重ね、発行部数は91万8000部、第6部までの発行部数は382万部(その後のウィキ情報では、第1部~第7部までの累計発行部数は800万部)。
    第6部の解説では、「橋のない川」は、とくに大宣伝もなく、当時の文壇で評判になったわけでもなかったよう(当時の文壇なるものは何をしていたのかしら?)。英語、中国語、イタリア語、タガログ語などにも翻訳された、日本では静かなベストセラーです。

    大和盆地(奈良)に広がる田園の中を、優しい大和言葉が清流のように流れていきます。たそがれの山々を照らす柔らかい月の光、四季の移ろいが目に映るよう。うわぁ~とため息が漏れるほど美しい描写に惚れぼれします。
    また作者は「老子」に傾倒していますので、壮大な宇宙・自然の道(法理)が作品全体に貫かれています。詩人ホイットマンやトルストイといった世界文学も視野に入れながら、とてもスケールの大きな作品に仕上がっています。
    被差別部落の人々を通して、日本のみならず世界にはびこるさまざまな差別を世界に問いながら、自然の営みや生のきざしに満ちている。明るく軽やかな世界文学に匹敵する日本文学です♪

    人種、民族、肌の色、出自、性差、障がいによる差別は今でもあとを絶ちません。世界中でヘイトスピーチの暴力も蔓延しています。偏見や差別の芽はそこここに潜んでいて、原発事故のあった福島から避難してきた先では、「ばい菌」呼ばわりされて登校できなくなっている子どもがいたり、水俣病やハンセン病に苦しむ人々に不当な偏見や差別がいまだに続いていたり、加重な米軍基地負担の構造的差別を長年強いられている沖縄では、取り締まりの本土の警察官から、土人発言まで飛び出して大問題になったり……開いた口がふさがりません。

    ふと、ジョージ・オーウェル『1984年』のなかに出てくる、「無知は力」という逆説テーゼを思い出して身も凍りそうになります。もっと恐ろしいのは、純粋に知らないことより、多くの偏見や差別や先入観にすりこまれたまま、自ら真実を知ろうとしないことなのかもしれません。我が身を振り返って自問してしまいます(汗)。

    あらゆる情報が氾濫していて、あっというまにのみ込まれてしまうような現代社会の中にあっても、この作品には泰然とした山のような力強さと普遍性を感じます。
    美しい田園風景を背に、葛城川のせせらぎにのって、堤をてくてく歩く、誠太郎と孝二のかわいい唄声が聞こえてくるような……そんな郷愁を誘う名作です♪

    • アテナイエさん
      マヤさん、コメントありがとうございます♪

      >豊坊んも誠やんもこういった環境でよくぞ立派な青年に育ったものだと感極まりました。

      マ...
      マヤさん、コメントありがとうございます♪

      >豊坊んも誠やんもこういった環境でよくぞ立派な青年に育ったものだと感極まりました。

      マヤさんの素敵な感想に、これまた感激してしまいました(^^♪ ここまで惚れこまれると作者冥利に尽きるでしょうね。
      この小説は生きることへの勇気と本当の幸福というものを教え与えてくれる本ですね。ひどく切なくてあまりにも温かくて、私も何度も涙しました。

      ところでマヤさんの本棚こそ、しっかりとした本が幅広く並んでいて圧巻ですよ~。これから少しずつレビューを拝見しながら楽しく勉強させてもらおうと思っています!
      ということで、私がおすすめできそうな本があるかしら……と思ったりしますが、もしまだカート・ヴォネガットを読まれていないのであればおすすめします。代表作は「スローターハウス」や「タイタンの妖女」あたりでしょうか。彼の本はク~ルでどれもこれも好きな私ですが、これらの作品に加えて「母なる夜」「ローズウォーターさん」も好きです。あとはヴォネガットを私淑しているジョン・アーヴィングも面白いですよ。



      2017/04/07
    • マヤさん
      わぁ~ありがとうございます。レビューというよりは自分用の感想文のつもりで書いているので、ときたますごい毒吐いてますが(汗)けっこう同じ本を読...
      わぁ~ありがとうございます。レビューというよりは自分用の感想文のつもりで書いているので、ときたますごい毒吐いてますが(汗)けっこう同じ本を読んでいるようなので、アテナイエさんのレビューも気になります。でも過去に読んだ本の感想を記憶を遡って書くのって難しいですよね…。
      カート・ヴォネガットとジョン・アーヴィングは以前から読んでみたいと思いながらも、まだ一作も読んだことがありません。誰かにおススメしてもらうと手に取るきっかけになるのでうれしいです!近いうちに読んでみたいと思います♪
      2017/04/07
    • アテナイエさん
      両作者をご存じでよかったです~。お時間あるときに眺めてみてください♪

      それにしても過去に読んだ本のレビューを書くのは、いくら手控えノー...
      両作者をご存じでよかったです~。お時間あるときに眺めてみてください♪

      それにしても過去に読んだ本のレビューを書くのは、いくら手控えノートがあってもなかなか難しいですね。今回初めて知りました。いっそまた読んだ方が早い感じもするのですが、机には読みたい積読本がどんどん成長するばかりで、いよいよ雪崩そうです(笑)。
      2017/04/07
  • 12月になったら読み始めようと思っていた部落差別を題材とした小説。主人公の家族は日々周囲から蔑まされる集落に住み、農作業でなんとか暮らしをつないでいる。「平民」と言われる人たちからの差別に半ば諦め半ば対抗しつつ、自分たちではどうしようもない人生を一生懸命生きている。また、自分たちも社会的には下層に生きているのに、そのさらに下位に見立てて優位を振りかざす人々の滑稽さ。反抗する主人公たちに非はないが理があるとは思えない行動を取ってしまうことへの不条理感。とはいえ、自分の中にこういう一面がないとは言い切れず、重たい気持ちのまま読み進める。

  • 差別はされた側はもちろん、した側にとっても黒歴史なのだな。お互いに思い出したくないであろう、しかし忘れてはけない過去。
    子どもたちの「なんで、どうして」という純粋ない問いに満足な返事をすることができない大人たち。うさん臭さをかぎ取る能力を持っている子どもには、生半可な答えは通用しないしかえって大人に対する信用を無くすだけなのだ。
    兵隊ごっこの大好きな小学生だった誠太郎が大阪に丁稚奉公に出て急に大人びるのに驚いた。村の外に出て、彼は何を悟ったのだろう。弟の孝二が直感で「兄が遠くへ行ってしまう」と感じるのが切ない。でもそれは彼自身もこれからたどる道かもしれない。

  • 8月中旬からずっと読み続けていました。
    時々、立ち止まりながらじっくり読んで、
    さっきようやく最終巻の最後のページを閉じたところ。

    考えたことはたくさんあって、その全てをうまく言葉にはできそうにない。

    だから、自分がこれからどうしていきたいか、ということだけ記しておきたい。

    常に想像力を働かせること。
    今あるものを当たり前のように受け入れるのではなく、
    色んな角度からしっかりと物事を見据えられる人になること。
    これは、孝二やまちえの生き方から教わったこと。

    そして、どんな境遇にあっても、自分なりに価値観を磨いていくこと。
    そのためには観察眼を鋭くし、どんな人の言葉にもしっかりと耳を傾けること。
    これは、文盲でありながら孫達にも劣らない価値観を体得した、ぬいから学んだこと。

    高校の頃日本史の授業が大好きで、登場する歴史上の事件も
    もちろん聞き覚えがあったけれど、見方によってはこんなに変わるのだと改めて自分の得てきた知識の偏りを痛感した。
    習ったことがまちがいだった、ということではなくて
    本当に骨組みの部分だけだったんだ、ということ。

    ここに肉付けをしていくのは、自分自身の意志なんだと強く思いました。
    その意志がなければ、思考は固く狭くなってしまう。
    そんな危機感を抱きました。

    この夏に、この本を読んだことは自分にとって
    意味のあることだったと思う。

  • 部落差別を知らなかったので、かなりショックを受けた作品でした。
    図書館で借りて読んだのですが、貸付の方が「私もこれ2回読みましたよ」と言っておられました。

  • 小学生のときに読んで、大衝撃。

  • 時代が変わっても変わらない普遍的な何かが伝わってくる気がした。
    後半の峠のたとえ話と誠やんが生まれたての赤子に向かってかけた言葉印象深かかった。

  • 友人に薦められて読み始めた本書ですが、7巻というボリュームに怯んだ気持ちはどこへいったやらという程にのめり込んでしまい、あっと言う間に読み終えてしまいました。 畑中家の暖かい交流と、一歩小森村から出た時の世間の非情さの対比に何度も辛くなりました。 東京にいるからか部落差別は実際に見聞きしたことはないですが、自分の心の中にも形を変えて人に(職業や雰囲気などで)貴賎をつけたがる思いがあることに、本書を通して気付かされます。誠太郎達をバカにする子供達が憎らしくてたまりませんが、それは私でもあると自覚します。

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