ロートレック荘事件 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 533
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  • Amazon.co.jp ・本 (258ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101171333

感想・レビュー・書評

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  • 178ページ、混乱してしまいました。
    何度も何度もめくり直して、読み返してようやく、理解が追いついてきました。
    普段ミステリー慣れしていないのもあると思いますが、圧倒されてしまいました。
    もう一度、最初のページに戻って、理解したうえでじっくりと味わおうと思います。
    ミステリーの魅力に気付くことのできた一冊でした。

  • 「だ、騙されたーーー!!!」と読み終わって心の中で絶叫してしまいました。いえ、いい意味で、です。そして、誰かに「いいからとにかく読んでみて!」て、言いたくなりました。

    もうちょっと説明するなら、うまく言えませんが、何というか、綿密に選び抜いた言葉でしか成り立たない、一歩選び間違ったら破綻して三流に陥ってしまうある意味難しい物を、うまくきっちり作りきったなあ、と脱帽する、これぞ、小説でしかできない醍醐味、という作品でした。

    ラストの細かすぎる作者註てんこ盛りによるタネあかしと、ロートレックの作品群もすごく好きです。
    …この散りばめられた作品群は、暗喩的な意味は勿論あるだろうけど、読み手の注意を無意識に核心からそらすための作用も担ってるよなあ…多分。
    読み終わってから気がつくことが多すぎて、また一から読み直して確かめなきゃ、という気になります。

  • どんでん返しの前評判で名前だけは聞いており、やっと手に取った本書。全てがミスリード。そして読み返した時に違う捉え方ができる点で良質な叙述トリックだと思った。作中でなんとなく感じていた違和感が、最後に線になって回収される。
    以下、ネタバレ。
    感じていた違和感は、あれ?これ今誰が話してる?とか、なんか2人称や3人称がやたらと色々出てくるな。下半身の成長が止まった主人公が性行為?映画も絵のエッセイも多彩だなぁ。いまここで話してる人数って合ってる?など。
    あとから読んで部屋割りとか絵画のミスリードとか章ごとに視点が変わっているのに気づいた。そういう意味ではラストは読み返しながらでないと理解が追いつかなかった(丁寧すぎる解説付きがついているのも頷ける)。障害者や身体的なマイノリティへの偏見や不当な扱いを扱っている叙述トリックだと感じたので、5点にしました

  • 『ロートレック荘事件』
    2023年8月16日読了

    表紙や挿絵に用いられたロートレックの作品がよくて、思わず手に取った作品。
    『時をかける少女』などで名前は存じ上げていましたが、実は初となる筒井康隆作品でした。

    舞台はロートレック荘と呼ばれる洋館。
    まさに王道たるクローズドサークルにワクワクしつつ、警察がいる上での事件の発生にはハラハラ。わかりやすくヒントを出されているはずなのに、結局だれが犯人かも作中のトリックにもわからず、最後まで読んで「なるほど!もう一度読みたい!」となる小説でした。

    文章がほんとに丁寧でに組まれていて、「すごい!」の一言につきます。
    しかも、読者へのヒントも必要十分には出している。
    これを矛盾なくやって遂げるのは、天才としか言いようがないですよ!

    最初から「?」となる箇所があるものの、読み進めたい気持ちが先行して疑問を後回しにしちゃうんですよ。作中のトリックを自分で解くには、疑問の検証をすべきなんでしょうけれど(本作に関しては、丁寧に検証することで真相がわかるような気がします)、やっぱり作者にかき乱されたいがために、わざわざ目隠しして落とし穴にはまりにいってしまいます(笑)

    トリックが秀逸なのはもちろんですが、犯人の哀愁こもった独白もよかった。
    あの余韻を味わいたくって、たった4ページの終章を何度読んだことか…。これを読むために、ここまで読んできたんだなあと思わせる、そんな独白です。

    「どうか私を死刑にしてください。」
    深い後悔が表れた一文に、すべてが詰まっているような気がします。
    犯人がこれまで歩んできた人生、その中で築かれた自分像と他者との関わり方、未来への焦りと絶望、そしてそれをも凌駕する事件後に発覚したある事実。

    この事件を経てすべてが変わってしまった彼ら。
    どのような人生となっていくのか、切なさの残る小説でした。

  • これは騙された!あっぱれお見事!と陳腐な感想が出てしまうほど読後感の気持ちよさが素晴らしい

  • 綺麗に騙された!爽快だ。情報をシャットアウトして素直に読んだ甲斐があった。
    読み終わってから他レビューを見ると案外評価が低くて驚くが、全編通してこれだけ伏線を散りばめ、全く矛盾なく作られているのは凄いと思う。しかも書かれたのはずいぶん前だ。

    所々で感じた違和感は、自分なりに補完して飲み込みながら読み進めた。作者の意図そのままの読み方だっただろう。おかげで、最後読み返した時に見えてくる第2のストーリーも心から楽しめた。
    名前の呼び方や見取図など、あからさまなヒントも提示されており、手法は充分にフェア。
    途中で挟まれるロートレックの作品が内容に無関係で残念とのレビューも多いようだが、少なくとも「接吻」はこの本に仕掛けられた罠を暗示している。
    短い小説で、一気に読めるのも良い。本当に面白かった。

  • おもしろかったぁー!こういうミステリー大好物です♫作者の思う壺にまんまとはまり、「え?え!え!?」と前のページに戻って感嘆する、紙書籍ならではの読み方を味わうことができるのも楽しい。

  • 筒井康隆の『富豪刑事』に次ぐミステリー作品である。康隆の領分ではないが、『富豪刑事』の素晴らしさは語るまでもなく、本作も期待感と共に読み始めた。

    舞台はロートレックの絵画だらけの別荘「ロートレック荘」。そこに集まった金なしの芸術家と金持ち一家、そして美女たち。芸術家が結婚相手を選ぶ中、邸内で殺人事件が。そして、殺人は警察の監視の中も続いてゆく。

    序盤は康隆にしては珍しく落ち着いた入りで、中々発展がない。しかし、ミステリーファンには何も無いところに鍵があることはご存じなはず。そして終盤の衝撃の種明かし。

    王道を踏まえつつ、新たなトリックで読者を魅了する、康隆の底を窺い知ることは難しいだろう。また1つ、素晴らしい作品に出会えました。

  • 1人隠されてた。びっくり。感動。もう一回読みたーい。

  • まんまと騙された。
    お気に入りの一冊。

  • 完全にミスリードされ続けたままラストを迎えてしまって驚くよりも先に「は???」となってしまった。よくよく落ち着いてどういうことだったか考えるとすさまじい作品……

  • 何を書いてもネタばれになってしまいそうな作品です。フェアかアンフェアかはともかく、本当に驚きました。予備知識なしで読んで欲しい一冊です。

  • マジでやられたミステリ リスト作品

    読みたい本も積読本も多すぎる
    それゆえ再読というものを基本的にしないタイプだけれど、筒井康隆作品を集めるついでに買い戻した

    前に読んでからゆうに10年は経っている
    メイントリックは覚えている程度
    どんな話だったか気になったのと薄めの文庫なのでサクッと読んでみた

    初読時の混乱衝撃度は軽減していたが(え?君、だれ?)たしかに読んだ物語だと微かな記憶が蘇る感じが良かった

    最終章はこんなに重かったっけ
    救いのない結末だがきっちりハマってて腑に落ちる

    再読して作品のイメージと評価が変わったなあ
    一撃モノではない傑作


  • くっそー!やられた!!!そうきたか!!!!!って感じ

    最初、相関図がいまいち頭に入ってこなくて読み直したのも、主人公の人間像が見えてこないなと思ったのも、「我が」という呼び方に違和感があったのもこのせいだったのか!と思った。

    私には、話の展開も誰が次に死ぬのかも動機も犯人がわかるまで本当になにもわからなかったので、「なになになに!?どうなるの!?」って感じで読み進められて面白かった。

    典子さんが好きな人を隠していたのってそうゆうことだったんだなあ…ってちょっと寂しくなった。

    もう一回答えあわせのために読みたくなる

  • 最初から微妙な違和感を覚えるがそれが何かはわからない。種明かしがあった時のなるほどね感がすっきり!

  • 時々違和感を感じながら読み進めていたが、見事に引っかかかった。
    結末を知ってからもう一度読み返したくなる作品。

  • ところどころちょっとした違和感とか、登場人物の関係性が分かりにくいなと思ったところがありながらも、流して読んでしまったら見事に騙された!
    もっと注意深く読めばよかった~と少し後悔w
    有名な作品だけあって、長さもちょうどよく読みやすかった。

    ------------------------------

    郊外の瀟洒な洋館で次々に美女が殺される! 史上初のトリックで読者を迷宮へ誘う。二度読んで納得、前人未到のメタ・ミステリー。

  • 鬼才・筒井康隆さんが推理小説の世界に真剣に真っ向勝負を挑んだ騙しのテクニックが冴え渡る叙述トリック・ミステリの不朽の名作。本書のタイトルのロートレックは実は障害者を象徴する意味のみなのですが、途中に代表的な絵画作品が数多く掲載されていてお得な気分が味わえますね。まずブラックな笑いがお得意な著者には珍しく「侏儒褒章」なんて戯言以外は至って生真面目その物の筆致に驚きましたね。冒頭から幽かに違和感を覚えながら著者が読者を誤認させ誘導する手管に完全にしてやられましたね。ラストに漂う悲劇的な哀感にも心が痛みました。

    実に巧いなあと思います。これが本当の「知らぬは読者ばかりなり」と言った所でしょうね。まあ相当の混乱状態の中で起きた出来事とは言え、だからこそ隠された事実を知っていながら渡辺警部は3人もの被害者の命を救えなかった事が不甲斐なく情けない無為無策の重大な責任問題だと思えますよね。それから49頁のロートレック荘二階平面図を見直してみて特徴的な表記の違いに嫌でも気づきましたね。本書もまたトリックの性格上から映像化が困難な作品でしょうね。後で振り返るとモヤモヤした最大の違和感は男なら誰もが嫉妬するモテ男の矛盾でした。

    また例によって唐突ですみませんが、さだまさしさんの曲でロートレックが出て来る唯一の歌「たずねびと」の一番の歌詞を引用します。いつもの様にこの店のカウベル鳴らして ドアを開いて狭いカウンターとまり木にすがれば黙っていても出てくるアメリカンそれからほの暗い柱の陰にロートレックのおなじみのポスター常連達の吐息と煙草の海喘ぐ様に泳ぐレコード壁紙の落書きは 昔の青春達書いた人も書かれた人も昔の恋人達色褪せてうずくまる待つ人のないたずねびと ノスタルジックな雰囲気が渋い名曲ですので気になった方は何時か聴いてみて下さいね。

  • 【個人的読書記録】
    騙された…と言うより気付けなかった…

    読み終わって全てが分かった後に、それを踏まえてもう一度読み直したくなる小説。

    謎解きをし始めたページから、該当箇所を見直ながら読んだのは久しぶりだった。

  • 久しぶりに、ミステリーに気持ちよく騙された。
    葉桜や向日葵、イニシエーションラブなどもこの類いの
    文章だからこそできるトリック、叙述トリックなのだが、
    これほどだまされて納得のいくものはなかなかない。
    読みにくいなぁ、おれってだれなんだろう、という最初のちょっとした疑問も、読み進めるうちに慣れ、忘れ、
    夕食での会話のさもありなんというところに作者の力量を感じた。
    犯人がわかりかけときに、突きつけられる違和感。
    最後はとても切なく、悲しい話。
    解説にもあったが、文学におけるエチケットという
    逆説的にみれば差別領域に一石を投じた作品としても意義深い。

著者プロフィール

小説家

「2017年 『現代作家アーカイヴ2』 で使われていた紹介文から引用しています。」

筒井康隆の作品

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