ローマ人の物語 (7) ― 勝者の混迷(下) (新潮文庫)

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  • / ISBN・EAN: 9784101181578

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  • 読書録「ローマ人の物語7文庫版」3

    著者 塩野七生
    出版 新潮社

    p52より引用
    “また、戦争とは、それが続けられるに比例
    して、当初はいだいてもいなかった憎悪まで
    が頭をもたげてくるものだ。前線で闘う者は、
    何のために闘っているのかさえわからなくな
    る。”

    目次から抜粋引用
    “マリウスとスッラの時代(承前)
     ポンペイウスの時代”

     歴史作家である著者による、歴史に大きな
    足跡を残した古代ローマについて記した一冊。
     内輪もめに乗じた他国の侵略から剣闘士の
    反乱まで、史実と著者の主観をまじえて書か
    れています。

     上記の引用は、ローマ市民同士の戦争につ
    いて書かれた項での一節。
    戦っている理由がわからなくなったら、戦闘
    を止めてしまえれば良いのですが、軍律違反
    で罰せられるのでしょうね。
    大きな力を持った人に振り回されて、見方同
    士で戦争をしなければならない、そんなこと
    にならないように、しっかりと歴史は勉強し
    ておいた方がいいのかもしれません。
     内戦やそれに乗じたゴタゴタばかりが描か
    れていて、ローマはあまりいい時期ではな
    かったようです。
    それでも地中海周辺を支配下に置いてしまっ
    たのですから、力のある国家だったのですね。

    ーーーーー

  • ミトリダテス戦争、スラの独裁と死後のスラ体制崩壊、ポンペイウスの活躍。

  • ちょいちょい戦争が絡むので読んでいて面白い。改めてだけどこの作者文章うまいなぁ。構成がとても好き。

  • ローマ同盟国がその格差からローマ市民に反旗をひるがえした同盟者戦役は、同盟国に新市民としての権利を拡大することで終結した。だが、戦争の終結がただちに争いの終結を意味するとは限らない。その権利の範囲をめぐる反動は、ハンニバルでさえ達し得なかった首都ローマの武力制圧を許すまでに至った。物語的な価値観からすれば、旧権力の維持をはかる体制派は悪者にされ、民衆派が正義のもとに勝利するものだが、歴史はそうではない。民衆派が首都で反対派を虐殺している間、保守派は周辺国での反乱を一瞬で制圧し、その勢いのまま首都に戻り、今度は民衆派を圧殺する。

    そうした武力による勝利により、スッラひきいる保守派が体制を維持することになったが、跡を継いだ者達が目指したのは、”共和制”の維持ではなく、個人の権力の維持だった。軍人であったポンペイウスは兵士に代表される一般市民の支持を、経済人であったクラッススは騎士階級に代表される経済界の支持を拡大することに専念した結果、中央集権体制と”ローマ”の範囲の拡大が進み、ここにこそ共和国が帝国に至る萌芽があったと見ることが出来るのではないだろうか。

    スッラ、ルクルス、ポンペイウス、クラッスス。この時代の執政官達は政治の分野ではもちろん、戦いの分野においてもスペインのセルトリウス戦役で、スパルタクスの乱で、ミトリダテスとの戦いで、地中海の海賊一掃作戦で、時には10倍以上の敵に打ち勝ち、時には三カ年計画を三ヶ月で達成するなど、眼を見張るような活躍をしてきた。だが、共和制ローマの傑物としてスキピオの次に並べられるのは、彼らではない。常勝無敗の偉大なローマの英雄たちをも超えるユリウス・カエサルとは一体何物なのか。次巻に続く。

  • 前一世紀初頭、ローマは内外で混迷の度を深めていた。同盟者戦役に続き、小アジアではミトリダス戦役が勃発、ローマも内乱状態に陥る。戦役に勝利した名称スッラは反対派は一掃。前81年、任期無制限の独裁官に就任し、ローマの秩序再建のため、国政改革を断行する。しかし「スッラ体制」は彼の死後間もなく崩壊。この後登場するポンペイウスは、ローマの覇権拡大を果たしたが。

  • ギリシアに手を出そうとするポントス王ミトリダテスを叩くためにスッラがローマを発ってすぐ、追放されていたマリウスをキンナが名誉回復したことで、マリウスの復讐が始まる。

    ミトリダテスを完全に屈服させたスッラは、あろうことかローマから派遣された正規軍をも取り込んでしまい、現地の統治システムまで形作る。

    キンナはローマに帰還してくるスッラを迎え撃つために準備をしていたが、その途上で犬死にをする。

    同盟者戦役の時よりもさらに純粋な意味での(=市民同士の)内戦が勃発し、粛清を経て、スッラによる独裁が始まる。

    スッラ独裁は元老院の強化を目指して行われたが、死後間もなく崩壊する。

    スペインのセルトリウスを叩きにいったポンペイウスが戦果を上げ名声を高めていく一方で、ローマではクラッススがスパルタクスの反乱を平定する。

    ポンペイウスとクラッススは仲が悪いにもかかわらず選挙では共闘し、執政官になり、元老院の力を削ぐ改革を行う。

    ローマの東では、ルクルスがミトリダテスを抑えつつ、ポンペイウスが海賊を一掃する。

    ルクルスは政治の舞台には参加せず、以後ポンペイウスの時代がやってくる。

    この時期のローマ史はごちゃごちゃしているが、教科書のように一直線に帝政まで至ったのではなく、やはり右に左に動揺しながら内憂外患を克服したのだと思う。

  • あ、マリウスとスッラは相対立する二人の名前だったんですね。並記されているから、てっきり師弟関係なのかと。旧態依然とした制度では広がり続ける国家を支えきれず、新しい体制づくりに精を出した男たちの物語。で、次はいよいよカエサル登場です。

  • ここまで続いてきた共和制による元老院体制も、もはや「古い革袋」となったようである。スッラによって再構築がなされたとはいえ、それは紀元前1世紀という時代には耐えられなかった。そもそもスッラが元老院体制の再建をなしえたことでさえ、自ら異例の独裁官に就任することによってはじめて可能になったのであり、そこには本質的な矛盾があった。ポンペイウスを経て、終身独裁官カエサルの時代、そして彼の死後、ローマはオクタヴィアヌス(アウグストゥス)による帝政へと移行してゆく。カエサルだけはその後のローマを見とおしていたのだろう。

  •  急激に強大になり過ぎたがゆえの成長に伴う数々の課題に見舞われた共和制後期のローマの物語の続きです。課題への対応を,これまでのシステムの見直しで解決しようとしたスッラと,その後を受けながらもスッラの確立した体制をはからずも崩壊させてしまうポンペイウスの物語が中心になっています。
     ローマの成長に適した統治システムへの対応を目指したこの巻の主役たちの取り組みの目的,進め方,そして結果を知ることは,成長に適した統治システムの確立という問題への解決への道筋を示し,そして新しいシステムの確立を進めた,次の巻以降の主人公たちの取り組みの目的,進め方,結果を知るには大切なことだと思います。

  • ポンペイウス・マーニュスの武勇が描かれる。
    次巻はとうとう、ユリウス・カエサルだ。

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