ローマ人の物語〈9〉ユリウス・カエサル ルビコン以前(中) (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101181592

感想・レビュー・書評

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  • カエサルかっこよすぎる!!!

    上巻では借金まみれの女たらし位の印象しかなかったのです。この中巻の40代前半ではポンペイウスとクラックスとの三頭政治そしてルッカ対談などもありますが、【ガリア戦役】で彼の能力が発揮されます。

    後のスイス人となるヘルヴェティ族から始まり、ゲルマン族今のベルギーフランスであるガリア。
    当時野蛮だったブリタニアには船を作ってドーバー海峡越えて遠征。ウィンストン・チャーチルをして「大英帝国の歴史はカエサルのブリタニア上陸によって始まった」と言わしめます。

    できれば戦わずにまとめたい、戦うことになっても敗者に寛大、でも誓約を破った者には厳しい。

    味方の扱いも素晴しい。このような状況ではネガティブになるもの当然です。

    ガリア人から「ゲルマン人は恐ろしい」と聞かされ、兵士たちは弱腰になります。カエサルは作戦会議で演説。
    それがまたたくまに宿営地のすみずみにまで伝わり、全兵士の士気が一変。
    >第十軍団の兵士たちは自分たちの忠誠と義務感に信頼を置いてくれたことの礼を述べ、戦いに出向く準備は完了していると告げる。他の軍団も指揮官を送ってきたのは同じだが、彼らがカエサルに告げたのは陳謝で、以後二度と総司令官の戦略をひはんするようなことはしないと謝ってきたのだった。カエサルは彼らの陳謝を受け容れ、もと通りに部下として認めた。

    またガリア戦役五年目で十五個大隊9千と軍団長二人損失した時も、先立つ課題は戦友の死で打撃を受けている兵士たちへの対策。
    >カエサルは集められる兵士たちには自分の口から、集められない兵には各指揮官を通じて次のことを告げた。あの不幸は軍団長サビヌス個人の浅はかな判断によって起こったのだから、平常心を失わずに耐えるしかない。それも神々の助けと諸君の勇気によってすでに復讐は成ったのだ、と言ったのである。兵士たちは納得した。後を振り返らない性格の最高司令官に、一兵卒までが染まり始めていた。

  • カエサル・ポンペイウス・グラッススによる有名な三頭政治から、ガリア戦記の時代まで。

    カエサル自身が書いた「ガリア戦記」を紹介している部分を読むと、ついこちらも読んでみたくなる。

    キケロによれば、「ガリア戦記」は、
    「カエサルは、歴史を書こうとする者に資料を提供するつもりで書いたのかもしれないが、その恩恵に浴せるのは、諸々のことをくっつけて飾り立てた歴史を書く馬鹿者だけで、思慮深く賢明な人々には、書く意欲を失わせてしまうことになった。」(p70)

    そういえば岩波文庫から出ていたな。

  • 紀元前60年に40歳になったカエサルは、執政官に当選します。秘密裡に進めた三頭政治ですが、筆者はこれをカエサルは私益だけでなく、ローマの政体の新しいシステム樹立を目論んでいたためではないかと書いています。
    借金と女たらしの才能以外にも能力があることをローマ市民に印象づけたカエサルは、この後ガリア地方の制圧に向かいます。自らを主人公として書いた「ガリア戦記」を元にしてその様子が紹介されますが、その文章は古今東西の多くの知識人、2000年後の私たちをまで唸らせる名文です。戦地で意気消沈している兵士たちへの発言がそのまま載っていて、如何に彼が人心を把握しているか証明されるものになっています。
    このガリア戦役の様子を読むと今日の西欧諸国の成り立ちの根源や、民族の気質がよくわかり興味を惹かれます。ガリア人、現在のフランス人も自由を何より尊び、統一や団結は得意としないよなあと思うのでした。そして、ローマ人の古来からの得意とするシステマチックな軍備や橋や防壁を造る土木系の能力には驚嘆させられます。

  • ローマの歴史には常に戦史がついて廻る。それが圧勝であっても僅かな勝利であっても勝つことを義務づけられているのである。

  • ■評価
    ★★★✬☆

    ■感想
    ◯カエサル無双が始まる巻。物語が動いていく。

  • いよいよガリア戦記。
    地図や進行経路、現在の名称など利用してとてもわかり易く読めました。
    確かにカエサルのガリア戦記は素晴らしいですか、ローマの政治状況等含めとても分かりやすく楽しく読めました。

  • カエサル、やっぱりすごいな。ゲルマン人もガリア人もブリタニアも確実に遠征し勝利をおさめていく。遠征は一方から見たらただの侵略でしかないのだろうけど、それをカエサルは文明化と呼んでいる。
    文明化を大義名分に列強となった国々はカエサルに文明化された国々だと思うと、苦笑してしまう。文明化ってなんだ?自国の文明に誇りを持つことと、文明化は大きく違う。耳に心地よい言葉には注意が必要だ。
    文明化しようとするのは、人間のサガなのか。私も状況に陥れば、やはり文明化されていない国々、人々を文明化しなくては、と思うのだろうか。そんなことを考えた9巻でした。

  • 〇公人であろうと、その人の利益の追求を認められるべきである。
    〇カエサルの文体は、簡潔・明晰・洗練されたエレガンスの三語で統括できる。
    〇「ガリア戦記」は前置きも導入も何もなくいきなり始まる。他の人は、いかなる目的で書くかを、冒頭か、でなければ文中のどこかで書かざるを得なかった。前置きとかイントロダクションとかは、読み手のためにある以上に、書き手のためにあるのである。
    〇人間には、誰かに後事を託さなければならない場合、事細かに指示を与えて託す人と、任務を与えても細かい指示までは与えないで託す人の2種に分かれる。全幅の信頼をおくがゆえにか否かは、ほとんど関係ない。前者は、自分自身が細かに指示を与えられる方が仕事がしやすい人であり、後者はその反対であるにすぎない。カエサルは、完全に後者に属した。
    〇人間とは噂の奴隷であり、しかもそれを、自分で望ましいと思う色を付けた形で信じてしまう。

  • 10巻に記載

  • ユリウス・カエサルを中心としたローマ史シリーズの2冊目。紀元前60年(カエサル40歳)から紀元前54年(46歳)までを扱う。スペイン属州総督を終えた後、カエサルはポンペイウス、クラッススとともに三頭政治体制を整えて元老院派と対峙する。執政官に就任した後、ガリア属州総督となってガリア全域の諸部族を次々と降していき、とうとうブリタニアにまで遠征する。

  • 本巻でようやくカエサルが本領を発揮することになります。執政官への就任、クラッスス、ポンペイウスとの三頭政治、そしてガリア戦記です。本巻からは著者のカエサルに対する愛情がひしひしと伝わってくるので、読んでいるこちらが微笑を浮かべてしまいます。しかしそれを抜きにしても、カエサルが政治家として、軍事家として、そして間違いなくお金の面でも類い希なる才能を持っていたことがわかります。
    本書を通じて確かにあらゆる面で頭の良さを感じます。ある時は意識的に、ある時は無意識なのでしょうが、とにかく物事を良い方向に進める才能に長けています。良いというのは自分だけでなく社会にとってもという意味であって、著者が指摘しているようにカエサル自身の私利をローマ社会の公益につなげ行動しているという、いわゆるWin-Win戦略を基本としています。
    本巻ではガリア戦記の一部としてカエサルのブリタニア(イギリス)上陸が記されていますが、まさかその島が後の世界の中心になるなどとは、さすがのカエサルも予想していなかったことでしょう。ただオリエント重視の世の中で、誰も眼をつけていなかったブリタニアに侵攻したカエサルの視野の広さには驚かされるばかりです。

  • カエサル人望厚くて、戦争うまい!

  • 前巻の終盤でようやく「起ち始めた」カエサルが、この巻からは一気に活躍していくことに。誰であっても世界史で習ったであろう「三頭政治」を成立させ、武人ポンペイウスと騎士階級のクラッススを巻きこんで元老院体制を脅かせるだけの基礎を築き、そのうえでガリア戦役に突入。中盤以降はずっと、一年ごとにガリア戦役で何が起きたのかが丁寧に描かれていく。やや退屈な感もあるが、着実に戦果を挙げていっているのが分かる。

    カエサルがローマを留守にしている間に、元老院がポンペイウスとカエサルの間を割こうと画策したものの、その意図を遠隔地にいながらにして見抜いたカエサルがきっちりと対策を打って元老院の思惑を砕いているのも面白い。人が直接、伝えるしか通信手段のなかった時代において、どのようにしたらこれほどまでに迅速かつ適切に政敵に対処できるのか、不思議でならない。

  • カエサルの物事の見通し方がすごいと分かる。
    判断力の高さ、人心掌握力もある。

  • カエサルって、とても魅力的な人物だったんだな。

  • 現時点では、まだハンニバル戦記の方が面白い。これからのカエサルの活躍が楽しみ。いかなる状況でも、機嫌の良さを忘れないこと、見習いたいなあ。

  • いや、面白いのなんのって。
    塩野さんがカエサルびいきなのはわかっていましたが、ここまで魅力的な人物っている?
    政治家として、軍人として、何より人の上に立つ者として、なんてよく気が回り、用意周到に事を進め、約束を違えない。
    フェアで、気前が良くて、冷徹。
    常に二手三手先を読み、一石で二鳥を得る男。

    今更ながら、メロメロです。
    女たらしで借金王なんて、大した瑕じゃないじゃん。(すごい女たらしなのに、女に恨まれない。すごい借金王なのに、債権者より強気)

    この当時、ローマが文化の最先端で、ゲルマン人もガリア人もローマ人からしたら野蛮人だった。
    けれども、カエサルは一度も彼らの文化を見下したことは言わなかった。

    ”彼は、ガリア人の宗教や風俗習慣を叙述しながらも、それらが自分たちのものより劣っているなどとは、一言も言っていない。それどころか、彼ら特有のもの、つまり文化は、尊重している。”

    理解は出来なくても尊重する。
    そういう器のデカさが、カエサルの魅力だよね。
    続きが楽しみ。

  • ★3.5かな。
    作家がこの人物を愛してやまないことが分かります、ノリが違うことはこの時代のことをあまり分かっていない読者たる当方ゆえに余計に分かるかも。グイグイ引っ張る形で読ませてくれます。
    でも盛者必衰ではないけれど、本当はこの輝かしい人物の中にその後の没落の鍵があるんではないかと。そこを掘り下げて欲しいと思うのですが、どうもこの作家にそれを求めるのは酷のようです。

  • カエサル40歳から46歳までの物語。執政官当選、カエサル・ポンペイウス・クラッススによる三頭政治、そしてガリア戦役。クラッススの息子やキケロの弟も登場。カエサルが本格的に活躍し出して、大河ドラマを読んでいるような面白さ。キケロも前巻より人間的なエピソードが多くてちょっと親近感が湧いた。「野心」と「虚栄心」についての著者の考察も面白い。

  • この中巻では、カエサルの壮年期前期とガリア戦記の戦役時の五年まで収録されています。

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