ローマ人の物語 (26) 賢帝の世紀(下) (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
3.80
  • (77)
  • (112)
  • (125)
  • (6)
  • (1)
本棚登録 : 1048
感想 : 67
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101181769

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 先帝トライアヌスが堅牢にした国境防衛で、帝国の安全保障は

    確立した。その帝国を受け継いだハドリアヌスは、自らが広大な

    帝国を実際に見て回ることでより一層の防衛強化策を講じる。

    この属州視察の旅で、エジプトを訪れた際に悲劇が起こる。

    皇帝が愛した美少年アンティノーがナイル川就航中の船から

    落ちて溺死している。

    「しかし、相当な数にのぼるアンティノーの彫像を見ていて感ずる

    のは、ゼロとしてもよいほどの知性の欠如である。美しさならば

    完璧で、そのうえまことに官能的だが、知力をうかがわせるもの

    は影さえない。」

    これまた辛辣な著者のテンティノー評である。私はここまで深く考え

    ずにアンティノーの彫像は見ていなかった。「なんと整った顔なのか」

    としか感じなかった凡人である。

    さて、このアンティノーの溺死。成熟した大人の男になる前にハドリ

    アヌスの愛を永遠に自分に引きつけておこうとした自殺であるとの

    説を採用している。

    愛を獲得する為の、最終手段だな。少々ずるいけど。




    さて、広大な帝国の巡視を終え、国境防衛の再構築をして首都

    ローマに戻ったハドリアヌスだったが、老齢から来る身体の不調

    とやるべき事をやり終えたことから来る燃え尽き症候群に襲われる。

    身辺の世話をする奴隷に支えられなれば足元もおぼつかなくなった
    皇帝は、余生のほとんどを別邸で過ごすようになる。

    こんなハドリアヌス帝が後継者に指名した若者は、軍団の指揮を

    経験すべきとして送られたドナウ河の前線基地で大量の吐血をした

    後に亡くなる。

    ハドリアヌスが次に後継者に指名したのは、後に「慈悲深き人」と

    意味する「ピウス」の名を冠されることになるアントニヌス・ピウスだ。

    だが、この後継指名にはひとつの条件が付け加えれていた。

    ハドリアヌス帝が、ゆくゆくは当事者にと考えていた少年二人を、

    アントニヌスが養子に迎えることだった。

    知性のほとんどを帝国の視察に当てたハドリアヌスの後を継いだ

    アントニヌス、ローマ皇帝に贈られる「国家の父」を文字通りに体現

    した、慈悲と秩序の人だった。

    しかし、このアントニヌス、現存する史料がまったくないようで、著者

    の筆も相当に鈍りがちだ。でも、次の一文を。

    「政治思想家マキアヴェッリによれば、リーダーには次の三条件が

    不可欠となる。「力量」、「好運」、「時代への適合性」である。(中略)

    トライアヌスやハドリアヌスと同じく、アントニヌ・ピウスもまた、「質」は

    違ってもこの三条件は満たしていたのである。統治される側にとって

    の幸福な時代とは、この三条件すべてを持ち合わせていながら「質」

    はちがうリーダーが、次々とバトンタッチしていくじだいであるのかもし

    れない。」

    三条件なぁ…誰も持ってない気がするけど。某政権党の代表選。ブツブツ。

  • 11/4/8
    5賢帝3人目ハドリアヌス帝。ユダヤ反乱、イェルサレムからのディアスポラ。アントニヌス帝。平穏な時代で特に何もしていない。
    元老院体制の限界P89。

  • ハドリアヌスの美少年愛に、すごく生真面目な中にも人間らしさを感じ、嫌な気にはならなかった。
    仕事一筋で真面目。老年の気難しくなるのは、しかたないな。引退出来ればいいのだけれど、医師に自殺されるくらいなら、アンティーノのような彼がいて、共に自害とかのパターンにはなっていたら、そうそう名を穢すこともなかったのでは。

    ピウスに関しては、本当にエピソードが少ないけど、立派な人物はある程度褒め讃えると、あとは単にネタが尽きたのかなと思う。自生録に繋がっていく歴史の流れがようやく分かった。
    20101225

  • 五賢帝4人目のアントニヌス・ピウスの記述が異様に少なく、それもほとんどが彼の性格に関することだった。23年も統治してほとんど新しいことをやる必要がない時代だったのか、と思わせる。

  • 00254
    B010
    他-9999999-001

  • 6/15:本は薄いが中身は濃いぞこりゃ。ハドリアヌスの晩年と、次のアントニヌス・ピヌスの治世。ハドリアヌスが皇帝として行ったことは極めて有益、有効。前掛かりな頭と屈強な体であの時代にヨーロッパ、北部中東、北部アフリカを視察し、適切な手当てを行っていったとは恐れ入る。
    晩年とち狂った様子だがローマに安定をもたらしたことで自分の安定を失ってしまったんだろう。なんだか、秀吉を思い出しました。
    ユダヤ人とローマ、キリスト教の関係がなんとなく分かってきた。これ根深いね。2000年近くもめているから、これは未来永劫解決できないだろうね。ユダヤ人を隔離するか、滅ぼすか、という選択肢しか思い浮かばず、これはどちらも失敗すると歴史が物語っている。宗教に支配される社会は住みずらいぞ、って思う。
    ----------------------------------------------------------
    6/14:さて、ハドリアヌスが自分の治世をどう幕引くのか、楽しみです。残り二人の賢帝がこの薄い1冊に収まるのかも興味があります。

  • メモ:続:皇帝ハドリアヌス。ユダヤ反乱。割礼の禁止とアエリア・カピトリーナ(軍団都市)の建設。エルサレムからのユダヤ人追放・ディアスポラ(離散)。ユダヤ人の神聖統治への願い。しかしローマ人は政教分離をもとめる。*カエサルの考えはユダヤが反ローマに起たない限り、政教分離でなくてもよい。アウグストゥスの考えは間接統治。
    :皇帝アントニヌス・ピウス。人格者。養子にマルクス・アウレリウス。

  • 前巻に続き非常に面白かった。
    前半にハドリアヌスの治世、後半にアントニヌス・ピウスの治世を扱った一冊。

    やはりハドリアヌスはとても面白い。
    2度目の大旅行。ギリシア文化への傾倒。ギリシア人の美少年との同性愛。その少年の不審な死…etcetc
    彼のアップダウンの激しい人生にはページをめくる手も進むというもの。しかし多くの功績を残した彼が老いて性格が捻じれてしまったところもあったとはいえ、死後、記録抹殺刑に科されそうになっていたとは。

    その彼を不名誉から救ったのが次の皇帝アントニヌス・ピウスであるが、彼はハドリアヌスとのコントラストが際立つ静的な皇帝だった。「ピウス」というのは「慈悲深い」という意味らしい。
    タイプの違う皇帝が次々に登場するローマ史はやっぱり面白いなーと思う一冊だった。

  • 2006年8月頃読了

  • ネロの自殺後の混乱期を乗り切り、国の復活に尽力したトライアヌス、
    ハドリアヌス、アントニヌス・ピウスの三皇帝。

    創業者以降の危機をどう乗り切るかについてのよい題材が多く含まれている。

    ☆4.5

全67件中 41 - 50件を表示

塩野七生の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×