本屋さんのダイアナ (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 525
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101202426

感想・レビュー・書評

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  • R3.11.4 読了。

     ダイアナと彩子の小学生から大人になるまでを描いた物語。ダブルヒロインそれぞれの視点から物語は展開していく。紆余曲折ありながら成長していく姿を追いかけるように読んでいて、気づけば一気読みしていました。
     ダイアナの母親のキャバクラ嬢のティアラさんや彩子の両親や小学校の同級生の武田君、彩子の中学の高柳先生、書店員の田所さんなど、個性派キャラ達が彼女たちの周りでサポートしている。特に大穴の母のティアラさんは一見ケバケバ系のギャルキャラかと思いきや、ダイアナの味方で、いつも笑顔を絶やさない優しいお母さん、そして過去には知的で清楚な一面が垣間見えたりして謎めいている。産まれた時には居なかったダイアナの父親の存在も物語を盛り上げている。
     ダイアナと彩子は小学校6年の時に些細なことが原因で喧嘩別れして絶交状態になるのだが、その後も気になる存在として気にし合うさまは、読んでいて歯がゆくてもどかしかった。
     そして、物語の終盤にはダイアナと彩子のそれぞれに自分を生きづらくしている呪いを自分でかけていることに気づき、それぞれが克服していく。そして二人の関係も修復されて・・・。ここで物語が終わってしまい、とても残念に思っています。
     この作品では読者の期待を良い意味で裏切られ、そんなに世の中甘くないよというような厳しさも教えてもらいました。
     アッコちゃんシリーズに続き、また柚木麻子さんの書かれる好きな作品が増えました。また別の柚木麻子さんの作品も読んでみたいです。

    ・「ペンダントが光らないのは、君がまだ自分の人生を生きていないからだよ。君が変われば、ペンダントも光るようになる。」
    ・「私はどこにだって行くし、どこにいたっていきていけるわ。見たいものはすべてこの目でみないと気がすまない。心配してくれるのは有り難いけど、誰の指図も受けません。お金も後ろ盾もないわ。でも、この手とはしっこい目と頭と頑丈な足があるんだもの。貧しさや波乱は少しも怖くないの。本当に怖いのは、狭い世界に満足して、自分で自分の目隠しをしてしまうことよ。」
    ・「流れていく書き込みではなく、ささやかでもいいから、形に残る何かを他人の中に残していきたい。難しいことではない。あのスレッドで振る舞ったように、現実世界で人と接していけばいいんだ。ネットもリアルも地続きだ。」
    ・「本が好きなだけで、高尚なつもりになるのは間違いだ。」
    ・「人生には、待つということがよくあるものです。自分の希望どおりにまっしぐらに進める人はもちろんしあわせだと思いますが、たとえ希望どおりに進めなくても自分に与えられた環境の中でせいいっぱい努力すれば、道はおのずから開かれるものです。こういう人たちは、順調なコースに乗った人たちよりも、人間としての厚みも幅も増すように、私には思えるのです。」

  • 柚月麻子さんの初読みです。
    柚月さんを一度読んでみたいなぁ〜とは思っていたものの、
    黄色の表紙の有名なbutter?は分厚そうだし、、
    本屋さん歩いてたら!可愛い表紙!ダイアナ?大穴?競馬?親がキャバ嬢? なんか面白そうと思い購入(╹◡╹)

    境遇が違う2人の少女が大人になるまでの物語。
    こうだったらいいな、のような『たられば』に逃げがちになりたい事もあるけれど、今目の前の境地で精一杯頑張るのは素敵な事だと感じた!
    ↓↓ このようなフレーズから。

    【人生には待つということがよくあるもの、希望通りに真っ直ぐ進める人はもちろん幸せだとは思いますが、例え希望通りに進めなくても、自分の与えられた環境の中で精一杯努力すれば、道はおのずから開かれる。順調なコースにのった人たちよりも、人間としての厚みや幅も増すように思えるのです】

    最後になるにつれて、お話が繋がっていくんだけど、防犯カメラのシーンは、ぎょえ〜?????でした笑

    赤毛のアンは、何一つわからない私も、楽しめましたー!!

    ティアラさん、浜崎あゆみ好きなのかな♡
    私も好きです!

  • 二人の少女の小学生時代から社会人になるまでの成長物語。途中から、この作品は『赤毛のアン』へのオマージュだということがわかった(読んだことはないけれど、ストーリーは何となくわかる)。子ども時代のダイアナの生活の苦労が気の毒に思われたが、成長とともにその生活が反転したような彩子の大学時代の体験には、とても驚かせられた。柚木氏がこのような文章を書くとは思っていなかったので、新しい発見ができてよかった。

  • 女の子同士の友情の物語。
    2人のそれぞれの視点から物語が進行していく。
    クライマックスがドラマチックで好きだった。

  • 女性の強さや無垢さ、成長と自立など色々考えさせられるような作品だったように思います。

    主人公は母子家庭で育てられている少女のダイアナ。このダイアナという名前はあだ名ではなく、本名であるため、ダイアナは自身の名前に強いコンプレックスを抱き、引っ込み思案になっていました。しかし、そんな時声をかけてくれた彩子と友達になります。

    この物語はその2人の対比がとても印象的で、家庭環境やコンプレックス、それぞれ抱える悩みが全然違うからこそ、その2人が成長し大人になっていく姿がとても読んでて気持ちよかったです。

    おそらくですが、自分が親になったときに本作を読めば、主人公たちの親の視点から物語を捉えることが出来るので、もう少し違った感想を抱くのかなぁと思いました。

  • 名前と家庭環境にコンプレックスを持つ主人公「ダイアナ」と、恵まれた環境で順調に学歴を積み重ねていくもう一人の主人公「彩子」による、ガールミーツガール小説。

    年月が経過するにつれ、2人の人間としての成長ぶりが逆転する。この、成長せず停滞している時期を、うまく表現する言葉が出てこない(失笑)
    「くすぶっている時期」「怠惰な時期」「荒れた時期」なんだろうか・・・
    作中の言葉を借りるなら、「呪いにかかっている時期」ということだろうか。

    子供の世界は狭く残酷である。コンプレックスは個人の思い込みに過ぎないとはいえ、狭いテリトリーの中で苦しみ、幼少期のトラウマは呪いになって、なんだかんだいって引きずるもの。
    だから、呪いは自分自身で打破するしか無い。

    彼女たちは、幼少期からの豊富な読書量により、多くの美しい言葉や感動体験を積み重ねていた。それらが確実に彼女たちの血肉となって、呪いを打破する最強の武器になったのである。まさに、彼女たちを救った(呪いから解き放った)のは読書ということだ。

    実は、ティアラも「もう本なんか読まない」という「呪い」にかかっていて、娘(ダイアナ)の成長によって呪いから解き放たれたのではないかと、後になって考えてみた。

    私もきっと、今後の人生で多くの困難にぶち当たり悩むだろうが、呪いを解き放つ言葉と感性を、ブクログライフを通して身に着けておこうと思う。

  • 子に名前を付けるとき、それはいろいろと想いがあってつけるもの。
    おかしいと思っても、それには理由があるはず。
    今回はちょっと意表をついていた。
    ネーミングもそうだけれども、誰が順当な生き方をしていくのか。
    親は子に、まっとうな、幸せな人生を歩んでほしいと思っている。
    まっとう、ってなんだろう?

    今回は意表をつかれたわけだけれど、読み終えて思ったのは。まっとう、って大人が勝手に思っているだけかもしれない。そんな親目線で読むのではなかったです。
    最後に人のためになる、人に喜んでもらって、そのひとから幸せをもらっている…若いうちにそんな人になってしまっていた…気づいたときには。
    強いです。それに比べて弱さの目立つものも。弱いのはみんな男だった。

    親友でよかったです。

    ーーー

    「10年、長生きする方法があります。知りたいですか?」…確か生物の本で読んだ内容を思い出しました。

    (こたえ)
    女に生まれることです。男は欠陥商品です。長生きできません。
    なんと… そうだったのか。
    ※ 本書とは関係ありません。

  • 赤毛のアン、若草物語など、外国の少女小説好きには、特におすすめ。

    いじめ、小中高生の学校での葛藤、裕福な家庭と、母子家庭の寂しさ、など多彩な要素が満載。

    この頃、何年かおきに繰り返される、
    偏差値高めの大学生による、とんでもない犯罪は、心が痛い。
    高校生くらいの時、この本に出会えたなら、未然にふせげるかなぁ。

  • ダイアナと彩子の友情と成長の物語。
    今の自分の心にも刺さるものがあり、2人の姿に沢山の勇気をもらった。
    生まれ育った環境だけでなく、今ある現実やしがらみに、諦めから卑屈になったり、別の何かに憧れを抱いたりすることは多々ある。環境の違う2人がそれぞれ悩みもがき、前向きに進んだり、自暴自棄になったりする中で、本を通して何度も向き合い、答えを出していく過程は、誰しも心に強さを持っていることを教えてくれている気がする。
    2人を大切にしている人たちがまた良い。中でもティアラの逞しさと武田くんの一途で大切な人を守るための行動力に、すっかりファンになった。
    友達も読書時間も大切にしていきたい。

  • 読んでいて性的な描写も多く、途中私が読んでもいい本だったのだろうかと不安になることもあったけれど、最後はハッピーエンドになって安心した。
    本屋さんのダイアナでは、小学3年生から大学生までのダイアナと彩子の様子が順々に描かれている。単なるすれ違いがずっと続いている、という物語が現実離れせず、すぐに仲直りするより読んでいて感情が揺れ動いた。ティアラの素敵な部分が読むごとに見えてきて、感動した。大穴という奇妙な名前も、夫との間で決めた大事な名前。私も昔は、名前を変えることはできないのかと、私の名前を考えてくれた親に問いただした。ダイアナのように名前で苦しむことはないし、世の中に浮いたり、名前を言っただけで笑われることもない名前なのに、その時はなぜか不満だった。けれど、今はこの名前を誇りに思っているし、世界一の名前だとも思っている。絶対に変えたくない、私の宝物の一つだ。

著者プロフィール

1981年生まれ。大学を卒業したあと、お菓子をつくる会社で働きながら、小説を書きはじめる。2008年に「フォーゲットミー、ノットブルー」でオール讀物新人賞を受賞してデビュー。以後、女性同士の友情や関係性をテーマにした作品を書きつづける。2015年『ナイルパーチの女子会』で山本周五郎賞と、高校生が選ぶ高校生直木賞を受賞。ほかの小説に、「ランチのアッコちゃん」シリーズ(双葉文庫)、『本屋さんのダイアナ』『BUTTER』(どちらも新潮文庫)、『らんたん』(小学館)など。エッセイに『とりあえずお湯わかせ』(NHK出版)など。本書がはじめての児童小説。

「2023年 『マリはすてきじゃない魔女』 で使われていた紹介文から引用しています。」

柚木麻子の作品

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