本当はひどかった昔の日本: 古典文学で知るしたたかな日本人 (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101205168

感想・レビュー・書評

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  • 立ち読みし、ついつい衝動買い。

    週刊誌と言えば、大衆受けするゴシップを拾っては、それを求める娯楽好き向けに書かれるのだが、ネタは世俗から。この本も同様、まるで週刊誌のようなネタ構成。ストーカー殺人、子殺し、マタハラ、人身売買。面白いのは、ネタが古典から。純粋な古典好きな作者は、齢50過ぎの美人。見れば、他に、「本当はエロかった昔の日本」という本も。ああ、そっちだったかと恥知らず、興味はもはや違う向き。買う買わぬも、待ち時間15分程度の決断。約束にエロかったっという本を持参するのも憚れ、否、結果こちらを衝動買い。

    中国は残虐だったとか、西洋は非情だとか、日本は違ったという論調もあるが、この本を読めば、別に日本だけが特別ではない事がわかる。人の習性など、然程変わるものではないのかもしれない。一つ言えるのは、我々は現代の常識で生きているという事。これは逆説的だが、今の方が住み良いという事も、また違うだろうという事だ。ただ、法華経でいう美醜の因果や戦国の世であった事、乳幼児の死亡率の高さ、避妊技術の問題などが、価値観を形成したのだろう。そう読むと、尚、私には面白い一冊となった。

  • <目次>
    はじめに
    第1章  捨て子、育児放棄満載の社会~昔もあった大阪二児餓死事件
    第2章  昔もあった電車内ベビーカー的論争~「夜泣きがうるさい」と子を捨てるようなシングルマザーに迫る村人たち
    第3章  虐待天国江戸時代~伝統的「貧困ビジネス」の実態
    第4章  本当はもろかった昔の「家族」~虐待の連鎖も描かれていた「東海道四谷怪談」
    第5章  マタハラと呼ぶにはあまりに残酷な「妊婦いじめ」
    第6章  毒親だらけの近松もの
    第7章  昔もあった介護地獄から舌切り雀の実態
    第8章  昔もあったブラック企業~リアル奴隷の悲惨な日々
    第9章  昔もいた?角田美代子~家族同士の殺戮という究極の残酷
    第10章  いにしえのストーカー殺人に学ぶ傾向と対策
    第11章  若者はいつだって残酷~「英雄」か「キレやすい若者」か
    第12章  心の病は近代文明病にあらず
    第13章  動物虐待は日常茶飯~そして極端なペット愛好
    第14章  究極の見た目社会だった平安中期
    第15章  昔から、金の世の中

    <内容>
    2014年刊の単行本の文庫化。大塚ひかりさんは、古典を解釈するだけでなく、現代の世の中に反映させることに長けている。なので、こうした人が先生なら、「古典」の授業はとても役に立つ(役に立つだけじゃダメなのかな?)。そして、現在世相をバッサッと斬ってくれる。例えば、平安中期(摂関政治の貴族文化全盛期ですね)は、「見た目が90%」どころか、100%だった可能性が。もしも美容整形の技術がこの時代にあったら、現代の韓国社会顔負けの「美容整形」ブームだったかも。また、ブラック企業はいつの時代もあったとか、介護地獄やストーカーや心の病も現代特有のものではない、と読み解く。ときどき世の論者と言われる人たちが、訳知り顔で「現代社会特有の~」と言っているが、人間いつまでも変わらない生き方をしているんだ。「絆」と言ったって、昔から「ひきこもり」はいたし、「少年犯罪」は残酷だったし、何も変わりはなかった…。安心すべきか、対策もないな、と諦念すべきか…

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著者プロフィール

1961年横浜市生まれ。古典エッセイスト。早稲田大学第一文学部日本史学専攻。個人全訳『源氏物語』全六巻、『源氏の男はみんなサイテー』『カラダで感じる源氏物語』『ブス論』『愛とまぐはひの古事記』『女嫌いの平家物語』(以上、ちくま文庫)、『快楽でよみとく古典文学』(小学館)、『ひかりナビで読む竹取物語』(文春文庫)、『本当はひどかった昔の日本』(新潮社)など著書多数。

「2016年 『文庫 昔話はなぜ、お爺さんとお婆さんが主役なのか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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