機巧のイヴ (新潮文庫)

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著者 : 乾緑郎
  • 新潮社 (2017年8月27日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (378ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101207919

作品紹介

天府城に拠り国を支配する強大な幕府、女人にだけ帝位継承が許された天帝家。二つの巨大な勢力の狭間で揺れる都市・天府の片隅には、人知を超えた技術の結晶、美しき女の姿をした〈伊武 〉が存在していた! 天帝家を揺るがす秘密と、伊武誕生の謎。二つの歯車が回り始め、物語は未曾有の結末へと走りだす──。驚異的な想像力で築き上げられたSF伝奇小説の新たな歴史的傑作、ここに開幕!

機巧のイヴ (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

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  • いやいやこれは面白い。時代もの(特に伝奇もの)はほとんど読まないので、アンテナにひっかからなかったのだが、こちらでフォローしている方のレビューにひかれて読むことに。こういう出会いは嬉しいなあ。

    SFとして特段の驚きがあるわけではない(むしろ結構首をかしげたくなるところもある)のだけど、そんなことは気にならないくらい、読ませる読ませる。これは「完全なる首長竜の日」と同様の感想で、でも、こっちがより巧みで華麗な作品世界が構築されていると思った。映像的というより、何と言うか「絵画的」な感じ。残酷であでやか。クールで艶っぽい。一歩間違うと、並のライトノベル的薄っぺらさに陥りそうな題材が、鮮やかな手つきで見事に料理されている。

    冒頭の「機巧のイヴ」の世評が高いようだが、私はこの連作全体の構成が実に巧みであることに感嘆した。後になるにつれてお話しに広がりが出てくるところがいいし、蟋蟀に始まり、また蟋蟀で閉じるところなんか本当にうまい。ジャンルSFではあまりこういうのないんだよね。

    読み出してすぐ、イヴはなぜか壇蜜の姿で脳内劇場が展開。「神代の神器」にしてはちょっと色っぽすぎるけど。

  • これはすごい作品!あえていうなら「時代劇版ブレードランナー」とにかくめちゃめちゃ面白かった!

    五つの連作短編集。それぞれが単独でも楽しめる上に、読み通すとさらなる感慨に浸れる構成。
    最初の作品は小噺のような伝奇のような、つかみとしては見事としか言いようがないお話し。
    その後に続く二作目以降はより連作の様相が強くなっていき、読み応えも俄然増す。
    徐々に明らかになっていく「伊武」の正体。その謎解きの過程がまた見事。
    そしてその「伊武」がとても魅力的で可愛らしい。甚内、春日、そして天帝といった登場人物たちもまた実に魅力的。

    そして大森望さんのあとがきでの絶賛ぶりが熱い!
    初めて読んだ作家さんだったけど、他の作品も読んでみたくなってきた。映画化された『完全なる首長竜の日』の作者さんだったのか。

    最後に印象的だった文章を引用。それぞれ352頁より。
    「人の体を細かく腑分けしても、機巧と同様、その人の心を現すものや感情や記憶を思い起こさせるものなど、一切出てこないのだ。」
    「魂とはどこからやってくるのか。そしてどこに隠れているのか。それがずっと疑問だった。」
    「誰かに気に掛けられたり、愛されているからこそ、それに応えるために、(中略)、人のように振る舞うことができる。その振る舞いの中に命がある。」

  • 将軍が治める「天府」の城下、幕府精錬方手伝を務める釘宮久蔵の元に、一人の侍が訪れる。馴染みの遊女にそっくりの「機巧人形(オートマタ)」を作って欲しいと依頼する侍の前に現れたのは、生身の女性と区別が付かない美しい機巧人形の伊武(いゔ)。久蔵はこの伊武をベースに遊女の機巧人形を作ってみせると言い放ち、その後侍の元に遊女そのものの女が訪れる・・・

    いやーーー、これはやられました。めちゃくちゃ面白いです!何と艶やかな世界観!

    文化文政時代の江戸に酷似した「天府」を舞台に、機巧技術を巡る権謀術数が繰り広げられる短編5本による連作です。連作集のタイトルにもなっている冒頭の作品「機巧のイヴ」が、その後の大きな流れとはあまり関わらない単独の「掴み」の作品であるにも関わらず、完成度が恐ろしく高い!ミステリとしても十分なクオリティを有する傑作です。
    その後、実質的にこの社会を支配する「天府」と、女系継承により伝統的な権威を保持する「天帝家」との確執を背景にする陰謀がストーリーの通底音として立ち現れ、釘宮久蔵と伊武、その他のキャラクターも否応なく時代の流れに巻き込まれていきます。この過程の絶妙な「伝奇時代もの」感と「SF」感のバランスの取り方が、素晴らしいですね。

    正直なところ、SFとしてのツメは甘いと思います。オートマタもの・人工知能ものSFとして見ると突っ込みどころは満載ですし、そういう観点から評価できない、という意見も散見されます。
    それでも鴨がこの作品を評価したいのは、このユニークさ極まる世界観の構築ぶり。現実に存在した江戸時代後期の社会をベースに、「いやそれあり得ないでしょ」と言われる一歩手前ギリギリのレベルで独創的なアイディアを加味し、日本の伝統文化に慣れ親しんだ人にもそれなりに楽しめる良質なフィクションを立ち上げたこの技は、たぶんSF一辺倒の人材には出来ないんでしょうねー。SF大好きで、同時に歌舞伎や文楽や古典落語も大好きな鴨にとって、羨望すら覚えるセンスの良さです。

    これ、ぜひ新作歌舞伎にしてください!
    伊武は中村七之助丈、天帝は尾上菊之助丈、甚内は中村勘九郎丈がいいなー。釘宮久蔵が悩みどころだな、大物役者が良いよね・・・松吉は尾上松緑丈かな・・・春日は若手の真女形が良いかな・・・
    なんて楽しみ方も出来る、知られざる傑作ですよ!

  •  初めて読む作家さん。5つの連作短編集。
    江戸時代風の日本(日本と書いてあったっけ?)に、人間と見分けがつかないほど精巧にできた「伊武」という名前の機巧人形がいた。
    その「伊武」を中心に、機巧職人の久蔵、公儀隠密の甚内らが絡んでストーリーが綴られるのだが、その架空の江戸の世界観に最初からぐっと引き込まれてしまった。機巧人形はそう言われても信じられないほど精巧で(そこは、SF)、読み手にも「伊武」は一人の美しい女性としか…。
    「伊武」は涙も流すし、恋もする…。まるで心があるように。
    なんという話だろう。余韻まで素晴らしい。

  • 文庫化。
    普段、時代小説は殆ど読まないのだが、本書は面白かった。作中に漂う色気のようなものが好きだ。続編もあるらしいので楽しみ。

  • パラレル江戸時代を舞台にしたミステリーファンタジー。アンドロイド誕生にまつわる秘密やスチームパンク風味がたまらなく好みでした。
    表題作の短編から5つの物語を通じて、スーパーテクノロジーの結晶である伊武の誕生の謎と、天帝家に係る隠蔽された秘密が徐々に明らかになっていく展開に引き込まれ、圧倒され、そして最後は胸アツに。

    筋立てが鮮明で、謎解きも納得できて、魅力あふれる物語でした。
    伊武がお百度参りしたり、「箱」に座るヤツがいると激怒したり、人間味とはこういうところにあらわれるのだなと思わせるキャラでほんとに好き。
    対称的に、神器は幕府への復讐を背負わされた冷徹さのみかと思ったけど、暗闇を共にした蟋蟀への感情があるところなど、その単純ではない精神構造に心が動かされてしまい…

    魂がどこから来るのかとか、魂はどこに宿るのかとか、もう一度そんな疑問にぶち当たって、深く考えさせてくれるような話でした。
    続編、楽しみにしています!

  • SF的なサイバネに時代小説のような世界観と、両方とも面白いけど掛け合わせるには合わなそうな物を見事に融合させてしまった傑作連作集。機巧と人間の隔たりとはなにか。人間を人間たらしめてるものとはと考えさせる大きな物語も見事。

  • 現状今年一番
    続編あるかな?

  • つねに脳内に檀蜜がちらついていた

  • メイヂパレス好きとしては、あの場面が白眉です。

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