警官の血 下 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 2009
感想 : 170
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  • Amazon.co.jp ・本 (467ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101223230

感想・レビュー・書評

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  • 913.6 サ (2)

  • 3代にわたる警官の物語の完結編。

    終戦の混乱期に警官になった清二。そして、清二の長男である民雄。下巻は、民雄の物語の途中から、民雄の息子、和也の物語まで。

    最初の清二の物語は、戦後の日本のドキュメンタリーを読むような感じの物語だったけれど、そこに迷宮入りした2つの事件が残された。息子、そして孫と続く時系列の中に、ずっと小骨のように引っかかる2つの事件。

    3人の警察官としての生き様も読みごたえあり。そして、3代に渡ってずっと続く謎が絡んできて、早く続きが読みたい…と思わせる展開。面白かった。


    道警シリーズでも扱っている警察の裏の姿も描かれていて、刑事や警察官は私たちがドラマで見ているような、カッコよくて潔癖な正義だけではないのだということも考えさせられた。

  • 日本の歴史を、情景から読み取ることが出来そうな作品。サスペンスの内容や物語そのものよりも、描写にまず引き込まれる。読み終えると、何十年もを一瞬で体験したかのような気持ちに。

  • 数年前にテレビドラマにもなった3代にわたって警察官になった親子の数奇な人生を綴った対策。佐々木譲らしい警察組織への切り込みはそのままに、北海道でなく東京を部隊に、実際にあった事件を交えつつストーリーが展開する。誰が読んでも怪しいのは一人しかいないので、真犯人を探すというミステリーとしての意外性は物足りないが、全体的には早く終わりまで読みたいと思わせる秀作です。

  • 親子三代にわたる警官の話。とても硬派の、濃いヒューマンドラマで素晴らしかった。戦後の混乱期から現代までの時代の移り変わりも面白い。改めてまた読んでみたいと思える作品。

  • 下巻は安藤民雄の谷中駐在所での活躍と遭難、息子和也の警察署内での密命と顛末を描く。年代は昭和60年から平成12年ごろまでの15年間。昭和23年の男娼の殺人事件、昭和32年の国鉄職員の殺人事件の謎と祖父清二の死に関する謎を和也も追い始める。謎解きについては、ある程度展開が読めてしまうが、警察の正義という問題も絡まり、読み応え度は損なわれていない。
    捜査第4課の加賀谷警部は魅力的。テレビドラマでは佐藤浩一が演じたらしいが、適役だと思う。
    下巻も一気読みした。海外小説の名作「警察署長」も面白かったが、やはり国内小説であるこちらのほう取っ付きやすい。

  • 三代にわたったなかなかスケールの大きい話だった。

  • 上巻に引き続き、すいすいと読めてしまった。加賀谷とのやり取りがスピード感があってよい。(ドラマでは佐藤浩市だった。いい味だしてた。)結局同じことするんだなあ。
    この本はミステリーというより人間ドラマというかんじ。。。

  • 上下巻をまとめた感想にすると、昭和から平成までの時代時代につむがれてきた事件とその時代をいきた人間たちの思いや行動に含まれる心の動きをうまく織り交ぜながら、警察官という職についた3人の男達の生き様をうまく描き出した良書だと感じました。上巻よりも下巻をテンポよく読めました。

    後に日本赤軍の分子となる男達の一派を自らのスパイ行為での摘発に成功した民雄は、しかしながら警察官となって最初の任務を通じて人間不信となり、それが家族にも暴力という形で波及したことで清二が築いたような家庭とは違うものが身近にあることに苦しみ続けます。ようやく手にした緊張感がありながらも安寧とした任務の中でも過去の極左活動への潜伏捜査は最終的に彼を死に至らしめるに十分なきっかけを生みました。

    ここまで読むと一見何もつながりがないように見える清二と民雄の死を、三代目の和也によってすべて明らかにされることになります。和也が明らかにした民雄の死の遠因と、祖父・清二の死が直接的原因は昔から安城家に近かったある一人の人物によって成されていたことが明らかにされます。

    その理由は、三世代が紡いできた物語の点と点を線でつなぐには、物語で直接語られない部分であったのが意外でしたが、そのことが分かる文章を読んだ時のビリビリとした衝撃は忘れられません。帯に書かれていた「三代目・和也ががつむぐ新しい物語」という部分が、本を購入した時から気になっていたのですが、こういう次の世代に向けた終わり方というのも良かったと思います。

    ちょうど1年前にテレビ朝日でドラマ化された本作(http://www.tv-asahi.co.jp/keikan/)ですが、わずか4時間で終わってしまうよりかは文章を頭の中で消化し、いろいろと勘繰りながら読み進めていくこのハラハラ感を数日に渡って体験できた方が良いと思いました。要はテレビで見なくてよかったということになる訳ですが…。

    社会の秩序を保ち正義の範たるべき警察官自身が、その任務を果たし、安全と安心を守るために、その使命を曲げなくてはいけない矛盾に直面し、苦悩することがあること。三世代に渡って安城家がその血をもって体験した苦悩そのものが、警察という職務そのものに、書籍の題名通り血のようにベットリ張りついて落とせない者なのかもしれない。私の祖父が安城清二のように復員後警察官となったことを思い出すと、祖父が亡くなる前に警察官が背負うこの苦悩について聞いてみたい、と叶いもしない疑問を抱きながら読み終えた本を閉じたのでした。

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著者プロフィール

1950年北海道生まれ。79年「鉄騎兵、跳んだ」でオール讀物新人賞を受賞しデビュー。90年『エトロフ発緊急電』で山本周五郎賞、日本推理作家協会賞を、2002年『武揚伝』で新田次郎文学賞、10年『廃墟に乞う』で直木賞、16年に日本ミステリー文学大賞を受賞。他に『抵抗都市』『帝国の弔砲』など著書多数。

「2022年 『闇の聖域』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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