- Amazon.co.jp ・本 (479ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101240282
作品紹介・あらすじ
「そう-ここは黒祠なのですよ」近代国家が存在を許さなかった"邪教"が伝わる、夜叉島。式部剛は失踪した作家・葛木志保の姿を追い求め、その地に足を踏み入れた。だが余所者を忌み嫌う住民は口を閉ざし、調査を妨害するのだった。惨事の名残を留める廃屋。神域で磔にされていた女。島は、死の匂いに満ちていた。闇を統べるのは何者なのか?式部が最後に辿り着いた真実とは。
感想・レビュー・書評
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いや、でもおもしろかった…。この人は何を書いてもおもしろいな…
。因習村的な感じなんだけど真相が(え、うっそやん…!?)となり、ネタバレ平気勢な私としてもこれはネタバレなしで読んでほしいと思ってしまった。
伏線というか散らばらせた点がすべて線を結んでいくのがすっごい気持ち良すぎたな…。
広げた風呂敷をきちーんと畳んで箪笥のなかにしまってから「はい、おしまい」にするのすごすぎ…詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
小野不由美さんらしいホラーミステリー。日常から隔離されたような離島に友人を探しに来た主人公。そこは異様な風習が残る島だった。流石なのはその風土や風習の掘り下げを疎かにしていない点。十二国記のようなファンタジーや数々の和風ホラーを手掛けてきた小野さんならば造作もないことだと思われる。加えてミステリの骨格も十分に出来ていて半ばで展開される論理的考察などは読みごたえ抜群。ただ、彼女だからラストはそう簡単に終わるはずもなく・・・予想されたオチだったが中々に楽しめた。人物相関が分かりにくかったのが難点かな。
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なんてスッキリするミステリなのでしょう。
正直ミステリは自分の納得できる範疇を超えてしまうとその作品の読了後が後味の悪いものとなってしまうのですが、この作品は十二国記の世界を創り出した小野さんらしく、設定がしっかりとしています。
また島で何が起きていたのかなどの謎が良い塩梅で出されてくるため、テンポの良さを感じました。そのためこの本を友達や家族にお薦めしたいくらいの熱い読了感を感じることができると思います!
少しだけここはどういうことかな?という部分もありましたが、そんなことはどうでも良いと思えるほど、猟奇的な描写にドキドキしたり、これからどうなるんだ!とソワソワした気持ちで読むことが出来ました。
そして十二国記の時も思いましたが、やはり世界観と情況描写の力が半端ないと思います。
現在我が家には小野さんの書いた「残穢」がありますが、このようなゾゾゾッとする描写を描ける人が書いたホラーは段違いで怖いと思うので、読むのを躊躇ってしまいます…
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日本であるのに現世から隔離されてしまっている孤島で起こる謎が謎を呼ぶ猟奇殺人事件、ありえないと思いながらも「あるかもしれない」孤島に邪教、閉鎖的な島民しかし極端に偏りすぎず(ホラー色が濃すぎず)しっかりしたミステリー要素が満載、自分好みの展開にドンドン引き込まれ著者が仕掛けるトラップに自分がハマっていく、途中中弛み感はあるものの、あえて自分の深読みが入りすぎて読後苦笑いする、後半のスピード感、謎解き伏線の回収読み応えがあった。著者の作品多くに共通する殺人という重いストーリーの中にも安心感があり、大変楽しむ事が出来た!
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クローズドサークル、そして個人的には大好物の民俗学的要素を盛り込んだ、ある意味、小野不由美のお得意の作品だと思う。
探偵役がなんでこんなに島の因習に詳しいのかとか、いきなり解決編でバケモノが鮮やかな謎解きをしたり、とか素直に頷けないところもある。特に最後は駆け足感はいなめない。せっかく大風呂敷を広げたのだから、もう少し、しつこくやれば、大傑作になったような気もする。惜しい。 -
失踪した仕事仲間の女性作家を探して
たどりついたのは地図にも乗っていないような小さな島
そこは古くから伝わる邪教を信じる島だった。
調査への妨害。惨事のあと
じわじわと進む推理と謎
いつの間にか引き込まれてしまう、さすがの小野不由美作品です -
主人公、式部は失踪した作家、葛木の消息を追って夜叉島へ足を踏み入れる。その島は国家神道に統合されず異端の神『黒祠』とされる邪教を信仰する島だった。
島民は余所者を嫌い口を閉ざし、有力者の神領家の圧力もあり葛木と連れの永崎の捜索は難航する。
惨劇の跡の残る廃屋、惨殺された顔のない女、罪人を裁く神とそれを宥める役職の守護。
離島、信仰、惨劇、私の大好きな要素が盛り沢山! -
黒祠。この言葉を初めて知った。
国家の社格制度に統合されず、迷信として弾圧された神社。邪教。
小さな孤島では異形の神が信じられている。集落中に立てられたたくさんの風車、吊り下げられた風鈴が、からからと乾いた不穏な音をたてる。
主人公は人探しのため、単身この島にやってきた。
余所者を嫌う島民は決して彼に本当の事を言わない。人々から奇異の目で見られ、情報収集もままならない。
いきなり人を驚かせるとか恐怖に陥れるといった展開は少ないけれど、始終ねっとりとした不穏な空気に包まれている。四面楚歌で、それでも粘り強く島に留まって真相を追求しようとする主人公、強い。
屍鬼のような、加速度的な展開はないけれど、じわじわきます。
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小野不由美はぼくにとっては敬して遠ざけたい、ではなく恐くて遠ざけたい作家なのだが、恐いもの見たさでまたこうして手に取ってしまった。意外なことにこれはホラー要素もあるがかなり本格的ミステリだった。そして本格ミステリを書かせても一流なのだなということがよくわかった。夫君よりも数段上だと思う。九州の孤島に君臨する旧家と祀られる神に侵すべからざる因習。繰り返される陰惨な殺人事件。まったく横溝正史かよという世界だが、それがうまい。雰囲気の作り方はまさに小野不由美ワールドだ。なのでもちろん読んでいてじわじわと恐い。ミステリとしてのトリックは平凡ではあるが、犯人像とその暴かれ方には度肝を抜かれる。不自然なところや疑問点もいくつかあるものの、全体の空気にどっぷり浸かってぐいぐい読ませる筆力はさすがだ。
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十二国記からの筆者つながりで買ったくちなので驚いた。こんなにも本格派ホラーだとは。というよりこちらが本職だったのですね。大変失礼いたしました。
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余所者を嫌う島で一緒に仕事をしていた人を捜しに行く。そこで 信仰の厚い島民の対応に苦心しながらその島での宗教を目の当たりにする。そこで幼少期からすごした葛木志保の生活が見えてきて…。相続や怨みなどで引き起こされた殺人。加害者にも殺す訳があり、どう裁くのか?考えさせられる内容でもあり、小野不由美の世界に引き込まれてしまいました
2016.03.28読了 -
再読。最初に読んだのは祥伝社文庫版だったかな? 単行本ではなかった筈。
基本的にはホラーミステリだが、終盤で綺麗に謎が解かれるので、その点でホラー要素は薄い。
最初に読んだ時の印象を余り覚えていないのであまりはっきりしたことを言えないのだが、主人公のイメージが随分と変わっていることに気付いた。 -
式部さんのもどかしいと感じるくらいの推理思考を、ずーーっと読めるのが楽しい。
解決編はあっさり気味。動機がなあー。
ラストの、小野不由美いつものテーマによるモヤモヤに「とりあえず」の光が淡く差した感じが、なんとなく好きです。 -
とりあえず、怖かった……。生々しい表現が苦手は人は、やっぱり読まない方がよさそうです。面白いんですけどね><
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最初から最後まで続く緊迫感 引き寄せられるような謎の連続 フェアでありながら差し出された事件の真相にはしてやられたと思った 終りにはほんの少しの救いも残されるが、後味の悪さというよりもやるせなさといったようなものが感じられて何とも言い難い読後の余韻がある やはり小野氏のホラー・ミステリーは私にとって格別だ
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怖かった・・・
人の念が黒く凝り固まり、それが実生活にひたひたと影響を与えるような。そんな怖さ。
夜、一人寝ていると闇の中にそうした凝りが姿を現しそうで、夢の中で悲鳴を上げて気絶する羽目にまでなった。
ストーリーとしては、初めて自分の中で予想が的中した作品でもあった。それだけじっくり向き合うことができる骨太な内容だったと思う。
最後、ミイラ取りがミイラになるというか、この島の風習に大きな反感と批判を持っていた主人公が、その風習に呑まれる―ある種の諦めを持つに至るところが印象的。
それにしても・・・あー・・・怖かった・・・ -
ミステリの修行。
探偵(のような)男が女を捜しにいわくありげな孤島に赴く、というのは日本のミステリの定石な気がしますが、設定は非常に緻密、しかも宗教ネタというのは好物。
展開としては、松本清張とかみたいな精緻さはなくて、あれ?なんかおかしいぞ?とぼんやり気になっていたことが後々重要な意味を持ってくるところがあって、ミステリとしてはむしろ初心者向けなのかもしれない。
ただ小野主上がさすがすごい、と思うのは、人の勘違いをストーリーの転轍にする仕方と世界観の作り方。
前者については、この話の鍵になる殺された女は誰かということについて。頭に思い浮かべている「あのひと」について、人はそれが誰かが食い違っているのに気づかず話していても気に留めないばかりか、人殺しまでしてしまう。話の中核を最後まで解らないまま転がしていくのに翻弄された。
後者については、宗教ってのが怖いんだってことではなくて、宗教がもたらすもの(判断停止、絶対的裁定者とか)が作品世界に織り込まれていること。この島の宗教が客観的事実のように見せかけられているけど、本当はそれは間主観的な了解でしかない。なのにそれは規範にすらなり、人々の行動や思考をコントロールする。
十二国記と通底するものを考えれば、それは「聖なる天蓋」である規範と秩序の破壊と回復、あと「罪と罰」。
罪と罰については、ミステリって形をとれば余計に鮮烈ですね。裁かれるべきは誰なのか。裁くことができるのは誰なのか。裁くとは、償うとは何か。「落照の獄」とか「華胥」にみられるもの。
規範や秩序からの逸脱とか、その元での人間の理性の葛藤、みたいなのは主上の実存的テーマなのかしら。 -
『国家神道の中にあって黒祠とは統合されなかった神社を言う』の言葉に引かれ購入。呪われ打ち捨てられた漁村と禁忌の島の違いこそあれラヴクラフトの『インスマウスの影』を思わす導入部。新たなるクトゥルフ神話の誕生か!と思いきや一転豪雨により孤立した島の神社境内に顔を潰された逆さ吊りの女性の死体が。うむむ、これは獄門島か(絶句!)この手の路線も嫌いじゃないよと読むうちに、最初のおどろおどろしい雰囲気は霧散して、探偵役の主人公と島の関係者との会話が延々と続く本格推理へと再転。黒祠の教義についてもっと触れてほしかった。
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屍鬼同様、民俗学的な雰囲気と存在するか否かわからないモチーフが絡む謎解きがツボで、最後まで予測できず楽しめた作品でした。