祖国とは国語 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (236ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101248080

感想・レビュー・書評

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  •  国家の品格は有名ですよね、こちらも前半の国語教育絶対論はとってもうなづける内容だった。「国語の基礎は、文法ではなく漢字である。漢字力が低いと、読書に難渋することになる。自然に本から遠のくことになる」読書は教養を獲得するための唯一の手段である。それはIT時代の現在でも変らない。

     幼少からの英語教育で原文を難なく読みこなせるのであれば問題はないが、それは無理。ならば教養を得るためには、日本語で書かれた本をたくさん読むしかない。本を読むには我慢が必要である、逆をいうと我慢を幼少より覚える手段としての読書というのもありなのかも。

  • 「国家の品格」、「若き数学者のアメリカ」などの著者。

    本著では、「祖国とは国語」をテーマに、小学生の段階での国語教育絶対論を熱く語っている。
    これを数学者であり、英語も達者な著者が主張するだけに説得力がある。
    自分が言っても全く無いけど・・・。

    他にはユーモアたっぷりのエッセイを集めた「いじわるにも程がある」、著者の生地である満州を訪ねた「満州再訪記」を収録。

    ほんとにこの人の文章は読みやすく、全く新しい視点で読むことが出来る。おすすめです。

  • 国語と日本人のアイデンティティーを直接結びつけて論じている点に感動しました。

    小学生の国語教育に、もっともっと力を注ぐべきという考えには、深く納得しました。

  • 20100509
    「若き数学者のアメリカ」のフレッシュさは見る影もないけど、数学者が訴える国語教育の重要性というのが面白い。後半のエッセイ集は正直微妙。

  • 素晴らしい。この人は本当に真っ当な人だ。わたしは真っ当な人間が一番正しいと思うんだ。

  • 情報科教員MTのBlog(『祖国とは国語』を読了!!)
    https://willpwr.blog.jp/archives/50570322.html

  •  日本の未来は、国語にかかっている!数学者が国語についてアツく語る「国語教育絶対論」。

     国語はすべての基本。読み書きだけでなく、何かを考えたり、感じたことを表現するときにも必要です。国語をいかに使いこなせるかによってその人の精神世界の豊かさ、深さがが変わってくるわけです。難しい漢字が読めるとかそういうことじゃなく、表現手段としての国語をいかに知っているかということ。

     例えば何かすごく美味しいものを食べたとき、この感動をただ「美味しかった」としか表現できない。何かに強く心を動かされたとき、「すごかった」としか表現できない。そんな自分をもどかしく思うと同時に、実際「美味しい」「すごい」としか感じられてないんじゃないかとも思う。

     言葉にできないものは、存在しないも同じ・・・とまで言ってしまうと極端だけど、言葉を知っているから感じられるもの、気付くことはたくさんあると思う。

     英語だったらpinkとしか言いようのない色を、日本語だったら桃色、桜色、薄紅色・・・微妙な違いによって呼び分けることができる。春雨、小糠雨、地雨・・・同じ雨でも季節や降りかたによって呼び名が違う。違うものと認識するからこそ、それぞれのもつ意味も、そのもの対して抱く感情も違ってくるのです。

     物事の微妙な違いを大切にし、そこに美しさを見出してきた日本人。わかりやすいものより、よく目を凝らさないと気付かない控えめな変化を良しとしてきた日本人。こういう細やかさ、そしてそれを伝えるための多彩な表現を大事にしたいものです。


     それにしてもこの著者、いかにも学者さん!って感じのユーモラスな方です。まず第一に写真がいい味出してます。
     この文庫には「国語教育絶対論」以外にもいくつかエッセイが収録されていて、どれも面白かった。知的でありながらもほのぼのとした藤原家の日常を描いたエッセイには思わずニヤリとし、老いた母親と共に生まれ故郷の満州を訪ねる旅行記には心打たれました。1冊で2度3度オイシイ。

  • (2006.04.05読了)(2006.03.24購入)
    数学の先生なのに、国語論である。国語がきっちりできていなければ、何もできないと考えている。数学をやるにしても、特に文章題になると、国語力が無ければ解きようがないということです。なかには、国語力は無いけど、人に問題の意味を説明してもらえば、どんな難しい問題でも解いてしまうという人も無いわけではないけれど、これでは、いつも説明員が必要ということで、実用的ではない。
    「論」としては、「国家の品格」と重なる部分も多いので、「国家の品格」を読んだ人は読む必要が無いかもしれない。ただ、「満州再訪記」があるので、新田次郎・藤原てい夫婦と藤原正彦に興味のある方には、欠かせない部分もあります。
    藤原さんの妹さんの書いた本もあります。これを書きながら思い出したので、ついでにメモしておきます。まだ購入していないし、読んでもいません。
    「父への恋文-新田次郎の娘に生まれて」藤原咲子(著)、山と溪谷社
    「母への詫び状-新田次郎、藤原ていの娘に生まれて」藤原咲子(著)、山と渓谷社

    ●読書(17頁)
    読書は過去も現在もこれからも、深い知識、なかんずく教養を獲得するためのほとんど唯一の手段である。読書は教養の土台だが、教養は大局観の土台である。文学、芸術、歴史、思想、科学といった、実用に役立たぬ教養なくして、健全な大局観を持つのは至難である。
    ●論理(20頁)
    現実世界の「論理」とは、普遍性のない前提から出発し、灰色の道をたどる、というきわめて頼りないものである。そこでは思考の正当性より説得力のある表現が重要である。すなわち、「論理」を育てるには、数学より筋道を立てて表現する技術の修得が大切ということになる。
    ●情緒(22頁)
    他人の悲しみを悲しむ。他人の不幸に対する感受性。懐かしさ。これらの情緒を養うのは、文学である。
    ●祖国とは国語(29頁)
    祖国とは血ではない。どの民族も混じり合っていて、純粋な血などというものは存在しない。祖国とは国土でもない。祖国とは国語である。ユダヤ民族は、ヘブライ語を失わなかったから、再び建国することができた。
    ●国語力低下(34頁)
    国語力低下は、知的活動能力の低下、論理的思考力の低下、情緒の低下、祖国愛の低下、を同時に引き起こしている。この四つの低下は確実に国を滅ぼす。
    ●英語力(48頁)
    日本人の英語力はさほど低くない。TOEFLにおいてアジア21カ国中18位、という結果がよく持ち出されるが、ベストスリーのフィリピン、インド、スリランカはすべて米英の旧植民地であり英語を公用語としている。その上、一位フィリピン、三位スリランカ、五位ネパール、六位インドネシアの合計受験者数が約300名に比べ、日本は一国で10万を超えている。同列に比較できるデータではない。

    著者 藤原 正彦
    1943年 旧満州新京生まれ
    故・新田次郎と藤原ていの次男
    東京大学理学部数学科大学院修士課程修了
    1978年 「若き数学者のアメリカ」で日本エッセイスト・クラブ賞受賞
    お茶の水女子大学理学部教授

    ☆藤原正彦さんの本(既読)
    「若き数学者のアメリカ」新潮社、1977.11.20
    「数学者の言葉では」新潮社、1981.05.20
    「父の旅 私の旅」新潮社、1987.07.05
    「遥かなるケンブリッジ」新潮社、1991.10.15
    「父の威厳」講談社、1994.06.27
    「心は孤独な数学者」藤原正彦著、新潮社、1997.10.30
    「天才の栄光と挫折」NHK人間講座、2001.08.01
    「世にも美しい数学入門」小川洋子共著、ちくまプリマー新書、2005.04.10
    「国家の品格」藤原正彦著、新潮新書、2005.11.20

  • 数学者藤原氏のぶっちゃけエッセイ。
    ひとりよがりの考え方を、堂々とひとりよがりのものとして書いているところが割りと好き。

    日本語を大事に、というのは、結局、言語を大事に、という意味だと思う。
    著者が英語に対して色々言うのは、日本の英語教育に対していっているんじゃないのかな?
    日本語でも英語でも、他の外国語でも、語彙は多ければ多いほど良いと思う。

  • あの「国家の品格」の方の論文「国語教育絶対論」・エッセイ「いじわるにも程がある」・旅行記(+歴史)「満州再訪記」と何だか何でもありな1冊。
    しかもこの3作は全く脈略がないわけでなく、順番に読んでいくと後の作品がより面白いという美味しい内容。
    特に「国語~」の少しお硬い文章のあとに「いじわるにも~」の爆笑文章はかなり楽しかったです。
    「国語~」では教育には「国語」のとりわけ「読む」ことにより「情緒」をはぐくむことが必要、とあります。
    納得ですね。外国語も「習うより慣れろ」というのは相手の事を理解しようとするというこの「情緒」から入っていくからでしょう。
    そういう意味では国語が減って英語が増えるって矛盾してる気もします。
    国語も満足に出来ないうちは英語も何も、ですものね。

    そして昔の歌や小説などには「情緒」が溢れている(文語は口語に比べ表現が豊かでかつストレートな表現が可能、ともあります)のでもっと古典などを「読む」ことが大切ではないか、とあります。
    これと妙にリンクしていたのが「いじわるにも~」の
    「私が車で戦前の歌や文部省唱歌のCDを聴こうとすると家族が皆で抗議する。嘆かわしい。」
    作者様の理想とはかけ離れている皮肉な現実(苦笑)がコミカルに伝わってきて大受けしました。

    ちなみにそもそも藤原先生は「数学者」であるというのが面白いですよね。
    一見情緒とは無縁に思える数学の専門家の視点から見る国語の重要性。
    意外と数学(算数)にも「情緒」(らしきもの)が見え隠れしているのにもビックリ。
    円周率が3とか、台形の面積出しが難しいなんて、数学が大の苦手だった私にも何が難しいのか解らないものなのです。
    むしろ↑で出る矛盾を先生はどう説明するか困るんでないでしょうか。

    ただし1箇所だけ大きく反発したのは
    「懇切丁寧なうえわき道にも踏み込む分厚い教科書があってもいい」の一節。
    分厚いのはダメです。重たいし読みにくいのでちゃんと持って帰らんから。
    薄いのに分冊して下さい(笑)

    最後の「満州再訪記」は今中国がどうしてあんなにも日本に敵対心を抱いているかが読み取れると思います。
    しかもそんな時代があったのは先生の生まれた頃であり、手の届きそうな昔なことにも驚かされますよね。

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著者プロフィール

お茶の水女子大学名誉教授

「2020年 『本屋を守れ 読書とは国力』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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