呪いの時代 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
4.17
  • (31)
  • (38)
  • (8)
  • (3)
  • (1)
本棚登録 : 336
感想 : 33
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (339ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101260617

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • いつものことだけど、また、たくさんのことをならったような気がする。
    相手の知性に対する敬意。説明しようとしないのは不遜なんだな。わかって欲しければ汗水たらして、情理を尽くして語りましょう。わかる人はわかってくれるだろう。
    個人的には日本の太平洋戦争が戊辰戦争の犠牲者たちの呪いによるものだったという説にじんわりと納得。呪いはバカにできません。

    Mahalo

  • 現代は呪いの時代。
    悪口、評論、貶める。代替の案は提示せずただ否定する。
    呪いをやめるには、祝福しかない。
    まず自分を愛そう、そこから始まる、だそうだ。

    原発が荒ぶる神という考え方が面白かった。
    (強いエネルギーをもつ、近づけない存在)
    汚いもののように扱うのではなく、成仏してくださいという気持ちで接すると作業する人の心持ちもかわってくるだろうということだ。

  • 単行本の方を読んだのが
    もう 8年も前のことになるのだ…

    もう一度読み直そうと思っていた一冊
    こうして「文庫」が出てきてくれるのは
    ありがたい

    そうそう そうだった
    へぇーっ こんなことも綴られていたんだ
    おっ ここはますますそのとおりに

    「現代」を考える時の
    一つの指標的読み方を
    させてもらえる
    そんな愉しみ の 一冊でした

  • 38 やはり、レヴィナスの話が非常に面白かった。ホロコースト以後に信仰を捨てたユダヤ人たちに対して「あなたが信じていたのは稚拙な神なのか。何か悪いことをしたらそれに対して処罰を下し、良いことをしたらほめてくれるような神なのか。真に完全な神が作り給うし人間であれば、人間は人間だけで生きていけるのではないか。人間が自立して社会を構築できるように、神は人間を作ったのではないか」という呼びかけに非常に感動した。この話は、非常に様々な話に通づるものであると目からうろこだった。

  • テーマでまとまってるので、読みやすい。
    そして、東日本大地震後の世界について書いてあるところがいい。

  • 本屋でジャケ買い。直感がまるで物を言うようにそれが必要なのだ、というのを度々感じるがこの本も全くその通り。買って正解。
    前半を読み進めながら、何度も耳が痛いなーと思うところもあったが、辛抱強く読み続けているうちにこの人の言いたいことが段々わかってきて、最後には全体的に、なるぼどそうですねーと納得させられることになる。
    とくに最終章にかけては、現代日本の科学立国化と日本の太古からのアミニズムから来る霊性の対比の論説は、ながく感じていたけど、自分自身ではうまく言い表せられない事柄を、この著者はうまく書いておられる。
    何かを変えなくてはならない状況にあり、それを実際に変えるためには、まずやってきた痛みやつらさを感じて、それを受け止ることが必要となる。そのために何か必要であり、それは何かを信じる力だという。そこで著者は時代を遡のぼり太平洋戦争下の日本人は敗戦後にそれまであった社会構造、信仰、信条などが一辺にガタガタと崩れ去り、そのとき日本人の多くが「何も信じない」ことを信じる、という信仰を選んだのだろうといっている。このことが第二次世界大戦後に科学立国の日本、経済力の日本という神話へむかって何かに駆り立てられるように突き進んで行ったと語っている。そしてそのことは東日本大震災後の原発事故における問題にもその影響が及んでいるのだと話を進めている。確かにあれだけの被害を被ったにもかかわらず日本総体として、原子力というパワーを手放せない理由は、意識している部分以上に無意識下での影響からきているのかもしれない。
    時代は点ではなくて線でつながっており、要は今必要なのは日本人が共有する全時代的に大事にしてきたことは何かというとことを見直すこと、そのバランス感覚の再認識だということだと思う。

    にしても理屈っぽいと思う。女性にはうとまれそうな本だ

  • 呪いは破壊することを目指す。
    破壊することが創り出すより簡単だから優先的に選択される。

    新しいものを創造するというのは個人的であり具体的なことです。その者は匿名性にも忘却にも逃れられない。自分が作り出したものがそこにあって自分がどの程度の人間であるかをまるごとしめしてしまう、それが創造の怖さだ。

    自分がどれほど無知で非力か知ってからこそその無限の可能性を開花させることができる。君には無限の可能性があるという、言明と、君には有限の資源しか与えられていないという、言明は同時に告げられなければならない。

    この呪いの時代を生き延びるにはーーー
    それは生身の、生活のうちに捕らえられたあまりぱっとしない正味の自分をこそ、真の主体として続けること。このようなものでしかない自分を受け入れて、愛すること。

    p81〜から濃い

    我が国(政治家)に欠けているのは、自説の反対者と生産的な対話をなす能力。これこそが日本の政治的危機の核心をなしている。

    p154 ペルソナーー
    全ての他者を受け容れるとはただの我慢。そんな忍耐は長くは続かない。それは共生で、他者を構成する複数の人格特性のうちにいくつか私と同じものを見出し、この他者は部分的には私自身であると認めること。
    それは感情移入ではなくもっと断片的なこと。
    自分と同じような推論の仕方、感性的反応、生理的過程を切り出していって、それを共有すること。その共有部分は、自分自身を細かく割ってゆくほど増えてゆく。

    人は、どんなにわかりにくいメッセージであっめも、そこに自分に対する敬意が含まれているなら聴き取り、理解しようと努める。
    だからもし難しいメッセージを誰かに届けようと願うなら、深い敬意を込めてそれを発信しなさい。

  • 戦後日本の呪い的諸状況を書き表す。
    「自分探し」という呪い。
    教育の産んだ「受験生マインド」。

    ノイズ、兆しを察知しようとすることを忘れた日本人(現代人)。

著者プロフィール

1950年東京生まれ。東京大学文学部仏文科卒業。神戸女学院大学を2011年3月に退官、同大学名誉教授。専門はフランス現代思想、武道論、教育論、映画論など。著書に、『街場の教育論』『増補版 街場の中国論』『街場の文体論』『街場の戦争論』『日本習合論』(以上、ミシマ社)、『私家版・ユダヤ文化論』『日本辺境論』など多数。現在、神戸市で武道と哲学のための学塾「凱風館」を主宰している。

「2023年 『日本宗教のクセ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

内田樹の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
内田 樹
村上 春樹
ジャレド・ダイア...
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×