呪いの時代 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 229
レビュー : 28
  • Amazon.co.jp ・本 (339ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101260617

作品紹介・あらすじ

「私には言いたいこと、言わねばならぬことがある」――哲学者レヴィナスの言葉を反芻するように、内田樹は「呪詛の時代」と真正面から向き合い、生き抜く叡智を語り続ける。アイデンティティーの崩壊、政治の危機、対米戦略、ネット社会の病理、そして未曾有の震災・・・・・・。注目の思想家・武道家が、身体に即して問い、他者への祝福を鍵に現代を論じる、今を生きる人びとへの贈り物。

感想・レビュー・書評

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  • いつものことだけど、また、たくさんのことをならったような気がする。
    相手の知性に対する敬意。説明しようとしないのは不遜なんだな。わかって欲しければ汗水たらして、情理を尽くして語りましょう。わかる人はわかってくれるだろう。
    個人的には日本の太平洋戦争が戊辰戦争の犠牲者たちの呪いによるものだったという説にじんわりと納得。呪いはバカにできません。

    Mahalo

  •  三年前に刊行された本が文庫化されたので手に取った。内容は先生が出演なさっている『辺境ラジオ』でも語っておられるものと重複している内容が多々あり、既視感はいつにもまして高かった。

     けれども、はたと膝を打つ考察もあります。たとえば、「あらゆる呪いは記号的」すなわち「抽象的で、一般的で、反復的」だとした上で『源氏物語』の六条御息所の例を引き、葵の上に対する嫉妬心を自分の固有名において引き受けることを拒絶したために、嫉妬が記号化し葵の上を取り殺す結果となったことを指摘しています。この指摘に目から鱗が落ちるのはもちろんですが、日本文化という文脈に限定されはしますが、普遍的な形で「呪詛」の構造を物語にビルトインした紫式部の並外れた慧眼には感服せざるを得ません。いまさらか。

     他にも興味深い指摘はあります。「努力することへのインセンティヴを傷つけるというのが社会的差別のもっとも邪悪かつ効果的な部分なのです」という指摘です。前述の『六条セオリー』とも関係しますが、昨今のヘイトスピーチ的言説がはらむ呪詛的な性格をうまくいい表してるのではないかと思います。

     というのも、対象物への呪詛は、それを見聞して溜飲を下げている人々に対しても、「既得権益を持ってる連中がその権益を手放さない限り、努力しても無駄だ」と思わせ、社会への積極的コミットメントを損なわせようとする力を持つからです。「人を呪わば穴ふたつ」と申しますが、最近は「呪うひと」「呪われる対象」の他にも「呪いで溜飲を下げるひと」さえもが呪詛の対象になるようです。恐ろしい世界になったもんです。

     誰をも賦活させない言説を呪いとするならば、匿名の掲示板に書き込まれる多くの文言が、呪いとして機能している世界に我々は生きているということを、まざまざと実感せざるを得ません。

  • 自分を愛さなきゃ人も愛せない。で、自分を愛するとはどういうことか?自己評価よりも低い評価を下した他者を恨むのではなく、全能感の幻覚に踊らされるのではなく、できない自分を受け入れること。「ありのーままのー」というのは、ありのままのできない自分、大したことない自分も含まれる。

    たとえバッシングを食らったとしても、教師は「君たちには無限の可能性がある」と「身の程を知れ」を同時に言わなければならない。

    婚活や草食系男子、適職がどこかにあるかもしれない幻想など興味ある話題も。
    映画「ハートブレークキッド」「アパートの鍵貸します」

  • 単行本の方を読んだのが
    もう 8年も前のことになるのだ…

    もう一度読み直そうと思っていた一冊
    こうして「文庫」が出てきてくれるのは
    ありがたい

    そうそう そうだった
    へぇーっ こんなことも綴られていたんだ
    おっ ここはますますそのとおりに

    「現代」を考える時の
    一つの指標的読み方を
    させてもらえる
    そんな愉しみ の 一冊でした

  • 強烈なタイトルをネタに注目をあつめ、言葉を巧みにして読者に持論を刷り込む。
    一見、口上はキレイで倫理的に見えるから、気を配って読まなくてはいけない。
    根拠に乏しく極論も目立つ。

    なんのことはない、この人こそ、世の中を呪っている。

  • 38 やはり、レヴィナスの話が非常に面白かった。ホロコースト以後に信仰を捨てたユダヤ人たちに対して「あなたが信じていたのは稚拙な神なのか。何か悪いことをしたらそれに対して処罰を下し、良いことをしたらほめてくれるような神なのか。真に完全な神が作り給うし人間であれば、人間は人間だけで生きていけるのではないか。人間が自立して社会を構築できるように、神は人間を作ったのではないか」という呼びかけに非常に感動した。この話は、非常に様々な話に通づるものであると目からうろこだった。

  • テーマでまとまってるので、読みやすい。
    そして、東日本大地震後の世界について書いてあるところがいい。

  • ばらばらな話をまとめた感じ
    ところどころ面白いけれど。

  • なんというか、各論では違和感あるけど言いたいことはわかる、という相変わらずの感想なんだけど。
    ネットで呪詛を見ない日はないという意味で、今読んでも面白いのでは

    人を呪わば穴二つ、とはよく言うけど、ニーチェの名言を暗記して喜ぶ中学生みたいに、この警句を扱ってはいけないという信念は、頷くところがある。

  • 呪いは生身の人間が起こすもの。
    時事問題を筆者の目線で説いていくのが、とても新鮮で面白かった。
    神社仏閣というもの、神というものが与える何かしらの力が自分の中で、ふんわりしていたのだが、この本を読んで少しスッキリした。
    いつだって魔物は生身の人間なのだろう。

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著者プロフィール

内田樹(うちだ・たつる)
1950年生まれ。東京大学文学部仏文科卒業。東京都立大学大学院博士課程中退。凱風館館長。神戸女学院大学文学部名誉教授。専門はフランス現代思想、映画論、武道論。著書に『ためらいの倫理学』(角川文庫)、『「おじさん」的思考』『街場の憂国論』(共に晶文社)、『先生はえらい』(ちくまプリマー新書)、『街場の戦争論』(ミシマ社)、『困難な成熟』(夜間飛行)、『困難な結婚』(アルテスパブリッシング)、『そのうちなんとかなるだろう』(マガジンハウス)、『生きづらさについて考える』(毎日新聞出版)、編著に『転換期を生きるきみたちへ』『街場の平成論』(共に晶文社)など多数。『私家版・ユダヤ文化論』(文春新書)で第6回小林秀雄賞、『日本辺境論』(新潮新書)で新書大賞2010受賞。第3回伊丹十三賞受賞。

「2020年 『しょぼい生活革命』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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