呪いの時代 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 257
レビュー : 30
  • Amazon.co.jp ・本 (339ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101260617

作品紹介・あらすじ

「私には言いたいこと、言わねばならぬことがある」――哲学者レヴィナスの言葉を反芻するように、内田樹は「呪詛の時代」と真正面から向き合い、生き抜く叡智を語り続ける。アイデンティティーの崩壊、政治の危機、対米戦略、ネット社会の病理、そして未曾有の震災・・・・・・。注目の思想家・武道家が、身体に即して問い、他者への祝福を鍵に現代を論じる、今を生きる人びとへの贈り物。

感想・レビュー・書評

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  • いつものことだけど、また、たくさんのことをならったような気がする。
    相手の知性に対する敬意。説明しようとしないのは不遜なんだな。わかって欲しければ汗水たらして、情理を尽くして語りましょう。わかる人はわかってくれるだろう。
    個人的には日本の太平洋戦争が戊辰戦争の犠牲者たちの呪いによるものだったという説にじんわりと納得。呪いはバカにできません。

    Mahalo

  •  三年前に刊行された本が文庫化されたので手に取った。内容は先生が出演なさっている『辺境ラジオ』でも語っておられるものと重複している内容が多々あり、既視感はいつにもまして高かった。

     けれども、はたと膝を打つ考察もあります。たとえば、「あらゆる呪いは記号的」すなわち「抽象的で、一般的で、反復的」だとした上で『源氏物語』の六条御息所の例を引き、葵の上に対する嫉妬心を自分の固有名において引き受けることを拒絶したために、嫉妬が記号化し葵の上を取り殺す結果となったことを指摘しています。この指摘に目から鱗が落ちるのはもちろんですが、日本文化という文脈に限定されはしますが、普遍的な形で「呪詛」の構造を物語にビルトインした紫式部の並外れた慧眼には感服せざるを得ません。いまさらか。

     他にも興味深い指摘はあります。「努力することへのインセンティヴを傷つけるというのが社会的差別のもっとも邪悪かつ効果的な部分なのです」という指摘です。前述の『六条セオリー』とも関係しますが、昨今のヘイトスピーチ的言説がはらむ呪詛的な性格をうまくいい表してるのではないかと思います。

     というのも、対象物への呪詛は、それを見聞して溜飲を下げている人々に対しても、「既得権益を持ってる連中がその権益を手放さない限り、努力しても無駄だ」と思わせ、社会への積極的コミットメントを損なわせようとする力を持つからです。「人を呪わば穴ふたつ」と申しますが、最近は「呪うひと」「呪われる対象」の他にも「呪いで溜飲を下げるひと」さえもが呪詛の対象になるようです。恐ろしい世界になったもんです。

     誰をも賦活させない言説を呪いとするならば、匿名の掲示板に書き込まれる多くの文言が、呪いとして機能している世界に我々は生きているということを、まざまざと実感せざるを得ません。

  • 3.11の時の危機管理(デインジャー管理)についてはコロナにも言えることでは?
    内田樹の文章は一見厳しいことを書いているように見えるけど、その裏にある優しさに惹かれてしまう。
    誰にも注意されなくなったら人間終わりと良く言われているけど、内田樹はきっと見放さずに声を上げ続けると思う。
    注意してくれる人にはしっかりと応えないと…。

  • 「呪い」とその対概念である「祝福」というキーワードによって、現代の日本が直面しているにもかかわらず、多くの人びとに気づかれることのないまま進行している問題を浮き彫りにしている本です。

    前著である『日本辺境論』(2009年、新潮新書)の枠組みを引き継ぎつつ、日本文化や日本語についての議論がなされており、おもしろく読みました。著者の日本文化論は本書でも名言されているように、梅棹忠夫や岸田秀の議論を継承するもので、個人的にはこれらの議論はすでに破算していると考えているのですが、それでもおなじような枠組みから出発して新しい議論をみちびいていく著者の手腕には目を引くところがあったように感じています。

    また、養老孟司にならって身体の復権を説いているのも、いつもの内田節です。これにかんしても、著者の議論の枠組みにおいて「無垢なる身体」という審級が設定されており、そこから現実の身体に向けて批評のことばが紡ぎ出されていることに、個人的には違和感をおぼえていますが、著者の考えが率直に提出されており、いずれにせよおもしろく読みました。

    レヴィナスの他者論や、「それは言わねばならぬことである」という主題をレヴィナスそのひとから語りかけられた著者自身の体験も含めて、リーダビリティについて独自の考察を引き出してくるところは、著者ならではの観点ではないかと思います。また、最終章で展開されている「場の判定力に対する信認」についての考察も、おなじところに帰着するテーマのような気がします。これらについても、興味深いと感じました。

  • 自分を愛さなきゃ人も愛せない。で、自分を愛するとはどういうことか?自己評価よりも低い評価を下した他者を恨むのではなく、全能感の幻覚に踊らされるのではなく、できない自分を受け入れること。「ありのーままのー」というのは、ありのままのできない自分、大したことない自分も含まれる。

    たとえバッシングを食らったとしても、教師は「君たちには無限の可能性がある」と「身の程を知れ」を同時に言わなければならない。

    婚活や草食系男子、適職がどこかにあるかもしれない幻想など興味ある話題も。
    映画「ハートブレークキッド」「アパートの鍵貸します」

  • 単行本の方を読んだのが
    もう 8年も前のことになるのだ…

    もう一度読み直そうと思っていた一冊
    こうして「文庫」が出てきてくれるのは
    ありがたい

    そうそう そうだった
    へぇーっ こんなことも綴られていたんだ
    おっ ここはますますそのとおりに

    「現代」を考える時の
    一つの指標的読み方を
    させてもらえる
    そんな愉しみ の 一冊でした

  • 強烈なタイトルをネタに注目をあつめ、言葉を巧みにして読者に持論を刷り込む。
    一見、口上はキレイで倫理的に見えるから、気を配って読まなくてはいけない。
    根拠に乏しく極論も目立つ。

    なんのことはない、この人こそ、世の中を呪っている。

  • 38 やはり、レヴィナスの話が非常に面白かった。ホロコースト以後に信仰を捨てたユダヤ人たちに対して「あなたが信じていたのは稚拙な神なのか。何か悪いことをしたらそれに対して処罰を下し、良いことをしたらほめてくれるような神なのか。真に完全な神が作り給うし人間であれば、人間は人間だけで生きていけるのではないか。人間が自立して社会を構築できるように、神は人間を作ったのではないか」という呼びかけに非常に感動した。この話は、非常に様々な話に通づるものであると目からうろこだった。

  • テーマでまとまってるので、読みやすい。
    そして、東日本大地震後の世界について書いてあるところがいい。

  • ばらばらな話をまとめた感じ
    ところどころ面白いけれど。

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著者プロフィール

1950年東京生まれ。東京大学文学部仏文科卒業。東京都立大学大学院博士課程中退。神戸女学院大学を 2011年3月に退官、同大学名誉教授。専門はフランス現代思想、武道論、教育論、映画論など。著書に、『街場の現代思想』(文春文庫)、『サル化する世界』(文藝春秋)、『私家版・ユダヤ文化論』(文春新書・第6回小林秀雄賞受賞)、『日本辺境論』(新潮新書・2010年新書大賞受賞)、『街場の教育論』『増補版 街場の中国論』『街場の文体論』『街場の戦争論』(以上、ミシマ社)など多数。第3回伊丹十三賞受賞。現在、神戸市で武道と哲学のための学塾「凱風館」を主宰している。

「2020年 『日本習合論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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