正欲 (新潮文庫 あ 78-3)

著者 :
  • 新潮社
4.07
  • (1278)
  • (1307)
  • (645)
  • (141)
  • (32)
本棚登録 : 16779
感想 : 1508
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (528ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101269337

作品紹介・あらすじ

自分が想像できる“多様性”だけ礼賛して、秩序整えた気になって、そりゃ気持ちいいよな――。息子が不登校になった検事・啓喜。初めての恋に気づく女子大生・八重子。ひとつの秘密を抱える契約社員・夏月。ある事故死をきっかけに、それぞれの人生が重なり始める。だがその繫がりは、“多様性を尊重する時代”にとって、ひどく不都合なものだった。読む前の自分には戻れない、気迫の長編小説。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • うーむ、なんか面白くない。朝井リョウとは相性悪い気がする。それでも文庫本が出ると買って読んだのは、4月3週のブックリストで「読みたい本」と宣言してしまったため。カリスマレビュアーから「正しいのが、がっぷり四つ」と表現されると、そのワードに弱い私はつい反応してしまうんだよね。これって「性癖」?

    面白くないのは、登場人物たちの過剰なセリフ・行動が鼻についたため。平成の子どもたちは、どうしてこうもウジウジ悩むわけ?あまつさえ、男女揃ってどうして、同じ時に自殺しようとするの?

    例えばAVの中には誰にも話せない性癖というのは腐るほど存在していて、例えば「寝取られ願望」という夫の性欲を満たすために(ファンタジーだけど)何故か妻が従順に他の男と寝るという(ドキュメンタリータッチの)ビデオが大量に出回っている。AVの中で彼らは堂々としている。自殺なんて考えない。本書の登場人物たちにとっては、そんな性癖はメジャーな性癖だというんだろうけど、何がメジャーで何がマイノリティーなのか、誰が判断できるんだろう。

    私のホントの恥ずかしい秘密は完黙するとして、ずっと昔メジャーな空気の中で、疎外感を味わった経験として「車に関する話題」というのがある。おそらく今の若者には理解できない空気だと思うから少し書く。若者の昼休みの話題が、延々と車だけに絞られていた時代があった。何故話が尽きないのか?私はその話題に関してはずっと無知だったからその話題の楽しさの真髄についてはいまだにわからない。ただ恐ろしいのは、数回行ったことのあるお見合いパーティーで、女の子も「どういう車を持っているのか」を必ず聞いてきたということである。車に対する男性の世界観が、その男の将来性を測る目安になっていたと聞いたのはずっと後だった。ここに登場する若者たちが「恋愛話」に疎外感を感じるのと同じような構造が、あの時代クルマに関しては絶対にあった。私は車の話はできないから、読んでいる本の話(加藤周一とか)をして、思いっきり振られていた(^_^;)。ちなみに、加藤周一は今もそうかも知らないけど、限りなくマイノリティな話題だった。この疎外感で自分を不幸だと思ったことは一度もない。「明日死にたくない」とわざわざ思わなくてはいけないほどには、疎外感を味わってはいない。これは私がいわゆる鈍感屋さんだからなのだろうか。まぁ加藤周一も彼らにとっては「マイノリティーの中のマジョリティ」なんだろう。

    神戸八重子のストーカーまがいの押しかけ問答には辟易するけど、他の手段ならばもっと早くするべきだったと思う。寺井啓喜の子供への心配は、何処かでボタンをかけ間違えている。それを含めて、小説なんだから、正しいことだけが書かれているはずがない。それを前提にしても、読んでいてどうもイライラしてたまらない。



    • kuma0504さん
      ひまわりめろんさん、こんにちは♪
      いや、そのカリスマレビュアーさんには感謝しています。
      こんなことがなかったら、ベストセラー小説はファンの作...
      ひまわりめろんさん、こんにちは♪
      いや、そのカリスマレビュアーさんには感謝しています。
      こんなことがなかったら、ベストセラー小説はファンの作家か、本屋大賞一位しか読まない謎のマイルールを持つ私には、一生を出さない作品でした。なんやかんや言っても、最近の若者の奥の奥まで描こうとしているのは確かなわけだから、たとえ極端だとしても知っておいた方がいい。てなことを前の「死にがいを求めて生きているの」の時も思ったのだから、ほぼ朝井リョウさんの世界観は見えた気がしました。次回から自信持ってスルーできそう。

      そうそう、「どんな車に乗っているのが正しいのか?」それで年中休憩時間の話のオカズにできていたんですよね。社会学的にみて異常なコミュニティでした。
      茨城の車社会から暴走族文化というのは、面白いですね。社会学的には、一つのテーマにできそうです。
      2023/07/11
    • TTさん
      初コメ失礼します。
      正しく同感!朝井先生苦手です。
      かなり話題で、友人も推してくるし、本屋でもオススメされていたので期待大の楽しみMAXで読...
      初コメ失礼します。
      正しく同感!朝井先生苦手です。
      かなり話題で、友人も推してくるし、本屋でもオススメされていたので期待大の楽しみMAXで読みましたが、なんこれ?なんの話?ってガッカリしました。本当に読んでオススメしてるんでしょうか?性癖や歪んだ感情を多様性と良い言葉で言い換えているだけのように感じます。全然面白くなかった!私には分からない
      2023/07/11
    • kuma0504さん
      TTさん、こんばんは。
      コメントありがとうございます。
      そうですよね。
      合わない本は、無理に読む必要はないと思います。
      朝井リョウさんは、前...
      TTさん、こんばんは。
      コメントありがとうございます。
      そうですよね。
      合わない本は、無理に読む必要はないと思います。
      朝井リョウさんは、前回も今回も、なんかネットで情報収集した内容で物語を作ってる感がしているようにしか思えなくて、なんか深掘りしたくなくなるんです。

      ただ、今日、ニュース23を見ていると、あのアメリカでさえ、LGBTQの41%が自殺を考えたことがあると報道していて、2人同時に自殺を考えることが、決して不可能ではないとも思うようになりました。
      自分の考えが絶対とは思わないようにしたいと思います。
      2023/07/11
  • 「多様性」から展開する「正欲」とは?
    マイノリティにも属されない欲は、世間に理解されないだけでなく誤解もされ行き着く先は…

    世界はマジョリティの欲を満たすことに溢れてる
    明日を生きようと多くの人が感じるために
    …なるほどね

    「普通」というのはなく 人は何かしら、マイノリティに属する欲はある。
    周囲の理解は不要だが、そっとして欲しい。
    …でも小さくても良いから「繋がりたい」
    贅沢なのでしょうか? 一昔のヲタクでしょうか?

    A「自分が想像できる〝多様性〟だけ礼賛して、秩序整えた気になって、そりゃ気持ちいいよな」
    B「はじめから選択肢奪われる辛さも、選択肢はあるのに選べない辛さも、どっちも別々の辛さだよ」
    多様性という言葉を軽はずみで使わないほうが良いことは分かった。

    EUはめんどくさい言葉を作ったものだ
    世の中すべての人とわかり会えるのは無理
    個人を尊重するに留めるのが吉だと感じた

    確かに読んだあとは前には戻れない
    そして答えもない

    • はるパパ@ファミコンしようぜさん
      いつもいいねをありがとうございます。
      やはり風潮なのか多様性をテーマにした作品は多くみられますね。その度に私もこの本のことを思い出します。
      ...
      いつもいいねをありがとうございます。
      やはり風潮なのか多様性をテーマにした作品は多くみられますね。その度に私もこの本のことを思い出します。
      ヲタクに笑いました。2ちゃんねるの黎明期や、mixiなんかを連想しました。それ以前だと同人誌とか。ノートでゲームブックとか作ってたのは、小学校に2人だけでした笑
      この「繋がりたい」という欲求の方が、本当はオバケなのかもしれないと思います。蛇口を共感したいという気持ちが、はたして自分の中のどの部分に当てはまるのかを想像するのに苦労しますが。ひとまずゲームブックで代用です。
      2023/08/30
    • ganglionさん
      はるパパさん
      コメントありがとうございます
      本棚拝見させてもらい、勉強させてもらっております

      ヲタクは個性といいますか誰もが持ってると思っ...
      はるパパさん
      コメントありがとうございます
      本棚拝見させてもらい、勉強させてもらっております

      ヲタクは個性といいますか誰もが持ってると思ってます
      一部の限られた中だけは繋がりたい欲はこの本で痛感しました

      ゲームブック素敵です!

      読書から感想を言い合うのが楽しいです
      これからもよろしくお願いします
      2023/08/31
    • はるパパ@ファミコンしようぜさん
      丁寧にありがとうございます。
      こちらこそ、思い切ってコメントしてみてよかったです。
      丁寧にありがとうございます。
      こちらこそ、思い切ってコメントしてみてよかったです。
      2023/08/31
  • 「正欲」の半年程前に出版された「スター」の中で、映画クリエイターの女性が、答えではなく問いをくれる作品が好きだという場面がありました。
    私もその方が好みなのよね、っと、思うと共に、朝井さん自身もそうであろうし、デビュー作からこの最新作まで、小説に問いを書こうしてきていると思います。
     今回のテーマは正欲、正しい性あるいは、望む性かな。読まれた多くの方は(ひまわり師匠を除く)、どう対応するか悩みます。社会はあらゆる場面で多様性を求めてきます。それは、社会の成熟度と繋がるかもしれませんが、理解の範囲を超えた多様性に躊躇します。
    検事で小学生の父親は、正しさにこだわり、その妻は、子供の欲求の全てを受け入れようとする。
    寺井の部下は、手探りで理解しようとする。
    余興で川に飛び込んで死んだ男は、正しさに勇敢。
    友人の男子のマイノリティを理解して繋がろうとする女子大生。
    自身の正欲と相手の正欲の共存を目指す女性。
    画一的なサイドの登場人物の動向を見て、躊躇しながらも、問について考えてしまいます。
     性愛とは性を愛することであるけれど、同時に性を通じて誰かを愛することである。と臨床心理士の解説にあります。この作品は、この後半部分、誰かを愛することについて希薄だと思います。
    そこが、正欲を受け入れがたくしているかなと。
    「あってはならない感情なんてない」文庫帯にピックアップされた一文です。しかし、正欲を批判するのも、又、正欲。誰かの性癖は、他者を傷つけることもあるかもしれないし、法律に触れることさえあるかもしれない。社会生活を維持するには、多様性の受諾と画一性とのバランスが半永久的な課題なのだと思います。
     とはいえ、朝井さんの小説の上で転がされているのだから、小説の問題提起は成功しているのだと思います。小説との相性はありますが、一読されてみても良い作品かと思います。

    • おびのりさん
      おはようございます。1Qさん。
      うちの図書館も4桁が近かったです。
      珍しく購入しました♡
      おはようございます。1Qさん。
      うちの図書館も4桁が近かったです。
      珍しく購入しました♡
      2023/06/14
    • ひまわりめろんさん
      うちとこ普通にあったでw
      特に興味なかったんだけど、まぁ目の前にあるし、なんか評判だしてな感じで借りました

      あ、あとまぁいいとこ8級くらい...
      うちとこ普通にあったでw
      特に興味なかったんだけど、まぁ目の前にあるし、なんか評判だしてな感じで借りました

      あ、あとまぁいいとこ8級くらいやな
      2023/06/14
    • 1Q84O1さん
      おびのりさん、4桁って!?
      そりゃ、待っても無理ですね…w
      おびのりさん、4桁って!?
      そりゃ、待っても無理ですね…w
      2023/06/14
  • 2023.9.21 読了 ☆9.7/10.0


    だいぶ刺さった。というか内容がヘビー過ぎて、終始悶々としていました。。。
    考え、考え、考え、答えのない問いを前にして、やるせなさと、でも最後には希望とを感じる、複雑で矛盾する感情に。、


    この本のテーマを理解することは本当に難しい。
    「わかる」なんて、軽率に言えない。
    手放しで喜べない現実を痛感せざるを得ない。



    "多様性"という言葉が市民権を得た昨今、その言葉が独り歩きして、正義という刃となって人を傷つけるということ。

    マジョリティ側が振りかざすそれは、マジョリティの受け入れられる、認められる、好ましいと思える身勝手な範囲の中のマイノリティのみ想定していて、マイノリティの中のマジョリティしか理解しようとしない、都合の良い言葉に成り上がってしまっている。


    この本を読んだ人なら分かると思うが、この世界には全く理解できないことに性的興奮を覚える人がいる。

    そういう人の存在を、"多様性"は「これは好ましいか、好ましくないか」という身勝手な基準でふるいにかける。弾かれたマイノリティは排除される。

    「へぇ、そんな人がいるんだ。マイノリティだし尊重はしたいけど、気持ち悪いからあり得ない」と、好ましくないと斬り捨てる。



    自分を正しいと思うこと、多数派だと信じることからは逃れられないのが人間の性であると思うけど、何かを否定すること、断罪することはすごく危険だと戒められました。

    一読では消化できない。そんな、傑作でもあり問題作、大作でした。

    朝井リョウさん、とても意地悪だ。。。

  • 初読みの朝井リョウさん。心象の表現に個性を感じる。「顔面の肉が重力に負ける」「心の真ん中を絞るように体に力を込める」「夕立に降られるように勝手にその一部に自分が含まれてしまう」など、いずれも身体的、物質的な動きから直感的に伝わってくる。そして、この作品は、時代の転換期に起きている事象を鋭く捉え、価値観を揺さぶってくる。

    動画配信に傾倒していく不登校の一人息子。検察官の父親・啓喜の、道から外れるべきでないという思考や登校する子どもたちに向けられる普通であることへの羨望の眼差し。

    地縁の煩わしさから寝具店の販売員に転職した独身の夏月。ショッピングモールの勤務中、中学の同級生夫婦に声を掛けられ、彼らの世俗的な生き方を見て心が冷えていく。ささやかな安息は視聴者のほとんどいない配信動画を巡回すること。

    そして、大学祭実行委員を務める女子大学生・八重子。ダイバーシティへの傾倒と学歴や容姿、家族関係から抱く劣等感との狭間で心を収縮させていく。と同時に、配信動画を通じて、一番縁遠い存在に強く惹かれていく。

    こうした身近に起こりそうな日常の描写が淡々と続く。一見繋がりのない人間模様が次第にもう一層のレイヤーと化学反応を起こし交差していく。通奏低音のように流れる、不穏な性的倒錯者たちの存在。配信動画に書き込まれるコメントを媒介にして、啓喜たちの日常に紛れ込んでくる。「耳をすませば」の天沢聖司の例え(爽やかさはまるで違うが)のように、動画のコメント欄の名前から、夏月は古い記憶を呼び起こす。

    禍々しい展開を想像しつつ、物語中盤に差し掛かったところで、夏月のある性癖が明かされる。中学時代のある日の放課後に特異な体験を共有した同級生・佳道との同窓会での再会。「地球に留学しているような感覚なんだよね、私」という夏月の呟きに他者と共有できない生きづらさが滲み出る。ラベルのない性癖には、ダイバーシティの価値観は無力であるどころか害にもなる。マイノリティですらない異端者の苦悩。徐々に追い詰められていく夏月と佳道が偶然路上で再会し、その稀有な繋がりにお互い生きる意味を見出していく。

    物語の終盤、作品冒頭にある作者不明の独白、そして児童ポルノ事件の雑誌特集記事。これらと物語が繋がった瞬間、当初抱いた印象とはまるで違う景色が現れてくる。これには、自分の世間に対する認識の浅さを思い知らされた。また、啓喜が妻・由美から「涙を流す人を見て性的に興奮するなんて、おかしいよね?」と言われながら両目を覗き込まれるシーンに、自分が正しいと考える価値観も特殊な性癖と紙一重であると感じ、心許なくなる。

    この物語は手に余る。解説の臨床心理士・東畑氏の言うとおりである。珍しく映画も見てみたいと思った。

  • この本を読んだことにより、明らかに私の頭の中での「多様性」というものが広がりました。
    「自分たちが全然想像できない欲求と生きている」人たちのことを知ることができたし、「Aを見てBだと感じることに、口出しできる人は、どこにもいない」という考えに、なるほどなぁと思いました。
    映画が公開されているということなので、観てみたいと思います。

  • うーん、すごくレビューするのが難しい・・・
    これを「すごい作品だ」という人がたくさんいるのもわかる気がするし、戸惑ったような感想を抱く人も多いだろうとも思う。

    私はどちらかというと後者だ。戸惑った。そして、どう感想を書いていいのか、今もわからない。

    初っ端から、今人気の言葉「多様性」を否定するような内容。いや、違う。「多様性を否定」しているわけではない。「多様性」を声高らかに掲げる人はマジョリティであり、当然のごとく共通のゴール(明日死にたくないというゴール)に向かっている人であり、そんな人達に正義感たっぷりに「多様性」をさけばれても、いや、ほっといてくれ、と思う人もいるんだよ、ということか・・・・
    「みんなちがって みんないい」の何がいけないのか・・・
    大いに戸惑いながらページをめくることとなった。

    寺井啓喜、桐生夏月、神戸八重子、という三人が、視点を変えて登場する。啓喜は登校拒否児童を子に持つ検事で、夏月は地元のモールにある寝具店で働く女性、八重子は学園祭の実行委員を務める大学生。

    寺井啓喜の通常ルートを外れた人間に対する凝り固まった考えにも、桐生夏月の世の中に対する卑屈さにも、神戸八重子のまるで自分は新しい価値を提案しているんだという話し方にも、なんでかイライラさせられた。きっと彼らのどこかが自分の中にもあるからなんだろうと思う。この世に生を受けた以上、明日死にたくないというゴールを持っている人たちがマジョリティとなるのは必然で、マジョリティがいる以上、マイノリティが生まれてしまうわけで、「マジョリティ」も「マイノリティ」も性欲だけでなく色んなところにあるわけで、それを分かり合おうとする姿勢にケチをつけるな。本当のところ分かり合えないことぐらいはなんとなく気づいていて、そのうえで分かり合おうとしているんだ。と、なんだかひたすらモヤモヤに近いイライラを感じた。
    けれど、こう文字にするとひどく間違った読み方をしていたような気がしてきて不安になる。結局朝井さんの策略にハマった気がする。
    やはりすごい作家さんだと認めざるを得ない。

    「正しい欲」って何だろう。そもそも「正しい」って何だろう。あってはならない感情なんて、この世にいてはいけない人なんて、いない。それはきっと「正しい」。だけど、規制したり、取り締まったりしなければいけないことはもちろんある。例えば作中でも結局大きな事件への引き金となっている小児性愛なんて、社会が取り締まらないと、子どもは自分で自分を守れないし・・・と思考が止まらなくなる。それでも、「正しい欲」がなんだろうが、マジョリティだろうがマイノリティだろうが、やはり誰かとの繋がりが必要なのが、良くも悪くも人間なのだと思った。繋がる必要があるからこそ、悩むのだ。

    読み終わって思うことは、それでもやっぱり「多様性」とか「みんなちがって みんないい」は、いい言葉だと思う。ただし、その言葉に安心して思考を止めてはいけない、ということ。

  • ずっと気になっていたけど、小児性愛者の話なら苦手だなと読んでいなかった本。
    Audibleにあったので嫌になったらやめようと聴き始めたけど、すぐに引き込まれてしまい、続きが気になり過ぎて一気に聴いてしまった。

    性的嗜好に『水』を選んだ朝井リョウさんはさすがだと思った。
    読者が嫌悪感を持たずに「何でそんなものに!」という意外性のある『水』は、マイノリティの人の気持ちに寄り添いやすかった。
    でもこれが『水』ではなくて『小児性愛』の話だったらどうか?
    こんなにすんなり受け入れられないし、気分が悪くて自分は途中で読むのをやめる。

    『水』は他者を傷つけない自己完結なのに対して、『小児愛』は子供が犠牲になり、その子供は一生トラウマを植え付けられる。
    同じ性的マイノリティでもこの2つは全く違うものだと思う。

    他者の心を一生傷つけてまで自分の性欲を満たすのは、『生れつきだから仕方ない』と言われても到底納得できない。病院に行ってカウンセリングや薬で改善してほしい。

    反対に『同性愛』のような他者を傷つけない性的嗜好ならば、もしカミングアウトしてくれたら、自分を信用して話してくれてありがとうと心から思う。
    逆に何でも絶対にレール通りみんなと同じように進まなきゃいけないと押し付けてくる人よりも、個性がある人の方が自分は好きだ。

    登場人物の八重子は個人的にすごく苦手なタイプだった。
    でもこの本を1番面白くしてくれたのは八重子だから、やっぱり朝井リョウさんはすごい。
    ミステリー以外でこんなに先が気になったのはここ最近はなかった。
    朝井リョウさんの他の作品もすぐに読みたくなった。
    こういう押し付けずに考えさせられる本も好きだと改めて思った。
    Audibleにて。




  • すごい強烈な本…何書いたらいいんだろう…
    何を言っても全部綺麗事になりそうで書けない。

    八重子と大也のやりとりが凄かった
    「自分はあくまで理解する側だって思ってる奴らが1番嫌いだ」
    なんかズーンときた。
    【多様性】ってなんなんだろ?
    すごく考えさせられる本だった。

    じゃあ自分はこれからどうしていけばいいんだろ?
    解説にあったように、色んな人と話してぶつかり合いながらも繋がってくことなんだろうな。

    気になってたし〜って軽く手に取ったこの1冊。
    凄かった…

  • いつもコメ欄で楽しくやり取りしてるブク友さん達が読み終え、レビューが出尽くした今読んでよかったな…と思います。色々な感想があって興味深々かつ自分がどう思うか楽しみでもありました。
    評価が高い作品は困りますね…天邪鬼ですから笑

    正欲…正しい欲望かな?
    内容はまぁ性的な欲望、欲情を何に対して持つのか…何に対しても持たない方もいますけど。

    何か特定の物、現象に欲情することがそんなに理解出来ないことなのだろうか?
    理解できるという考えさえ少数派であり異物だと世間では考えるのか?

    主人公の1人である夏月には理解できる部分と焦ったさの両方を思いながら読んでいきました。
    自分の性癖を知られたくない、人に不用意に踏み込まれたくない、その反面ガツガツと踏み込んでくる女の餌食になっている夏月にイライラ笑

    女が集まればSEXのあれこれで盛り上がる…
    と書く朝井さんは女をそう見てるんだなぁ。とも…

    他人に話す事は自分がしている、知っているSEXがノーマルなのかの確認と文中にあります。

    なるほど…たしかに…
    彼氏とのSEXを恥ずかしそうに語る友人に皆が一斉に「エ〜〜っ⁈それあり⁇」なんて言ったら青ざめます笑 どんなアブノーマルと言われる行為も合意の上なら良いでしょう?ノーマルって何?って話しです。10人いたら10通り…

    正欲、性欲に正解はない。理解して欲しいという気持ちもわかるし、隠したいという気持ちもわかる。
    ただ無関係の人を巻き込んではいけない!
    その一線を越えない理性を持つべきだと思う。




    そして「読んで考えなさいよ」って問題投げっぱなしの上から目線の朝井リョウが見えた気がした笑


    • おびのりさん
      読了ですね。
      これ小説としては、面白くないよね。
      ファンとしては、申し訳ないけど。
      多様性とかに踏み込むんだったら、木原さんとかの方が深いと...
      読了ですね。
      これ小説としては、面白くないよね。
      ファンとしては、申し訳ないけど。
      多様性とかに踏み込むんだったら、木原さんとかの方が深いと思う。
      純文学の限界点かな。
      2023/09/13
    • みんみんさん
      世間がする反応を登場人物で全て表してるような気がするから…いい意味の余白?がない。畳み掛けてくるし、講義、レポートを読んでる感じかな?
      まあ...
      世間がする反応を登場人物で全て表してるような気がするから…いい意味の余白?がない。畳み掛けてくるし、講義、レポートを読んでる感じかな?
      まあ朝井リョウさんはドSって事はわかった笑
      2023/09/13
全1508件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1989年岐阜県生まれ。2009年『桐島、部活やめるってよ』で、「小説すばる新人賞」を受賞し、デビュー。11年『チア男子!!』で、高校生が選ぶ「天竜文学賞」を受賞。13年『何者』で「直木賞」、14年『世界地図の下書き』で「坪田譲治文学賞」を受賞する。その他著書に、『どうしても生きてる』『死にがいを求めて生きているの』『スター』『正欲』等がある。

朝井リョウの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×