悪人正機 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (340ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101289229

感想・レビュー・書評

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  •  吉本さんの発想が、全共闘世代のどこにひっかかったのかを知りたくて、なくなったのは残念だが、また、吉本本を読んでみた。

     逆転の発想、既成概念のとらわれない視点がいい。

    (1)真剣に考える自分のとなりの人が、テレビのお笑いに夢中になっていたり、遊んでいたりすることが許せなくなってくるというのは、間違いなんです。(p136)

     これは、自分にもっとも当てはまる。被災地の方々が苦労しているので、うちの役所は何してるんだと思ってしまうが、そういう思い自体が、視野狭窄なだと思う。自戒する。

    (2)アメリカの民主主義というか、ヒューマニズムが初めから、そういうおせっかいとも言えるような世界性とか普遍性を持っているのでしょうね。(p95)
     
     アメリカ人の世界の警察官意識がまさにそれだと思う。いくら大量破壊兵器を持っている(実はもっていなかった)イラクをいきなり攻撃する発想にはついていけない。

    (3)借りた金も全部自分の財産だっていうか、そういう発想ができなきゃ、お金は集まらないし、本当に資本家にはなれないですよ。(p301)

     資本家は借金して投資するからそうだよね。ローンに汲々としていたら、資本家にはなれない。でも、無理してなりたいとも思わないな。

     全体を通じて、よく自分をわきまえた、よく考え抜いた人だと思う。その素直さがまじめな団塊の世代にひっかかったんだと思う。

  • "うまく言葉にしにくいんだけどとても大切な感情・感覚"をとても軽やかに語られていて、「そう、そうなんだよ!うひゃー!」と何度も感じた。脳みそほぐされました。

  • 読むのが途中で嫌になった、こんなのは久しぶり。

    世の中の常識とか善とかっていう感覚に対して吉本さんがバサバサ切っていくのは痛快でもあるし興味ぶかい。

    正直全部読まなくても最初のほうとあとがきだけ読めば、十分だと思う。全部読むと逆に影響されすぎる。中庸を求めるなら半分で良い。

    なんでもいいから10年続けるという話は、今後自分の人生に影響する発想です。これを気づかせていただけたのは感謝です。

  • 一章一章が物凄く濃ゆい内容。
    今はまだまだ判らないことだらけだし、気付けていないことだらけで読んでいます。でも、それでも読んでいいんだと思わせてくれる本です。例えば、『殺意』ってなんだ?の章。専門家の言う「正常」の範囲は、もう現実には通用しないという言葉。ここのところなんかは、すっとそうだなと思ってしまいました。あっそうだわ。本当に。だから、なんやらこんな不自由な感じの人が多くて(自分も含め)、もうこの方が普通、正常でっせって思ってたんだなというふうに。

  • 安心する。

  • 中学生に読んでほしいと書いてあったけど、さすがにそれには早すぎるとおもう(笑)生きるのがラクになる本です。
    頑張りすぎるのはよくないとか、綺麗ごとを考えすぎないこととか、どうにもできないことだってあるとか。
    何かのプロになるには、10年間続けてみること。掛け算で続けることが大事で、1日でも途切れると足し算になって伸びもとまってしまうよ。
    っていう話がすごく成程と思いました。

  • ほぼ日で気になって読んだ。
    こういう大人が昔はきっと多かったのではないか!
    生きることを崇高に、堅苦しく考えてるから自殺したくなるんだろうなあ。

  • 中学生に読んでもらえると嬉しい,という吉本隆明のあとがき.
    たしかに,中学生のときに読んでおきたかったな,と思った.
    もっとじぶんのことを内側からも外側からも見たい.
    なんていうか,今じぶんのことどれだけわかってるか,
    って考えてみたら,なんか全然わかってないことだらけで,
    ちょっと戸惑ってしまった.
    そういうことに気づかされる本だった.

  • こういうの好きですねえ。。。
    なんでこんなにレンジが広いんだろうってまざまざと思う。文学者なのに。いや、文学の中で生きているからこそなのかもしれないが。どういうふうに生きていたら、こんな人間性やこんな考え方が出来上がるのだろうかと不思議です。言葉ひとつひとつが本当に揺ぎ無くて染まらないのです。

    特に響いたのは、「素質」の回。10年毎日続けて初めて素質や才能を語れる段にくるのだと。その難しさ。でも、それを難しいことにしてしまわずにやれてしまう「明るさ」が必要になるんだろうな、と読みながら思っていた。

    あとは、ものすごく単純なんだけど、タモリさんのすごさにあの角度から気付いているこの人はやっぱりすごいと私は思う。

    (20111229)

  • 幼少時代や、中学生くらいまでの友人と、話が合わなくなっていくという感覚はないだろうか?

    特に公立の学校に通っていた人は、進路がバラバラでどんどん環境が変わり、
    昔はあんなに仲良かったのになぁと感じることはないだろうか?

    僕自身、大学のときと社会人になりたての時に、
    そういう経験がある。

    この本の中で、吉本隆明は「友達は記憶の中にのみ残る」という。
    この言葉を聞いてあぁそうか、それでいいんだなと、
    すごく安心したのを覚えている。

    何も気にやむことはないんだと。

    何だか安心させてくれる人生論だ。

    昔の友達と話が合わなくなってなんだかさびしいなぁと感じている若者に贈りたい。

    それでいいんだよ、それが成長なんだと。
    結局人生は孤独トの戦いなんだというメッセージを込めて。

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著者プロフィール

1924年、東京・月島生まれ。詩人、文芸批評家、思想家。東京工業大学工学部電気化学科卒業後、工場に勤務しながら詩作や評論活動をつづける。日本の戦後思想に大きな影響を与え「戦後思想界の巨人」と呼ばれる。著書多数。2012年3月16日逝去。

「2023年 『吉本隆明全集33 1999-2001』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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