雪沼とその周辺 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (206ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101294728

感想・レビュー・書評

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  • 登場人物のほとんどの人が「さん」付けで語られる珍しい作品です。
    架空の雪沼という地方の町とその周辺で生活をしている人々を描いた連作短編集です。
    純文学よりの作品です。

    前置き的な説明もなく、人々の人生の一場面である現在と過去がするりと描かれます。
    説明がないため最初は一体何の話をしているのと思ってしまいますが、読み進めれば、何のことなのかが分かってきます。
    大きな事件が起こることもなく、どちらかと言えば静かな小説だとは思います。
    しかしながら、静謐とも違うようで、どう言い表すのが良いかと考えてしまいますが、文庫解説の池澤夏樹さんが、本作の特徴を端的に言い表していました。

    個人的に良かったのは「送り火」です。

  • 静謐。モノが中心の文章なのかなと思った

  • 【請求記号:913.6 ホ】

  • 私の知らないところで、私の知らない人間たちの人生が今も動いている。共通するのは、着実に同じスピードで、皆少しずつ老いていること。

    人生経験をもっと積んでから読み直したら、もっと味わえたのかなと思う。

  • 「イラクサの庭」が特に好きです。

    どこか影を感じる料理教室の先生の死ぬ間際に発した単語から、彼女の大切な思い出と心残りが浮かび上がっていくお話。

  • 『送り火』が課題になってて借りた本。
    短編集なので、とりあえず課題の作品だけ読んだ。返却日が来て、延長して借りて他の作品を読もうと思ったら、予約が入っててどうにか全部読んで返すことができた。
    『送り火』はイメージとして、小日向文世さんと檀れいさんの配役で頭に浮かんだけど、このお二人、何かの作品で共演されてた??この作品についていえば、大きな事件があったと言えばあったけど、大筋はそれ以外の部分で淡々と進んでいく感じ。どの作品も、割とそんな感じだったように思う。
    認めてもらえてるのに、今一つ自分の仕事に自信が持ててない、中華料理屋さんの話が妙に心に引っかかった。

  • 『送り火』が現代文の問題集に載っていたのをきっかけに手に取った本。

  • これまでほとんどご縁が無かったが、たぶんこういう小説を「純文学」と呼ぶのだろうな、と想像(- -

    手に取ったきっかけは、(たしか)twitter上で、誉めてる人がいたから。特につながりの無い、知らない人だったが、「試験に出て来て、気に入って本買ってよんだ」みたいなエピソードが何となく心に残り、古書店で見かけたのでゲット。この作者の本を読んだのは、たぶん初めて。

    基本的な構成としては「短編集」で、雪沼という(たぶん)架空の土地とその近辺に住む人の日常を、力を入れずに「そっと」切り取ってきて、静かに傍観している感じ。大きな事件も起こらず、正義のヒーローも出ては来ないが、小説として切り取られた人々の営みが、それ以前からずっと続いており、その後も連綿と続いていくのだろうな、ということが体感できる、リアルな人間描写。

    大きな事件は起こらないが、小さな事件...というか、日々の暮らしの中の「ちょっとした出来事」は起きていて、その瞬間を中心に切り抜いている感じ。お世話になった料理の先生が亡くなった...などというのは「大事件」な方で、オーディオの音質調節のために「スピーカーの下に置くブロックを調達する」レベルの些末な(失礼!)ことまで、平等に取り上げている。

    事件もなければ、特に大団円の「オチ」も無く、ほぼ全編「え、これで終わり?」という印象のエンディング。だが、それが「その後」を想像させる余韻となって、登場人物たちの「日常生活」がより鮮明にイメージできるようになるから不思議だ。市井の人々の「何気ない日々の暮らし」が、こんなにも幸せに満ちあふれているなんて... ワイルダーの名作戯曲「Our Town」を思い出してしまった。

    読んでる間も読後も、ちょっとだけ時間の流れがゆっくりになるような、そんな一冊でした。

  • 人は老いる。物も、そして街も。

    自分は、池澤夏樹氏が解説で書かれていたような郷愁や哀愁を、この本に見出すことができなかった。それは、小説の中に登場する前時代の道具や施設などの小道具にリアルタイムで触れておらず、「古き良き地方都市」のようなものにファンタジーを感じたことがないからかも知れない。

    逆に、他の方が既にレビュー書かれているように、時間の非情な不可逆性を眼前に突きつけられた人びとの無力感、よるべなさを感じる話が多く、そういった意味で切なくなった。

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著者プロフィール

作家

「2023年 『ベスト・エッセイ2023』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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