雪沼とその周辺 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (206ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101294728

感想・レビュー・書評

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  • それぞれ、すっと切り取ったようなラストが印象的。
    なにかの兆しのようであったり、気配のようであったり。静かに、あくまでも静かにハッとさせられた。

    地道に生きるというのは、こういう人たちの、こういう何気ない暮らしのことかもしれない。
    その中で自然と積み重ねられてきた時間。
    物へのこだわり、さりげないふれあい、感じる老い。
    大河ドラマのような波乱万丈というのとは違って、ああそうだったの…とそばで打ち明け話を聞いているような身近さがあった。

    「雪沼」という地名。ありそうでなさそうで、やっぱり検索してしまった(笑)

  • 「上質な日本の現代文学をどうぞ」

    所蔵情報
    https://keiai-media.opac.jp/opac/Holding_list/search?rgtn=076183

  • 古本

  • 17:00

  • 堀江作品初読みです。

    山あいのどこか時代に取り残されたような寂れた町・雪沼。
    その町で、旧い道具たちを慈しむようにして生きる人々の日常が、音や、臭い、肌ざわりといった五感に働きかけるような文章で静かに綴られる7つの物語は、雪沼という町を舞台にゆるく繋がっています。

    例えば「イラクサの庭」の雨の描写一つをとってもそれはもう詩的で、美しい映像を結ぶ文章を何度もゆっくり味わいました。

    寂れた町の、何かドラマティックなことが起こるでもない日常が、主人公たちの古い機械や道具への愛着と共に描かれ、新しいもの、便利なもの、効率の良さを追い求めすぎた結果失ったものを思い、その例外としての雪沼にひとときのノスタルジーを感じました。

    「レンガを積む」の家具調ステレオは子供の頃実家にあったな~ととても懐かしく、古い物を通じて、瞬時に過去のある時点に思いが飛ぶ感覚が心地よくて、堀江作品、また読んでみたくなりました。

  • 過疎が進む山あいの町の緩やかな滅びと、そんな中でも生まれる新しい出会いの短編集。
    話はすべて同じ地域のものとして書かれているが、登場人物らに直接のかかわりは薄く、別の話で登場した場所が話の流れに出てくる程度。文体のせいか、読んでいて場の静けさを感じた。個人的には、閉店が決まったボウリング場に最後の客が訪れる「スタンス・ドット」が印象的だった。最後の一投の音は、果たしてどうだったのだろうか。

  •  タイトルの通り、「雪沼」という地域とその周辺で繰り広げられる物語を集めた1冊。時代背景ははっきりとわからないけれど、雪沼には大きな資本介入がなく(イ○ン的な)、住民は皆自ら商いをして生計を立てており、効率重視の大資本ではありえない“小さなこだわり”ー例えばアメリカからわざわざ個人輸入した「ブランズウィック社製の最初期モデル」のピンセッター、脚のボルトのわずかな締め具合の差がすぐ使い勝手に出るような段ボール裁断機、「木製サイドボードのようなその三幅対のステレオ装置」などーが町のそこかしこに潜んでいる。そして、それらを慈しむ尊い人間の姿が魅力的に描かれている。
     ただ文字を追いかけてるだけなのに、五感が刺激される不思議な小説。本当に美しい。

  • 初読み作家さん。
    雪沼という寂れた山あいの町で、
    レトロというか時代遅れの道具たちと、
    そこに生きる人々の人生。
    静かでしんしんと降る雪のある種の美しさと淋しさを感じる。
    もっと年を経てから読んだらまた違う感想を持ちそうだ。

  •  雪沼という架空の町に暮らす人々の日常の一片を切り取ったような七つの短編。どの物語も華やかさや大きな盛り上がりはなく、素朴で淡々としていて、どこか懐かしく優しい。親しみやすさを感じさせる効果があるのだろうか、全員が「さん」付けで語られる彼らの人生を、見守るように俯瞰し、時には回想の中でかつて経験した喪失感を分かち合うことができる。そして、ぶつ切りというほどではないにせよ、結末らしい結末でなく締めくくられる各編の幕切れは、その後も彼らの物語は——老いによる不安や喪失感を纏いながら——終わりに向かって淡々と続いていくことを想起させる。

  • 寂れた町「雪沼」の人たちの暮らしを描いた連作短編集。
    それぞれの人たちの人生、色々あり重たい部分もありますが、それを感じさせない静かな語り口。ちょっとした風景や表情の切り取り方、登場する道具の絶妙な絡み方などが相まって、じわじわ来ました。この淡々とした感じ、やや不気味だけど心地よいです。これは折を見て読み返したい。

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著者プロフィール

作家

「2023年 『ベスト・エッセイ2023』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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