おぱらばん (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (282ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101294742

作品紹介・あらすじ

とりすました石畳の都会から隔たった郊外の街に暮らす私。自らもマイノリティとして日を過ごす傍らで、想いは、時代に忘れられた文学への愛惜の情とゆるやかにむすびつきながら、自由にめぐる。ネイティブのフランス人が冷笑する中国移民の紋切型の言い回しを通じ、愛すべき卓球名人の肖像を描いた表題作をはじめ、15篇を収録した新しいエッセイ/純文学のかたち。三島賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • 主にフランスを舞台としたエッセイで、日常の出来事と、そこから想起される本が紹介されるスタイル。本を読む、というのはこんなふうに内面世界を豊かにするんだなあ、たくさん言葉を知るということはこんなにも美しく世界を感じられるんだなあ、と惚れ惚れする。
    そこはかとないユーモアとノスタルジー、何かを失ったり、別れたりする時の、諦めめつつ愛おしむ切ない感情、など、色んな想いがよぎって心が満たされる。
    特に好きなのが、「床屋のパンセ」「ボトルシップを燃やす」「のぼりとのスナフキン」。いずれも、ふと出会った人とのやりとりが面白く、切ない。
    フランスの文化や社会、移民の日常など、普段日本にいては分からないことが臨場感をもって感じられるし、日本ではメジャーじゃない作家や芸術家についての話があるのも面白いところ。

  • 堀江敏幸、初期のエッセイのような短編小説のような散文集。
    パリ暮らし時代のエピソードを中心に、人物だけでなく「街」との出会い、更にはそれらの出会いから想起される小説や絵画や映画との出会いが、淡々としつつもユーモアある筆致で語られていて読みやすい。筆者が日々の生活の中で出会った愛すべき・記憶すべきものたち――思い入れのあるものとして大切に胸の中に保管されているそれらには、実在・創作の区別がなく、現実に起きた出来事とフィクションに描かれたエピソードとがするするとつながって記述され、「書物の中身と実生活の敷居がとつぜん消え失せて相互に浸透し、紙の上で生起した出来事と平板な日常がすっと入れ替わることがしばしばある」という筆者の”日常”あってこその独特な世界が構築されている。
    どの作品も素敵だが、「床屋嫌いのパンセ」の軽妙さ、パリではなく東京郊外が舞台となっている「のぼりとのスナフキン」のほのぼのとした抒情が良かった。

  • エッセイ、なのか?ものすごく繊細で美しい短編集みたいなかんじ。
    どの話も印象的で、ひとつ読むとお腹がふくれてなかなか読み進められなかった。
    情景と心情の描写が重なりあう感じというか、その美しさはかなり好みの文章。
    時間を置いて、この著者の他の作品も読んでみたい。

  • 3年間ずっと同じクラスだったけど喋ったことはなくて、知ってるのは名前と顔くらい。ところが卒業間近になって共通の友だちの集まりで初めて喋ってみたらすごい気があうじゃんー、なんだよーみたいな堀江くん(ほんとは先輩だけど)。
    図書館で借りたあと書店で購入。

  • 15編の短編集。
    好き嫌いが分かれる作家だと思う、人によっては文章のリズムが心地よく、人によっては鼻持ちならなくかなと思えてくる。

  • 2016/12/2購入

  • 1610読了。美しい文章。

  • 日常で出会う人や物や事が以前読んだ本に出てきたアレだ!と、思ってしまいがちな私。この本大好き。

  • パリでの日々。
    卓球したり、道に迷ったり、絵に惚れ込んだり…。
    なんとも楽しそう。

  • 美しい、散文。

    堀江さんの文学への尊敬や、書物との密接な関係に、うっとりと身を浸しながら読みました。

    日常の隙間を覗くと、めくるめく文学の風景が気ままに広がって、そっと頁をとじて、日常に結ばれる。
    贅沢な遠回り。壮大な道草。
    蘊蓄を披瀝しているような嫌味なところはひとつもなくて、堀江さんが親しんできた文学との関係は、どこか、自分の身にも覚えがある感覚で、勝手に嬉しくなりました。

    『留守番電話の詩人』
    『貯水地のステンドグラス』
    『のぼりとのスナフキン』

    がとくに好き。

    エッセイと文学の狭間にあるような、硬質な筆致。そのまま小説になりそうな、爽やかな出逢いや柔らかな偶然に満ちたエピソードたち。
    静かで、ほのかな熱を帯びた文章に、惹き込まれながら読みました。

    こんなに美しいのに。
    でも、こんなに美しいからこその、散文。

    文学の世界があるとしたら、きっと、こういう文章の中に在るのだろうと思いました。

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著者プロフィール

作家

「2023年 『ベスト・エッセイ2023』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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