狐笛のかなた (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 676
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  • Amazon.co.jp ・本 (392ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101302713

感想・レビュー・書評

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  • 私の中ではバルサとエリンの2つのお話だけでもう確固たるものがある、この作者さん。
    その初期の作品であるこの本は、先日のフォローしている方のレビューを読んで手に取った。

    亡き母から人の心が聞こえる〈聞き耳〉の力を受け継いでいる小夜、この世と神の世の〈あわい〉に棲む霊狐・野火、森陰の屋敷に幽閉されている少年・小春丸、ある夜、この3人が偶然出会ったところから始まる物語。
    彼らは隣り合う2つの国の争いに巻き込まれていくが、過去の因縁の渦に巻き込まれながらも懸命に生きようとする小夜に、使い魔として生きながら彼女に寄り添おうとする野火、彼に毒づきながらも理解を示す玉緒の変化など、それぞれの健気な心情と行動はバルサやエリンの話に似通ったところもあり、この時代不詳だが美しく妖しい日本を舞台にした物語を楽しむことが出来た。

    現在の作者の手際を思えば、小夜が持つ力のすべてが描き出されたわけではなかったように思えることや小春丸がなんだか置き去りにされてしまったような筋書きにはいささかの不満が残るところはあり。

  • 憎しみの連鎖は誰かが復讐を諦めなければ止まらない。
    春望がこれからの子たちのことを考え、若狭野を返したところが印象深い。

    すれ違いつつも、互いを思いやる小夜、野火、小春丸の関係も良い。そして玉緒の気の利かせよう、立ち回りの上手さ、グッジョブ

  • 共感、思いやり、勇気、命を感じる。大人も純な気持ちで楽しめるのが優れた児童向けファンタジーなのだろう。2023.10.9

  • 読みやすかった。
    丁寧な場面描写とスムーズな展開が心地よかった。
    特に最後の場面が美しかった。

  • 日常を離れて、没頭して読むことができた。
    あたたかい世界観、スピーディな物語展開でした。

  • 上橋菜穂子氏の長編作品やデビュー作を読み終えてしまいこの本に辿りついた。
    基本的なファンタジーと感じた。要素を抜き出して絵本にしても、味わいを楽しめると思う。
    他の物語と違って統治、政治、民族が人々の思想に影響を与えているという深みは感じられなかった。

  • 最近は研究書やドキュメンタリーなどが多くて、久しぶりに物語世界に浸った満足感がある。昔、物語本しか読まなかった頃は考えたこともなかったけど、1人の作家の頭の中の空想からこんな風に世界が構築されることに最近はびっくりする。ファンタジーの世界は偉大だ、と今さらながら思う。
    狐笛のかなたのラストシーンは哀しい。小夜と野火は現世に適合しない人たちだった。いたらその能力を期待され、本人の意思に関わらず、また世が乱れる元となってしまっただろう。だから二人はあわいに生きる事を選ぶしかなかった。小夜と野火は幸せだろう。ただ彼らを受け入れることができなかった私たち、私たちに拒絶された2人を考えると泣けて仕方ない。私、このテーマダメなんだ、すぐ泣いてしまう。

  • 呪いと生と死の物語。

    上橋菜穂子さんの作品は,厳しい。生きるとはどういうことかを突きつけてくる。現実じゃなくてファンタジーだからこそ感じられる,選択の厳しさ。私は何を大切にしたいのか。

    小夜は人の心が聞こえる力を持っている。幼い頃出会ったけがをした狐,屋敷に閉じ込められている男の子。亡き母の秘密。隣り合う国の争いに,自分の母や一族,力が関係していると知った小夜はどうするのか。小夜に助けられた霊狐・野火は主を裏切るのか。解放された小春丸は。誰もが自分の信じるものに頼り,どうにか結末を目指そうとする。エゴは醜いものだけれども,否定するのは難しくて。

    もっと壮大な長編にすることもできたのではないかと思った。終わったときにあっけなく感じた。ハッピーエンドではあるけれども,本当にこれで終わりなのか。しかし,実際もそういうものなのだろう。壮大で満足感のあるエンドマークなんて,現実には早々出てこない。現実を語るファンタジー。

  • 会社の人に、面白いからと貸して頂いた本。

    本屋大賞も受賞され、気になっていた作家さんだったが、読んだことは一度もなかった。

    ストーリー的には、浦島太郎や鶴の恩返しではないが日本人には受け入れやすいような気がした。

    期待する展開を裏切らないのも良いのかもしれない。

    ただ、ファンタジー慣れしていない為、世界観を掴むのに難儀した。
    何となくこの物語の世界観を掴みかけたかなぁ・・・
    と思った頃には、既に物語は終わっていた(^-^;

    一日で読み終わりました。
    児童文学ということで、読みやすさはあるのかもしれない。

  • 憎しみが憎しみを呼ぶ。それが根源の原因を覆い隠してしまわぬうちに。

    余所者として幾らかのよそよそしさを抱えながら、少女は村の外れで祖母と暮らしていた。
    ある日、年の瀬の市にて彼女は自らの生まれを知る者たちと出会い、やがて国境にある豊かな土地を巡る隣国間の憎み合いに巻き込まれていく。

    最初は逃げることしか身を守る術を持たなかった少女が、次第に他者を守るために相手へ対峙するようになる変化が目を惹く。
    逃げることは悪いことではなく、生き延びるための有効な手段だ。
    しかし、他者を守るために自分が出来ることは共に逃げるか、立ち向かうことだ。
    だが、その中で彼女は気付く。立ち向かっても相手に新たな憎しみが生まれ、その輪廻は終わりが見えないことを。
    それならば、まだ原因が見えるうちにそれを取り除いてしまおう。

    恨んでも、時は戻せません。この先を変えることしか、私たちには出来ないのです。

  • あー!ツボだった!!好きな話だった!!

    人の心が聞こえる少女・小夜と
    霊孤・野火の恋と戦いの話。

    春名ノ国の有路一族と、湯来ノ国の湯来一族。
    お互いに憎しみあって、領地の取り合いをしている。
    湯来一族に使える呪者に使い魔にされた野火を解放しようと
    とにかく進み続ける小夜。

    その他にも小夜の生い立ちとか、
    ずっと屋敷に閉じ込められていた小春丸とか。
    いろいろあって、とにかく面白かったです!

  • 純粋で素敵なお話でした!

  • 和製ファンタジー。随所に日本らしさを感じる世界観で、守り人シリーズと同様にクオリティの高い作品であることに間違いはない。特に人と動物を峻別して考えないという感性には、ノスタルジーを感じて良かった。ただ、やはり好みで言うと、洋物のファンタジーの方が自分は魅力を感じる。理由はまだわからないが、おそらく日本文化と独特のある種の閉鎖的な世界観にワクワクしないのかもしれない。自分はもっとダイナミックで開放的な世界観が、少し抽象的ではあるが、好みである気がする。

  • 前から気になってた。ようやく。

    舞台が日本的であること、恋愛が主たるテーマであること。これまで読んできた作品と雰囲気が随分違う。
    それなりに楽しめたけど、こうなると結構普通だった。

    結局、私はこの著者の人類学に裏打ちされた、つくり上げられ、構築される世界観が好きなのだ、ということがよくわかった。

  • 物語の内容は安定の上橋作品。

    小春丸が思った以上に絡んでこなかったのは残念。

  • 上橋さん大好きなんだけど、今作はいまいち入り込めなかった。和物だからかなあ。
    ただ、ラストの宮部さんのコメントでハッとした。
    10年も屋敷に閉じ込められていた小春丸は、もしかしたら自分の自由意思で身動きがとれない、子供そのものの象徴なのかなあ。

  • 読みやすい
    大人には少し物足りない部分もあるが
    読後感良し!

  • 72

  • 守り人シリーズや獣の奏者が面白いので初期の作品も読んでみたけど、期待したほどではなかった。深い描写がないというか、小夜の父母の話や「守り神」の話やらをもっと入れてほしかった。
    小夜の心の声が聞こえる能力も後半は忘れるくらいに出てこなくて、設定が生かしきれていない感じ。
    小春丸ルートだと思って読んでいたら、まさかの野火ルートだった。

  • 2018.8.6
    文章も登場人物も綺麗でサクサク読めた。
    呪いの力が欲しい

  • 野火と小夜の話。

    日本ファンタジーだが、内容的には恋愛モノなのでキャラに入れ込めるかどうかと言うところな気がした。小春丸と小夜の話なのかと思い込んでしまっていたので、どうも当てが外れながら読んでしまった。

    ふわっとした体系化されていない不思議の描写はそこそこ好き。

    個人的には話の道筋が分かりやすい精霊の守り人のほうが好みみたいだ。

  • 「春名ノ国」と「湯来ノ国」の土地をめぐる争いの中、敵対する事になってしまった野火と小夜の物語。

  • ぼちぼちですかね。
    読みやすかったが、何となく設定に対して今ひとつ盛り上がりきることができませんでした。呪者の強さとのバランスが少し強すぎたような感じがして、それが気になって盛り上がり切れませんでした。
    獣の奏者を先に読んでいましたが、読みやすさ的には変わりませんが、内容的にこちらは少し突っ込みどころが目につきましたね。

  • 狐か…
    コマルマルじゃなかったのねぇ
    小さな恋の物語

  • なぜか見落としていた上橋さんの初期の作品。珍しく日本が舞台でとてもノスタルジックな感じです。彼女が全開する要素が随所にちりばめられている佳作でしょうか。

  • 最初ということで手に取った。獣の奏者や守り人シリーズに通じるような雰囲気。
    2016/2/23

  • 人の心の声を聞くこができる能力を持つ12歳の少女、小夜と、彼女が助けた子狐・野火と、森の奥の屋敷に幽閉されて暮らす小春丸の話。
    切なく哀しい話なんだけど、不思議と、呪術や変化などを扱っているだけあって、ファンタジー要素が強く、そこまで暗さは感じない。上橋さんの作品では、シリーズではなく、読み切り長編物語だったので、やはり他の作品と比べると、物足りなさを感じてしまった。せっかく厚みがある世界観が描ける人なので、もう少し、この作品も登場人物一人一人の背景を丁寧に描写しても良かったのかなあと。
    来年は、上橋さん作品のまだ読んでいない本を一気読みしよう。

  • 読みやすかった。

    最後の終わり方が人によって
    視点によってそれぞれ違うのかなって~
    思ったね。

    もう少しこの物語に浸っていたい
    感じがしたね

  • とても和テイストなファンタジーです。
    上橋菜穂子さんということで安心して読み始めることが出来たし、期待を裏切らない物語。
    少しスケールは小さくまとまった作品ですが、質の良い良作でした。

  • 「そなた・・・また、遊びに来ぬか?」
    序章が一番好きです。3人の子供たちの出会い。

    狐がかわいい感じだし、自然あふれる情景もぴったり。ジブリさん採用しませんかー?

著者プロフィール

作家、川村学園女子大学特任教授。1989年『精霊の木』でデビュー。著書に野間児童文芸新人賞、産経児童出版文化賞ニッポン放送賞を受賞した『精霊の守り人』をはじめとする「守り人」シリーズ、野間児童文芸賞を受賞した『狐笛のかなた』、「獣の奏者」シリーズなどがある。海外での評価も高く、2009年に英語版『精霊の守り人』で米国バチェルダー賞を受賞。14年には「小さなノーベル賞」ともいわれる国際アンデルセン賞〈作家賞〉を受賞。2015年『鹿の王』で本屋大賞、第四回日本医療小説大賞を受賞。

「2020年 『鹿の王 4』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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