夢の守り人 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (348ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101302744

作品紹介・あらすじ

人の夢を糧とする異界の"花"に囚われ、人鬼と化したタンダ。女用心棒バルサは幼な馴染を救うため、命を賭ける。心の絆は"花"の魔力に打ち克てるのか?開花の時を迎えた"花"は、その力を増していく。不可思議な歌で人の心をとろけさせる放浪の歌い手ユグノの正体は?そして、今明かされる大呪術師トロガイの秘められた過去とは?いよいよ緊迫度を増すシリーズ第3弾。

感想・レビュー・書評

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  • シリーズ3作目。夢をテーマにした作品で、トロガイが人間らしくみえるところやチャグムの成長を感じられるところから、シリーズとして安定してきた感じがしました。

  • 今回はちょっとホラーな感じ。
    序盤の夢の中に引きずり込まれるだけでもホラーテイストがあったが、話が進んでいくと『花』が咲いて枯れれば眠った人達は戻ってくることが明らかになり、怪異に終わりがあることがわかってくる。
    被害者(?)達が見る夢も、帰りたくないような幸せなもので、夢に囚われている間は体も衰えていかないと救いがあったことで後味の悪さは感じながらも怖さは薄れていた。

    だが、中盤から様子がおかしくなる。
    夢へと誘う歌の人の弱みにつけ込むような意地悪さや執拗さ、夢の中からコチラに飛び出てくる(タンダを取り込んだ)異形の追跡者『花守り』、『花』が狂っているような気味悪さと手段を選ばぬ歌い手への執着・・・。
    と、異界ホラーじみた要素が盛り込まれてくる。

    途中は「どうやってまとめるんだ?」「この強烈な一の妃の恨みはきれいにオトせないんじゃないか」と思ったが、いつも通り予想を上回って、きれいに、人間的に丸く収めてきた。

    上橋作品にはファンタジー的な怖さはあってもホラー的な怖さは無かった(他の作品は、理不尽な状況でもその世界の理で理解可能だったり、理の延長だった感じだが、本作は理解不能な怖さ)。そういう意味で本作だけが浮いているような感覚を持った。もっと言えば、「この人は(ファンタジーだけでなく)ホラーが書けるんじゃないか?気味の悪〜い話が。」とも思った。
    この感覚については、あとがきにも似たような記述があり、本作はシリーズでも異色の作品のようだ。


    作品はこれまでのシリーズ通り良かった一方で、巻末の養老孟司の解説は冗長で面白くない。
    帯に書いてある一言だけで充分で、途中からは(本書の内容やこの分野での位置づけではなく)自分の考えを小難しく長く書いているだけに感じる。
    読んでいて「コイツ、本当にこの本を読んでいるのか?解説が書けないならこの仕事を受けなきゃいいのに」と思った。
    全て読む意味がなさそうだったので途中までで読むのをやめた。

  • 初読の時は前2作に比べ物足りなさを感じたが、再読すると面白いと感じた。現実から逃げ込む先としての夢。実生活においても、似たような逃げ込み先を用意しておくことが多いのではないか。辛さの大きさに比例して、逃げ込む切実さも変化する。自分を守るための防衛措置としての夢。ファンタジー要素を取り払えばいくらでもあり得る話だと感じた。

  • 踏鞴(たたら)を踏(ふ)む
    【意味】
    1 たたらを踏んで空気を送る。
    2 勢いよく向かっていった的が外れて、から足を踏む。
    (goo辞書より)

    進展なしかーい!(ある意味ごっついネコバス違うネタバレ)
    いい歳したおばさんおじさんが進展なしかーい!(確かバルサ女32歳、タンダ男30歳)

    はい、自分の過去と向き合って新ヨゴ皇国に帰ってきた女用心棒バルサ、待っていたのは幼なじみタンダの大ピンチ!タンダの師匠トロガイや皇太子チャグムの助力を得ながら無事タンダを助け出したバルサ

    で、進展なしかーい!
    中学生か!中学生の淡い恋模様か!
    チューくらいせーよ!
    どんだけ児童向けやねん!
    いや児童向けだけども!

    78歩くらい蹈鞴踏んだわ!(78歩はもう蹈鞴じゃない)

  • トロガイ師の過去を紐解くお話。
    前2作のような派手さや重厚さはないけれど、花と夢の世界の美しさや、トロガイ師とタンダの呪術がたっぷり描写されてて良い。
    ただユグノには若干イライラする…笑(本人のせいじゃないし、ラストの流れは良かったけど)
    そしてタンダが痛々しくてしんどい…。

    少しだけどチャグムが出てきてくれて嬉しい巻でもありました。
    子の成長は早い…(親目線)

  • 1,2をすっ飛ばして読みましたが、意外と読めます
    この本は息子の通う小学校の学校司書の好きな本で紹介されていました。
    正直しんどい時に借りたせいもあるけど全然設定が入ってこなくて、一カ月読むのにかかった。
    病んでいる人にとっては、ユグノ(木霊の想い人で、歌で人々を若がえらしたり、寂しい人、自分の人生につまらなさを感じている人にその人にとっての、自分が見たい夢を見させる事ができる)
    魅力的な登場人物です。
    ユグノに会いたい!夢の世界にとり込まれたい!
    と序盤では思いました。
    姪を助けようとして、魔物に取り込まれる危険を犯し夢にはいったタンダが、あっさり花番に花の守り人にさせられ、夢の外では人鬼と化してしまったシーンでは優しい人程感化されやすい人の弱さを感じました。
    物語の中盤では、夢の中でなんとか術を使い、完全支配から抗うタンダが夢に囚われてしまった皇子チャグムに気づき、チャグムを説得して夢から覚める様に促すシーンがあるんですけど、結構、病んでるとキツイ内容です。何故なら病んでいる人間は判断、決断力が落ちてるから。
    憎しみや悲しみで他の魂を道連れをしようと、花番に乗り移った一の妃に、共鳴してしまいました。
    後半は、一ノ妃が子を失った悲しみや憎しみを乗り越えて戻るシーンがあり、ユグノ、バルサに救いがあり、タンダも、バルサ、ジン、トロガイに助けられて、一見ハッピーエンドですが、チャグムの決意には胸が痛みます。よくそんな人生を生きようと決意できたな、と。
    あと、最後のページの田の作業をしているふつうの人々のくだりに闇が深い作品だと思いました。
    ちなみに、私も、2023年3月まで2年学校司書をやっていて、自身が配属された小学校にも中学校にもこのシリーズあったんですけど・・
    結構際どい作品です。心身ともに健康な子に読んでもらいたいです

  • 自分の心が弱っている時に忍びこむ、何もかもから逃げ出したいうずき。
    自分不器用ですけど、それって誰にもあると思ってます。

    この本、惹かれるんです。
    生命と魂の繋がりや、死の瞬間に何が起きるか。その後に何が起きるかの描写も。
    それから、死のすぐそばを辿っているときの
    無自覚な恍惚状態に気持ちが共振する感じ。

    そして、(色んないい場面をすっ飛ばしますが、)
    「なんだかんだあっても、こっちの世界で生きようや」、というメッセージが嬉しいというか。
    同意見です。



  • これまでの3作の中で最も情緒的な話
    読了

  • トロガイ師の過去がわかるお話。
    周囲と同じように生きたいと思う心と、外れた道を突き進んで自分らしくいきたいと思う心。
    隣の芝生は青いというけれど、違う道を選んでいたら?と夢を見てしまうのって、誰にでもある当たり前のことだよなぁ。

    バルサとチャグムはどんな形で再開するのか期待していたのだけど、まさかの唐突な再会に思わずニッコリ。チャグムがものすごくたくましくなっているからこそ、真綿で包むように育てられた父親とは相容れられないところが、今後問題として発展していきそうだなぁと勝手な想像をする。

  • 日常で自分の思うようにならなくて夢を追いかけている人が眠ったきり起きない。ずっと幸せな夢の中にいたいから…。
    今回はバルサよりタンダやトロガイの出番が多いので新鮮な感じでした。

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著者プロフィール

作家、川村学園女子大学特任教授。1989年『精霊の木』でデビュー。著書に野間児童文芸新人賞、産経児童出版文化賞ニッポン放送賞を受賞した『精霊の守り人』をはじめとする「守り人」シリーズ、野間児童文芸賞を受賞した『狐笛のかなた』、「獣の奏者」シリーズなどがある。海外での評価も高く、2009年に英語版『精霊の守り人』で米国バチェルダー賞を受賞。14年には「小さなノーベル賞」ともいわれる国際アンデルセン賞〈作家賞〉を受賞。2015年『鹿の王』で本屋大賞、第四回日本医療小説大賞を受賞。

「2020年 『鹿の王 4』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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