アンのゆりかご―村岡花子の生涯 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (431ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101357218

感想・レビュー・書評

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  • 赤毛のアンから知った翻訳者「村岡花子」さんの生涯についてまとめられた作品です。

    生まれ育った家庭環境は良いとは言い難いが、父親のキリスト教信仰、社会主義的なものの考えかたによって、花子さんは幼いころからいろんな人に出会い、いろんな本に出会い、いろんな文化に触れられ、この時代では珍しい自立した日本女性だったのではないかと思いました。

    海外の有名な作品は日本語に翻訳されたものを読んできましたが、この作品を読んで、原文で読んでみたい、花子さんのようにその作品の国の文化や慣習も勉強したら、より興味深く作品を楽しめるかなとも思ってしまいました。

    また、花子さんと花子さんが学んだ東洋英和女学校のカナダ人宣教師たちこそが、国境を越えて平和祈り、子供たちに平和な未来をという思いから行動に移していったノーベル平和賞的な人たちだと思いました。

    最後に、花子さんと儆三さんのような大恋愛してみたいものですね。こんなに愛し合い、尊敬しあえる関係はうらやましい限りです。

  • 秋葉原の古本屋で100円で購入した。100円の元は圧倒的に取れる良い本だった。

    赤毛のアンの日本語版は読んだことないと思うが、翻訳にこれだけの情熱と、歴史が積み重なっていたとは。
    そもそもこの村岡さんの歴史が、自分でも名前を聞いたことある有名人たちに囲まれている。
    芥川龍之介、与謝野晶子、菊池寛、宇野千代、樋口一葉、平塚らいてう…
    第一次世界大戦、第二次世界大戦、そして日本の敗戦… アンの翻訳をしながら、非国民と呼ばれながら原稿を守り、女性の権利向上にも協力し、翻訳文学、そして児童文学というもの自体がまず無い文化の中、子供のために海外児童文学を翻訳し続けた… うーむ、すごい。
    この人の友人関係もすごすぎたので、この本は「赤毛のアンを翻訳した件」どころじゃなく、この人達が歴史を作ってきた証明だった。甘く見てた。赤毛のアン自体は正直あんまり出てこないし、出てくるのもだいぶ後半なので、どちらかというと近代史の歴史小説として楽しめるかと思う。

    しかし、ラブレターが全部保存されていて、万人に公開されるってどんな地獄だよ。「帰り際のkiss…… まあなんて困る人だとあなたは思ふたでしよ。」とか気が狂いそうになる。旦那さんも墓から蘇ってそう。

    そして肝心の本のタイトル、もともと「赤毛のアン」ではなく、村岡さんは「窓辺に倚る少女」にするつもりだったらしい。それだったらだいぶ違った未来になってた気がする。編集者が「赤毛のアン」を提案したが村岡さんは一旦即却下したが、娘のみどりが絶対これにするべきと推したためらしい。ただ、ちゃんとこれを読むのは若い人だから、若い人の感性に合わせるとして了承した村岡さんもあっての明断。

    この間読んだ「キラキラネームの大研究」にもあったが、変わった名前は今が特徴ではなく、むしろ英語が入ってきた時代やちょっと昔も相当アレだったというのを、ところどころ感じた。特にガントレット恒子という名前が強すぎて本に集中できなかった。エドワードガントレットさんに嫁いだかららしいから当たり前なんだが…

  • 「赤毛のアン」を翻訳された村岡花子さんのお話。「赤毛のアン」が好きなので読んでみました。

    辛い体験も多い中で、信念を持って生きる強さが感じられました。

    自分の娘にも「赤毛のアン」を読んで欲しいなぁと思います。

  • 朝ドラ「花子とアン」の原案作です。
    時代の波に揉まれながらも、日本に児童文学の種をまいてくれた信念に強い憧れを覚えました。

    翻訳を志す後輩に、まずは母国語をしっかり勉強なさいと伝えるエピソード が印象的です。

    女性の地位向上のために、政治的な活動に参加していたのも意外といえば意外なのですが、そこで広岡浅子とも面識があったりして驚きました。

  • 村岡花子さん、今とは全く異なる時代の中で、家庭と仕事を両立した女性として、尊敬する1人です。

    自分の夢と家族、どちらを優先するべきか悩んでいる私にとって、今後の道標になった本。

    女性、家庭、英語、といったキーワードに興味がある方にお勧めしたいと思います。

    ▼覚えておきたい▼
    ・彼女たちは、自分ひとりの夢の実現よりも、共存の道を選んでいく。しかし、それは挫折や犠牲ではない、確かに夢からは遠廻りしたかもしれないが、アンもエミリーも新しい道で幸福を見出す。
    ・自分の望みを一筋に貫ける人は、ほんの僅かにすぎない。(中略)人生には、思いがけないさまざまなことが起こる。無理を通せば誰かを傷つけ、あるいは、どこかで行き詰まる。

  • 不登校できない不登校中学生時代、とりあえず、生きていくんだと、村岡花子訳「赤毛のアン」に励まされました。あらためて、「赤毛のアン」を日本語訳してくださって、うれしくなりました。

  • 私が子供時代から幸せな読書生活を送れたのも、村岡花子さんをはじめこの時代の方々ががんばったおかげだったんだなぁとしみじみ。感謝の念しかありませんわ。
    赤毛のアンを読んだのはほんと最近のことなのだけど。

    「あさが来た」の広岡浅子さんと親交があったんだなぁ。
    村岡花子さんも「花子とアン」で朝ドラになりましたしね…。

    http://www.excite.co.jp/News/reviewmov/20140927/E1411774487314.html
    完訳だと思ってたので、こちらの記事を読んでびっくり。

  • とても興味深く読み進めた。
    今まで戦時中の話は怖さも手伝い読むことがなかったが、今回のこの本で初めてきちんと読むことができた。それは戦中に物質は貧しくとも心の豊かさを失わずに生活していた日本人の姿がはっきりと見えたからだ。
    また広岡浅子やヴォーリズ、澤田美喜など明治期に活躍した人々との接点が見えてきて嬉しくなったり、教科書の中の歴史上の人物だと思っていた市川房江や、生きて動いている姿をみたことがある宇野千代が同時代に活動しているのを知り、昭和初期という時代が本当に自分たちの今につながる実在の時代だったのだなあと感じた。今更だけど本当に感じた。

    今まで手にしてこなかった赤毛のアンを読んでみようと思う。いや読みたくてたまらない!!!

  • 自分が小学6年生の時ひきつけを、起こして入院したさい、いとこのお兄ちゃんが見舞いに来て渡してくれた本が赤毛のアンでした。

    それまで本を読む楽しさがまだわからなかった私が 最後まで読み通した初めての文庫本でした。

    その時の楽しさを感じたことはその後も
    読書をするきっかけになりました。

    そしてそれから40年余りを経て
    いま、赤毛のアンを翻訳した村岡花子さんの生きていた時代、そのころの思いなどが胸に響きました。

    10代の女の子が共感し、希望を、持って生きていく力を貰っていたのだとあらためて思いました。
    もう一度、アンの世界を尋ねてみようかな。

  •  タイトルを聞いて知らない人はいない、カナダを代表する『赤毛のアン』を翻訳し、日本に広めた村岡花子。朝の連続テレビ小説『花子とアン』の主人公でもある彼女はどういう女性で、またどう生きてきたのか。花子の孫である恵理が綴る祖母村岡花子の生涯とは……

     ドラマとは違って、甲府出身ではあるけれど、物心ついたときには品川に住んでいた花子。と、まぁ設定は多少違うのだけれど、懸命に英語を勉強したことや、カナダ人の宣教師たちに学びながら、文化や考え方など大きな影響を受けたことなどはドラマの中の花子そのもの。
     仕事や結婚に対する思い、女性の権利を獲得するために活動したこと、はたまた戦時中の市井の暮らしぶりまで、花子の人生をいくつかの節目に分けて書いてあるので、非常に読みやすく、村岡花子という一人の女性の生き方にどんどん惹かれていきました。あとがきの梨木香歩さんの文章もなるほどでした。

著者プロフィール

1967年東京都生まれ。1991年より姉の美枝とともに、祖母・村岡花子の資料をまとめ「赤毛のアン記念館・村岡花子文庫」として保存している。著作に、「アンのゆりかご 村岡花子の生涯」など。

「2014年 『赤毛のアン』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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