魔術はささやく (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (476ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101369112

感想・レビュー・書評

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  • 三人の女性がそれぞれ自殺、この三人は関連性があるらしい、その死もどうやら仕組まれたらしい、残るはあと一人…。
    その謎や真相を少年が追う。
    そしてすべてを知った時、少年は裁く側に回るのか?果たして……?──

    仕組まれたのは○○術とは予想外で拍子抜けした。現実的には立証できそうにもない事件に、これはサスペンス小説だからと割り切って読む。
    少年のエピソード、彼を取り巻く人々、社会問題も絡め、特にラストの急展開が面白い。

    「悪意はなかった。知らなかった。自分も騙されていた。金が欲しかった。私も被害者だ」
    犯罪にはこんな言い訳がそこらじゅうにありそうな気がする。
    最後にあの女性は猛省しているのか、許されるのか、「償い」「正しい裁き」って何だろう?とモヤモヤが残る。

  • 主人公の守はたぶん私と同年代。だから自分の高校時代のことを懐かしく思い出しながらの読書となった。

    まだネットもなければ携帯もスマホもない、アナログな昭和のバブル時代に起こった、一見ありふれた3件の事件。
    その最後の事件に奇しくも関わってしまった守は、事件の真相を追う内に3件の事件の奥に潜む奇妙な繋がりを突き止めてしまう。
    全ての鍵を握るのは、まさに今作の表題『魔術はささやく』。
    守の、とても高校生とは思えない冷静さ、賢さに驚かされる。それに対し、彼に近づく大人たちのなんと未熟なことか。そんな"大人"な彼だからこそ、きっとこの魔術は託されたのだろう。
    「犯した罪をスリッパを脱ぐように簡単に捨てて、自分だけ新しい靴を履きに行った」身勝手な大人たち。償いと称して自己弁護しかしない大人に対して、守がささやいた魔法の呪文に、守の行く末を案じていた私もすっきり。守は大丈夫。きっとこの先も有為な人生を送れたはずだ。

    ピンク電話にコインを入れてダイヤルを回す、恋人商法、ギャル、ワープロ、サブリミナル広告、催眠療法…どれも懐かしい。
    でも学校内のイジメの光景は昭和のあの頃からずっと変わっていない。

    • bmakiさん
      こんばんは。

      もうこの本のあらすじなんて一つも覚えていないのですが、この本が宮部みゆき先生の本の中で、自分には一番面白かったことだけ覚...
      こんばんは。

      もうこの本のあらすじなんて一つも覚えていないのですが、この本が宮部みゆき先生の本の中で、自分には一番面白かったことだけ覚えています。

      昭和のお話でしたか。。。
      再読したくなってきました(^^)
      2024/04/27
    • mofuさん
      bmakiさん、こんばんは。
      昭和のバブル期のお話でした。懐かしかったです。
      宮部さんの初期の作品でしたけど、今も昔も宮部作品は面白いですね...
      bmakiさん、こんばんは。
      昭和のバブル期のお話でした。懐かしかったです。
      宮部さんの初期の作品でしたけど、今も昔も宮部作品は面白いですね。人に対する優しさがにじみ出ていて、ラストはほろりとさせられました(*^^*)
      2024/04/27
  • 宮部作品に最近ハマってて、3冊目となりました、
    この魔術はささやくは少し変わった内容のミステリーに戸惑いながら読み進めるうちに物語がはっきりしてくる…そんな印象を受けました。

  • 30年前の作品にも関わらず色褪せていない。素晴らしい。
    ただ催眠術というのはどうかと思う。雑に読んでしまったからか、いまひとつ盛り上がれなかった。

  • 1989年日本推理サスペンス大賞受賞作。
    三人の若い女性達が、違う場所・時間・方法で死んでいく。その一つの死に関わってしまったタクシー運転手。その甥である高校生が、それらの死の関連性を突き止め、真相に迫ろうとしていく。その高校生は、幼年期に実父の横領失踪という逃げられない過去を持っていた。
    ストーリーは読み応えあり、トリックはもう時代的に納得するのは難しいかなというところ。
    ラストは二重に仕込まれおり、ヒューマンドラマとして充実している。

    少年がアルバイトしていた書店で、「1984」をネタに仲間で冗談を言う場面があり、書店員感の仕込みが面白いなと思った。

  • なんとなく買った一冊。

    20年以上前の小説だったんだね。
    あまり古臭く感じなかった。

    題名から何となく催眠術が関係してくるのかな?と思いつつ読んだがやっぱり催眠術の内容だった。

    読んでいくうちにだんだん話に引き込まれていった。
    最後方はちょっと感動した。

    催眠術ってちょっとインチキ臭いイメージがある。
    本当に催眠術で人を操る事が出来るのかな?と感じた小説でした。

  • 25年も前に書かれたとは思えない、今でも色褪せないミステリー作品でした。また、子どもの成長小説として読んでも面白い。真実を知ってしまった後の決断への葛藤の描き方は見事でした。

  • スマホの出てこないミステリーを読みたくて、
    固定電話でのやり取りがノスタルジックでした。

    ひき逃げ、横領、恋人商法、ピッキング、サブリミナル、催眠術、盛り沢山の問題を1人の少年が繋ぎ合わせて解決していく、主人公の日下守くんは強くて凛とした人で見習いたいな、と思いました。世の中こんな人ばかりだといいのにな。

  • 実は、宮部みゆきさんの作品って、まだ2作目なんですよね~。読みたい作品は沢山あるんですけど。。。

    なんとなく初期の作品を読んでみたくて手に取りました。
    ぐいぐいと引っ張っていってくれるので、あっという間に読了。
    流石、数々の賞を受賞している人気の作家さんです。

    「魔術はささやく」は、なんと約30年前の作品で、バブルのあの頃の時代を知っている私としては、ニヤリとしてしまうことが多々ありました。
    喫茶店のピンク電話とか電話ボックスとか、今はもうあまり見かけませんよね。

    事件も当時の時代背景ならではのところもありますが、根本的には現在も同じだと思いました。
    家の留守番電話やマニアックな雑誌などが、ラインやSNSや動画サイトなどに変わるだけのこと。

    だって結局のところ人間の心のことだから。

    読みやすいのですが、少々わかりにくいところもありました。ここまで手の込んだ殺人事件を起こす犯人の動機とか。
    あとは読むひとが、どこを、何を、拾い上げるかなのかなとも思います。

    宮部さんの作品はまだまだ沢山あるので、また読んでみたいと思います。

  • 3人の女性の死は自殺ではないのか?だとしたらどんな方法で殺したのか?そしてどんな繋がりがあるのか?気になってどんどんと読み進めました。
    その方法は反則…と思ったけれど、伝えたいところは他にあるのでまぁよし。
    守のせっかくの能力が序盤にしかつかわれず残念。普通の高校生だもんね。

    文庫版の表紙はマグリットの山高帽のオマージュかな。さてその意図は?

著者プロフィール

1960年東京都生まれ。87年『我らが隣人の犯罪』で、「オール讀物推理小説新人賞」を受賞し、デビュー。92年『龍は眠る』で「日本推理作家協会賞」、『本所深川ふしぎ草紙』で「吉川英治文学新人賞」を受賞。93年『火車』で「山本周五郎賞」、99年『理由』で「直木賞」を受賞する。その他著書に、『おそろし』『あんじゅう』『泣き童子』『三鬼』『あやかし草紙』『黒武御神火御殿』「三島屋」シリーズ等がある。

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