ふがいない僕は空を見た (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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レビュー : 643
  • Amazon.co.jp ・本 (318ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101391410

作品紹介・あらすじ

高校一年の斉藤くんは、年上の主婦と週に何度かセックスしている。やがて、彼女への気持ちが性欲だけではなくなってきたことに気づくのだが-。姑に不妊治療をせまられる女性。ぼけた祖母と二人で暮らす高校生。助産院を営みながら、女手一つで息子を育てる母親。それぞれが抱える生きることの痛みと喜びを鮮やかに写し取った連作長編。R‐18文学賞大賞、山本周五郎賞W受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • 性なんて別に興味ないよーみたいな顔して生きていて、仲良しの女友達とも下ネタなんて話さないし、訊かないし、開けっぴろげにすること自体ないんだけど。お互いに踏み込んではいけない領域と言いますか。たまにうっかり聞かされた他人のヘビーな性事情にうへぇ、となることはありますが、この「ミクマリ」の斉藤くんの初体験ほどじゃないね。

    年上の主婦と彼女の台本通りにアニメキャラのコスプレで…とか、しかもそれが隠し撮りされていて学校中にばら撒かれてしまうなんて。

    「世界ヲ覆フ蜘蛛ノ糸」はその斉藤くんのお相手(仮名:あんず)、「2035年のオーガズム」は斉藤くんの彼女だった松永さん、「セイタカアワダチソウの空」は斉藤くんの友人 福田くん、「花粉・受粉」では助産師をしてる斉藤くんの母へと視点が移ります。

    登場人物は全員どこか欠落したような環境に置かれていて、キワモノっぽい要素も多いんだけど、その分痛々しいほど生を意識させられます。

    子宝祈願や子孫繁栄ってきっと古来から普遍的に願われてきたもので、だから全国にそういうお寺や神社は星の数ほど存在して、男女のシンボルをご神体として掲げるところもあって。(八重垣神社とか)

    花も恥らう乙女としては当然赤面させられる訳ですが、まず健康な男女がその気にならなきゃ、人口なんて減る一方なんだよな…と考えれば、聖女のごとく性に無関心すぎるのも問題なのだよね。

    性と生と感情と。割り切るつもりが割り切れなかったり、大好きなのに欲情しなくなったり、ともあれ皆「やっかいなもの」を抱えて生きているのだろう。

  • 「ふがいない僕」達による連作短編。
    この世の中、いかにちょっと冴えない「ふがいない」男女の多いことか。
    それはいじわるな神様の気まぐれないたずらなのかもしれない。

    窪さんは人が抱える寂しさや孤独を描くことが巧い人だとしみじみ思う。
    みんなほの暗く、途方もない「やっかいなもの」を抱えもがき、それでもちょっとずつ前へ進む前向きさも感じられる。
    そんな「ふがいない僕」達のことをやりきれない思いで読み進めながらも、嫌いになれず、むしろ愛おしくさえ思える私もいる。

    窪さんのデビュー作は私の心にいつまでも優しい余韻を残してくれた。
    読み終えた私も空を見上げる。
    僅かばかりの青空も曇り空の隙間から見えるはず…今まさに、そんな気分。

  • こんなにどストレートに人間を弱さを表現して、こんなにどの主人公もどうしようもなく表現されている本はなかった
    ただ脚色せずそのままの人間の弱さ、そこから立ち直る姿を丁寧に描き上げることで、すごく人間味のある作品だと思った

  • 幾つもの人生がリンクし合うことでいや増す人間の魅力を、見事に表現している作品です。これはちょっと、今までにない読後感だぞ…。

    コスプレイヤー主婦とのSEXにのめり込む高校生。
    姑に赴任治療を強いられ諾々と従う嫁。
    彼氏の浮気映像に胸高鳴らせる女子高生。
    ホモ疑惑のあるイケメンに勉強を教わる高校生。
    そして、ふがいない息子を持った助産婦。

    一編一編だけに注目すると、人間の身勝手さや宿業のようなものを痛感してしまうような内容です。
    正直言って、然程魅力のあるキャラクタ達でもないですし、読んでいて胸躍る・心地良くなる・驚きがある物語でもありません。

    ただ、視点を変えて語られる彼等のストーリーが、あまりに生々しい現実味を章を経る毎に肉付けされていくような読み応えに、すごく惹かれたのも事実です。
    いつまでも彼等の日常の中の非日常を追って行きたくなるような、不思議な気分になってしまったのでした。何だろうなあ、この感じ。

    語り手を変える連作短編集って珍しくないのに、こういう風に「物語の内容」じゃなく「登場人物達から受ける印象の変化」に注目したくなったのって、初体験じゃないかしら〜(°_°)

  • 初めての窪美澄さん作品。
    以前、ミュージシャンの前野健太さんと「性」をテーマに対談されていたことをきっかけにずっと興味があった作家さん。
    予想通り、冒頭から高校生と主婦のコスプレセックスの描写が出てきて、度肝を抜かれるが、
    不思議と異次元のお話という感じがなくて、嫌じゃない。
    出産、妊娠にかかわる描写も多くて、
    私自身妊娠していることもたまたま重なって、性は特別なものじゃなくて、生活の一部だものね、
    と妙に納得しながら読み進めた。
    様々な生きづらさや、やるせなさを抱える登場人物たちの事情や心の中が、丁寧に描かれていく。
    ハッピーエンドばかりじゃないけど、それでも人生を肯定していくような、そんな気持ちになれる読後感。
    きっと、窪さんって優しい人なんだろうな。
    他の作品を読んでみよう。

  • この痛々しい人々よ。皆さん厳しい日常にも負けずに生きていく、そんな姿を見ていると、自らが慰められるのか、優越感に浸って自己満足に陥るのか、それとも。まぁそんな自己解析は置いておくとしても、こういう話は好きなんよねぇ。つまらん恋愛してないやつはいないっすよ、って言われれば、うむ、とうなずき膝を打ち。性欲と恋愛の境目なんて分からんよ、って言われれば、ハイルヒトラーと言って敬礼である。そんな分かる分かるスポットがいろいろ出てきて、まぁぶっちゃけ感覚が合うんだろうなぁ。
    でもここに出てくる人達みたいに、何をやってもちょっとうまくいかない、みたいに生きてるわけでもなく、実は全然違う世界を生きてるのに、でも分かるわー、とか言っちゃってる分かったふりの自分に乾杯、という上から目線気分が多分一番好きなんだよね。

  • 何年か前に見かけたときは、裏見て、急いで棚に戻して、手に取らなかったことにしたんだけど
    昨日は帯見て裏読んで、最初だけって思って、表紙がまわりにバレないようにすごい反らせてよんでみた
    最初から、女の人が書いたとは思えないくらいで、読んじゃいけないもの読んでる気持ちで、だけど、とめられなくて、自分がいちばん悲しかった日に、いちばん自分じゃなくなったことをおもいだして、温度をおもいだして、なきそうになった
    主人公たちの視線とか光とか音しか描かれてなくても、感情が痛いほどつたわってくる
    どの登場人物たちもどうしようもないほど人間らしくて、欠落してて、それでも必死で生きていて、読み終わった時にはひとりひとりをいとしく思ったし、この世界まるごと受け入れられる気がした
    期待してたただの官能小説じゃなくてよかった笑、性から生への昇華って、はてなだったけど、よみおえてなんとなくわかったような でもそのリッシンベンの意味はなんなんだろう、消えちゃうと何か洗練された清いものに変わった気がするのに、15年も経てばまたついてきちゃうんだね
    やっかいったらありゃしない

    あんずとさいとうくんみたいな、そこまでの愛を経験できる自信がないなあ
    まわりからどう思われたってお互いがいればいいのに、一緒にいることはかなわないし、かなわないってわかってるけど後戻りなんてできなくて、まわりから石をなげられることになって、それがすごくつらくて、自分だけじゃなく家族や友達にも迷惑かけているのがいやで、どれだけつらかったんだろう、とおもう
    それなのに自分の周りの人は自分を諦めてくれないし、もうやになっちゃうよなあ
    そんなときにわたしたちは空をみあげるんだ

    どうか今日もあのひとが寒い思いをしませんように
    なんてそんな言葉のやさしさがあったかくてつらくなった
    読み終えたらここらへんの、あかりがついてるおうちの家族と、そのとなりの家族と、その友達くらいまで、みんな幸せになってほしいとかそんなこと思える本

  • 一話を読んだだけではわからない、
    それぞれの心の動き。
    性から生に変わってきた辺りからのめり込んだ。

    福田くんが田岡さんの今を祈ったように
    私は福田くんとあくつの
    未来の道が開かれることを
    祈らざるを得なかった。

  • 何も知らずに読み始めたため、
    冒頭のエロ描写にビックリ。
    この本大丈夫か?と思ったが、良くできた群像劇で、途中からは安心して読むことが出来た。

    人間の性と生と青春と。
    男も女もみんな複雑な思いをもって生きていて、誰もが一歩踏み外すリスクを持っている。
    読んでて何ともいえない気持ちになるが、最後の助産院の回が生が産まれる瞬間を描いていて何とも力強く、前向きな気持ちで読み終える事が出来る。

  • 何とも表現しづらい。なぜか分からないけど、若い頃のとんがった感じを連想する。強いていうなら、ビレバンとかであの黄色いPOP付きで紹介されそうな。(知らないけど)
    映画も見たけど、どっちも同じ印象だった、ってのも珍しい。

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プロフィール

窪美澄(くぼ・みすみ)
1965年東京都稲城市生まれ。カリタス女子高等学校卒業。短大中退後、広告制作会社勤務を経て、出産後フリーランスの編集ライターとして働く。2009年「ミクマリ」で第8回R-18文学賞大賞を受賞し小説家デビュー。
2011年、受賞作収録の『ふがいない僕は空を見た』(新潮社)で第24回山本周五郎賞受賞、第8回本屋大賞第2位。同作はタナダユキ監督により映画化され、第37回トロント国際映画祭に出品。2012年、『晴天の迷いクジラ』で第3回山田風太郎賞受賞。2018年『じっと手を見る』で直木賞初のノミネート。

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