ふがいない僕は空を見た (新潮文庫)

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  • 新潮社
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レビュー : 631
  • Amazon.co.jp ・本 (318ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101391410

作品紹介・あらすじ

高校一年の斉藤くんは、年上の主婦と週に何度かセックスしている。やがて、彼女への気持ちが性欲だけではなくなってきたことに気づくのだが-。姑に不妊治療をせまられる女性。ぼけた祖母と二人で暮らす高校生。助産院を営みながら、女手一つで息子を育てる母親。それぞれが抱える生きることの痛みと喜びを鮮やかに写し取った連作長編。R‐18文学賞大賞、山本周五郎賞W受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • 性なんて別に興味ないよーみたいな顔して生きていて、仲良しの女友達とも下ネタなんて話さないし、訊かないし、開けっぴろげにすること自体ないんだけど。お互いに踏み込んではいけない領域と言いますか。たまにうっかり聞かされた他人のヘビーな性事情にうへぇ、となることはありますが、この「ミクマリ」の斉藤くんの初体験ほどじゃないね。

    年上の主婦と彼女の台本通りにアニメキャラのコスプレで…とか、しかもそれが隠し撮りされていて学校中にばら撒かれてしまうなんて。

    「世界ヲ覆フ蜘蛛ノ糸」はその斉藤くんのお相手(仮名:あんず)、「2035年のオーガズム」は斉藤くんの彼女だった松永さん、「セイタカアワダチソウの空」は斉藤くんの友人 福田くん、「花粉・受粉」では助産師をしてる斉藤くんの母へと視点が移ります。

    登場人物は全員どこか欠落したような環境に置かれていて、キワモノっぽい要素も多いんだけど、その分痛々しいほど生を意識させられます。

    子宝祈願や子孫繁栄ってきっと古来から普遍的に願われてきたもので、だから全国にそういうお寺や神社は星の数ほど存在して、男女のシンボルをご神体として掲げるところもあって。(八重垣神社とか)

    花も恥らう乙女としては当然赤面させられる訳ですが、まず健康な男女がその気にならなきゃ、人口なんて減る一方なんだよな…と考えれば、聖女のごとく性に無関心すぎるのも問題なのだよね。

    性と生と感情と。割り切るつもりが割り切れなかったり、大好きなのに欲情しなくなったり、ともあれ皆「やっかいなもの」を抱えて生きているのだろう。

  • こんなにどストレートに人間を弱さを表現して、こんなにどの主人公もどうしようもなく表現されている本はなかった
    ただ脚色せずそのままの人間の弱さ、そこから立ち直る姿を丁寧に描き上げることで、すごく人間味のある作品だと思った

  • 幾つもの人生がリンクし合うことでいや増す人間の魅力を、見事に表現している作品です。これはちょっと、今までにない読後感だぞ…。

    コスプレイヤー主婦とのSEXにのめり込む高校生。
    姑に赴任治療を強いられ諾々と従う嫁。
    彼氏の浮気映像に胸高鳴らせる女子高生。
    ホモ疑惑のあるイケメンに勉強を教わる高校生。
    そして、ふがいない息子を持った助産婦。

    一編一編だけに注目すると、人間の身勝手さや宿業のようなものを痛感してしまうような内容です。
    正直言って、然程魅力のあるキャラクタ達でもないですし、読んでいて胸躍る・心地良くなる・驚きがある物語でもありません。

    ただ、視点を変えて語られる彼等のストーリーが、あまりに生々しい現実味を章を経る毎に肉付けされていくような読み応えに、すごく惹かれたのも事実です。
    いつまでも彼等の日常の中の非日常を追って行きたくなるような、不思議な気分になってしまったのでした。何だろうなあ、この感じ。

    語り手を変える連作短編集って珍しくないのに、こういう風に「物語の内容」じゃなく「登場人物達から受ける印象の変化」に注目したくなったのって、初体験じゃないかしら〜(°_°)

  • 初めての窪美澄さん作品。
    以前、ミュージシャンの前野健太さんと「性」をテーマに対談されていたことをきっかけにずっと興味があった作家さん。
    予想通り、冒頭から高校生と主婦のコスプレセックスの描写が出てきて、度肝を抜かれるが、
    不思議と異次元のお話という感じがなくて、嫌じゃない。
    出産、妊娠にかかわる描写も多くて、
    私自身妊娠していることもたまたま重なって、性は特別なものじゃなくて、生活の一部だものね、
    と妙に納得しながら読み進めた。
    様々な生きづらさや、やるせなさを抱える登場人物たちの事情や心の中が、丁寧に描かれていく。
    ハッピーエンドばかりじゃないけど、それでも人生を肯定していくような、そんな気持ちになれる読後感。
    きっと、窪さんって優しい人なんだろうな。
    他の作品を読んでみよう。

  • この痛々しい人々よ。皆さん厳しい日常にも負けずに生きていく、そんな姿を見ていると、自らが慰められるのか、優越感に浸って自己満足に陥るのか、それとも。まぁそんな自己解析は置いておくとしても、こういう話は好きなんよねぇ。つまらん恋愛してないやつはいないっすよ、って言われれば、うむ、とうなずき膝を打ち。性欲と恋愛の境目なんて分からんよ、って言われれば、ハイルヒトラーと言って敬礼である。そんな分かる分かるスポットがいろいろ出てきて、まぁぶっちゃけ感覚が合うんだろうなぁ。
    でもここに出てくる人達みたいに、何をやってもちょっとうまくいかない、みたいに生きてるわけでもなく、実は全然違う世界を生きてるのに、でも分かるわー、とか言っちゃってる分かったふりの自分に乾杯、という上から目線気分が多分一番好きなんだよね。

  • 何とも表現しづらい。なぜか分からないけど、若い頃のとんがった感じを連想する。強いていうなら、ビレバンとかであの黄色いPOP付きで紹介されそうな。(知らないけど)
    映画も見たけど、どっちも同じ印象だった、ってのも珍しい。

  • 性癖の話でしょと読まず嫌いしてたけど、窪美澄作品を読み進めるにつれ、これもやっぱり読まないとなと思いきって読み出したら、最後のほうは涙が自然にこぼれました。ハッピーエンドじやゃないのに読後感は
    悪くなくて、再生とカタルシスを感じました。個人的には福田くんと七菜ちゃんがに感情移入しました。

  • 「性」というよりも、「家族」を意識させられる本でした。(性の果てに家族が生じるのだけれど)

    当時、書店で映画の予告が流れていて、コスプレをしながらえづく女性と高校生という画にびっくりとして、頭の片隅に強く刻まれた覚えがあります。

    とにかく、その性描写が頭から離れずに興味本位で読み始めると、一ページ目からすでにその色が全開で、ドキドキしながら読んでいました。けれど、まだまだ読書慣れをしていない自分にはドキリ、とするシーンが度々訪れ、その度に体力を消耗したのを覚えています。

    心理描写、心象風景、登場人物の機微、心の揺れ動き、この作品の中で起こる様々な出来事の中ではそれらが想像の絶するものばかりで、また、その表現も、一切の無駄を排した槍の一突きのように的確で苦しく、凄いものを読んでしまった、とただただ圧倒されていました。

    どうしようもなく悲しくて、やるせなくて、悔しくなって、読んでいる自分が悲痛に涙しても、当然ながら物語は進んでいきます。それでも、爽やかに締めくくられる最後にだけ、少し救われた気がしました。

    私にとって衝撃の一冊でした。
    窪美澄という作家のイメージを形付けたのもこの一冊です。

  • 生きるのは本当に辛い。でもこの世界は生きるに値しないほど悪くもない。たぶん、きっと、というかそう思いたい。

    主人公たちを襲う数々の悲劇に見舞われる。そこから彼らを救うのは簡単だろう。しかし、それでは所詮、フィクションだと批判されてしまう。作者が求めているのは主人公を救うことではなく、読者を救うことだ。だから、ただじっと主人公たちが立ち上がるのを待っている。
    大逆転もご都合主義のハッピーエンドも描かれていない。前進したと思えば後退し、もう大丈夫と思ったら心無い行為で悲しみの底にたたきつけられる。
    彼らの幸福を願わずにはいられないが、読者にできるのは「ただ信じて待つ」ことしかない。
    それがとても尊く大切なことだと気づかせてくれた。

  • 弱いけど、たぶんみんな強い

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