火星人類の逆襲 (新潮文庫 よ 11-3)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (357ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101421032

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  • H31年(R元年)大河ドラマ「いだてん」に登場している天狗倶楽部。
    https://www.nhk.or.jp/idaten/r/cast/
    早稲田大学学生を中心として、スポーツに燃えるバンカラ集団。バンカラとはインテリの高襟ハイカラ―に対して、蛮殻でバンカラ。
    中心人物押川春浪(しゅんろう)は冒険小説家。
    スポーツはイマイチだったため“日本最初の応援団長”となった虎髭彌次将軍、吉岡信敬(しんけい)。
    文芸評論家で電気工学者の中沢臨川(りんせん)。
    大河ドラマでは、日本最初のオリンピック選手として短距離走に出場した三島弥彦を賑やかに応援する。
    テング、テング、テンテング、テテンノグー。
    奮え(フレー)、奮え(フレー)、天狗!

    応援の決まり文句「フレー」の語源が「奮え(奮い立て)」だとは初めて知った!

    …さて、この「火星人類の逆襲」物語はウェルズの「宇宙戦争」を元にしています。
    宇宙戦争感想はこちら
    https://booklog.jp/users/junsuido/archives/1/4036525409#comment
    https://booklog.jp/users/junsuido/archives/1/4036525409#comment

    イギリスを襲うが地球の最近により滅び去った火星人が、それから13年後日本を襲うので「逆襲」です。
    最初は日本人も「13年前バクテリアによって滅びた火星人類なら、今度も放っておけば亡びるだろ」とイマイチ緊迫感がありません。しかし彼らの破壊力は凄まじかった。熱線攻撃の一瞥で次々焼かれる兵士たち、倒壊する建築物(慶応大学壊れちゃいました(笑))。
    阿鼻叫喚の東京ですが、世界情勢は緊迫中、日本国家としては、海外には日本の危機を知られてはならず、日本国民にはパニックにならない程度に避難させねばなりません。
    そこへ天狗倶楽部参入。
    当時の名物男だったらしい押川春浪や、虎髭彌次将軍吉岡信敬たちが偵察に出て、弱点を探り当てます。
    しかし頭が固くプライドだけ高い軍部は民間人の協力を馬鹿にしている。バンカラ集団天狗党は、そんな軍の態度がもどかしく、なんとか火星人撲滅作戦進めてゆきます。

    天狗党の活躍により火星人攻略の武器が作られついに火星人を撲滅させます。
    ずいぶんあっけないのですが「戦争とはそんなもので、一つ穴が空いたらあとはボロ負け」ということは当時の人たちにはわかりきった事だったのでしょう。

    見事に勝ったとはいっても、天狗倶楽部は生きるために戦った火星人類に対して「我々に大和魂があるように、彼らには火星魂がある」と認める部分もありました。
    そして「そもそも諸外国は、この日本の危機に乗じて救援と嘘をつき占領の軍を送ってこようとした(ソ連が北海道派軍、欧米が海軍侵攻させてきた)。だが次にこのような危機があったら、国の違いを越えて地球規模で協力しなければけない」
    そして戦いの最中に押川春浪は火星人類と心を通わせていました。
    いつか地球と火星人類とが共存できれば…という希望で小説は終わりになります。

  • 素直に面白い、と言える横田順彌の快心の一冊です。歴史上の人物や社会情勢を適度に取り入れながら、SFフィクションの世界を遊ぶ著者の精神が見事です。

  • 横田順弥の死去がきっかけで、約15年ぶりに再読。
    H・G・ウェルズ『宇宙戦争』の13年後、火星人が今度は日本に攻めてきた。迎え撃つのは、冒険小説家・押川春浪を中心としたバンカラ集団「天狗倶楽部」。

    「宇宙戦争」のさまざまな設定をうまくストーリーのフックにした点、巧みな風俗描写、山田風太郎ばりに実在の人物が次々と話にからんでくる点、どれをとっても気が利いていて、とにかく読んでいて楽しい。怪獣映画みたいでもあるな。

    天狗倶楽部の面々のバンカラぶりが本当にすがすがしく、ある意味で気高さすら感じてしまう。正義感が強く気骨があり、進取の精神に富み、科学的なマインドさえ備えた彼らの活躍を読んでいると、胸が熱くなるよ。

    Amazonの古書でバカみたいな高値がついているので、新潮社はすぐに再版すべき。

  • 古書購入

  • 明治の東京を襲った火星人に押川春浪ほか天狗倶楽部の面々が立ち向かう。ウェルズの『宇宙戦争』から13年後という設定。

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著者プロフィール

横田順彌(よこた・じゅんや)
1945-2019年。佐賀県に生まれる。法政大学法学部卒業。70年、「少年チャンピオン」にショートショートを発表し商業誌デビュー。SF、冒険小説作品の他、古典SF研究、明治文化研究の分野でも精力的な執筆活動を行った。88年、『快男児押川春浪』(會津信吾と共著)で第9回日本SF大賞、2011年『近代日本奇想小説史 明治篇』で第32回日本SF大賞特別賞、第24回大衆文学研究賞大衆文学部門、2012年、第65回日本推理作家協会賞評論その他の部門をそれぞれ受賞。他に『幻綺行 完全版』『大聖神』(竹書房文庫)などがある。

「2022年 『平成古書奇談』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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