キャプテンサンダーボルト 新装版 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (688ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101802015

作品紹介・あらすじ

俺とお前が一緒なら世界だって変えられる。発端は山形のホテルだった。借金返済のため一攫千金を狙う相葉時之は、手違いからテロリストに命を狙われる羽目に。絶体絶命の中、かつての級友・井ノ原悠と再会したことで、物語が動き出す──。蔵王・御釜が発生源とされる感染症「村上病」。同地に墜落したB29。そして、公開中止になった特撮映画。深まる謎と追走劇の果て、明かされる真相とは?書き下ろし短編を収録した新装版。

感想・レビュー・書評

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  • 6年ぶりの再読のため、ほぼ記憶ない状態で楽しめました。公権力の横暴さやウィルスにまつわるあれこれは今のほうが身につまされると思う。「飛沫感染」とか「外出自粛要請」って今やおなじみのワードは今回書き加えたのかな?(旧版息子にあげてしまい確認できず)。わたしの好みからすると「情」に傾き過ぎかな~なんて思いつつも、ラストはやっぱりぐっときてしまう。「思ったよりは逆転はある」。この時代、ちょっと信じられなくなりつつあるそのメッセージを50歳前後の作家が20代の青年のおとぎ話に託して、さらに本編おまけのボーナストラックで12歳の少年につなぐ。共作って読者はつい企画ものととらえがちだけれど、巻末の対談で阿部さんも伊坂さんも「代表作」って言い切っておられたのが印象的で、またまたぐっときた。

  • 手違いで恐ろしい物に関わってしまい、恐ろしいテロリストに追われる物語。

    手違い具合が巧妙なのが面白くて笑えるが、その後の展開ですぐ恐ろしさを味わえる。
    感情を揺さぶられるからサクサク読めた。

    感染症の内容で、コロナ中だから現実味が増した。
    関東大震災あたりで考えた物語らしいから未来予知できるのかと驚いた。

    途中「ぼくが愛したゴウスト」の要素があって、ここは伊坂氏が書いた所かなと思った。こういうことをするから好き。

    世の中の当たり前は当たり前じゃないかもしれないよ!とか、子供の頃の経験が今の自分を守るんだ!とか、メッセージ性も痺れた。

    小説を合作って想像できなかったけど、読んでみたら面白かった。ほぼ伊坂氏の世界観だったけど、それに馴染ませた阿部氏もすごい人だなと思って読みたくなった。

  • 村上病や五色沼の水、戦隊モノなど、アイデアはいいけれど、物語に深みがないように感じてしまった。まあまあおもしろかったけれど、完全には乗り切れなかった。

  • やっぱり読みながら痺れた。伊坂幸太郎さんの作品は中毒性がある、共作ならば阿部さんの作品も私の肌にきっと合う
    このビリビリとジーン…にやられてしまう
    読了した満足感でぐっすり眠れそう

  • 伊坂さん色が強い印象でした。
    展開も早くて、読みやすく一気読み。爽快感のある作品。

    暗号の数字とか、金庫のくだりなど、細かい伏線がちょくちょくあって、オッとなるのも楽しめた。

  • いつもの軽妙な伊坂節はそれほどではない本作だが、個性あふれるキャラクターたちは一度登場したら忘れられない魅力がある。
    伏線もしっかり効いており、壮大な展開に引き込まれての一気読みは必至。
    簡単に人が死にすぎなのが気になるが、それもまた主人公たちの行く末を想像しにくくしており、読んで損はない名作だ。

  • 旧文庫版刊行当時『この厚みで上下巻?』と思ったけれど、実際は合計650頁近くあるんですね…納得。普段は中々食指の動かない新潮文庫nexレーベルだが、この新装版(合併本)の刊行は凄く有難い。阿部和重さんの従来の作風は存じ上げないが、清々しいほどに振り切った直球かつ極上のエンタメ作品。巻末の対談によると、一節ごとに交代で書き上げたそうだが、全く違和感がない。純然たる伊坂作品に比べ、キャラクター造形が大人しいのも合作ならではか。しかし、このコロナ禍の最中にバイオテロが題材の作品を読むのは少々複雑ではありました。

  • 蔵王・御釜が発生源とされる感染症「村上病」。東京大空襲の時に墜落したB29。公開が中止になった特撮映画。それぞれの謎が明かされていくと、全てが一つに繋がってくる。

    「村上病はあるけど、ない」このキーワードが1番のポイントだと思うけど、この世にはどうしようもできないことがあるってことが伝わってきた。
    誰もが当たり前に受けている予防接種のウイルスは実は存在しなかったり。
    テレビの情報は全て作り込まれた嘘だったり。
    誰かがわいせつ容疑で捕まったが実は違う理由だったり。
    たまたま気になって読んだけど、今日のコロナウイルスや芸能人の不倫騒動など、今とつながる箇所が多く、我ながら良いタイミングで読めたなと感じました。

    キャプテンサンダーボルトとは、オーストラリアの強盗が使った名前ってことで良いのかな。

    地下研究室の南京錠に傷があったのは結局なぜなのか。見落としてるだけかも知れないです。

    最後に好きな一文。
    「これは全部、ガキの頃の思い出のおかげだ。あの頃に見聞きして、味わったことの全てが今の俺たちを守ったんだ。」

  • 伊坂幸太郎と阿部和重の共作小説。エンタメと純文学を代表する作家のコラボということもあって、期待に胸を膨らませて読んだ。単行本が発売された当初から話題になっていて読みたかったが、結局文春文庫になっても読まずに新潮文庫の新装版になってから読むことになった。阿部和重の陰謀的な要素と伊坂幸太郎のストーリーテリングが合わさって面白いエンタメに仕上がっている。伊坂作品をベースにして比較すると伏線回収の量はそこまでないが、陰謀や謎の組織の計画など気になる謎に引っ張られて一気に読んだ。また本編には「村上病」という感染症が登場するのだが、新型コロナのこともあってタイムリーに感じた。

  • キャプテンサンダーボルト
    著作者:阿部和重
    発行者:新潮文庫
    タイムライン
    http://booklog.jp/timeline/users/collabo39698
    短編新装版

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著者プロフィール

1968年生まれ。1994年「アメリカの夜」で群像新人賞を受賞しデビュー。1997年の『インディビジュアル・プロジェクション』で注目を集める。2004年、大作『シンセミア』で第15回伊藤整文学賞、第58回毎日出版文化賞、2005年『グランド・フィナーレ』で第132回芥川賞受賞。『シンセミア』を始めとした「神町」を舞台とする諸作品には設定上の繋がりや仕掛けがあり、「神町サーガ」を形成する構想となっている。その他の著書に『ニッポニアニッポン』『プラスティック・ソウル』『ミステリアスセッティング』『ABC 阿部和重初期作品集』など。

「2011年 『小説家の饒舌 12のトーク・セッション』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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