幸福論 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (252ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102001189

感想・レビュー・書評

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  • CREAという雑誌の読書特集で、中谷美紀が「読んでいて幸せになる1冊」と書いていたのが妙に心に残り、うん十年ぶりに読み返してみました。

    ヘッセを読んでいたころって中学生くらいで、文学少女を気取ってスタンダールとかトルストイとかカミュとか太宰とか芥川とか、とにかくそういう背伸びした読書がマイブームでした・・・いや、今思うとハズカシいですけど
    (どこまで内容を理解していたのかは不明ですが(^^;)

    すっかり忘れさっていたので、今回は新たな気持ちで読みました

    まあ、どれもこれも丁寧に書かれていること!
    この人は本当に一字一句、言葉を文字を大切にしているのだなぁと感心ばかりしておりました。

    Glück(幸福)という言葉が、彼にとってどれほど美しく重みのあるものかという事が、切々と語られている『幸福論』を読むと、自分がいかに日々、言葉も文字もぞんざいに扱っていたかという事実を思い知らされて少し反省しました。
    それからは文字を、少し気をつけて丁寧に書くように心がけるようになりました(ああ!私って本当に、影響されやすい!)

    こんなに繊細な人は、生きるのが大変だっただろうなぁ。
    人一倍に喜びや美しさを感じる心があるから、人一倍、苦しみや悲しみも受けざるを得なかったのでしょうけれど。

    ヘッセは言葉を操る言霊師とみたり。

  • ヘッセの晩年に書かれた手記をまとめた短編集。
    「盗まれたトランク」「中断された授業時間」「幸福論」「湯治手記」「クリスマスと二つの子どもの話」「小がらす」「マウルブロン神学校生」「祖父のこと」「秋の体験」「エンガディーンの体験」「過去とのめぐり会い」「過去を呼び返す」「マルラのために」「日本の私の読者に」を収録。
    過去の自分や家族の詩·物語、読者からの声を通じて過去を顧りみるものが多かった。
    大作家、それも若き日の苦悩をもって『車輪の下』を書いた著者の考える「幸福」とはどのようなものか、何故それを幸福と考えるに至ったのかが気になり読んだが、後者の問いに関しては答えが見出せず、前者の問いに対し得られた答えも漠然としていた。
    また、個人的に「エンガディーンの体験」で垣間見えた、戦争に対する個人の責任という点での著者の考えにも納得がいかず、あまり満足はできなかった。
    しかし一方で、幸福論では類まれなほどに美しく卓越した表現でもって幸福を描き、また全編を通じ、年を重ねる中で培った、代えがたいものたちが見え隠れする。私個人の願望に答えてくれるものではなかったが、それでも文学的価値は高いと言っていいだろう。

  • ヘッセじーちゃん

  • 読んだ印象は日常のささやかなことを綴るエッセイ。
    真面目だけどちょっとお茶目なおじいちゃんと話しているような気分になります。
    結構スキ。でも若い子には退屈かも知れない。

  • 読んで幸せになれるような本ではないけれど、孤独な人の本だろう。
    ぼんやりと瞑想にふけるような気持ちにさせてくれる本だ。


    本は気分を変えてくれるが、気分が本を探してくれるということもあるんだと思った。ヘッセの作品はそういうものが多い

  • 老年になってもう一度読み直したい一冊。早く老人になりたい。

  • 『車輪の下』で知られる
    ヘルマン・ヘッセのエッセー集。
    正直とっつきにくく、何度も挫折した。

    ただ、触れて行く中で、
    次第に味わいが増した。
    幸福を少年期のあらゆる束縛を
    離れた一瞬にして永遠たる時の中に見出す。
    まとめると『幸福は 時間を離れた 時の中』といったところでしょうか?

    【今日の一冊11『幸福論』2016/01/09】

    『車輪の下』『ガラス玉演戯』で、
    知られるノーベル賞作家
    ヘルマン・ヘッセのエッセイ集。

    タイトルとなった「幸福論」、
    宮沢賢治「永訣の朝」を彷彿させる
    「マルラのために」など14編。

    その中から、
    「日本の私の読者に」に
    ついて、少しご紹介を。

    1957年にヘッセ80歳の記念に、
    全集を出したいと伝えたところ、
    「自分の年齢では明日
    まだ生きているかどうか、
    まったくわからない。
    それゆえお望みの序文を
    今のうちに書いておきました」
    と寄せられた。

    ヘッセのユーモアと
    心遣いを感じさせる。


    東方と西方との間の
    真剣な実り多き理解は、
    政治的社会的領域において、
    私たちの時代の大きな
    まだ達成されない
    要求であるばかりでなく、
    それは、精神と生命の
    文化の領域でも、1つの要求、
    緊要な問題であります。

    今日では、日本人をキリスト教に、
    ヨーロッパ人を仏教や道教に
    改宗させるというようなことは、
    もはや問題でありません。

    私たちは改宗させたり、
    改宗させられたり
    すべきではありません。

    そういうことを欲しもしません。

    そうではなくて、
    心を開き、広げるべきです。

    そうしたいと思います。

    東方と西方の知恵を、
    敵意をもって抗争する
    力としてではなく、
    実り多き生命が揺れ合う
    両極として、私たちは
    認識するのです。

    ヘルマン・ヘッセ

    ……

    東方=中東、西方=欧米、
    と考えれば、その間に立つ
    「日本」と考えれば、
    今に通じる思想におもう。

    もう、60年以上前の話で、
    人類の進歩と、
    個の時間軸の違いに
    忸怩たる思いがする。

    ただ、「問題」ではなく、
    「可能性」として向き合うことが、
    できれば、何かを変えられる
    かもしれない。

    そんな風に考えている。

    #viewpoint
    #communication
    #resource
    #ヘルマン・ヘッセ
    #幸福論
    #マルラのために
    #日本の私の読者のために

  • 短編集。
    お勧めは「幸福論」と「小がらす」。
    ストイックでもなく、エゴイストでもなく、ニヒルでもなく、なんともいえないすばらしいバランスを保った生き方。

  • ゆっくりと、かみ締めるように読むことを要求されるような文章だけど、そうして読んだ時の感動は深く、心の底に広がって、他の本では得られない共感がありました。

  • おなかいっぱい!!

著者プロフィール

ドイツ生まれのスイスの作家。主に詩と小説によって知られる20世紀前半のドイツ文学を代表する文学者。南ドイツの風物のなかで、穏やかな人間の生き方を描いた作品が多い。また、風景や蝶々などの水彩画もよくしたため、自身の絵を添えた詩文集も刊行している。1946年に『ガラス玉演戯』などの作品が評価され、ノーベル文学賞を受賞した。

「2022年 『無伴奏男声合唱組曲 蒼穹の星』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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