罪と罰〈上〉 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (585ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102010211

感想・レビュー・書評

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  • 人名がややこしい。
    主人公の妹アヴドーチャ・ロマーノヴナ・ラスコーリニコフは、愛称の「ドゥーニャ」以外に「ドゥーネチカ」「アヴドーチャ・ロマーノヴナ」と呼ばれる。
    登場人物全員がこんな調子なので「この名前は誰?」と混乱し、名前に気を取られている間にストーリーを忘れてしまいがち……
    おすすめは、ネット検索などで人名対照表を準備して、確認しながら読むことですね。

  • 何だこれは。登場人物もストーリーも粗野で荒々しい限りなのに、途轍もない力で小説世界に引き込まれる。名著の筆頭に挙げられるのも納得の圧倒的作品。

    1860年代半ば、夏のロシアの帝都ペテルブルグ。学費滞納のため大学を辞めた貧乏青年ラスコーリニコフは、それでも自分は一般人とは異なる「選ばれた非凡人」との意識を持っていた。その立場なら「新たな世の中の成長」のため、一般人の道徳に反してもいいとの考えから、悪名高い高利貸しの老婆アリョーナ・イワーノヴナを殺害する。しかし、その最中にアリョーナの義妹リザヴェータも入ってきたので、勢いでこの義妹も殺してしまう。この日から彼は、罪の意識、幻覚、自白の衝動などに苦しむこととなる。予審判事のポルフィーリーの執拗な追及をかわしたラスコーリニコフだが、下宿の前で見知らぬ男から「人殺し」と言われ立ちすくむ。しかし「人殺し」という言葉は幻覚で、見知らぬ男はスヴィドリガイロフと名乗る男だった…。

    みな熱病にうなされたようによく喋る。それは会話というより、長広舌で思いの丈をぶちまけるといった印象。共感できる人物は見当たらないわけですが、とんでもない勢いで物語は転がっていきます。
    主人公ラスコーリニコフと予審判事ポルフィーリーとの犯罪論の応酬も見どころですが、老婆を殺した現場に義妹も居合わせていたところや、妹の縁談を壊そうとする主人公、「人殺し」と指摘される幻覚に魘される場面など、異様なリアリティをもつ描写は、エンタメとしても抜群の破壊力。
    1861年に農奴解放令が出され、既存の価値観や思想が否定されたというのが時代背景としてよくある解説ですが、それにしても貴族や聖職者などかつての上位身分の権威を否定し尽くすような、ドストエフスキーの描く庶民の溢れるエネルギーに打たれますね。

  • どうして人を殺めてはいけないのか、これを読めばわかる。

  • 今年の新潮100冊②

    いきなり酔っぱらいに絡まれて 長々と身上話を読まされることになったときは どうしようかと思ったが、母からの手紙くらいからスルスル読めた。
    名前迷子にさえ 気をつければ、難解そうにみえてむしろ面白く読める。
    (急に名前が明かされたザミョートフが一体誰なのか確信がもてず、長いことページをいったり来たりした)

    ラスコーリニコフが老婆を殺したのは、彼なりに崇高な理由があったからかもしれないが、リザヴェータまで手にかけたのは ただの保身。
    罪を犯す前から苦しみに苛まれ、人並み以上の慈悲心をもつ彼は、立派な「凡人」。
    上巻のうちに自殺するんじゃないかと危ぶんでいたけれど、途中 いきなり生きる活力がみなぎりだして驚いた。
    純粋無垢なソーニャの力なのか。

    彼は最終的には病死とかしそう。
    リアル悪夢をみすぎだし、気を失いすぎ。
    考えていることや やることがいきなりバカになって、それに対して一人ツッコミしてたりして、かなり面白い人間なんだけど。

    そしてわたしは、知らず知らずナーバスになっているのか、妹ドゥーネチカの結婚話に特別 心惹かれた。
    「あのひとがわたしの人格を認めて、尊敬してくれるという確信がなかったら、わたしは結婚しない。
    あのひとを尊敬できるということが、確実に信じられなかったら、わたしは結婚しない」
    相手を尊敬できるかどうかって、その人との関係性の持続にかかわる かなり重要な感情だと思う。
    尊敬できるかは、信じる信じないではなく、今現在できるかできないかなので、ドゥーネチカは絶対にルージン氏と結婚しないほうがいい(笑)
    ルージン氏の言うことではなく、行動をみれば、彼がドゥーネチカを大事にしていないことは明白。
    妹の結婚をバッサリ反対する兄の愛に、なにやら感動した。
    ラズミーヒンの好感度も、急上昇した。
    彼女のためなら、彼はこれから何でもやるのでは?
    というか、実際にやってるし。
    こーいう人と結婚しなさい。

  • 下巻に纏めて投稿。

  • 自意識ボーイ可愛い

  • 【きっかけ】
    先輩から薦められたため、手に取った一冊。

    【感じたこと】
    今まで自分が読んできた本とはまるで性質の違うものだと読み始めてすぐに感じた(読書量が少ないこともあるが…)。一番の理由は、ストーリー展開は遅い代わりに、とんでもないくらいの密度で、登場人物の心理描写が綴られていることにあると思う。
    上巻を読んで、物語の事象自体は整理できるが、登場人物の言葉や思想にはまるで理解が追いつかない。にもかかわらず、なぜか日々この本を手に取った読み進めてしまうという不思議な本だった。
    無知な自分にはこの本を評価することはできないが、一番感じたことは、どこまで深く人間について考察すればこのようなものが作り上げられるのかということだった。

  • 素晴らしい

  • ドストエフスキーの後期五大作品のひとつ目の作品で、四十歳台半ばで書かれたらしい。言わずと知れた名作だけどこれまで漫画でしか読んだことがなかった。漫画ではさらっと流されているシーンにも、かける熱量が違う。迫力が違う。さすがドストエフスキーだと思った。

    主人公・元大学生ラスコーリニコフは極貧にあえぎ、強盗目的で質屋の老婆とその妹を殺す。彼は自分で作った理論のもとに自己を正当化する。人々は凡人と非凡人に分けられ、非凡な人はその非凡を為すために障害を取り除く権利を持つ、というものだ。その理論によればたとえ殺害を犯したとしてもそれは非凡な偉人にとって取るに足りない微細なものだということになる。だが冷徹な切れ者の主人公にも良心があり、事件の後に苛まれることになる。善悪のはざまで揺れ動く主人公の複雑な心理を読者はたどる。普段は冷徹だが、善行を施すときは人情家みたいにもなる主人公。他者に救いを与える一方で、自身も救いを求めているところが人間くさい。主人公の周りの人物も魅力的だが、なかでもおせっかいな友人のラズミーヒンが微笑ましい。下巻はさらに面白くなりそうで楽しみだ。

  • めっちゃ面白かった。「老婆を殺した主人公が罪の意識に苛まれる話」だと聞いていたので、序盤に老婆が死んだ時には「あちぁ〜もう死んじゃうのか、今後一体どう展開するんだ?」と思ったが、いや面白い。人物の内面とか情景、寝ている間にみた夢などの深層心理を見せる描写に加えて、会話や個性的な登場人物の見せ場も置いている。言い換えれば、テンポがいい会話劇を見ているような気分にさせたと思いきや、小説ならではの深くて尺をふんだんに使った内面の描写でも魅せてくる。そんな複合的な見せ方を心得た作品だという印象が強い。上巻の最後がとてもいいところで終わったので、続きが気になる。

著者プロフィール

(Fyodor Mikhaylovich Dostoevskiy)1821年モスクワ生まれ。19世紀ロシアを代表する作家。主な長篇に『カラマーゾフの兄弟』『罪と罰』『悪霊』『未成年』があり、『白痴』とともに5大小説とされる。ほかに『地下室の手記』『死の家の記録』など。

「2010年 『白痴 3』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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