誰がために鐘は鳴る〈上〉 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (470ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102100066

作品紹介・あらすじ

全ヨーロッパをおおわんとするファシズムの暗雲に対し、一点の希望を投げかけたスペイン内戦。1936年に始まったこの戦争を舞台に、限られた生命の中で激しく燃えあがるアメリカ青年とスペイン娘との恋を、ダイナミックな文体で描く代表作。義勇兵として人民政府軍に参加したロバートは、鉄橋爆破の密命を受けてゲリラ隊に合流し、そこで両親をファシストに殺されたマリアと出会う。

感想・レビュー・書評

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    やはり私にとってこの小説の白眉は
    ロバートとマリアの2人の「若さ」の対比、
    パブロとピラールだ。
    老いるということ。弱るということ。
    かつての強く、美しく、光り輝くような生命力。
    それが翳ってゆくということ。黄ばんでゆくということ。
    かつての記憶が相手を、自分を苦しめる。
    移り変わる時代は、力もまた譲り渡していく。若い者達に。

    もっとずっと若い頃に読んでいたら違う感想だったのかなぁ。

    ピラールの「殺せというなら殺す。ののしれというならののしる。だけど、傷つけるのだけは厭なんだ」
    「不器量でも男を愛してる間はその男を盲目にする。
    ある日、理由もなくありもままの不器量なところが相手の男の目につく。
    相手の男はもう盲目ではなくなり、女のほうも相手の目に映るとおりの醜い自分が目について、そのあげく、恋人も、自分の感情も、二つとも失ってしまうのさ」
    「あたしはお前を自分のものにしようなんて思った事はなかった。だけども、あたしは妬けるんだよ」

    ヘミングウェイなんて、マッチョの代名詞のような人だと思っていたけど、
    どうしてこんな事が書けるんだろう?
    ピラールのいう「女ってものは男のためにつくられたものなんだ」というのは
    今の時代にそぐわないものなのかもしれない。
    だけど私はこの部分はヘミングウェイの男性性が書かせたのではなく
    どうしようもなく、柔らかな部分が書かせたような気がしてならない。

    正直、小説として、退屈だと感じる人が多いのも頷ける。けれど
    この部分だけでもやはり名作なんだなぁと思う

  • (2017.04.07読了)(2006.09.11購入)(1995.08.20・46刷)
    時代背景(Wikipediaより)
    「スペイン内戦(1936年7月 - 1939年3月)は、第二共和政期のスペインで勃発した軍事クーデターによる内戦。マヌエル・アサーニャ率いる左派の人民戦線政府と、フランシスコ・フランコを中心とした右派の反乱軍とが争った。反ファシズム陣営である人民戦線をソビエト連邦が支援し、欧米市民知識人らも数多く義勇軍として参戦、フランコをファシズム陣営のドイツ・イタリアが支持・直接参戦するなどした。」

    以下は、読みながら書いたメモです。
    第四章まで読み終わったのですが、物語がなかなか動きませんね。ロバート・ジョーダンという主人公が、橋の爆破を依頼されて、現地ゲリラ部隊?(パルチザン)の助力を得ながら実行する予定のようなのですが、まだ下見の状態です。ロバートは、アメリカの大学でスペイン語を教えている講師ということですので、スペイン語は達者なようです。
    先日、原田マハ著「暗幕のゲルニカ」を読みましたが、この時代が舞台です。ピカソのゲルニカという作品は、スペイン人民政府がパリで開催された博覧会のスペイン館に展示するための作品として制作を依頼したものです。何をテーマにするかまでは決まっていなかったのですが、ドイツ軍によるゲルニカ爆撃のニュースを聞いてピカソが決めたものです。

    第10章まで読み終わりました。
    橋の爆破は、まだですね。その代わりに、(セゴビアで)ファシストたちを虐殺する場面が出てきます。『クオ・ヴァディス』でもキリスト教徒の虐殺場面が出てきて、まいったけど、今度も大変なものを読み始めてしまったな、という感じです。
    現代でも、イスラム国やシリア内戦で大変なことが起こっているので昔の事と言えない状態ではあります。まだ先は長いですね。

    上巻は読み終わりました。
    橋を爆破するための下調べや支援してくれる人たちへの根回しとかで終わって仕舞いました。パブロの存在は、不安を掻き立てます。最後は、協力を申し出て一安心に思えそうな気もするけど、不安は残ります。5月末というのに雪が降りだしたというのも不安要素です。ファシストたちの動きも攻勢を強めてきているようです。

    ロバート・ジョーダン
    ゴルツ ロバートに橋の爆破を命じた人
    パブロ パルチザンの指導者(男七人、女二人、馬五頭(276頁))
    ピラール パブロの女房、48歳
    アンセルモ 68歳、猟師
    ラファエル ジプシー
    アグスティン
    プリミティボ 平べったい顔の男
    アンドレス プリミティボの弟、顔に傷跡のある男
    フェルナンド
    ホアキン バリャドリード出身、闘牛士になり損ねた
    マリア 爆破された列車に乗っていて救出された
    つんぼおやじ パルチザンの指導者(男八人、馬四頭)
    カシュキン 列車の爆破を実施、4月に死亡

    【目次】
    第一章から第十七章まで
    訳注

    ●橋の爆破(11頁)
    (ゴルツ)「橋を爆破すること自体は意味のないことなのだ」
    (ゴルツ)「ただ橋を爆破するだけでは失敗なのだ」
    (ゴルツ)「やらねばならんのは、攻撃のために定められた時間にもとづいて、指示された時刻に橋を爆破することだ。」
    ●橋の爆破(13頁)
    (ロバート・ジョーダン)「橋の爆破は、いつやればいいんですか?」
    (ゴルツ)「攻撃開始後だ。攻撃開始の直後、それ以前ではいけない。そうすれば、支援部隊が、この道をのぼってやってこないだろうからね」
    ●神はいない(80頁)
    (ロバート)「君には、もう神さまはいないと言うんだね?」
    (アンセルモ)「この世に神がいなさるなら、わしがこの目で見てきたようなことを、どうして神がおゆるしになるだ?」
    ●スペイン人(259頁)
    スペイン人が、結局のところ、本当に忠実なのは、自分の村に対してだけなのだ。もちろん第一はスペインだ。次に自分の民族、次に自分の地方、次に自分の村、家族、そして最後に自分の職業ということになる。
    ●地面が動く(335頁)
    (ピラール)「地面が動くなんてことは、一生のうちに三度とあるもんじゃないからね。」

    ☆関連図書(既読)
    「武器よさらば」ヘミングウェイ著・大久保康雄訳、新潮文庫、1955.03.20
    「老人と海」ヘミングウェイ著・福田恒存訳、新潮文庫、1966.06.15
    「カタロニア讃歌」オーウェル著・橋口稔訳、筑摩叢書、1970.12.25
    「スペイン戦争」斉藤孝著、中公文庫、1989.09.10
    「スペイン現代史」若松隆著、岩波新書、1992.03.19
    「ゲルニカ物語」荒井信一著、岩波新書、1991.01.21
    「暗幕のゲルニカ」原田マハ著、新潮社、2016.03.25
    (2017年4月18日・記)
    (「BOOK」データベースより)amazon
    全ヨーロッパをおおわんとするファシズムの暗雲に対し、一点の希望を投げかけたスペイン内戦。1936年に始まったこの戦争を舞台に、限られた生命の中で激しく燃えあがるアメリカ青年とスペイン娘との恋を、ダイナミックな文体で描く代表作。義勇兵として人民政府軍に参加したロバートは、鉄橋爆破の密命を受けてゲリラ隊に合流し、そこで両親をファシストに殺されたマリアと出会う。

  • ウクライナ戦争で国際義勇兵募集してるのをみて読み始めた。

  • 訳わからないことを面白がれた時点で、最高の読書なのだ。ちょっぴり誰の台詞か分からなかったり、どこに向かって歩いているのか知らなくても前に進んでいいのが読書だ!後篇につづく。

  • キャラクターのうち、ピカールがとてもいい。バレンシアでのフィニートとの恋の思い出が本当にいい。

  • 話がディテールから来るから最初の方は、話を繋ぐ作業がいるからちょい退屈やけど、多分下巻に対するフリ(布石)が多そう。だとしたら上下巻に分けるのはビジネス的に思い切ったことするなと。
    ただやっぱり描写が素晴らしい。
    ピラールのフィニートとの恋の話とか、パブロのファシスト殺戮ばなしとか。
    さぁ下巻よも。

    佐々木GOROさんのイラストもいい。


  • 期待しすぎたのかもしれないが、上巻は全く面白くなかった。ロバートが橋を爆発する準備と手回しの約二日間に一冊、全く話が進まないどころか、会話も内容も深くない。市民戦争を知らなくても全く支障ないくらい、銃も使えない山に隠れている反勢力の農民数十人が出てくるのみで、歴史的事例にも人物にも何も触れていない。
    特に最初の十ページくらいは、日本語訳がかなり読みにくい。スペイン語“LL”の時のカタカナ表記が全て間違っていた。(“LL”の発音はエルではない。例: caballo カバヨ、もしくはカバジョ)

    読書の途中放棄は避けたいので、とりあえず速読で終わらせる。橋を爆破するであろう下巻に期待。

  • 名作。

  • 先日談話室でおすすめしてもらい、ちくま文庫のヘミングウェイの短編集を読んだ。短編だとやはり物語の(というか人の記憶の)断片、という印象で、語られていない部分を想像で補完する力が求められると感じたのだけど、この『誰がために鐘は鳴る』を読み、バラバラのエピソードだった短編同士がパズルのピースのように頭の中でつながった。
    ロバートとマリアのやり取りには「白い象のような山並み」の雰囲気があるし、ピラールの愛したような闘牛士たちのエピソードは「敗れざる者」「日はまた昇る」などにも出てくる。また、ロベルトはピラールの語った兵営攻撃とその後の町での私刑といった事件を書いてみたかったと独白している。「キリマンジャロの雪」の主人公も、戦争を背景とした人の生き死にを記録しておきたいと考えていた(が、書けなかった)。
    ピラールはパブロが今ではすっかり腑抜けになってしまったと責めているけれど、パブロの「みんな殺しちまうか、全然殺さねえか、どっちかでなくちゃいけねえ」という言葉で、本当に悔いているのだとわかった。ピラールやロバートが麻痺している(あるいは故意に麻痺させている)ために目を背けている「人を殺してもよいのか」という問題に、パブロはまっすぐぶつかって自分なりの答えを出したのだ。だからある意味この人物が一番人間的であると思う。酒を飲み、現実逃避しているように周りからは見えるけれど、実は一番本質的な問題と真摯に向き合っているのはパブロなのだ。
    ロバートとマリアの戦禍の中の恋というのがメインテーマかと思っていたけれど、そうではなさそう。下巻でどういう展開になるのかちょっとこわい。

  • 1930年代のスペイン内戦。この戦争ではイデオロギーの対立から、時には家族で殺しあう事もあったらしい。大学でスペイン語を教えているアメリカ人青年ロバート・ジョーダンは共和派としてこの戦争に参加。
    「橋を爆破する」という命令。
    おそらく命を落とすであろう。
    そんな極限状態で出会った山岳地帯に潜むゲリラと共にいるマリア。この物語はたった2~3日の出来事。ここでロバート・ジョーダンはもうすぐ死ぬであろうとわかっていながら恋をする。


    以下、引用
    ・もし、おまえの人生が七十年の人生を売って七十時間のそれを買うと言うんなら、いまのおれは、すこしも惜しくないと思う。(中略)そして、ながい年月とか、人生の残りとか、これから先というものがなく、ただ、あるのは現在だけだとすると、この今というものこそ讃めたたえられるべきものであり、それをっているおれは、実に幸福だと思う。

    ・「晩飯のことを考えていただよ」
    とフェルナンドは言った。
    「おまえは食うことが好きか」
    「うん、とっても好きだ」
    「ピラールの料理はどうだい?」
    「普通だな」とフェルナンドは答えた。

    ・「イギリスさん、みんなに橋の話をしてやんなよ。攻撃のときの、みんなの役割を教えてやんなよ。退却のときはどうするかを話してやんなよ。どこへ、みんなを連れていくつもりなんだい?」

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著者プロフィール

Ernest Hemingway
1899年、シカゴ近郊オークパークで生まれる。高校で執筆活動に勤しみ、学内新聞に多くの記事を書き、学内文芸誌には3本の短編小説が掲載された。卒業後に職を得た新聞社を退職し、傷病兵運搬車の運転手として赴いたイタリア戦線で被弾し、肉体だけでなく精神にも深い傷を負って、生の向こうに常に死を意識するようになる。新聞記者として文章鍛錬を受けたため、文体は基本的には単文で短く簡潔なのを特徴とする。希土戦争、スペインでの闘牛見物、アフリカでのサファリ体験、スペイン内戦、第二次世界大戦、彼が好んで出かけたところには絶えず激烈な死があった。長編小説、『日はまた昇る』、『武器よさらば』、『誰がために鐘は鳴る』といった傑作も、背後に不穏な死の気配が漂っている。彼の才能は、長編より短編小説でこそ発揮されたと評価する向きがある。とくにアフリカとスペイン内戦を舞台にした1930年代に発表した中・短編小説は、死を扱う短編作家として円熟の域にまで達しており、読み応えがある。1945年度のノーベル文学賞の受賞対象になった『老人と海』では死は遠ざけられ、人間の究極的な生き方そのものに焦点が当てられ、ヘミングウェイの作品群のなかでは異色の作品といえる。1961年7月2日、ケチャムの自宅で猟銃による非業の最期を遂げた。

「2023年 『挿し絵入り版 老人と海』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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