若かった日々 (新潮文庫)

  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (222ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102149331

感想・レビュー・書評

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  • 著者の両親との体験や思いを主に綴ったもの。美しい思い出ばかりとは言えないのは、何も著者ばかりの体験ではないでしょう。そんな両親への思いも胸に迫りますが、ここではやがてレズビアンであることを認識するに至る著者が、若き日々に出会い救われた一人の女性教師への感謝の気持ちを引用することにします。

    ▼ときどき、いまでも彼女のことを考える。彼女の優しさ、彼女が教えてくれたこと、示してくれた手本を私は考える。もう一度連絡が取れたらと私は思う。彼女に何があったのかを知ることができたらと思う。彼女の人生がいま善きものであることを私は知りたい。そして私は彼女に伝えたい。彼女が何年も前に会った男の子みたいな女の子、ほかのどの女の子とも同じように自分なりの痛みや不安や謎を抱えていた女の子が、彼女によって救われたことを。自分が生き抜いていまは幸せでいることを私は彼女に伝えたい。感謝していることを彼女に伝えたい。
     ナンシー・ブース、あなたがどこにいるにせよ、ありがとう。▼

    2010/1/25 読了

  • 自伝的短編集
    家族と自分

    自分は両親から受け継いだもので形成され、遠ざけたくても、私の中に存在している。

    家族で反発し合っていても、客観視すれば愛は存在していて、年齢を重ねるつれて許容できるようになる-。若い時よりわかってきた。

    生きるうえで、苦悩の連続の中にも幸せを感じる瞬間はあって、歳をとれば肯定的に大切な思い出だったと振り返ることができる。

    今が辛い事ばかりなような気がしても、そんな事ばかりで【私】はできてないと思える。

    苦しいけど、救われるお話。

  • 実在するものだけで十分だと思える世界、私はそれを見たいと思うし。時には見ることができる。それは、若かったころに、見えていると思えた世界なのだ。(p.21)

    原題は"The End of Youth"
    文庫本の緑の表紙が美しい。中心の湖とボートが本作にぴったり。
    ブラウンの、エッセイ集…ではなくあくまで自伝的短編集なのだそう。もちろん柴田元幸訳です。表現が美しい、というよりは、彼女の感性が美しい。
    父親との関係を中心に、主に家族のことと、そして自身がレズビアンだと意識するきっかけが描かれています。
    女性としての自分を確立できなかったことや、父親との関係を築けなかったことを鑑みれば、若さの終わり、というのは全く否定的な意味ではなく、 彼女が彼女らしく生きるための転換期なのだと思います。

    「天国」はもともと読んだことがあったけど、この連作の中でこそ生きる話なのだと気づきました。

    「見ることを学ぶ」、「煙草を喫う人たち」が好き。

  • 【本の内容】
    あまりに違う二人が傷つけ合うのは必然だった―。

    家族と希薄な関係しか築けなかった父。

    夫との愛に挫折した母。

    物心ついたときには離婚していた両親との激しい葛藤や、初めて同性に夢中になった初恋の熱。

    死に寄り添うホームケア・ワーカーを描いた感動作『体の贈り物』でラムダ賞などを受賞した著者が、少女時代を穏やかなまなざしで振り返る、みずみずしい自伝的短編集。

    [ 目次 ]


    [ POP ]
    初めて泳いだ水の感触、眠るまでの暗闇が怖かったこと。

    子どもの頃の記憶をみずみずしく描写しながら、父への複雑な感情や母と過ごした時間を深く受けとめ直していく自伝的短編集。

    どの1編も詩のように美しく胸に突き刺さる。

    年上の同性に恋をした女の子の物語は切ない。

    だが、それは決して不幸ではないという光を宿している。

    [ おすすめ度 ]

    ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
    ☆☆☆☆☆☆☆ 文章
    ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • レベッカ・ブラウン初読。母の娘なら刺さるセンテンス多数。きっと翻訳も素晴らしいのだろう。限りなく5に近い星4つ。

  • 途中と最後に詩的というのかやたらとくどい言い回しの表現が出てきて、わかりずらいのにインパクトだけはあって結果として全体の印象がぼや~んとしてるんだけど、父親と母親を見つめる少女の目線は所々理解できるところがあった。

  • 久々のレベッカ・ブラウンだったけれども、その優れた感受性に改めて感銘を受けた。自叙伝的な雰囲気を兼ね備えているのに、誰でも幼い頃の感覚が呼び起されるような、そんな、かんじがする。遠い国の違う世代の違う人種の女の子の心の震えをこんなに明確な形で感じることができるということは、本当に凄いことだと。両親の存在というのは離れがたく宿命的にわたしたちに影を落とすものであるかもしれないし、同性にしか恋をできないかもしれないし、その若かった日々の心の震え、戸惑い、そういったものがどんなに大切であるかということ。またレベッカ・ブラウンを読み直そうと決意しました。

  • 決して難しい言葉を連ねているわけではないのだが、味わい深く心にしみ入る。そしていつでも少しだけ心に辛い。その辛さがいい。

  • 大人になって感じる、両親への愛情。
    子供時代への憧れ。しあわせな時間へ一時でももどるため、子供の頃言えなかったことを両親に伝えるために、書く手紙。

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著者プロフィール

1956年ワシントン州生まれ、シアトル在住。作家。翻訳されている著書に『体の贈り物』『私たちがやったこと』『若かった日々』『家庭の医学』『犬たち』がある。『体の贈り物』でラムダ文学賞、ボストン書評家賞、太平洋岸北西地区書店連合賞受賞。

「2017年 『かつらの合っていない女』 で使われていた紹介文から引用しています。」

レベッカ・ブラウンの作品

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