ストーン・シティ 下 (新潮文庫 ス 14-3)

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  • Amazon.co.jp ・本 (444ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102365038

作品紹介・あらすじ

連続殺人の被害者メッツラーと親しかったゲイの青年、カズンズの助けを借り、事件の関係者を洗うバウマン。など囚人グループ間の苛烈な抗争に巻き込まれつつ、捜査を進めた末に浮かび上がったのは驚くべき事実だった…。舞台は一つの街ほどの規模を持つ巨大な重警備刑務所、主人公は元大学教授。ミッチェル・スミスが圧倒的な迫力で描く問題作。

感想・レビュー・書評

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  • 読み終わった今、どっと疲労感。最後の結末も救いがない。その割にページ数多くて下巻はつらかった。つらかったり救いのない話であっても、何か自分の求めるものがあればそれはそれでいい読書となるけど、この本には自分の求めるものがなかった。だって、いろんなことなあんまりなんだもの~(特にカズンズ)。ひどいひどい。

  • 発端から結末まで刑務所内のみで展開する異色のサスペンスで、獄中で発生した連続殺人の真相を囚人が探るという大胆な着想が光る1989年発表作。上下巻に及ぶボリュームだが、特異なエピソードを盛り込んで高いテンションを保っており中弛みはない。前作「エリー・クラインの収穫」(1987)でも話題となった五感を刺激する執拗な描写を本作でも駆使し、息詰まるような世界を創り出している。

    チャールズ・バウマン、43歳の元大学教授。再婚し、前妻との間には息子がいた。パーティーからの帰り、自転車に乗っていた少女を轢き殺し、そのまま逃げた。酒を飲んでいた。収監から一年が経ち、男は曲がりなりにも〝生き残る術〟を習得。現在は、文盲の囚人に読み書きを教えて「先生」と呼ばれている。さらに学生時代の経験を生かして刑務所内の強豪ボクシングチームのトレーナーも務めていた。
    監獄は、シャバの肥溜めの如き醜悪な縮図だった。裏社会の敗残者たち。殺人犯、盗人、強姦野郎、放火魔、詐欺師、性的異常者……極悪人のみで形成された閉鎖空間。悪党らは、人種や共通する嗜好のもとに群れ、互いに覇権を争っていた。悪にも格差があり、小児性愛者は最も怒りを買っていた。そんな中、所内で不可解な殺人が相次いだ。バウマンは、検察局と州警察から脅し同然の〝協力〟を求められる。恐らく知性と順応性を買われたのだろう。獄中に於いて無難な人間関係を築ける社会性を有した者は稀だからだ。自由無き牢獄での限定的な自由を得た男は、狂気と暴力が支配する〝石の都〟の更なる下層へと下りていく。

    本作がメインに描いているのは、受刑者らの生々しい狂態であり、異常であることが〝正常〟と映る異界である。どこまでが実態に即したものかは分からないが、作者は念入りに取材をした上で構想したことを窺わせる。特異なのは、多くの者が閉塞感/焦燥感とは真逆の開放感/充足感に浸っていることだ。要は、牢獄の中でこそ、実存を見出せているのである。但し、ひとつ判断を誤れば、自らの死を招くことを誰もが肝に銘じている。物語は、犯罪者のシュールな生態を盛り込みつつ、囚人殺しの謎に迫る主人公の行動を追うのだが、それは既にヒビの入った硝子の上を這いずるようなもので、奈落の底へと一気に落ちる危険性を常にはらんでいる。狂った者たちと、どう駆け引きし、渡り合うか。そのバランスをとるさまが凄まじい緊張感を伴い、脆い綱を渡る男の〝捜査〟をより困難にする。
    さらに、より強い印象を残すのは主人公の二面性である。人格者のように見えるバウマンは冤罪でないかと疑いつつ読み進めたのだが、徐々に明かされていく回顧から犯した罪が紛れも無い事実であることを知る。同時に極めて低い贖罪の意識と〝運の無さ〟を嘆く図太さに気付く。他の悪人と比べて、狂気性や暴力性の程度は〝軽い〟ものの、決して善人ではない。この設定が、勧善懲悪の定型を打ち破る終局への流れに違和感無く繋がっていく。

    全てを解き明かした果てに男を待ち受ける無常なる運命。それを不条理と感じるか、当然の応報と捉えるか。衝撃的なラストシーンは〝この程度の動機〟で人を殺す完全なる狂気から、何者も逃れる術がないことを冷然と指し示し、虚無的なカタルシスへと導く。本作は、作家の剛腕あってこその異形のミステリであり、劇薬を忍ばせている。

  • 大学教授バウマンは酔っ払い運転で人を轢き殺し凶悪犯2000人を収容する巨大刑務所に服役する。しかし暴力や麻薬が蔓延する刑務所内で連続殺人が発生。バウマンは、真犯人を見つければ刑務所を出してやると言われ殺人の捜査をすることに。ゲイの青年カズンズの助けを借りて囚人グループの抗争に巻き込まれながら捜査を進めていく。これはミステリだが、囚人たちの容赦ない仕打ちの中でバウマンが耐えつつ打開していく様子が凄まじい。凶悪犯だらけのひとつの街とも言える刑務所で起きる事件の数々が圧倒的迫力で描かれるエンタメ小説の傑作。無茶苦茶面白い!

  • せっかく読み始めたから読んでいた本。あんまりよく分からなかったけど、カインズと主人公がお互いに信用しあっている関係はすごいと思った。

  • このミス海外編1994年版1位。イギリスかどっかの刑務所内での話。900ページぐらいあって最初の800ページは退屈でほとんど進まない。ラスト100ページぐらいで面白くなったけど最後は訳わかりませんでした。ていうか嫌々読んでるので殆ど理解できてないし。読み終わるのにほとんど1か月かかってしまった。ヤバイです。時間の無駄です。このミス海外編1位の作品は古いのはずっとこんな感じで悶絶します。あと10年分ぐらいはこんなのが続くのでしょうか。辛い。

  • 飲酒運転をしていて子どもを轢き殺してしまった、それはまぁ凶悪犯ではあるけど、でも恐らく主人公のように普通の場合は単なる一般人なわけで。こんな人が刑務所で必死に生きていくのは、やっぱり大変なわけで。結局坂道を転がるように悲惨な目にあっていく彼に、同情するような、悪い事をしたんだから仕方がないと言うべきか。

  • 上下巻通しての感想
    前半の説明が長すぎて飽きてきたが、後半はテンポが出てきて楽しめた。

  • 面白い小説 ラストは悲しくなる

  • 刑務所のリアリティーあふれる描写は吐き気がするほどだが、この手のって「ショーシャンク〜」見てるから、さして新鮮味なかったり。教授とおかまの探偵コンビってのは、"キャラ立ち"しててよかったが。

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