噂の女

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (310ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103003526

作品紹介・あらすじ

中古車店に毎晩クレームをつけに通う3人組、麻雀に明け暮れるしがないサラリーマン、パチンコで時間をつぶす失業保険受給中の女、寺への寄進に文句たらたらの檀家たち-。鬱屈した日々を送る彼らの前に現れた謎の女・美幸。愛と悲哀と欲望渦巻く連作長編小説。

感想・レビュー・書評

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  • 中古車販売店の事務員として初登場する”噂の女”、糸井美幸。訪れた会社員雄一22才は、カウンターに座っているのが中学の同級生だった美幸だと気づくが、地味な中学時代とはうって変わって、色香があふれていた。その後、麻雀荘、料理教室、と計10か所に現れる、元同級生としての美幸。元同級生たちの噂によれば短大時代に変わったようなのだが、噂では年上の男性の女になって、その男性たちはまもなく死んでいるというもの。実際にあった事件に触発され書いたと思われるが、ここは何か淫靡な奥田ワールドになっている。美幸がたまらなくイヤな女に描かれているので、実際の事件には奥田氏は許せないものを感じたのかな。



    初出
    「yom yom」(新潮社の小説誌)13,16,18-23号(2009.12-2011.12)
    「小説新潮」2012.5,7月号

    2012.11.30発行 図書館

  • 特別美人という訳ではないが、肉感的で男好きのする女 美幸。高校時代は目立たず地味でもっさりしていたのに、羽化するごとく、化粧を覚え、男を操ることを覚え…

    蝶が花の蜜に吸い寄せられるように、彼女の色気にふらふら…引き寄せられる男たち。
    身体を資本に成り上がる美幸、そこにつきまとう黒い噂…
    昔とある番組で「ドすけべホイホイ」なる企画がありましたが、まさにホイホイっとつられていくのですね。
    悪女であるはずの美幸なのに、見事な男捌きにあっぱれ。

  • ある地方都市、中古車店に毎晩クレームをつけに通う3人組、麻雀に明け暮れるしがないサラリーマン、パチンコで時間をつぶす失業保険受給中の女など、彼らが出会う肉感的な女・美幸とは。
    連作短編集であり、「噂の女」でつながっていく構成。
    各々の話は中途半端な終わり方だが、徐々に彼女の実態が明らかになってくる。
    後半にいくにつれ、ブラックな話なんだと驚いた。
    ちなみに、岐阜が舞台で、方言が名古屋弁に近くて楽しめた。
    (図書館)

  • 2015/7/29短編も面白いですねぇ。ララピポみたいな品のなさもあるが、短編から短編のつなぎ方、捕まらない最後も良い。続編が読みたいような。★4

  • 桂望実さんの『嫌な女』を彷彿とさせるのですが…
    ”噂の女”は”嫌な女”よりもっと嫌な女だった~!!

  • 連作長編。最初の「中古車販売の女」と「麻雀荘の女」を読んだときはありがちな男目線の”謎の女に振り回されたい願望”丸出しの作品かと思ったけど、作を追うごとに息が詰まるほどの中途半端な田舎の地方都市のリアリティが「女」の素行の面白味に役立っていて、惹きつけられた。
    美幸が絶世の美女じゃないってところもいい。
    公務員、議員、建築関係云々。あと市営住宅の割り当ての裏金せびろうとする女とか。いそういそう、と思えるさもしい人間ばかりで織りなされる地方小説。

    道新の書評にバルザックのウージェーヌみたいって評があったけど確かにそんな一面もうかがえる。

    こういうクソ田舎の価値観の中だからこそ輝ける美幸を楽しんだ。

    きっと都市部にしか住んだことなかったら面白さは半分もわからなかっただろうな。

  • 本屋さんで見つけた瞬間に、表紙と帯だけ見て「あ・これは私好みのするやつだ」と、確信した。
    奥田さんの作品で一番好きなのは「ララピポ」だ。
    奥田さんは、面白い作品を沢山書かれているが、こういった毒のある話は特に面白い。
    というか、奥田さんの毒は、なぜか暗くない。
    太宰や川端、安部公房のような純文学から漂う匂いが全然しない。

    木嶋佳苗をモデルにしたのは言うまでもないが、
    奥田さんが一番描きたかったのは、
    木嶋に憧れずにはいられない私達凡人女子達の心理だ。
    「スカイツリーの女」がそれを実に分かりやすく述べてくれている。
    線引きしたい箇所が多数有りすぎる!

    犯罪だろうが、猟奇的だろうが、淫乱だと罵られようが、
    美幸を応援してしまう取り巻き達。

    このモデルになった事件を知った時、直感で思った。
    誰も苦しんで死んでないんじゃないかって。

    木嶋は死刑になるのかどうか分かんないけど、
    もし出所するようなことがあったら宗教とかやるの向いてると思う。

  • ・身近にはいなさそうだけど、どこかにはきっといそうで、いやさすがにいないか、と絶妙に思わせる。おもしろかった。
    ・主人公以外のキャラクターも個性的でおもしろい。こちらはより身近にいそう。

  • やっぱり奥田英朗の作品は面白いなー

  • 地縁や血縁のしがらみの多い地方都市。
    昔は地味だった女・糸井美幸が別人のような生き方をしていく。

    話は彼女にかかわった周囲の人々の噂で進んでいきます。
    精神薬の横流し、
    保険金殺人をにおわせる出来事等、
    実際に起きていたらテレビや週刊誌がこぞって報じそうなものばかり。

    そんな出来事を重くならず、滑稽に描かれ
    だまされる周囲の人間方がアホに感じられるような
    面白い読後感でした。

  • 表紙がコミカルだったので奥田さんらしいユニークな小説かと思ってたら全然違った。魅力的な悪女にはお金の匂いがして彼女と深い関係になった男の不可解な死があるというストーリー。悪女系ストーリーはよくあって新鮮さがなかったけど、主役じゃない脇役第三者のストーリーが面白い。それがまたラストで「この後どうなったの?教えて~」と思うものばかり。ホステスにスカウトされた保育士はどうなったの?古い体質を壊そうする建設会社の次期社長に色仕掛けで罠に嵌める計画はどうなったの?など。スッキリしない読後感ではあったけど面白かった。

  • 高校生までは地味で目立たなかったが、短大に進んでから急に派手になったと噂される糸井美幸の黒に近い限りなくグレーな話。

    怖いですね~。
    これは完全に黒でしょう。
    糸井美幸がどう考えているかがほぼ分からないので、益々怖さを感じます。

    世の男達を翻弄する糸井美幸、翻弄され命を落とすことになった男達は自業自得と思ってしまうのは、間違いかな?

  • *「侮ったら、それが恐ろしい女で」。地味な高校時代を経て、短大時代に恐るべき能力を開花させる。手練手管と肉体を使い、店員を振り出しに玉の輿婚をなしとげ、高級クラブのママにまでのし上がった、糸井美幸。彼女の道行きにはいつも黒い噂がつきまとい――。ダークネスと悲哀、笑いが弾ける、ノンストップ・エンタテインメント! *
    文句なしに面白かった!物語は美幸側から語られることはなく、様々な登場人物を通していかに美幸がのし上がっていったかが浮き彫りになる展開もさすが。悪女と言っても、田舎の男社会を逆手に取るやり方が小気味いいためか、むしろ喝采を送りたいほど。痛快な一冊。

  • 美人では無いが妖艶な色気、肉体、メイク術を持った女が男を手玉に取りながら成り上がる人生。貧乏で地味だった中学生時代、短大進学でメイク術を武器に派手な女に変身する。それからは金持ちの男をターゲットに貢がせたり結婚して遺産相続したりして自分の店を持つまでになるが、そこには殺人容疑も隠されている…話が途中で終わり中途半端な内容だが、こういう女は一定数はいると思った。女の容姿は壇蜜を想像しながら読了。

  • 噂の女、糸井美幸をめぐるオムニバス。
    奥田英朗は短編がうまい作家だなーとつくづく。
    この作品に限らないけれど、登場人物ひとりひとりが
    あーこういう人いるよねぇ…って感じでリアル。特に女性が。

    ひとりの女のサクセスストーリーでもあり
    ちょっとしたミステリでもあり
    楽しみ方もいろいろ。
    冬の夜の酒の肴にぜひ。

  • 中古車店にクレームをつけに行った時に出会った色っぽい事務員、「中古車販売店の女」
    麻雀荘で働く肉感的な女「麻雀荘の女」
    料理教室の裏を暴く強気な女「料理教室の女」
    65歳の老人と結婚した24歳の若妻「マンションの女」
    続く「パチンコの女」、「柳ケ瀬の女」、「和服の女」、「檀家の女」、「内偵の女」、「スカイツリーの女」。
    実はこれ全部同一人物。
    糸井美幸という「噂の女」。
    彼女のことを異なる登場人物が各話ごとにあれこれと噂するという連作小説になっています。
    最初は短編集なのかな?と思ってました。
    それにしては1話はかなりあっけない終わりだな~と思ったけど・・・。
    でも2話目の途中で、「あ、この女性って先に出てた中古車販売店の女だ」と気づき、全ての話が「噂の女」で繋がっているんだと気づきました。

    最初登場した時は23歳で、ただ色っぽい女という印象だったのが、話が進む毎にどんどん恐い面が見えてくる美幸。
    どこそこの高校を出た、短大を出たに始まり、複雑な家庭環境で育ち、弟はヤクザだとか、社長の愛人をしていただとか、ヤクザや右翼と関係があるだの、そして殺人疑惑まで・・・。
    たった数年の内に高級クラブのママにおさまり、黒い噂の絶えない凄みのある女になっていた。

    物語の舞台は地方都市で、美幸以外の登場人物は皆平凡な人々。
    だから噂が飛び火して回るのも早い。
    そして平凡で退屈な地方都市を舞台にした事で、さらに美幸のセンセーショナルな姿が際立つ。

    これ、最初は美幸に鼻の下を伸ばし下品な噂をする男共を見て「しょうがねえな~。男って・・・」くらいの気持ちで読んでました。
    文章もコミカルで軽いテンポだし、そういう小説かな?と思ってた。
    でも読んでいて、これって結構深いテーマも含んでる話なんだ・・・と思えてきました。
    地方都市の抱える・・・というか今の日本の抱える問題-役人の横行、ワーキングプア、役人と地元企業の癒着、優遇される地方公務員の様子などをさりげなく描いていて、今の時代をリアルに描いていると思いました。

    そんな閉塞感と低迷感が漂う中にあって、一人別世界で生きている「噂の女」。
    作中、彼女目線の文章が一切ありません。
    この本の内容は全て人の噂。
    どれが本当なのか?
    どこまでが本当なのか?
    ホントの所は分からないままに、噂が噂を呼び、大きくなっていく様を上手く描いてるな~と感心しました。
    それにラストがすごく良かった。
    余韻の残るラストでした。

    個人的に一番印象的だったのは「料理教室の女」で、不正をしている料理教室に抗議に行くのに躊躇した女性に美幸が言ったひと言。
    「変われるチャンスなのに」
    変化し続ける女の言葉だけに、心にズーンとくる言葉でした。

  • この前の練炭結婚詐欺の事件からインスパイアされたドラマや小説が結構あったけど、どれも当然ながら事件内容以上のドラマを見せる訳でもなく、ただ下世話な物語に終わっているものばっかりだった。しかし、この作品は違います。主人公の女のキャラクター以上に、その女に振り回される人びとのドラマがほんと面白い。最終的には悪女からうだつがあがらない女にとってのヒーロー的存在に転換させる痛快っぷりは、読書速度を十分に加速させます。
    ぜひ、ドラマにしてほしいな。女の顔は鼻からした、あとは体だけしか映さないという演出つきで!

  • 糸井美幸は、とかく噂に上がる女。妙に肉感的で男心をそそる上、男の扱いもうまい。そして、なぜか美幸が付き合う男たちは風呂場で溺死しているのだった。巧みに男心を操る美幸はどんな女なのか。誰もが噂をするが結局誰もが、手玉に取られ、本当の美幸は分からない。すごい悪女で、絶対近寄りたくない感じがリアルに描かれている作品だけど、ちょっともやもやしたまま終わって残念。

  • やっぱり、奥田英朗はこういうのがうまい!噂の女=糸井美幸、彼女自身の視点は一度も描かれず、常に彼女の周囲、しかも直接的接点の薄い、ある意味一方的に彼女に興味を抱いた人間ばかりが話者になっていることで、読者も噂話を聞いているような気軽な高揚感を味わえる。
    また、糸井美幸にはなぜか悪女モノにありがちな嫌悪を抱かない。その絶妙なさじ加減が、さすが!

  • 短編なのかと思いきや同じ女性の話で興味しんしん。
    下世話な話が多くて読んだあと少し気持ちが沈んだ。
    でも展開が気になってどんどん読んじゃうはなし。
    悪女だなー。

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著者プロフィール

おくだ・ひでお
1959年岐阜県生まれ。プランナー、コピーライターなどを経て1997年『ウランバーナの森』でデビュー。2002年『邪魔』で大藪春彦賞受賞。2004年『空中ブランコ』で直木賞、2007年『家日和』で柴田錬三郎賞、2009年『オリンピックの身代金』で吉川英治文学賞を受賞。著書に『最悪』、『イン・ザ・プール』、『マドンナ』、『ガール』、『サウスバウンド』、『無理』、『噂の女』、『我が家のヒミツ』、『ナオミとカナコ』、『向田理髪店』など。映像化作品も多数あり、コミカルな短篇から社会派長編までさまざまな作風で人気を博している。近著に『罪の轍』。

「2021年 『邪魔(下) 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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