儚い羊たちの祝宴

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103014720

感想・レビュー・書評

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  • 青春小説が代名詞の著者が、
    ラスト一行の衝撃に拘ったとい
    う短篇集。
    かなりダークな物語で、
    初期の乙一作品のような雰囲気。
    どの話も、名家とそこに仕える
    使用人が登場し、
    各話に揃って登場する団体があるなど、連作短編になっている。

    さて、著者が拘った
    「ラスト一行の衝撃」だが、
    正直大したのインパクトは
    感じられなかった。
    まぁ文章も読みやすいし、
    時代設定も不穏な雰囲気を
    盛り立てていて、
    面白い作品ではあったが。
    個人的には最後の
    「儚い羊たちの晩餐」が
    消化不良に感じたのが残念。

    <収録>
    1.身内に不幸がありまして
    2.北の館の罪人
    3.山荘秘聞
    4.玉野五十鈴の誉れ
    5.儚い羊たちの晩餐

  • 面白かった。読みながら、こうであって欲しいと思える所にしっかり着地していて、読後この黒さの余韻に浸れた。気になってジェリコーの「メデュース号の筏」を調べたのだが、あの邪悪な欲望の伺える、折り重なった人間が巨大な蛸の足みたいな絵、ぴったりしっくり。「身内に不幸がありまして」「玉野五十鈴の誉れ」が好き。

  • 『いつか訪れる儚い者へ』

    なるほどー!なるほどー!短編集じゃなかった。これはお勧めできます。
    幻想と現実とを混乱してしまう儚い者たちの聖域(アジール)、「バベルの会」。
    華やかな生活の裏側、おぞましい狂気が描かれる。

    まさに最後の一撃(フィニッシング・ストローク)でした。どれも暗い。
    伏線が好きな私にとって大好物です。うまく騙された!
    読書家にはネタが散々ばらまかれていて、面白いんだろうなー。
    『イズレイル・ガウの誉れ』だって。

    【身内に不幸がありまして】
    吹子に仕える村里夕日の手記と、
    「バベルの会」の読書会に参加しなければならない丹山吹子の述懐。
    眠りを恐れる吹子は、放蕩者の兄からヒントを得た。

    重い声で、わたしは言う。
    「会長、実は…。身内に不幸がありまして」
    【北の館の罪人】
    製薬会社で一代を築いた六綱家の妾の子、内名あまりは
    黒窓館に住まう。六綱家の長男、早太郎の監視役として。
    画家を目指した彼が描いた絵には、ある秘密があった。

    「青と赤を混ぜたこの紫で、露草の青だけが褪せていけば、どうなるでしょう」
    「殺人者は赤い手をしている。しかし彼らは手袋をしている」

    「あまりさんは、紫の手袋をしているのね。これもいずれ、赤く変わるわ」
    【山荘秘聞】
    辰野家の別荘、「飛鶏館」を管理する屋島守子。
    冬のある日、雪庇を踏み抜き滑落した男・越智を匿う。
    そして守子は、越智を探す山岳隊の捜査へ協力する。

    「実は仲間が滑落して、探しています」
    「滑落、というと」わたしは首を傾げました。

    「…昨日、屋島さんは言いましたよね。地下の倉庫に、変わった肉があるって。見ればすぐわかるって。夕食に出そうとしましたよね」

    「口止め料です。どうぞ、この山荘でのことはご内聞に」
    【玉野五十鈴の誉れ】
    小栗家の跡取り長女、純香は15になり、
    従者・玉野五十鈴を与えられた。

    料理が出来ないのだ。これがわたしには意外だった。なにしろ、御飯を炊くこともできないのだ。

    「お嬢様の味方をせよ。・・・お嬢様と仲良くせよ、と」
    では五十鈴は、その言葉を守っていたのか。その言葉を、守っていただけだったのか。
    「勘違いなさっては困ります。わたくしはあくまで、小栗家のイズレイル・ガウです」

    ―始めちょろちょろ、中ぱっぱ。赤子泣いても蓋取るな―
    【儚い羊たちの晩餐】
    大寺鞠恵は、バベルの会を除名された。


    バベルの会は、こうして復活した。

  • 大々的に宣伝していた映画『インシテミル』の原作者ということで米澤さんに興味を持ち、手に取った作品です。

    いろいろな意味で衝撃的でした。
    短編集ですが、どの短編も秀逸だと思いました。
    最後の1行でハッとして、同時にゾッとさせられました。
    クライマックスへの持っていきかたがとても上手ですね。
    こんなかたちのミステリーを読んだのは初めてで、新鮮でした。
    また、短編の中には既存の文学作品の名前がたくさん出てくるのですが、
    全部読みたくなってしまいました(笑)。それらを読んでから
    各作品を読むと、もっともっと面白く読めるはずだと思うからです。
    本の装丁もとても素敵です。時間を置いて、また何度も読み返したい作品です。

  • 全体的に暗い話ばかりで、ちょっと参りました。。。

  •  ミステリーファンはラスト一行の衝撃を求めて本を読む傾向が強いのだそうだ。確かに書店で帯にあっと驚くドンデン返しなどと書かれているのを見かけると、思わず手にとってしまう。感動したくて読書をしようという時にあまり読まないジャンルであるのは間違いない。
     さてこの本はラスト一行に拘った連作集。とある読書サークルに関わった人間が次々と謎の死を・・・と、言うのがあからさまに明らかにならない怖さがある。古くから続く名家、田舎の因習・・・この辺りのテイストは金田一チックなのだが、名探偵が登場して謎解きははしょられている。その代わりにラスト一行が待ち受けているわけだが、これがストンと落ちるのもあればいまいちのもあり。作者に期待する部分が大きすぎたか。

  • 「北の館の罪人」が一番面白かったです。痛みや苦痛とは別の怖さが良かったです。ちょっと雰囲気が乙一氏に似ていました。

  • 米澤氏との初めての一冊。
    それほど一話ごとに衝撃を受けたわけではないけれど、しばらく時間が経過した今、覚えているのは、遭難者捜索の一遍と冒頭の一作。これは好きだった。

  • 最終行に拘った仕掛けが好み。それにもまして雰囲気ある文章がただすごい。

  • どの話も使用人がいるお屋敷の名家が舞台なのはなぜか、なぜ「バベルの会」が意味深に出てくるのか、最後の書き下ろし短編でうなる。主への忠誠、家督への執着、己が役目を全うするため、理由は様々だけれど、彼らは迷いもなく一線を越えていく。結果が犯罪であっても潔さや爽快感さえ感じさせる。どの短編もレベルが高く、意味深なラストだけど、流れるような語りの「玉野五十鈴の誉れ」が特に良かった。

  • 「ストーリー・セラー」で「玉野五十鈴の誉れ」がおもしろかったから読んでみた。
    「バベルの会」をキーワードに書かれた5つの短編。いやぁ、どれも怖い。読後ゾクゾクッとする怖さが好きな方にはオススメ。

  • 面白かったです。読んでいてゾクゾクしました。
    淡々と内容が進んでいって、最後にズドンと落とされる。
    思わずおぉ…と声が出てしまいました。
    なんとなく世にも奇妙な物語のような空気を感じました。
    個人的には「玉野五十鈴の誉れ」が1番好きです。

  • 米澤作品では珍しい殺人が、それも気軽に行われる、短編集。
    だが、豊かな語彙、美しい日本語、
    幾層にも深いストーリー背景、
    なんとも雅やかな殺人経緯などは、さすが米澤作品。
    小道具、色彩が豊かで、
    グロテスクさまでもが美しい。
    洋館、お嬢様、萌え。
    大好きな一冊。

  • 帯にある「ラスト1行の衝撃」の言葉はどんでん返しもの好きにはたまらないフレーズでしょう。かくいう私もその一人。
    文庫派なのにも関わらず、文庫化を待てずに購入してしまいました。
    結果、ラスト1行というのは言い過ぎでありましたが。

    「身内に不幸がありまして」
    睡眠という怖さ、無防備さに気付かされた一作。通常の人では個人で終わる問題であったが、彼女は次期当主のお嬢様。恐怖は思わぬ形で表面化する・・・。

    「北の館の罪人」
    絵具ってこうやって作るのですね。
    無邪気なお嬢様、詠子の一言で、あの言葉で締めたのが秀逸。

    「山荘秘聞」
    読了後、ネットでたまたま見たレビューを読んで驚く。これは
    「煉瓦」の別の意味を知っているか否かで結末が大きく変わるようですね。知りませんでした。

    「玉野五十鈴の誉れ」
    この本の中で最も優れたラスト1行はこの作品だと思う。もはやこの1行で終わらせたいから書いたのではないかとさえ考えてしまう。

    「儚い羊たちの晩餐」
    バベルの会解散の裏事情。アミルスタン羊を知りませんでしたが先が読め、何も気付かない愚かな父親を眺めながら悲劇的な結末を見ました。頭でのみ味わうのが通常ながら実際に舌で味わうことを望んだ。それも彼女が夢想家の集まりであるバベルの会を除名された一因でしょう。彼女はリアリストだから。

    さて、この本の中で語るのは夢想家の集まりであるバベルの会の面々。果たして彼女たちの語ることは現実か否か。。。

  • 孤児院で育ち、5歳のときに上紅丹(かみくたん)地方で大きな勢力をもつ丹山(たんざん)家に引き取られ、令嬢吹子のお世話係となった村里夕日。彼女のために尽くすことを何よりの喜びとする夕日に、吹子もまた心を許し、2人はいつしかかけがえのない存在となる。
    しかし、吹子が楽しみにしていた大学の団体「バベルの会」の読書会に出かける前日、勘当されたはずの長男宗太が屋敷に現れ、使用人を次々と惨殺するという事件が…。そして、それこそがすべての災いの始まりとなり、丹山家には次々と忌まわしい事件が…。

     4つの短編が続いたと思いきや、ラストはそれぞれが光を帯びて、浮かび上がってきます。キーワードは「バベルの会」。良家の子女が集う読書サークルらしいのですが…。時代背景は大正期から昭和初期?華族とかがまだ存在する頃。描写は極めて美しく、それだけに妖しさも際立っています。
    帯に「『ラスト一行の衝撃』にこだわり抜いた、暗黒連作ミステリ」とあるように、ゾクッとくるラスト。ヒヤリとしたい人にはオススメの1冊です。

  • ラスト一行の衝撃、と言うからミスリードを期待してたけどあんまり衝撃感じなかった。
    1編目はモロに予想通り。
    2編目、4編目、5編目も特に驚きはしなかった。
    想定内って所かね。
    最後にひっくり返すって知ってたからかな?


    ただ、3編目は引っ掛かった。正直やられた。こういうのはとても好みだ。

    これを踏まえて、この人のダーク系はやっぱり好きじゃないなぁと思った。
    ハッピーエンド厨ですから。

  • 丹山家でお嬢様の付き人となった夕日が
    お嬢様をいじめるおばたちを憎む「身内に不幸がありまして」
    六綱家の妾腹の娘として別館の早太郎の世話をし
    彼のために様々な道具を買いだしに行く「北の館の殺人」
    飛鶏館の管理人としてお客様を迎えたく思い
    遭難した仲間を捜索に来た山岳部員をもてなす「山荘秘聞」
    小栗家の跡継ぎとして大切に育てられた純香が
    婿養子の父の弟が殺人事件を起こしたため幽閉される「玉野五十鈴の誉れ」
    3人の良家の子女を結びつける読書会・バベルの会が
    消滅することとなったいきさつを記す「儚い羊たちの晩餐」
    装丁:新潮社装丁室

    「身内に不幸がありまして」の秘密の書棚の伏線が
    面白かったです。わからなかった上にほぼ読んでませんが。
    最後にバベルの会でしめるのだったら
    「山荘秘聞」だけが浮いてしまう気がします。
    そういえば読書会に参加しなかった吹子は
    生き残っているのではないだろうか。

    スピンは赤がよかった。

  • 話の内容が後半になるにつれ変化する、ある意味でどんでん返しのような手法が使われた短編が5つほどあります。前2つぐらいまではすごくわくわくしながら読んでいたのですが、3つめがちょっとよく意味がわからなくなってそれからちょっと失速した感じ。けれどもこういう形のお話は好きです。もう1回読みたいと思う。

  • 謎の読書クラブがリンクしている短編集。
    主人公たちは
    儚く揺れる少女・若い女性たち。
    そしてすこし苦い蜜。

  • 帯でラスト1行の衝撃と煽っているので、単なるどんでん返しを想像してましたが、それだけではなかったですね。
    素直に面白かったし、こういう暗さは大好きです。 
    タイトルもよいかと。 
    どの短編も好きですが、「山荘秘聞」のラストは良い方向でやられたと言う感じでお気に入りです。

  • ミステリの醍醐味と言えば、終盤のどんでん返し。中でも、「最後の一撃」と呼ばれる、ラストで鮮やかに真相を引っ繰り返す技は、短編の華であり至芸でもある。本書は、更にその上をいく、「ラスト一行の衝撃」に徹底的にこだわった連作集。古今東西、短編集は数あれど、収録作すべてがラスト一行で落ちるミステリは本書だけ。(「BOOK」データベースより)

    副題に「The Babel Club Chronicle」とある通り、某大学の読書クラブ「バベルの会」が軸となるクロニクルストーリーです。
    読書クラブというと、桜庭さんの「青年のための読書クラブ」を思い起こしますが、あれよりもちょっとダークな感じ。中身は、


    丹山家から勘当された長男が起こしたとある事件。その後、一年ごとに一人ずつ殺される一門の女たち。自分は意識を失う睡眠下で、恐ろしいことをしでかしているのではないか・・・。お仕えするお嬢様・吹子に心酔し、ともに読書の楽しさを味わった村里夕日の手記は、自らへの不信を語っていたが・・・「身内に不幸がありまして」

    妾腹の子として六綱家にやっかいになる代わりに、北の館に幽閉される長男を監視する役目を請け負ったあまり。長男・早太郎は彼女に変わった買い物を依頼するが・・・「北の館の罪人」

    貿易商の別荘の管理人となった屋島。完璧に仕事をこなす彼女だったが、一向にお出迎えすべきお客様はいらっしゃらない。ある日彼女が見つけたのは滑落した登山部の若者。彼は自分を探しに、登山部の仲間が助けに来るはずだと話すが・・・「山荘秘聞」

    小栗家のただ一人の後継者として厳しく育てられた純香。15歳になった日、彼女はお側付き使用人として、五十鈴と言う名の少女を与えられる。彼女から新たな読書の楽しみを教えられた純香だったが、大学在学中に彼女を奈落の底に落とす事件が起きてしまう。実家へ戻った純香を襲う、実の祖母からの非情な命令。五十鈴とも離れ離れになり、絶望する純香だったが・・・「玉野五十鈴の誉れ」

    荒れ果てたサンルームに残された一冊の日記。その書き手は大寺鞠絵という元バベルの会会員だった。日記は彼女の吝嗇家な父が雇った最高の料理人・厨娘についての親子の会話から始まるが、実際その厨娘・夏さんの作りだす料理はどれも素晴らしいものだった。しかし見栄張りな父は、彼女が作ったことのない料理を作らせたくてたまらない。バベルの会を追われた鞠絵は、父に「アミルスタン羊」の料理を進めるが・・・「儚い羊たちの晩餐」


    という短編5編から成るのですが、全編微妙に「バベルの会」がからんできます。
    (5作目は、それまでの作品に出てきたバベルの会会員の名前が出てきたりします)
    この読書クラブがどういったものなのか、最初はさりげなく仄めかしながら、だんだんとその存在の意味が明らかになっていく仕掛け。
    最後はその終末を、日記を読む某女生徒によってしろしめしながら、同じ女生徒によっての復活を高らかに宣言させるこのうまさ!
    米澤さんの新たな作風開拓に、快哉を叫びたーい!

    ただ「ラスト一行で落とす」までにはいってないと思いますね。
    「ラスト数行で」なら頷けるんだけど。
    ラスト一行にハッとさせられたのは1作目だけかな~。
    2作目は、正直この一行はいらなかったと思うし。
    ここまでご丁寧に○○の殺人を明らかにしなくてもいいのでは?
    絵の具の色がキーになるのだけれど、紫に塗られた○○の手をクローズアップさせるにとどめておけば、より一層余韻めいたものが出てきたのにな(『水車館の殺人』みたいな感じね)。
    3作目は、てっきり○○は殺されているんだろうなぁと思わせておいてのどんでん返し。おみごとですね。ま、ちょっと生々しかったけど。
    4作目のラスト一行は、少しひんやりさせられる感じ。嫌いじゃないけど、やっぱりちょっとくどいかな。
    5作目はアミルスタン羊を知ってる人は始めからなーんだと思うし、知らない人も、話半ばからその正体を明らかにさせる個所を読むことになるので、やっぱりなーんだと思うかも。
    つーか、この5作目のラスト一行ってどれを指してるの?
    鞠絵の日記の最後?それとも作品自体の最後?
    それがちょっとわかりにくかったです。

    細かく一作品ずつを読み込むと、ラスト一行を意味のあるものにしたくて、逆にラストあたりがそれぞれくどくなってしまったなぁという感想です。全体をまとめて読むと、面白いと思うんですけどね。
    闇の中に仄かに揺らめく、彼女たちの祝宴を飾る物語の数々。
    少しダークな気分に浸りたい時は、おススメしたい一冊です。

  • 私の評価基準
    ☆☆☆☆☆ 最高 すごくおもしろい ぜひおすすめ 保存版
    ☆☆☆☆ すごくおもしろい おすすめ 再読するかも
    ☆☆☆ おもしろい 気が向いたらどうぞ
    ☆☆ 普通 時間があれば
    ☆ つまらない もしくは趣味が合わない

    2010.10.18読了

    面白いって云うか、もう好き。

    氷菓から夏季限定トロピカルパフェ事件、ボトルネック、この作品と幅広い作風の著者ですが、そこには皆、上絵か下絵の違いはあるが、暗い色調で彩色されていて、その加減がとてもいい。

    それらの作品群としては、ほとんど星五つなのですが、今ひとつ、病み付きになる感が少なく、また、小市民シリーズでは、インパクトが弱い。
    このバベルの会をシリーズ化して、是非、五つ星をつけさせて下さい。

    と、著者へのお願いのようになってしまいましたが、左様に面白いです。
    なかでも、玉野五十鈴の誉れの雰囲気が好きです。儚い羊たちの晩餐も良かったな。

    古今の典籍の紹介や古典からの引用も楽しめ、読書ガイドとしても使えるかも。
    この教養露出パターンも、楽しみです。

  • 舞台が全部お金持ちのお屋敷で
    まともな捜査がされないっていうのがちょっとズルイなって思ったけど、
    それぞれの短編を「バベルの会」でリンクさせることで
    言い訳にもなってるかなーとひとまず納得。
    こういう短編が繋がってるお話はそもそも好きです。

    詳しく言うとネタバレになるから変な書き方しかできないけど、
    1つ目のお話は「賢いけどやっぱり未熟なんだな」って思った。
    それでずっと行けるわけないんだもん。

    最後のお話が、それまでの短編をまとめながらも
    結局どういうことだかわからなくしてる感じも嫌いじゃないです。

  • とある時代。とある大学に良家の子女たちが集う読書サークル「バベルの会」があった。
    そこに関係するお嬢様と使用人を軸にした短編集です。

    「身内に不幸がありまして」「北の館の罪人」「山荘秘聞」「玉野五十鈴の誉れ」「儚い羊たちの晩餐」の5編

    非常にダークです。暗黒です。毒に満ちています。
    これまでの作品もブラックさは漂っていましたが、満ち満ちています。
    しかしそれがとても好み。
    こういう作風になってきたのねぇ~。うれしい誤算です。

    凋落する一族とその使用人が醸し出す雰囲気に、これまでの老成した高校生が使っていた言葉遣いがぴったりマッチ。
    退廃的な文学の香りがします。

    そのなかでも「身内に不幸~」「玉野五十鈴~」のラスト一行は凄い。
    鳥肌がたちました。

    「儚い~」は蛇足かなぁとも思いましたが、崩壊の中からまた怪物が再生すると考えるとこれはこれでよい締めだったかな。

    今年は『秋季限定』が出ませんでしたね。
    この流れでいくとこちらもそうとうブラックになりそうで、期待しています。

  • ◆身内に不幸がありまして・・・吹子お嬢さまに仕え、秘密の読書にもお付き合いする日々。だが丹山家はある日、素行の悪い兄によって襲撃を受け、死者まで出た。
    ◆北の館の罪人・・・六綱家の別館専用の使用人になった内名あまり。そこにはなぜか六綱家の長男・早太郎が幽閉されていた。
    ◆山荘秘聞・・・貿易商・辰野の別荘「飛鶏館」の管理を任されている私。どんな客人にも満足いただけるもてなしをするために、私は努力を惜しまない。
    ◆玉野五十鈴の誉れ・・・十五になった日、自分専属の付き人として玉野五十鈴と出会った。以来、何をするにも一緒で、彼女は私の唯一無二の友達になった。
    ◆儚い羊たちの祝宴・・・「バベルの会」を除名されてしまった大寺鞠絵。私の何がいけなかったのだろう?

    以上5編の短編集。全て名家や裕福な家の令嬢や子息とその家の使用人の話。また、全ての話に「バベルの会」なる読書会サークルの影がちらつく。最初の4編同士にはつながりはないが、最後の【儚い羊たちの祝宴】には前の4編で出てきた人物が少しずつ登場している。

    ラスト一行の衝撃がすごい、とうたわれているようだが、それはあんまり感じなかったな~。「え、どういうこと?」と思うこともちょこちょこあって、作品を理解しきれていないからのような気もするけれど(^^;どれも殺人が起こっているのだが、動機が「え、そんなことで?」と思うようなものばかりでそこが怖い。

    ◆身内に不幸がありまして・・・この作品の”ラスト1行の衝撃”というのは頷ける。どんな約束でも断われる魔法の言葉かぁ・・・・・・なるほど。

    ◆山荘秘聞・・・どこまでも完璧なのに、どこまでも狂っている屋島。確かに、いくら完璧に準備していてもそれを振るまう機会がなければ意味がない。どんなに完璧に蒐集していても、それを自慢する機会がなければ意味がない。怖い心理だ。

  • これはすごい。

  • 暗澹たる気持ちになる。
    けど止められない!みたいな。おもしろかったです。けど家の本棚にはあんまり加えたくないなぁ~笑

  • 以前読んだStorySellarで
    米澤さんの作品に衝撃を受けて
    気になって読んでみた。

    「バベルの会」というワードが
    どの話にも登場する短編集。
    1つ1つの物語のつながりはあんまりない。

    淡々とした口調で、
    上品な人たちの狂気を描くミステリー。
    ぞくぞくしながら読み進めて
    どの作品も最後の一文で物語が完結するが
    不気味さが後味に残る感じ。

    最後の「儚い羊たちの晩餐」は
    読み終わっても意味がわからなくて
    腑に落ちなかったけど、
    調べてみたらアミルスタン羊が
    キーワードだったんだね、、。

  • 全体的な雰囲気を楽しむ作品で最後の一行にそれ程のインパクトはナシ。

  • タイトル・ジャケットに惹かれて購入した本。
    ホラー系かと思いきやミステリー系な作品でした。

    旧家のお嬢様だったり、その家の使用人だったりと
    現実にはあまり縁のないような人たちが主人公の物語で、
    ひとつひとつは別の話ですが、微妙に繋がっています。
    そして、帯にもあるようにラストは衝撃です。

    淡々と独白のように話が進んでいく作品ですが、
    飽きさせない物語になっていると思います。

    また、小市民シリーズの青春ミステリーしか読んでいない方は、
    内容がダーク、暗黒路線なので、同じ米澤作品でも注意です。

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著者プロフィール

1978年岐阜県生まれ。2001年『氷菓』で「角川学園小説大賞ヤングミステリー&ホラー部門奨励賞」(ヤングミステリー&ホラー部門)を受賞し、デビュー。11年『折れた竜骨』で「日本推理作家協会賞」(長編及び連作短編集部門)、14年『満願』で「山本周五郎賞」を受賞。21年『黒牢城』で「山田風太郎賞」、22年に「直木賞」を受賞する。23年『可燃物』で、「ミステリが読みたい!」「週刊文春ミステリーベスト10」「このミステリーがすごい!」でそれぞれ国内部門1位を獲得し、ミステリーランキング三冠を達成する。

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