黙約のメス

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (394ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103360544

作品紹介・あらすじ

生体移植か、脳死移植か――。コロナ禍の今、日本人の「死生観」が問われる。医療事故の責任を若い医師がとらされる現実、看護師たちの密かな怒り、病院に蔓延る権力闘争、医師の「妻」という立場、法案成立にしがみつく厚労技官、そして病院経営に隠された闇……。毒だらけの日本の医療界に、孤高の外科医・鬼塚鋭臣がメスを入れる。医療関係者震撼、必読の本格医療小説、堂々誕生。

感想・レビュー・書評

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  • 先月柚月裕子さんの医療小説『ミカエルの鼓動』を読んで
    とても面白かったので、こちらも読んでみました。

    そちらのレビューに今年「夢中になって読んだ」
    なおかつ「ラストも満足いくものだった」小説を
    七つ書きました。
    この度『黙約のメス』も加えます。

    医療小説の面白さは歴史小説に似ている。
    鵜呑みにしてはいけないけど、本当っぽくて
    いろいろ知識を得ているような楽しさがある。
    そのポジションにおける複数の人物の感情が面白い。

    『黙約のメス』の主人公は孤高の外科医鬼塚鋭臣ですが
    彼のまわりの8人が主役となった話が八章。
    真打として、沈黙の臓器ならぬ沈黙のコーディネーター
    田村美鈴が登場して全てが明らかになります。
    目次でそれが予想できるので、
    どんどん読んでしまいます。

    医療が進化すると、いままで諦めていた病気が治る利点はあるけど、それと同時に倫理的な問題も付随してくるんだなと。

    臓器移植について考えること殆どないので、
    いろいろ考えさせられました。
    魚屋さんに並んでいるかたまりが、肝臓に見えてしまいました。

  • 孤高の天才外科医が主人公の物語は沢山あります。やはりかっこいいし、一匹狼的な印象があるので色々な方向に描きやすいのでしょうか。
    天才鬼塚医師の周りの人から見た彼を一章づつ描いているので、彼の主観は分からないのですが、こういう医師に手術して欲しいと思う一方、こういう医師を叩く報道に自分が直面した時には、ひどい医師もいたもんだと短絡的に思って終わりになってしまうんだろうなと。
    それだけ報道というのは力が強いし、ネット社会になってさらに拡散力が増強されて、こういうリスクのある仕事を避ける事になってしまうんでしょうね。産婦人科医のなり手が居ないのもまさにそれでしょう。
    さすが元新聞記者が書いた医療ドラマだなと思いました。

  • 日本の肝臓移植手術のほとんどは生体肝移植だ。家族など健康な人からの肝臓を取り出して、患者へ移植する。提供できる肝臓をもった遺体を待つ必要はないが、健康な人間の体にメスを入れて、肝臓を取り出すことになる。患者はもちろん提供者にもリスクを負わせることが正しいのか。提供者は本当に患者の関係者であり、自ら望んだのか。

    そんな医療的、道徳的にも賛否のある肝臓移植をテーマに、医療従事者や移植コーディネーター、マスコミ、病院経営者、官僚、患者とその家族たちを主人公とした連作短編集。

    どのストーリーにもキーマンとして登場するのが、孤高で多くを語らないが、技術は一流、ブラックジャックをイメージさせる外科医鬼塚。彼の信念が少しづつ明らかになるミステリー的面白さもありつつ、日本医療の問題点に迫っていく。

  • いろんな想いが入り乱れていて複雑ですね。
    ブレてないのは主人公の鬼塚先生だけのように思えます。
    鬼塚先生の信念が何処から来ているかが知りたいですね。
    続編が出ればそれが分かるのかな。

  • 臓器移植に関する壮大な物語で、医学用語が頻出だったが外科医師、移植コーディネーター、病院経営者、医師会、厚生労働省の官僚、厚生族の代議士、医療ジャーナリストなどが登場し、それぞれの人間的な動きが克明に描写されており、非常に楽しめた.舞台は四国にある潮メディカルセンター(UMC)で鬼塚鋭臣医師が主役だ.難しい生体肝移植を数多く成功させていくが、外国人患者の移植で問題が発生.厚生官僚の鷲尾緑里、イベント会社の中原京香、コーディネーターの田村美鈴の絡みが面白かった.美鈴・京香と鬼塚の複雑な関係が明らかになる最後の巻きが良かった.

  • 主人公である外科医の周辺の人物8名に焦点を当て彼ら、彼女からの視点で、この話が進む。其々の気持ち、主人公との関わりに触れながら、全体の道筋が明らかになっていく。作家本城雅人の中々の力作かもしれないと思いつつこの本を読み終えた。

  • 93生命の大切さが医療とお金につながるとたちまち胡散臭くなるのは何故かなあ。教師や警官の不祥事を目にするにつけ、医師も崇高な使命を忘れてしまうのか?と思ってしまいます。最後のドナーの告白はチョットあっけない。終盤にもっと力を入れて欲しかった。

  • 登場人物に魅力を感じられなかった。
    みんな忙しそうで読んでいて疲れた。

  • 脳死とは、なんだろう。
    それぞれが持つ倫理観。
    本人が臓器提供を意思表示しても、心臓が止まるまで家族が延命治療を望むケースの多い日本。
    治る可能性があるかもしれない。その考えが捨てきれず、臓器移植に踏み切れない。
    脳死は死であるという考え方。
    それぞれが持つ死生観。

  • 生体肝移植経験者として興味深く拝読させていただいた。移植を取り巻く諸問題を過不足なく、確り描いている点は非常に評価できる。小説としては、主人公の移植への想いがミステリータッチで明らかになっていく進め方だが、主人公の人物像が最後までしっくりこない印象。今まで数々の外科医やその卵たちと接した経験からもこの主人公像はあまり現実的でない気がした。

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著者プロフィール

1965年、神奈川県生まれ。明治学院大学卒業。産経新聞社入社後、スポーツ紙記者として活躍。2009年『ノーバディノウズ』が松本清張賞候補となりデビュー。2017年『ミッドナイト・ジャーナル』で吉川英治文学新人賞を受賞。2018年『傍流の記者』で直木三十五賞候補。著書に『四十過ぎたら出世が仕事』(祥伝社刊)『友を待つ』(祥伝社文庫)など多数。

「2023年 『あかり野牧場』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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