- Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
- / ISBN・EAN: 9784103399117
作品紹介・あらすじ
正しいことを正しいと言って、何が悪いんですか! 史上最高に鬱陶しい主人公、誕生! 一流私大の法学部に在籍する女子大生「田嶋春」、通称タージ。曲がったことが大嫌いで、ルールを守らない人間のことは許せない。そのうえ空気は、まったく読まない。もちろん、友達もいない。そんなタージが突撃した「青春の謎」には、清冽で切ない真実が隠されていて――。読めば読むほど、不思議とタージが好きになるかも! ?
感想・レビュー・書評
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白河三兎作品、初読み。作品の予備知識もなかったんだけど、長崎訓子さんのかわいらしい表紙にそそられ手に取ってみた。
一流大学の法学部生、タージこと田嶋春。空気が読めないこと山の如し、と言いたくなるほどのKY っぷり。あまりにも行動が突飛でウザくて、こりゃ煙たがられるのもやむを得ない…のだが、何故か憎めない不思議キャラ。大学を舞台に、オムニバス形式で進むストーリーは、謎解きも楽しくて一気に読んでしまった。何より、タージが人間関係を引っかき回しながらも洞察力のよさで、真実を明らかにしていく気持ちよさ。大学生の心理描写がリアルで、読んでいて、久々に自分の大学時代を思い出した。登場人物らはうまく世渡りしてるつもりが、結構器が小さく、見栄っ張り。そんな己の小物っぷりに、タージのおかげで嫌が応にも向き合わされるのだが…つまんないプライド故に見ない振りをしていることのなんと多いことよ。読んでいてスカッとしました。ただ、登場人物の中にはチャラさを通り越して不快な行動をする者もいて、そこはドン引きでしたが。
他愛ない会話やさりげないエピソードに伏線が張られていて、読み返して「そういうことか」と気付くことも多かった。ムムム…からのスッキリ!な爽快感はクセになりそうだな。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
予備知識なく、タイトルだけで購入。
積読状態で早3年、、、結果、数時間で読了しました。大変、読みやすい。
単に相性の問題なのかもしれませんが。
流れるように読めるもんだから、ハマるハマる。
特に1話目は何度も繰り返し、振り返り。
読み終わる頃には、ロスになってました。
多分、忘れかけていた大学生活を思い起こさせ、追体験していたのかと思うくらい。
大昔、私は途中から大学から消えてしまって、現在それを大変後悔している。
歌子さんのところを読んで、もう一度チャレンジしたくなった。 -
空気の読めない、でも観察力の鋭いタージが、段々と身近で少し愛しいような気持ちになる。母親から目を逸らさせる為に皆でタージを無視しようと根回しする唯一女性目線の奏の章は、タージが気付かずにびくともしないから大学生のリアル感だけを受け取れた。後々遠くから理解者になるのが調子が良いような微笑ましいような。
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いないとは思うけど、実際近くにいたらどうかな
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タージ天然なのか最後まで悩んでいましたが頑なな生き方しかできない自分流のまっすぐさなんですね。
どんな人を好きなんだろうと思ってたんで「手の中の空白」はなんか嬉しかった。
観覧車からのメールだけでタージ見る目ある!と思いました。
わかる人だけにわかる良さを振りまきながらずっとこのままいくんだろうな。 -
発達障害ヒロイン・タージこと田嶋春を描いた青春ミステリー。
5章からなるが、春を取り巻く登場人物が各章ごとの主人公となり、その人物の視点での春が描かれる。
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アスペルガーの傾向を持つ田嶋春。
あまり融通が利かず場の空気で他人に忖度したりもしないけれど、筋の通った倫理観を持っていて人の尊厳を大切にする女性です。
また頭がよくて、突拍子もない発言に思えることでも実は論理的で物事の本質を突いていたりもします。
その設定はよく考えられていておもしろかった。
プチミステリー仕立てで、4章まではなるほどと感心するような観察眼や洞察力を見せ問題を解決していたけれど、5章は不自然さが目立つ強引な展開だったと思います。
春の行動が全てラスボス・八代の動きを一歩先で封じる計算しつくされたものなのなら、最初のキャラ設定と合いません。したたかすぎるからです。
天然で無垢なアスペルガーヒロイン。それだからこそ、菅野・千晶・奏・宮崎と、N・A・O内での理解者を増やしていけたのではないでしょうか。もう少し、別の展開を考えて欲しかった。 -
中々に珍しい主人公?だなぁと読み進めたら、なんとも芯の通った強い女の子でした。最後の方はなんだか可愛く思えてきました。
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なぜだか主人公タージをどんどん好きになる!
どんどん先が気になって、読んだ後も素敵な余韻が残る本です。 -
なりたくてもなれない
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どの話しも前半だけ読むと、タージは空気の読めないめんどくさい子みたい。でもめちゃくちゃ鋭い。人をよくみてるのかな。そうだったの!?って思う場面もいくつかあった。私はどちらかというとタージの周りにいる人たちに近いから、実際こんな子いたら関わらないだろうなー。お話としては読みやすくておもしろかった。
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悪意はなくても苦手
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法律を学ぶ「タージ」。一風変わった女の子だが、周りを巻き込みつつ、みんなを幸せにしていく。
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『みんな多かれ少なかれ虚勢を張っている。不必要に格好つけ、無闇に威嚇し、大袈裟に自負し、無理して価値観を擦り合わせる。いつの頃からかそうすることが習慣化した。他人に『弱い』と見なされることにビビッている。』
『一度なりきってしまえば、それが通常になる。演じているうちに本当の自分との境界線が消える。みんなやっていることだ。程度の差こそあれ誰しも自分を盛っている。そしてみんなそれを自覚しているから、相手の化けの皮を剥がそうとしない。相互不可侵が暗黙のルールになっているのだ。』
『正論だ。盗まれる奴が悪い。無くす奴が間抜けなのだ。今日の僕みたいに。傘の奪い合いは人生の縮図のようだ。盗るか、盗られるかの狂想曲。盗った奴が勝ち組。傘を手にできなかった奴はどんなに吼えても負け犬にしかなれない。』
『誰もが盗られた経験、無くしたまま戻ってこなかった経験がある。だから自分もそう他人の傘を盗って何が悪いんだ。文化的な生き物とは思えないスパイラルの中が延々と続いている。きっと未来永劫連鎖していくのだろう。モラルなんてお構いなしだ。』
「だから、私、嬉しくなったんです」
「は? 何が?」
「だって、凄いことじゃないですか? 人の傘を無断で使用していいってことが人類共通のルールになっているんですよ」
「喜ばしいことじゃないだろ」
「そうですか? 勝手に自分の傘を使われても、いちいち腹を立てないってことですよ。凄い寛容さです」
「ボランティアみたいなものですよ。その人が買った傘は、いつかは誰かの手に渡って有効利用されるんですから、誇らしいことじゃないですか。私が無くした傘もたくさんの人の手から手へと渡って活躍していることを想像すると、鼻が高くなります」
「タージは人に裏切られたらどうするんだ?」
「どうもしません」
「どうもって?」
「だって人は人、自分は自分じゃないですか? 私は裏切りません。それだけですよ」
『僕の頬は緩やかに崩れる。そう。それだけでよかったんだ。僕は僕だ。無理に『俺』になる必要なんてなかった。自分の傘が盗られたからって、人の物を盗っていい道理なんてない。自分だけが貧乏くじを引いたとしても、自分が人の傘を盗らなければ、負の連鎖は断ち切れる。』
「うまい棒のコーンポタージュ味を置いてないのは変です。ポタージュがフランス語でスープという意味なのを知らないんですか?」
『だけど傷を舐め合うことは無意味だ。何も解決しない。共感は行き止まりにぶち当たったような感情だ。先がない。私は停滞する。』
『間違ったことをしたら謝る。当たり前のことだ。その当たり前のことを疎かにしているから、停滞するのだ。怖い相手や、自分に都合の悪いことは謝らないで逃げる方が簡単だ。でも難しいことを避けていたら、簡単なことしかできない人間になってしまう。』
「ところでさ、タージはサークルメンバーの誰かが困っていたらどうする?」
「ふざけた質問ですね」
「それは愚問ってことか?」
「当然ですよ。助けるに決まっているじゃないですか」
「相手が誰でも?」
「見ず知らずの人でも助けます。協力し合わないと人類が滅んでしまいますから」
「タージは贔屓とかはしないんだな?」
「しますよ」
「えっ? どんな時に? 誰を?」
「自分です。誰だって自分が一番に大事じゃないですか」
「でもみんなが自分ばかり大事にしていたら、人類は滅ぶんじゃないか?」
「滅びません。一人一人が最高にハッピーになろうとすればいいんですから。なれた人がなれなかった人を助けるだけですよ。世界平和は簡単なことです」
『偏差値の高い私立大学で法律を学んでいる。自称『検事の有精卵』だそうだ。』
「強い女の子なんていません。だから謝るんです」
「女は二種類にしか分けられない。泣いてブサイクになる女と、泣いた分だけ綺麗になる女。あいつはまた一段といい女になるんだから、謝る必要はない」
「男の子は二種類しかいません、きちんと謝れる子。言い訳ばかりする子。私は謝れる子が好きです。だから謝ってください」
『『食べ物を粗末にすると国が潰れます』と自分の手のひらに書く。
アンケート用紙に書けばいいものをそうしないのは、紙の資源を粗末にすると国が潰れます、という理由からだろう。融通の利かない子だ。』
『ある時、彼女は『初めて月面をふわふわ歩いたアームストロング船長は、これは一人の人間にとっては小さな一歩だけど、人類にとっては偉大な飛躍だ、という言葉を残しましたが、日頃から一歩ずつ頑張れば私やセンパイだって月に行けるんです。だからサボっちゃいけません』の俺を注意した。』
「教えてほしいことがある」
「なんでしょう?」
「田島には怖いものはないのか?」
「いっぱいありますよ。虫、ワサビ、着せ替え人形、リコール車、お医者さん、酔っ払い、終末論、通り魔、雷、台風、キレ易い若者、テロ、体重計、利き手じゃない手で塗るマニキュア、お菓子の誘惑、靴擦れ…」
「それくらいでいいよ ー その中で何が一番怖い?」
「消去法です」
「怖い理由は?」
「消去法は諦めだからです。これも駄目。あれも駄目。そっちも駄目。そうやって諦めることに慣れてしまうのが怖いんです」
『俺はどれだけ自分を諦めてきたことだろうか? 『自分にはできない』と最初から決め付け、『人には得手不徳手があるから』と自己弁護に走った。失敗や挫折にめげずに何度も挑戦する人を軽んじ、自分はスマートな人生を歩んでいる気でいた。そう自負して偽り続けた。愚か者はどっちだ?』
『不思議な子だ。あんなふうに汗をびっしょり掻くまで喜びのダンスを踊れる田嶋が羨ましい。俺も彼女のようになれるだろうか? 田嶋が何を感じ、世界をどう見ているのか興味が尽きない。』
『程良い諦観に包まれながら俺もゴンドラを降りる。ふわりと地上に着地。足の裏の感触が若干いつもと違う。心持ち体が軽い。清々しい予感がし、月面に降り立ったアームストロング船長と自分が重なる。
この一歩は大きな意味を持った一歩になる。そう確信して夜空を見上げ、月を探す。』 -
大学1年の田島春ことタージは正義感が異常に強く,間違ったことが嫌いで,その場の空気を急変させる得意技をもっており,そのタージが絡む物語が5編.どれも楽しめたが,野球の試合を挑まれる話が面白かった.助っ人がてっきり投手と勘違いした宮崎の慌てようがおかしい.しかし,タージの存在は現代社会にないものを認識させる.昔はこのような人が居たような気持がしているが,それなりに笑える社会だったと記憶している.
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どんな些細なことも曲がった事は誰であろうと許さない。心の触れて欲しくない部分も容赦なくかき乱す。最悪のKY女子大生、田嶋春、通称タージは、誰からも疎まれ、関わりを拒まれる存在。にも関わらず、困った人には頼まれなくとも積極的に力になる。そして、様々な問題を鮮やかに解決してしまう。そして気づくのだ。本当の田嶋春の恐ろしさを。どんなピンチも救ってくれる。でも、やはり友達にはなりたくない。なんて女子大生だ!ただ、タージの意中の人がナセあの人なのか謎。
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【ネタバレ】とにかくうっとうしい「田嶋春」の物語。最初は痛くてたまらないのですが、最後にはたまらなく愛おしくなります。少しご都合主義が鼻に付く展開もありますが、終わりよければすべてよしって事でひとつ。
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正しいことを正しいと言って、何が悪いんですか! 史上最高に鬱陶しい主人公、誕生! 一流私大の法学部に在籍する女子大生「田嶋春」、通称タージ。曲がったことが大嫌いで、ルールを守らない人間のことは許せない。そのうえ空気は、まったく読まない。もちろん、友達もいない。そんなタージが突撃した「青春の謎」には、清冽で切ない真実が隠されていて――。読めば読むほど、不思議とタージが好きになるかも! ?
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個人的には、初めからちょっと好きだったかも、田嶋春。これほど極端に空気を読まないわけではない(と自分では思う)が、似たところがある気がして、親しみを覚えてしまったりもする。なので、タージの気持ちが全く分からないというわけではなく、かと言って、全面的に支持できるというわけでもないので、肩頬に苦笑いを浮かべて眺めてしまうような読書タイムだった。きっと深く知ればみんな好きになると思うよ、田嶋春。彼女のことをもっともっと知りたくなる一冊なのである。 -
登場人物がもう駄目です。まったく。
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曲がったことが嫌いで空気を読まず周りをかき乱し鬱陶しがられるタージこと田嶋春のお話
鬱陶しいけど巻き込まれるけど
人柄がわかるにつれ自身の気持ちや考えや行動も変わっていくという
影響力、大な女の子
読むにつれ魅力的になってくのが不思議
しかし田嶋春=タージマハル?どんな意図の命名なんでしょ?? -
正しい言動しかしない天然大学生タージこと田嶋春。天然なのか計算なのか計り知れないので、後ろ暗いことのある人には脅威。はじめはうざいだけなのに、だんだん可愛く思えてくる。読後に表紙のイラストを見るとじわじわ可笑しくなる。
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まったく困ったフシギちゃん。なのに周りを感化させてゆく(人知れず)力はアッパレとしか言えないけれど。
やっぱり、なりたくはないキャラだし、側にいたらウザいと思う。
三兎さんの他の本のキャラと重なる気がするけれど、問題提起をしてくれる!というところがなのかなあ~。 -
初めて読んだ白河作品がこのタージシリーズ。あまりの面白さに以後白河作品全部読んだくらい。ドノハナシモ小説新潮で読んだことあったけど、この順番で読み直すとまた感動がよみがえる。続きがあるといいなあ。