- Amazon.co.jp ・本 (347ページ)
- / ISBN・EAN: 9784103399711
感想・レビュー・書評
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北斎の娘、お栄の話し。しかし、北斎の人となりも多く描かれている。お栄の絵に対する思い、源次郎への思い、父で師匠の北斎、疫病神の甥に対する気持ちが伝わる話し。お栄は絵師であった。
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少し前にヨイ豊を読んでその世界に魅了され、実際に浮世絵を見に行ったりとしばらくひきずった。
そのなかにも葛飾応為の名もあり、絵師の壮絶な生き方にまたしても圧倒された。
江戸の時代の人の生き方に良いとこ生きにくいとこ数あれど、北斎の娘というしがらみと、かかずにはおれない台所事情と、芸を極めることにおいて、生まれて死ぬまで、描くことだけが人生だったのだ。
時太郎と善次郎の存在が際立っていた。
また、絵をみたいと思わせてくれました。 -
2014〜15年に「小説新潮」に連載された12章の単行本化。
葛飾北斎の娘で女絵師のお栄の生涯の物語。
諸田玲子の『きりきり舞い』シリーズの影響で、ずぼらで絵を描く以外は一切しないというイメージがあるせいか、父親の画狂人北斎のこだわりすぎる生き方にけなげに寄り添うお栄がとてもまともに描かれている気がしてしまう。 -
2016 6/29
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葛飾北斎と娘お栄の話。父と娘であり、師匠と弟子でもあり、己の技術の高みを目指す者同士の話でもあり、こういう話はまかてさんの得意とするところですね。お栄の甥の時太郎は、どうしようもない男ですけれど、彼の立場からするとまた違った彼の言い分があるのかもしれません。絵師として生きた北斎の娘、彼女の画に興味が湧きます。
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浮世絵師、葛飾北斎の娘・お栄こと葛飾応為を描く。
北斎の娘として生まれたお栄は、北斎の絵の手助けをしながら、多くの北斎の弟子に混ざり、自らも絵筆を握る。
生まれた時から身近にあった絵を職業にしたのは、お栄にとっては当然の成り行きだったかもしれないが、当時は珍しいことだったのではと思う。
それでもお栄が絵筆を離さなかったのは、絵を描くのがとにかく好きだったから。
絵師は彼女の天職だったのだろうな。 -
主人公・お栄の一途な生き様に心惹かれる。
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北斎を父に持つお栄は、画才を父からも認められ、とくに美人画の腕前は一目置かれていたといいます。
肉筆画にはこれまでの浮世絵にはない技法が盛り込まれ、たいへん興味深い作品でした。
応為の作は10あると言われています。後半はその絵が完成するまでの葛藤や描写の場面があり、想像をかきたてられます。
男勝りで、家事のたぐいは一切せず、酒をたしなみ、煙草をくゆらせながら生きるお栄は、画業に生きたひとでした。
心の通った男との関係も秘め事として裡にしまい、絵を描くことだけに腐心します。
母との確執もあり、極道の甥に苦しめられながらも、お栄は画業ひとすじ。さいごまで粋な作品でした。