ビニール傘

著者 :
  • 新潮社
3.33
  • (25)
  • (81)
  • (88)
  • (38)
  • (7)
本棚登録 : 1103
感想 : 98
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (124ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103507215

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 2つの短編の舞台は大阪。
    なんか悲しい街として描かれています。

    芥川賞候補だったこの表題作。断片的に変わる視点。みんな悲しいのだもの、正直混ざってよくわからなかった。

  • 『断片的なものの社会学』に出てくる人々。それぞれ1人ずつが小説の登場人物のようだったが、本書では彼等が実際に動き出す。大阪の土地勘がほとんどないにもかかわらず、景色が眼に浮かび、会話が耳で聞こえてくるような‥リアルで不思議な読後感だった。
    惜しくも芥川賞受賞を逃したことをネタにされる著者のお人柄も含め☆☆☆☆☆

  • 新地での日常の場面が、映画のように移り変わっていき、最後に1人の女性を追っていたんだとわかる。

    途中でそうかな?とは思うがわかりにくく、最後の女性の一人称に変わってもなお確信が持てない感じ。場面場面がもう少し細い糸で繋がっているのが見えたら安心して読み進められたと思うけれど、同じ人??という疑問でページを行きつ戻りつしてしまったので気が散って入り込めなかった。

  • 第156回芥川賞候補(表題作)。
    ダメだな、筆者が社会学者だって情報が先に入ってきてしまったせいで、かなりバイアスがかかった評価をしてしまう。
    いいですか、今から私すごく愚かなことを言いますね。
    これ、小説ですか?
    いや、手法としてアリなんだろうと思います。小説ってのはさ、どう書こうと自由なんだから。わかってますよ、そんなことはね。だけれどこれはどうなのよ?学者さんが面白がって市井の人々の陥った隘路をショーケースに並べ立てているようにしか、自分には感じられなかった(多分作者が社会学社だと知らなければ、こうは思わなかったと思う。哀れなり)。
    カップリングされた「背中の月」はまあいかにも文学的な感じはするものの(こういういかにもな感じは自分は嫌いではない)、やはりその陥った悲劇のテンプレ感というか、書き割り感がすごいなあ、と思ってしまった。

  • 底辺でもないけど、特に住みたいとも思わない大阪の、絶妙な土地柄。

  • 「断片的なものの社会学」で、アカデミズム以外の一般読者からも注目されている社会学者の初の短編小説集。タイトル作の「ビニール傘」は芥川賞の候補にもなった。

     市井に生きる人々の生活を不思議なタッチで描く。1人の人間のことを語っていたかと思うと、急に視点がスライドして別の人物の話になっていたりするので、油断できない。

     

  • 短編2編で、ビニール傘は俺と私の物語。様々な視点で若者たちのやるせなさが描かれる。背中の月は若い夫婦の話。妻を失った喪失感を抱えながら生活する。どちらも、にぎやかではない朽ちていく大阪が描かれ、物語の雰囲気を作っている。著書は社会学者で初の小説。先が楽しみだ。

  • 読後、どこかに行けるわけでもなく、どこにもいないような気になった。

  • 収録されてる二編を読むと住んでいない町のことなのに、身近だ。それは僕らが生きている今はそれまで生きてきた過去の断片たちと共にあるから。未来は現在を引き連れて、現在は過去に背中を押されている。だから、知らない町の誰かと自分の何かが共鳴し、しない部分が鮮明になる。

全98件中 81 - 90件を表示

著者プロフィール

岸政彦(きし・まさひこ)
1967年生まれ。社会学者・作家。京都大学大学院文学研究科教授。主な著作に『同化と他者化』(ナカニシヤ出版、2013年)、『街の人生』(勁草書房、2014年)、『断片的なものの社会学』(朝日出版社、2015年、紀伊國屋じんぶん大賞2016)、『質的社会調査の方法』(石岡丈昇・丸山里美と共著、有斐閣、2016年)、『ビニール傘』(新潮社、2017年)、『マンゴーと手榴弾』(勁草書房、2018年)、『図書室』(新潮社、2019年)、『地元を生きる』(打越正行・上原健太郎・上間陽子と共著、ナカニシヤ出版、2020年)、『大阪』(柴崎友香と共著、河出書房新社、2021年)、『リリアン』(新潮社、2021年、第38回織田作之助賞)、『東京の生活史』(編著、筑摩書房、2021年、紀伊國屋じんぶん大賞2022、第76回毎日出版文化賞)、『生活史論集』(編著、ナカニシヤ出版、2022年)、『沖縄の生活史』(石原昌家と監修、沖縄タイムス社編、みすず書房、2023年)、『にがにが日記』(新潮社、2023)など。

「2023年 『大阪の生活史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

岸政彦の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×