1Q84 BOOK 2

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (501ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103534235

感想・レビュー・書評

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  • 物語はさらに大きく展開してゆく。

    天吾の周辺に密かに異変が始まる。
    小説『空気さなぎ』は空前の売れ行きを続ける。だがふかえりは失踪。そして、天吾の〝人妻の恋人〟も消息を絶つ。

    青豆は、殺し屋として困難なミッションを引き受ける。邪悪な存在とされる、謎の宗教団体の教祖の謀殺だ。
    青豆は「教祖」の命を絶つべくホテル・オークラのスウィートへ。部屋では用心棒の男2人が控え、青豆の身体検査を始める。彼女の立い振る舞いや表情を凝視する。この第7章、9章、11章、13章、15章の緊迫感がすごい。用心棒が青豆の挙動に不審を感じないか、青豆の正体がバレやしないか、ハラハラドキドキの強烈なサスペンスである。

    この「教祖」の部屋で、青豆は教祖と対話を重ねる。そこには「カラマーゾフの兄弟」や「金枝篇」も言及される。余談だが映画「地獄の黙示録」の王国でマーロン・ブランド:カーツ大佐の座右に「金枝篇」が置かれていた。そうか、カーツ大佐は、王として刺客に殺されるのを待っていたのか…、そんなことも改めて考える。
    そんなこんなもあり、ふたりの対話は、緊迫感のなかにも深い奥行きがある。

  • 2人のいる部屋はいつも暗く、青豆には天吾の姿を見ることはできない。彼女が目にできるのは、その瞳だけだ。暗闇の中でも、青豆にはその温かい瞳を見ることができる。彼女は天吾の瞳をのぞき込んで、その奥に、彼が眺めている世界の光景を見てとることができる。  (P113)       
     
     『空気さなぎ』をリライトすることで天吾にとってふかえりは特別な存在になるし、青豆は2つの月を見るようになる。けれど同じ1Q84年に天吾がいることのしるしであることには気づかない。13章で青豆が生き残るか天吾が生き残るかの選択で天吾が生き残る(この時点での)選択をするためにリーダーをあちらに移動する。そのことで青豆は天吾が世界に存在することをみとめる。
     天吾はふかえりと一緒に猫の町に行くことで(悩まさえてきた幻影というか「映像」のオハライ)青豆に会いたいと思うようになるし実際に探しはじめる。そのことにより10歳の時に小学校の教室で見た月の記憶が鮮明になるし1Q84年で2つの月を見るようになる。21章で青豆はマンションのベランダから公園の滑り台を見る。滑り台から月を見上げてる若い男の横顔に10歳の頃から変わらぬ面影をみとめ天吾と気づくが(少なくともBOOK2では)出会い損ねる。22章で月の数が増えていたことを天吾は打ち明けるかのようにふかえりに言い、24章で千倉にある療養所で空気さなぎを目にし、そこに美しい10歳の少女を見出し青豆を見つけることを決意する。

    1984年の世界では、非常階段がそこに存在していた。あの奇妙なタクシーの運転手が教えてくれたとおり、青豆はその階段を容易に見つけることができた。そして柵を乗り越え、その階段を降りていくことができた。しかし1Q84年世界には非常階段はもう存在していない。
     出口はふさがれてしまったのだ。    (P469)

     1984年から1Q84年になぜ移行したかではなく1Q84年にすでにとどまった状態になっていて(天吾も青豆もヤナーチェックの『シンフォニエッタ』を聴いている)2つの月を見ることは求めている対象が同じ世界に存在するということのしるしだと考えたほうがいいのだろう。
     BOOK3で青豆と天吾が邂逅するためにどうにかしなければならないことが2つ。両親と縁を切り信仰を捨てると決断したにも関わらず、それ以前の小学校の教室での出来事に天吾が含まれているという矛盾(もしくはビッグ・ブラザーが『問題』にする遊離)、BOOK1から書きはじめた長編を彼らに対抗しながら(牛河からの助成金の申し出を断ったため)書ききれるのか!BOOK3では牛河の章があるし牛河もおそらく2つの月を見るだろう。その時牛河が会うのは青豆なのか別の人物なのか、いずれにせよ重要な役割というかキイであるようなきがする。

  • やーっと2巻読み終わった!
    1巻を読み終わったのは…五月初旬!?
    他の本を読むのにかまけすぎましたね、
    もう村上春樹の小説は内容云々を超えて文体で読んでる。どんなに主人公の取る行動や展開に「!?」ってなっても村上春樹の文体だけは嫌いになれない。後、予言的中でやっぱりあゆみ死んじゃったのには笑っちゃったな、

  • BOOK2は更に面白さは加速していった印象。
    現実世界に登場する結社をモチーフとしたカルト教団のリーダーの暗殺計画や、妙なファンタジー要素が介入してくることで、更に展開が気になっていく。
    『世界の終わりとハードボイルドワンダーランド』や『ねじまき鳥クロニクル』と並ぶくらいには今のところ楽しんでいる。

  • 青豆さんどうなっちゃうの?

    最後着地はどうなるの?色々気になるところで終わってしまったけど少し時間を置いてから続きを読みたいと思います。

  • 最後は?ハッピーエンドだけど。これでいいのか。

  • It’s only a paper moon

  • 2022/10/16読了。
    どんどん読み進めてしまった。伏線は誰にでもわかるように緩やかに確実に回収されていくが、今後何が起こるのか想像がつかなくて面白い。

    クールでタフな青豆さんは、天吾のためなら微笑みながら死んでいけると考えているし、死ぬのも怖くないと言っている。しかしいきなり高速道路へ向かい目立つ行為をしてしまったり、自殺しようとする行動が本当にいつもの青豆さんか?と疑問に思った。
    そして個人的には最終章の天吾の心情がどこか自分と重なり、好きな回だった。

  • ジグソーパズルのピースが少しずつ形をなしてきた。でも、いくつかの疑問は残されたままだ。リーダーはほんとうに死んでしまったのだろうか?高速道路上の青豆はどうなってしまったのだろう?青豆の死と同時に空気さなぎの中で再び蘇るのだろうか?そして、青豆と天吾は相まみえることができるのだろうか?疑問は残されたままBOOK3へ。

  • 生まれ方は選べないが、死に方は選べる。(75ページ)
    .
    人類が火や道具や言語を手に入れる前から、月は変わることなく人々の味方だった。それは天与の灯火として暗黒の世界をときに明るく照らし、人々の恐怖を和らげてくれた。その満ち欠けは時間の観念を人々に与えてくれた。月のそのような無償の慈悲に対する感謝の念は、おおかたの場所から闇が放逐されてしまった現在でも、人類の遺伝子の中に強く刷り込まれているようだった。集合的な温かい記憶として。(394ページ)

著者プロフィール

1949年京都府生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。79年『風の歌を聴け』で「群像新人文学賞」を受賞し、デビュー。82年『羊をめぐる冒険』で、「野間文芸新人賞」受賞する。87年に刊行した『ノルウェイの森』が、累計1000万部超えのベストセラーとなる。海外でも高く評価され、06年「フランツ・カフカ賞」、09年「エルサレム賞」、11年「カタルーニャ国際賞」等を受賞する。その他長編作に、『ねじまき鳥クロニクル』『海辺のカフカ』『1Q84』『騎士団長殺し』『街とその不確かな壁』、短編小説集に、『神の子どもたちはみな踊る』『東京奇譚集』『一人称単数』、訳書に、『キャッチャー・イン・ザ・ライ』『フラニーとズーイ』『ティファニーで朝食を』『バット・ビューティフル』等がある。

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