青猫家族輾転録

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103771043

作品紹介・あらすじ

70年代半ばの就職氷河期に中堅商社に入った「僕」の社内抗争、リストラ、独立、合併と続く社会人としての転変と、一人娘の不登校、不良化を防ごうとする父親、家庭人としての奮闘をユーモアのある読みやすい文章で描く、切実な現代の物語。30年前に死んだ大好きだった叔父さんに語りかける、暖かくて新鮮な大人の小説。

感想・レビュー・書評

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  • 70年代半ばの就職氷河期に中堅商社に入った「僕」の社内抗争、リストラ、独立、合併と続く社会人としての転変と、一人娘の不登校、不良化を防ごうとする父親、家庭人としての奮闘をユーモアのある読みやすい文章で描く、切実な現代の物語。
    30年前に死んだ大好きだった叔父さんに語りかける、暖かくて新鮮な大人の小説。
    (アマゾンより引用)

    この作家さんの本を読むことはもうないだろうな

  • 冒頭、サリンジャーだなと思った。
    読み進めていくと村上春樹も。

    中年が「僕」を一人称として語り進めていくことに驚くほど違和感がない。
    おそらくは語り手=主人公のある種の通過儀礼を描いた物語なんだろうと思う。(日本ってやっぱりちょっとヤバイ)
    イノセンス(桃ちゃん・理想の会社像など)を捨てて、実(孫・お金・生)を取る。娘や妻からは自分勝手になったなどと言われている。

    ただ、「いい加減」になったのかどうか、それは妻と娘の言でしかないので、一読者としてはその変化はつかみきれなかった。
    そもそも主人公がイノセンスの持ち主であるか、それがわからないから。

    端的に言えば桃ちゃんと肉体関係があるのか、すごくぼやかして書いてて、家に来客用駐車場があるかって掛け合いがとてもうまいなとは思うけれど。まあ普通は、ヤってる。と思う。

    「はっきりしない」。主題がさだまっていないと取るかか、それも魅力だよねと取るか。僕は後者だ。

    叔父さんが不倫相手の旦那から激詰めされるシーンはもろ村上春樹だよね。でもおもしろい場面だ。

    エロスとアガペー。

  • かなり後にならないと題名が理解できない
    でも、良かった~~

  • 50歳を迎えた主人公が亡き叔父に小説で語りかけるというスタイルで話が運ぶんだけど、なぜこのスタイルにしたんだろうという疑問がずっと付きまとっていて、最後10ページほどを残したところでようやくピンときた。それを踏まえると、すごく温かみのあるいい話だ。
    50歳の主人公らしく、今の仕事をするにいたった経緯や前の会社であった裏切り行為、高校に入って今更不良化する娘の描写が生き生きとしていて、合間に(かなりの割合ではあるけど)叔父さんとのエピソードがはさまれる。

    「失われた10年」と言われた1990年代を、何とか僕なりに乗り越えた。と帯にある。
    たしかに大変な時代だったなあ。

    阪神淡路大震災のときで私は小学校5年生だったけど、前後5年を思い浮かべるとひどく息苦しくて、実際的にもものすごく大変だった記憶だけがある。

    私にも主人公の叔父さんのような、90年を生き延びる必要がない人がいたら聞かせたくなるかもしれない。

  • 147ページが楽しかった。
    「現代に生きる家族の肖像」とか言われちゃったりしたらどうしよう、というような小説。
    『濁った激流〜』8:『青猫〜』3.6くらいの面白さでした。

  • 2009.3
    同じ日に借りた小説同様、偶然にも、こちらも失われた10年が時代背景にあった。
    おじさんの物語が不思議だった。


  • 「輾転(てんてん)」は、安らかに眠れないで寝返りをうつこと。
    「輾転の思い(てんてんのおもい)」心に悩みがあって、夜中に眠れないほど一心に思い詰めること。または、眠れないほど人を慕い悩むとこと。

    仕事での悩み、娘の不良化、裏切った友人の病、若い頃の叔父との出来事。
    きれい事じゃない、ごまかしていない感じがよかった。
    シビアな出来事も様々に起こるんだけど、そのことが飄々と静かに描かれている。

    「集団の維持のための愛」と「公平・公正の理論」がおもしろかった。

    「愛が集団を成り立たせる。でも、それだけでは集団は腐敗して、バラバラになる。で、公平や公正の原理が集団を律する必要があるんだ」
    愛は存在の原理で、公平や公正は行動の原理である。つまり集団は、その根本から矛盾をはらんでいる。ルールが律していなければ集団は崩壊する。しかし愛のない集団は存続しようがない」


    そういう理論がおもしろくもあった。
    でも、観念とか理屈を第一優先にして物を見て、考えてしまう。
    それは、そこに生身の人間がいるのに、生々しい現実があるのに、別のところに気持ちをやってしまうことにつながると思う。 だんだんと現実から乖離してしまう。
    現実に起こっている、具体的な事象から一歩はなれてしまう。
    理論でばかり物を見ていると、まったく現実的でない物の見方になってしまう危険がある。

    私には正にこういうところがある。
    言葉ばっかりじゃダメだ。
    現実の中に飛びこめ!!

  • おもしろくなかった。眠れなくて読んだけど、これはなぁ…どうよ。主人公の今、会社の話、娘の話、ライバルの話、高校生の頃の話、おじさんの昔話…と、いろんな話が数分切れに語られるよう。混乱するほどじゃないけど、そんなに細切れミンチにしないでほしい。それぞれのエピソードがおもしろいかというと、それほどでもないし。なにより、理屈っぽそうな主人公になじめなかった。

  • 僕は50歳。リストラ、娘の不登校、色々あったけれど、「空白の1990年代」を、何とか僕なりに乗り越えた。――団塊直下の「僕」が、ユーモアのある文章で語る、切実な現代の物語。

  • んんむ どういう風に消化しようか。最初タイトルを見たときはてっきり猫の冒険モノだと思った。けれど主人公は50歳の「僕」でリストラを経て会社を興し、娘は10代で親になってしまう、そして「僕」を裏切った友達は胃癌で死んでしまう。そういうあれこれと並行して40歳を目前に事故死した叔父の人生も語られる。盛りだくさんで 読後1時間経った今もどういう風に消化しようか悩んでいる。企業モノであり家族モノであり恋愛モノでもある。でもどこに自分の視点を置いていいのか最後まではっきりしなかった。だれにも感情移入しきれなかった。いつも小説に入り込んでしまう自分としてはそういう意味で不全感が残っているんだろうな。私が「僕」や桃ちゃんの年代になったらまた違う読み方が出来るのかもしれない。

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著者プロフィール

伊井直行(いいなおゆき)
1953年、宮崎県生まれ。83年「草のかんむり」で群像新人文学賞、89年『さして重要でない一日』で野間文芸新人賞、94年『進化の時計』で平林たい子文学賞、2001年『濁った激流にかかる橋』で読売文学賞受賞。他の著書に『お母さんの恋人』『青猫家族輾転録』『愛と癒しと殺人に欠けた小説集』『ポケットの中のレワニワ』『岩崎彌太郎「会社」の創造』『会社員とは何者か? ─会社員小説をめぐって』などがある。

「2016年 『尻尾と心臓』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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