遮光

著者 :
  • 新潮社
3.22
  • (16)
  • (45)
  • (70)
  • (19)
  • (11)
本棚登録 : 350
感想 : 70
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (157ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104588022

作品紹介・あらすじ

愛する者を失った「私」は、他人が知れば驚愕するような、ある物を持ち歩いている。しかし、それは狂気なのか-新世代作家の鋭利な意識が陰影濃く描き上げた喪失と愛の物語。芥川賞候補作。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • とにかく怖かったです。
    でも怖かったの一言で終わらせることのできない作品。
    銃でもそうだったけど、今回も何かどうすることもできないような事柄にすがってしまう主人公だった。それが死んだ人の指だから恐ろしすぎる。
    狂っていられるのは幸福だ、というのはたしかにと思ったし、主人公のように全ての場面で演技をしているのが人間なのかもしれないとも感じた。少なくとも自分はそういう時があると思ったし、誰もが自分に相応しい行動をとるように客観的に自分を遠くから見ているのではなかろうか。狂っていればそんな葛藤はないのだから幸福なのかもしれません。
    土の中の子供に続いてこの作品読んだので、ちょっとずーんってなっている。暗くなってしまうけど、でもいろんな人に読んでほしい!!!!!

  • 又吉さん、オススメで読んでみた。

    自分自身が非常に落ち込んでいるというか、鬱々としている時期に読んだためか、一言で表すなら「安心できた」。
    自分は落ち込んでいるし、悲しみにとらわれているけれども、
    狂気には至ってないな、と。

    ただし、主人公の持つ狂気や役割を演じようとする部分は誰にでも、無意識に、もしくは意識的にあるのだろうとおもった。

  • アメトークの読書芸人で又吉が中村文則が好きって言ってたり、友達が好きだって言ってたりで最近気になっていたので、図書館に行って借りてきた。

    芥川賞候補になるような作品はあんまり読まないし得意じゃないんだけど、この本は割とわかりやすかったし共感できるテーマだったのですんなり読めた。あーあってなるイヤな話だったけどもう何作か中村さんの本読んでみようかな。

  • 狂気どころの話じゃなかった、主人公が元からぶっ壊れてた。その壊れ具合に美紀の死で拍車がかかった感じ。でも登場人物も雰囲気も好み。たまにはこういうモロなイカれも良い!主人公の、普段とうろたえ時のギャップが誰かに似てるなあと思ったらラスコーリニコフだとお風呂の中で気がついた。終わり方は、ふさわしいというか、なんだかしっくり来てしまった。ふとした時にまた読みたい。

  • ピース又吉が好きな作家に挙げていた。

    死んだ誰かの身体の一部を、という設定は割とよくあるし
    持ち歩く彼の精神がこわれているのもよくある。
    でも、このひとはもとからブッ壊れてるんだなと。
    愛するひとをなくす→発狂
    ではなく
    発狂した状態で誰かを愛する→愛するひとをなくす→発狂に拍車がかかる
    みたいな。

    そもそもこれって愛なの?
    別に相手は誰でもよかったんじゃないの?

    何がいいたいかよくわからない小説だなあと思いつつ、
    「世界の果て」のあとがきには
    「混沌とした世界から僕を救ってくれたのが文学だったので」とあったので
    たぶん作者は書くことで救われたいんだろうなあと思ったし、
    又吉も読んで共感する部分があるみたいなこと書いてたし、
    わたしもなんだかんだ共感しましたとも。

    暗いのがすきな方向けです。

  • 文体は独特で読み辛い気がする。でも主人公の設定とかを考慮すると寧ろそれでいいのかもしれない。バックグラウンドも丁寧に描かれていない気がする。でもそこもなんとなく読み取れるので十分。
    というかそういう微妙な欠点が気にならないくらいに、頭おかしい人の心理描写が秀逸に描かれているので、背筋がぞわぞわしたり読んでるこっちまで頭おかしくなるような感覚を味わえました。気持ち的には星5つ。文体でマイナス1。ちょっとドグラマグラを読んだ時と似ているかもしれないと思った。

  • 中村さんの作品を読むのは「銃」に続き2作目。
    日常にひそむ狂気、というか、ふとしたことで訪れる狂気というか。
    そういった事柄を淡々と描かれています。

  • 作品に救いはないが、それ自体が救いのような気もする。

    根本的に自分というものがなく、場面場面で誰かを演じることで、どうにか自分を引き止めていた主人公。そのせいか自分を過度に客観視した文体になっていて奇妙で新鮮だった。彼女を愛していたというより、彼女が死んでから、その指自体に自分のアイデンティティを見つけようとしていたように見える。だから純愛というのも違う気がする。アイデンティティを見つけることの難しさを描いたのかな。
    気持ち悪いけど気持ち悪いと言い捨てるには、感情移入しすぎてしまった。

    親しいはずの友達とは何か壁を感じ、好きな女は好きなはずだがなにか違和感を感じ、そんな中で自分の内面を許してくれるような、受け入れてくれるようなナニカと出会い、それに依存するが最終的には、、、
    という展開や作品の雰囲気は銃と似てた。

  • 黒いビニールに包まれた瓶を肌身離さず持ち歩く青年が、瓶の中身に執着し取り込まれていく様子は、前作『銃』を彷彿とさせます。

    虚言癖、唐突すぎる暴力衝動など、狂気に満ちた言動は理解出来ませんが、その迫力は十分で読み進めるごとに引き込まれてしまいました。

    陰鬱さと不穏さがドライに描かれ、息苦しさすら感じる暗い世界観。
    それでも、他の作品も読みたくなってしまうという、不思議な魅力を感じる一冊です。

  • ずーっと漂う不協和音は、段落わけの無い文章からも来るものなのだろうか。主人公の想いとリンクと言うよりもモヤがかかる感じ。その閉塞感と不協和音は、解消されることのないまま、物語は転がっていきます。どう転がるものか。不穏なまま、読み進めることが止まらないのも一興です。

全70件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

一九七七年愛知県生まれ。福島大学卒。二〇〇二年『銃』で新潮新人賞を受賞しデビュー。〇四年『遮光』で野間文芸新人賞、〇五年『土の中の子供』で芥川賞、一〇年『掏ス摸リ』で大江健三郎賞受賞など。作品は各国で翻訳され、一四年に米文学賞デイビッド・グディス賞を受賞。他の著書に『去年の冬、きみと別れ』『教団X』などがある。

「2022年 『逃亡者』 で使われていた紹介文から引用しています。」

中村文則の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×