- Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
- / ISBN・EAN: 9784105191184
感想・レビュー・書評
-
主人公はメキシコ生まれでアメリカ人となった、小説家のフワン・ディエゴ。その現在とこれまでの人々との数奇な出会あいを、同時並行的に語ってゆく。
強烈なカタルシスはない。何となく、村上春樹(この人の作品も感想が書きにくいのだが、とても好きな作家だ)と共通するような、プラス少しの明るさ(brightness)を加えたような作風か。
ジョン・アーヴィングはだいぶ前に『ガープの世界』『サイダーハウス・ルール』を読んで、どちらも映画化されていたものを観たあとだったけれど、とても良かった印象があった。それで、新聞の書評で見かけて、久しぶりに読んでみた次第。
時折こうした、良質の翻訳ものに触れるのもいい。これまでとはまた違った読書の広がりといったものを楽しめた気がする。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ずっと気になっていたけれど初アーヴィング。
現在と過去を波のように行き来する文章が心地好い。
様々な登場人物がいて、様々な背景を背負い、彼らが絡み合った様々なエピソードが語られるが、それらが一点に集約される快感。
胸を刺す悲しい話でもあるが、愛おしいという言葉が先に出る。
滑稽で醜悪で美しい物語。 -
冗長で退屈だったが、最後に来て、急激にスローモーションになり、死を描ききる手腕に、この作家の精髄を見た。
意識を上下させながら、今と過去、現実と希望を交錯させる、新しい手法。
生に織り交ぜることでしか死は描けない。しかし、生の延長に死があるのではなく、
妹ルペ、ぺぺ修道士、主人公フワン・ディエゴ。養親アイオワン(エドワード・ボンショー)とフロール。忘れられない人たちだ。 -
ふむ
-
アーヴィングらしい、長い長い小説。ファンとしては読んでるだけで幸せな気持ちで一杯になる。そんな小説。
登場人物もいつもの通り。色々な意味で不具を抱えた愛すべきキャラクターたち。そして全く予想がつかないストーリー展開とトリッキーなのに深みのある描写。アーヴィング以外にはこんな小説は書けない。
正直読みやすいとは言えないので初心者には全くお薦めできませんが、こういうのが好きな人はもうたまらんと思います。 -
過去と現在が交差する。メキシコ時代のフワン・ディエゴを優しく支えた人達の行く末が、下巻で明らかになる。養父母としてアメリカへつれて行ってくれたゲイのカップルは、エイズの病に倒れてしまった。
アービング氏の小説はそっと読者に近寄り優しく人生の大事なことを伝えてくれる。その読者の近寄り方、伝え方が、絶妙で感動的なのだ。だから、彼の小説が待ち遠しい。 -
熊とレスリングはないですが、猥談下ネタ+唐突な死+サーカス+無駄に長いあたりまじアーヴィング節。
人生は喜劇で、グアダルーペをよく知らなくて調べたら、ネット広告にグアダルーペ像の広告が出るようになったこと含めて。 -
現在と過去が入り混じる物語。
主人公が物書きで孤独の影があるのがいい。
残念ながら『サーカスの息子』みたいな感動はなかった。 -
死へ向かって行く現代のマニラへの旅と過去のダンプキッドからアイオワへの旅が,薬の飲み間違いなどのちょっとした状況でとても自然にあるいは唐突に切り替わって行くのが本当に巧みだ.幽霊までも含めた多彩な登場人物と万華鏡のような構成の中で,ルペが言ったように,ファン・ディエゴとルペの兄弟こそが奇跡だというのが,スッと腑に落ちた物語だった.