- Amazon.co.jp ・本 (399ページ)
- / ISBN・EAN: 9784105901714
作品紹介・あらすじ
冴えない男と秘密を抱えた美女の間に割り込むアンドロイド。奇妙な三角関係のゆくえは? 独身男のチャーリーは、母親の遺産を使って最新型アンドロイドを購入した。名はアダム。どんな問題も瞬時に最適解を出すAI能力を利用して、チャーリーは上階に住む女子学生ミランダと恋仲になることに成功した。だが彼女は重大な過去を秘めており、アダムは彼女に恋心を抱きはじめる。人工知能時代の生命倫理を描く意欲作!
感想・レビュー・書評
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一気読み。
架空の1982年(もうここから、何で架空の過去なの?!って引き込まれる。ジョン・レノンが無事な1982年)、AIのアダムを購入した主人公。
共同生活を送るうち。アダムは主人公が恋する女性にやはり恋をしたと言い出す。
イアン・マキューアンは当人には悲劇、傍から見れば喜劇、というのをシリアス寄りの作風からコミカル寄りのグラデーションで描く人だと思っているのだけど、今作はコミカル寄り。
でも、描かれていることはとてもシビア。
AIと人間、倫理、生命、愛、復讐、代償。
読み終わった後、三人それぞれの行動を考えては私だったらどうしたか、と想像する。
私のマキューアンの好みはシリアス寄りなので個人的にはドンピシャではないのだけど、面白かった。
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運命のいたずらでAI物を続けて読んでしまったんだが、クララのイノセンスに胸がいっぱいになった直後に30過ぎの大のおとなの恋愛やら金銭問題やらのグダグダの話はどうでもいいやと思ってしまった。←これは単純に私の今の気分の問題で、作品自体のせいではないです。
舞台が1980年代の高度に科学技術が発達した並行世界のイギリスで、フォークランド紛争の結果が違ったり、ビートルズが再結成していたり、人工知能の父とも呼ばれるチューリングが死んでいなかったり、その設定はとても面白い反面、英国の歴史に明るくない自分には改変(=笑うところ)とは気づけなかった箇所も多々あるはずで、この物語を十分楽しめたとはいえないだろう。あと、身も蓋もない話だけど、アダムみたいな形のAIが実現してない現在、人間はAIにどう相対すべきか?みたいな倫理的な問題を考えることに、なんかそこまで興味持てなかった。自分に余裕がないのかも。AIのアダムが「これからは俳句だ!」ってなるところとかは興味深かったけど。で、これまで面白い作品いくつも楽しませてもらったけど、私はマキューアンはもういいかなあ。ウェルベックの『セロトニン』読んだ時にも思ったけど、この手のちょっと斜に構えた諧謔、今はおなかいっぱいかも。それを言うならクレストの「上質さ」からもちょっと心が離れつつある…。読める本の量にも限りがあるし、そのぶんの時間で新しい作家を見つけたいな。ほんとに個人的な選択の問題で、マキューアンをけなしたいとかではないです。また時期がきたら無性に読みたくなるかもしれないしね。-
>この手のちょっと斜に構えた諧謔、今はおなかいっぱいかも。それを言うならクレストの「上質さ」からもちょっと心が離れつつある…。
この気...>この手のちょっと斜に構えた諧謔、今はおなかいっぱいかも。それを言うならクレストの「上質さ」からもちょっと心が離れつつある…。
この気持ち、なんかわたしも同じです!! わかります。なんででしょうね。上質さ、ってけっこう疲れるのかも。上から目線的な? わからないですが。わたしも余裕がないんだろうな。マキューアン、読んだことなくてでも興味があったんですが、雰囲気が伝わってきました。わたしには難解かも……全然ピンとこなさそう、笑えなさそう。「クララ」は読みたいと思っているですが。2021/04/27 -
わかってもらえてうれしいです!!マキューアン、『贖罪』他良い作品はいろいろあるんですけどね。わかってもらえてうれしいです!!マキューアン、『贖罪』他良い作品はいろいろあるんですけどね。2021/04/27
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文学ラジオ空飛び猫たち第70回で紹介しました。
https://anchor.fm/lajv6cf1ikg/episodes/70-e1evl27
結構イッキ読みできるようなエンタメ要素もありつつ、しっかりと人間とは何か?という問いに迫ってくる、あまり他に例のない作品な気がします。我々人間とは一体なんなのか。考え出すと止まらない作品でした。 カズオ・イシグロの「クララとお日さま」と読み比べると面白いです。クララの人工知能の哀しさを感じた人には是非読んでもらいたい。 -
「クララと…」と対になる作品だと思ったので読みましたが、色々入っていきにくくて…。ミランダに関しては共感できる部分もありましたが、文章とか背景とか全体的に難しかったです。
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発想が斬新だった。コンプレックスの固まりみたいな主人公とアダムとの対比が面白かった。もしかしたら、もうそこそこにアンドロイドがいるのかも、と思った。
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AIと人間の関係が最初からそんなに良好と言い難かくちょっと、題名と内容があわないと感じてしまった。
アダムがミランダに恋をしているからの結末なのか?恋していなくても正しい結末だったのではないかと思う。
翻訳がいいからか、サラサラ読めて、よかった。
なんとなく、少し不完全燃焼かな。 -
アンドロイドのアダムを買ったチャーリーと、同じアパートの上の階に住む女子大生のミランダ。3人の奇妙な関係…、と書けば当然近未来小説と思うが、1982年の英国が舞台。サッチャー首相がフォークランド紛争に追い込まれていたころのこと。でも、そこは架空のお話なので、事実とは違う政治情勢になっている。そこがまた不思議な感じ。80年代にここまでできるのか?というのもあるけれど、どこまでが歴史上の事実なのか悩みながら読んだ(自分に知識がないからだけなんだけれど)。学習し続けるアダム、チャーリーが偶然手を差し伸べることになった少年マークの存在、何よりもミランダの過去などが次々と絡み合っていく。
AIが日常生活に登場している21世紀、人間に近いロボットは可能なのか、文学的に注目できる作品なのでは。 -
カズオイシグロのAIを題材にした作品は、語り手がAIであるが故に直接的には多くを語らず読者に思考させるものだと思ったが、こちらはあらゆる人間が種々の問題(AIと人間の関係性に留まらない)を提起するもので、これはこれで非常に良かった。ミステリー色、SF色、社会派色、と、あらゆる側面を一気に味わえる作品。歴史上の事件がたくさん、史実と裏返しになっているのもとても興味深い。
個人的には一年住んだロンドンの雰囲気を懐かしく思い出せるところも高ポイントだった。 -
マキューアンらしい作品。