金融の世界史 (新潮選書)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106037283

感想・レビュー・書評

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  • 世界史の中で金融に関する話を抜き出した本。

    前半はお金の成り立ちから始まって中世、近代と流れる中で大きな出来事を取り上げてる内容。
    中盤で戦争と絡む部分は日本に関する話が多くなり、一般的な話と違った世界観を感じ、また、戦争と金融の密接な関係が描かれている。
    最終章は投資理論の展開となっており、複雑怪奇になった現代の金融の理論的背景の解説となっている。

    雑誌に連載、寄稿したものを基にしてるので、全体的に小話の集まりといった印象。
    小話として容量が膨らまない話は取り上げられていないようで前半部分は金融の世界史と言うには物足りないが、副題にもある通り戦争と株式市場を巡る話はかなり具体的に書かれててとても興味深かった。

  • 金融の世界史と題してあるだけあって、世界の有史以来からの貨幣の成り立ちから市場の構築まで、幅広い分野の話が網羅されています。
    抑えてる範囲が広いだけあって、各分野の詳細は省き気味なのは仕方ないです。

    ただし著者の貨幣観が商品貨幣論なので、著書内での金融史の説明がどこまで正しいのかは怪しいところ。

  • 金融とは金の融通であり、余剰や信用、借金が社会を大きく動かしてきた歴史がおもしろい。ランダムウォーク理論の時代背景や考察はとても参考になった。

  • 粘土板が貨幣の代わりであった時代から、リーマンショックまで、金融という人の欲望渦巻く歴史の話。時系列で整理してあり、一つ一つの話は理解できたように思うが、全体としての流れはイマイチピンとこなかった。何らかの価値判断のもとに、筋道立てて書かれている方が、個人的には理解しやすい。通史を書こうとすると、どうしても羅列的になってしまうのだろうか。となると、一つ一つのエピソードやそれに対する考察が見どころだが、笑ったり深く頷くような感動が、あまりなかった。

    学生の頃から、感覚的に投資銀行のようなお金でお金を増やす仕事が嫌だった。先物取引で、ひたすらレバレッジをかけて、仮に利益が得られたとしても、それは誰かが損をしているだけだ。世の中に、富が増えたわけではない。だけど、金融が発展してきたことで、生活者も恩恵を受けられる。ローンを組んだり、普通の投資をしたり、保険をかけたり。一概に金融を否定はできないと、改めて思った。使い方一つで、毒にも薬にもなるのは、多くの物事と同様だ。

    人の生活のベースに、経済や金融はある。その理解なしには、世の中の動きはわからない。通史という形で、歴史を学んだが、もっとそれぞれの背景にある思想的な部分を知りたいと思った。なぜ、金融の歴史は過ちを繰り返すのか、その理由が知りたい。

  • 古代から現代までの金融史はなかなか面白かったよ。
    特に面白いと感じたのは古代や中世だった。まあ、あの時代は通貨よりも麦や米、塩の方が取引の中心だったみたいだけど、今と似たのさような仕組みが存在していたことには驚いた。
    近代以降の金融市場に関しては自分が考えていた金融の範囲より遥かに大きな範囲が解説されていたので色々とためになるないようだったよ。

  • ちまたに溢れる『○○の世界史本』と同様、金融についての本質を探るための世界史の探訪ではなく、
    金融について筆者の知っている歴史を語る本ではあるのだが、
    雑学に逃げず、世界の金融の中心地の変遷と金融技術の発展に的が絞られており読みやすい。

    ・貨幣より先に誕生したメソポタミアの金利
    ・ギリシャの貨幣、両替商、オプション取引
    ・法社会ローマにおける財産権の確立
    ・キリスト教、イスラム教に忌避される金融業
    ・イタリア都市国家で発達する会計技術と銀行業務
    ・大航海時代と株式投資
    ・アムステルダムにて誕生したオランダ東インド会社と証券取引所
    ・ロンドンでの国債と保険の始まり
    ・初めてのバブルと恐慌
    ・アメリカにおける鉄道株式市場の勃興
    ・戦争と愛国的小口投資
    ・二次大戦前のドイツのインフレと大恐慌

    そうした全体での流れに加え、要所要所で日本の状況が挟まれ、最終的には現代での投資理論のさわりに至る。
    本書で語られるのは歴史的事実の概要とちょっとした感想のみであり、詳細や考察は皆無。
    良くも悪くも学校の教科書的なので、当然抑えておきたい知識ではあるのだが、これを読んだからと言って何かが出来るようになるわけではない。

    中学高校の授業で『お金』の授業をやるとしたら、信用と経済の話が中心になるだろうが、そんなときに本書で過去の経緯を学べると、より実感を持つことが出来るかもしれない。

  • 雑誌連載を本にまとめたもの。前著ほどのインパクトはないが気軽に読める

    銀行による信用創造の起源として「ゴールドスミス説」。金匠は貴金属を預かって預り証を発行する。そのうち預り証が流通しだす。すると必ずしもゴールドを引き出さなくなるので、金匠は預かった以上のゴールドを貸し出すことができるようになる。貸したゴールドもまたすぐに金匠に預けられる

    新大陸からの銀でスペインでは1世紀のあいだに物価が4倍にもなる。価格革命。インフレは地代収入により安定していた領主層や下層の民衆の生活を脅かす一方で、商工業の発展を促した。

    イギリスが重商主義にはしって金銀の海外流出を規制したのでアメリカはポンド不足に。このためメキシコ・ドルが流通した。2001年まで米国株の呼び値は1/8ドル単位、これはピース・オブ・エイト(銀貨をペンチで等分していって1/8に)と同じ

    岩井克人「ヴェニスの商人の資本論」
    利潤は差異から生まれる=利潤を追求する者たちによって差異は埋められていく

    堂島の延米取引。奉行所は差金決済だけの取引をなんども取り締まった。賭博行為、または米価上昇の原因と考えていたと思われる→300年以上たっても同じ議論ですな

    会社法制度。州単位で立法するアメリカのほうが誘致競争がはたらいて対応が進んだ。1837年にコネチカットで株式会社設立が登記だけでできるようになったのを皮切りに多くの州で障壁を下げる方向へ。それまでは特許会社のようにいちいち法律がいったりした

    日本の株式市場は第一次大戦の特需相場の反動で下げたあとずっと1930年代にいたるまで低迷していた。関東大震災もアメリカの大暴落も、すでに下げていた市場にはさほど大きなインパクトを与えなかった。陰鬱である

    1950年代の配当革命。株式は不確実であるために歴史的に長期債券利回りよりも高い利回りが要求されていた。それが株式は長期保有により成長の果実を受けられるとの認識とともに利回りが逆転した。なお2012年時点で再逆転しそうだと(たぶんそのまま再逆転した気がする。長期停滞論とリンクする?)

    日本のバブル相場。ワラント債で調達した資金が株式相場に還流して株高=ワラント高でまた発行の図式は、南海会社事件なんかと一緒

    効率的ポートフォリオって要は市場全体と同じ比率ってことなのか。効率的フロンティアはなんか実測できなさそうだし。理論はあるのだろうが

    インデックス・ファンドのマネージャーたちは運用コストを低減させる方法を数多く開発した。インデックス・ファンドによるまとまった貸株がなければ個別銘柄を空売りするヘッジ・ファンドも成立しなかっただろうと

    CAPM→3ファクター(小型株効果、バリュー株効果)→4ファクター(モメンタム!)
    結果からいえば株式市場はまったくのランダムでも完全に効率的でもなかった

    ドットコムバブルで米国株式市場がピークした2000年以降はSP500の実質値は微減トレンドで調整中(ここ数年は多少上げたか?)名目値との違いに注意

    「ブラジルは将来のある国だ。ただし問題は100年ものあいだ、いつも将来のある国だったということだ」20年ほど前のブラジルの船乗りの言葉

  • 金融の通史と言えるかどうかはともかく、貨幣、有価証券、デリバティブズ、簿記、為替など、およそ金融に関する古今東西の歴史的エピソードがてんこ盛り。時系列順に並んでいて、一話一話も短く、読みやすい。

  • 金融の歴史を概観。全体の流れがあるというよりは細かいトピックに分けているので気楽に読める。金融関係者であればどこかで聞いたことのある話でサクサク進む。

  • 金融とは何か。デフレ、インフレ、バブルが繰り返される。人間の欲が生んだ悪弊か、叡智の営みか。金融を考えるきっかけになる。

著者プロフィール

1955年、兵庫県西宮市生まれ。作家・コラムニスト。関西学院大学経済学部卒業後、石川島播磨重工業入社。その後、日興証券に入社し、ニューヨーク駐在員・国内外の大手証券会社幹部を経て、2006年にヘッジファンドを設立。著書に『日露戦争、資金調達の戦い 高橋是清と欧米バンカーたち』『金融の世界史 バブルと戦争と株式市場』(ともに新潮選書)。

「2020年 『日本人のための第一次世界大戦史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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