52ヘルツのクジラたち (単行本)

著者 :
  • 中央公論新社
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本棚登録 : 2359
レビュー : 131
  • Amazon.co.jp ・本 (260ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120052989

作品紹介・あらすじ

「わたしは、あんたの誰にも届かない52ヘルツの声を聴くよ」

自分の人生を家族に搾取されてきた女性・貴瑚と、母に虐待され「ムシ」と呼ばれていた少年。

孤独ゆえ愛を欲し、裏切られてきた彼らが出会う時、新たな魂の物語が生まれる。



注目作家・町田そのこの初長編作品!

感想・レビュー・書評

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  • 『クジラ』と聞いて、何を思い浮かべるでしょうか?

    “ホエールウォッチング”、とその生態を鑑賞するイメージが思い浮かぶ一方で、”捕鯨”、そして”食す”というイメージも浮かびます。”見る”対象であり、”食べる”対象でもあるという、なんとも相反した対象として位置づけられる『クジラ』。そんな生き物は他にいないのではないか?と思えるくらいに『クジラ』とは不思議な、もしくは微妙な立ち位置にいる生き物だと思います。そんな『クジラ』は声を出しコミュニケーションをとっているとも言われます。実に何百キロもの先まで届くというその声。『クジラはね、海中で歌を歌うようにして仲間に呼びかけるんだって。すごいよね。あんなに広大で深い海の中で、ちゃんと仲間に声が届くんだよ。きっと、会話だってできてる』という『クジラ』のコミュニティ。そんな声には、携帯電話の電波のように周波数があります。いくら強い電波を出したとしても、その周波数を受けることのできない携帯電話ではその通信を受けられないのと同じように、届く声と届かない声があるという『クジラ』の声。概念こそ違えどこれは人間も同じです。人間にも届く声と届かない声があります。そんな届かない声、言わば”声なき声”に光を当てるこの作品。いくら叫んでも、いくら求めても、誰にも気づいてもらえない声がある。そして、誰にも気づいてもらえない人がいる。この作品は、そんな人たちの声に静かに耳を傾け、”群れ”で生きていく人間を感じる物語です。

    『明日の天気を訊くような軽い感じで、風俗やってたの?と言われ』、言葉の意味が分からずきょとんとしたのは主人公の三島貴湖(みしま きこ)。『はっと気付いて、反射的に男の鼻っ柱めがけて平手打ちした』という展開。『失礼なことを言ってきた男は、わたしが家の修繕をお願いした業者』の村中。『すんません、すんません。眞帆さんに悪気はねえんす。ただ、頭の中のこと垂れ流しで』と謝るのは部下のケンタ。『職に貴賎はない。それは分かっているけれど、しかしあまりにも無神経な物言い』と感じる貴湖。『ばあさんたちの噂とは違うみたいだから』否定してやろうと思ったと言い訳する村中。『そういう仕事に就いたことはない。追ってくるようなヤクザもいない』と言いながらも『だんだん腹が立って来る』貴湖。『なんでわざわざ、こんな説明をしなきゃならないんだ』、『ああ、もう。引っ越してくる土地を間違えたのかな。他人と関わり合いたくなくてここまで来たのに』と三週間前に越してきたことを後悔する貴湖。『一緒の空間にいたくない』と思い、『床直したら、さっさと帰って。十八時まで出てるから』と言い残して家を出る貴湖。『住む家は、小高い丘のほぼ頂上にある』という貴湖の家。『あの家で、静かに暮らすつもりで越してきた。ひとりでそっと生きていきたかった』という貴湖。『まさかこんな風に土足で踏み込んでくる人間がいるなんて』、『ムカつく』という貴湖は『MP3プレーヤーを取り出し』、『イヤホンを耳に』します。『目を閉じて、耳を澄ます。遠く深いところからの歌声が、鼓膜を揺らす』というその再生音。『泣いているような、呼びかけているような声』を『聴きながら、アンさんを思い出す』貴湖。『アンさんだったら、笑うだろうな』、『でも、アンさんはもういない』と思う貴湖は『どうして、わたしを一緒に連れて行ってくれなかったの?』と呟きます。そんな時『手の甲に何か当たって目を開け』ると勢いよく雨が降りだし雨宿りすることにした貴湖。そんな時ひとりの子どもが傘もささずに歩いてきました。『ねえ、あんた。こっちで雨宿りしたら?』と思わず声をかける貴湖。『線の細い体つきで、中学生くらいの女の子』だと思う貴湖は、さらに『おいでよ』と手招きします。『女の子は足を止め、不思議そうにわたしを見つめた』という次の瞬間、再び歩き始め、『あっという間に、雨の向こうに消えていった』というその『女の子』。そんな『女の子』とやがて運命の再会をすることになる貴湖。そしてそのことが『ひとりでそっと生きていきたかった』という彼女の人生を大きく動かしていきます。

    「52ヘルツのクジラたち」というなんとも印象的な書名のこの作品。『クジラ』というと、私も”ホエールウォッチング”で船上からその姿を見たことがあります。海中から潮を吹き上げその巨体を一瞬見せたかと思うとまたすぐに海中へと戻っていくその巨体。体長が4mより長いと『クジラ』と分類され大きいものでは30メートルにもなるというその巨体。しかし一方で彼らが生息する海はあまりに広く、あまりに深いものです。そんな大海原を一生移動しながら過ごす彼らは『だいたい10から39ヘルツっていう高さで歌』い、仲間通しのコミュニケーションを取っていると言われています。そんな大切なコミュニケーションの手段にも関わらず、他の『クジラ』と異なり52ヘルツという極めて高い周波数を出すもの、それが”世界でもっとも孤独なクジラ”と言われ、この作品で象徴的に取り上げられる『クジラ』です。そんな『52ヘルツのクジラに重ねてイメージしたのは、声なき声を発している存在でした』と語る町田そのこさん。『声なき声』という言い方は色んな場面で使われますが、この作品で町田さんが光を当てていくのは『虐待にあっている子どもなど、切実に助けを必要としている人たち』です。実母からの虐待を受けて育った主人公の貴湖。そんな貴湖は『言うことをきけ。パン。頬が鳴り、わたしはその衝撃で目を覚ます』と、母親から離れても過去の記憶が夢にたびたび蘇るほどの辛い過去を抱えていました。そんな貴湖について、『クジラ』が”音”で仲間の気配を察していくのに対して、”匂い”で同類を嗅ぎ分けるというこんな表現が登場します。『この子からは、自分と同じ匂いがする。親から愛情を注がれていない』というその表現。そんな『孤独の匂い』を出会った中学生『52』から感じ取る貴湖。『この匂いはとても厄介だ。どれだけ丁寧に洗っても、消えない。孤独の匂いは肌でも肉でもなく、心に滲みつくものなのだ』と絶妙な表現で虐待による『孤独』に光を当てていきます。私たちは日々の集団生活を営む中で不思議とこのような科学的には検知しようのない感覚を察することがあるように思います。貴湖が感じるのは『孤独の匂い』ですが、それは人によって異なると思います。私にも上手く言葉にするのが難しいですが、そのような人の『匂い』を感じる、もしくは感じたことがあります。それは『わたしのように』と貴湖が語る通り、自分と同じ何かしらその集団の中で、自分と同類であることを察するものなのだと思います。”心の機微”という言い方がありますが、おそらくはそれを察する中で感じる、不思議な人間の感覚、それこそがこの『匂い』という表現で表されるもの。貴湖は、『この匂いが、彼から言葉を奪っているのではないかと思う』と、人間社会で最も重要なコミュニケーション手段である言葉が、この『孤独の匂い』によって削がれていると、さらに切り込んでいきます。そして、そのことと52ヘルツという他の『クジラ』には聞こえない声を出す『クジラ』のことを上手く重ね合わせながら物語は展開していきます。そんな『クジラ』というどこか神秘性を帯びた生き物を対比させることによって、知能が高く人間と同じ哺乳類でもあるその存在が感じる大海原での孤独感を上手く滲ませながら独特な世界観を作り出すことに成功しているように感じました。

    そして、そんな主人公の貴湖は『今でも、眠れない晩や寂しくて死にそうな時には52ヘルツのクジラの声を聴いて』心を落ち着かせています。人が生きていく中で言葉はとても大切です。一人になりたいと思う時間があったとしても、ずっと人とのコミュニケーションがない時間が続くと、人はそれに耐えられなくなっていくものです。主人公の貴湖も『もう、誰とも関わり合いたくない。そう願ってそれを叶えた』にも関わらず、一方で『温もりを求めている。寂しいと思ってしまう』と感じています。『寂しさを知る人間は、寂しさを知ってるからこそ、失うことに怯える』という人と人との関わり合いの大切さ。コミュニケーションとは、その双方が声を発しながら成り立っていくものです。声なき声に耳を傾けて、その声を聞くことができたなら、今度はそれに応えることで始めて交わりが生まれていきます。『ひとというのは最初こそ貰う側やけんど、いずれは与える側にならないかん。いつまでも、貰ってばかりじゃいかんのよ』という人と人のコミュニケーション。これができなければ、やはり声なき声はいつまでも聞こえないのと同じことなのだと思います。『一度目は声を聴いてもらい、二度目は声を聴くのだ。このふたつの出会いを、出会いから受けた喜びを、今度こそ忘れてはならない』と貴湖が思い至るその先の人生。そこには声なき声というものがこの世にあることを身をもって経験した貴湖だからこそ、今度は自身がその声に耳を傾けることができるんだ、貴湖の苦しみは、その声に耳を傾けて、その声を受け止めることができたことで、ようやく次のステージへと進むことができるんだ、そう思いました。

    『52の声を最初に聴いたのは貴瑚一人だったかもしれないけれど、彼女をきっかけに52のまわりには人が増えていった。人はそんなふうに“群れ”となって生きていくんじゃないのかな、と思います』と語る町田さん。人は”群れ”の中で生きる生き物です。多くの人々と関わり合う毎日の中では、無意識のうちに聞き逃してしまう声も多々あるのだと思います。聞こうとしなければ聞こえてこない声もあるのだとも思います。そして、ニュースとなって初めて、そこに”声なき声”を発していた人がいたことを知る私たち。そんな”声なき声”の存在を『クジラ』というまさかの存在を象徴的に重ね合わせて描いていくこの作品。

    手を差し伸べられた過去を思い、『あんたには、もっと仲間がいるかもしれない。ううん、きっといる』と信じて、今度は手を差し伸べる側に回る貴湖。”ひとりじゃない”、と、”声なき声”に光が当たるその結末に、”群れ”で生きる人間社会に救いの光を見た、そんな作品でした。

  • 周波数52ヘルツの高音でしか歌えない不器用なクジラ。
    広い海の中で確かに歌っているはずの、その悲鳴にも似た歌声を受け止めてくれる仲間は残念ながらどこにもいない。
    単なる周波数の違いから孤独に苛まれる可愛そうなクジラ。

    けれどそれは海の中だけではない。
    陸の上でも孤独に耐え忍ぶヒトがいる。
    寂しさに押し潰され周囲の人たちになかなか受け止めてもらえず、声にならない悲鳴をあげて。
    誰よりも深い温もりを求めて。
    出来損ないなんかじゃない。
    上部だけの優しさなんか要らない。
    心に秘めた気持ちを分かってほしい。
    認めてほしい。
    ありのままの自分を受け止めてもらえない辛さを抱える陸の52ヘルツのクジラたちの、祈りにも似た心の叫びが周りの人たちに伝わった時、読んでいる私も救われた。
    優しく受け止めてもらえたならば大丈夫、もう一人じゃない。

    これは小説の中だけの出来事ではない。
    リアルな日常でも起こっていること。
    救い救われ寄り添いながら、生きづらい世の中を泳いで行かなければならないしんどさに、胸が苦しくなる。
    リアルな世界で苦しむあの子の声も、どうか周りの人たちに届きますように。
    キナコと52のように笑って前へ進めますように。
    そう願いながら本を閉じた。

  • 出逢えて良かった一冊。

    それぞれが抱える苦しみ、諦めの人生、孤独、言葉よりも流れる涙、声なき心の叫びに何度も自分の心は荒波に襲われ、心があちこち波に削られていくような時間だった。

    声を聴いてもらうその喜びを次なる誰かへと繋ぐバトン。
    それを教えてくれたかけがえのない人の存在、想いに何度も胸が苦しみに締め付けられた。

    声を聴く、届いた瞬間はきっと心の奥底が共鳴した瞬間。

    お互いに守り守られていること…そっと交わす約束。

    夜の海に心にもようやく凪が訪れる。

    本を抱えたくなる。

    あなたが、君がいてくれて良かった。
    そばに、心にいてくれる、そんな安心感を得られて良かった。

    この作品に出逢えて良かった!

  • 大分の田舎の漁師町に、東京から移り住んだ貴湖。
    周囲からは奇異の目で見られても、あまりにも辛い過去の経験を経て、ただ静かに暮らしたいと願う貴湖だったが、ある雨の日、言葉を話さない子供と出会う。
    その少年が虐待を受けていると気づいた貴湖は…


    表紙のデザインと、くるたんさんのレビューに惹かれて手に取った本。
    町田その子さん、初読。

    読んでよかった。
    けれど、ものすごく体力も消耗して、簡単に人に勧められないほどの苦しさも。
    児童虐待、ヤングケアラー、DV、性同一性障害、自死、溺愛、痴呆…と、現代の悪意を煮詰めたような辛い出来事が特大盛り。
    誰にも届かなかった声にならない悲鳴に気づき、ただ寄り添うことで生きる力を繋げようとする人の、無償の愛情の光が、ひとかけら…

    本当にほんのひとかけらの希望の光があれば、人は生きてゆける…かもしれない。
    いま、光がもしも見えなくても、生きなければ…生きていて欲しいと願う。

    アンさんの、まさに命がけのメッセージでもあった自死が、悔やまれる。
    美晴の友情の深さが、もっと早い段階でもっと強く貴湖に伝わっていれば、とも。
    どうか貴湖と愛の未来が、心地よく明るいものでありますように。


    遠田潤子さんの初期の作品群のように、悲惨と希望の比率が、とんでもなく悲惨の方が大きくて、辛くて痛くて、救いを探して目を離せなくなる。
    これが町田さんの持ち味なのかどうか…
    本作が初の長編だそうなので、これまでの作品、これからの作品に期待です。

    • くるたんさん
      こんばんは♪
      読んだ時のあの気持ちがよみがえってくる素敵なレビューです♪

      苦しさもあったけれど、それを包み返すぐらいの優しさがありましたね...
      こんばんは♪
      読んだ時のあの気持ちがよみがえってくる素敵なレビューです♪

      苦しさもあったけれど、それを包み返すぐらいの優しさがありましたね♪

      人を救うのは人、それを改めて感じられた作品でもありました。
      2020/11/12
    • yo-5h1nさん
      くるたんさんのおかげで出会えた本です。あらためて、ありがとうございます。

      人を傷つけるのも、救うのも人なんですね。
      傷つきたくないか...
      くるたんさんのおかげで出会えた本です。あらためて、ありがとうございます。

      人を傷つけるのも、救うのも人なんですね。
      傷つきたくないから人と関わらないのでは、自分の声も伝わらず、誰の声も聞こえない。傷つけられて、痛みを知って、優しくなれるのかもしれません。

      いじめも虐待も、嫌だとはっきり意思表示しないのが悪い、本気で立ち向かえばいいのに、なんて言葉を聞くと、本当に悲しくなるります。
      幸せで強い人は、自分の声が大きすぎて、小さな声、弱々しい声、声にならない声は聞こえないのかな…と。

      現実の世界も厳しいですが、この本を読んで涙した人は、きっと誰かの声を聞くことができるんじゃないかな…

      美晴やアンさんほどのことはできなくても、ちょっとずつ優しさを分けあっていけたらいいですね。
      2020/11/12
  • 52ヘルツのクジラとは―他の鯨が聞き取れない高い周波数で鳴く、誰にもその声は届かない。世界でもっとも孤独な一頭だけのクジラ。

    わたしたち人間の世界にも、だれにも届かない、悲痛な叫びが溢れている。虐待されネグレクトされている子供たちの愛を求めるちいさな声だ。
    そんな児童虐待がテーマの、なかなかずっしりとした重量感ある作品。

    東京からひとり寂れた漁師町に越してきた主人公の三島貴瑚(きこ)。
    ある夜、母親に虐待されている口のきけない少年愛(いとし)と出会う。

    きこ(きなこ)は、幼い頃から虐待を受け、実の親に虐げられて生きてきた。ボロボロになり自殺目前のところを親友の美晴やアンさんに助けられ、自分の足で歩き始めた矢先に、またもや愛の裏切りに合いとんでもない事件へと発展。
    全てから逃げるように、この漁師町へとやってきたのだった。
    きなこは少年の中に、かつての自分の姿を見出だしなんとか救わんと奮起、二人は手を取り、再び前を向き歩き始める。

    人は人に傷つけられ虐げられることもある一方で、人は人に救われる。
    生きてさえいれば、何度でもやり直せるのだ。

    母親としては、村中のばあちゃんの言葉が刺さった。ちいさな子供のうちに知らないといけないことを大人になってから知るのはものすごくしんどいことだと。
    子育ては本当に難しい。。こんなばぁちゃんがそばにいてくれたら心強い。
    そんなばぁちゃんを目指しまーす 笑

  • 人生を家族に搾取されてきた主人公のキナコと、母に虐待され「ムシ」と呼ばれていた少年が出会ったのは、かつてキナコの祖母が暮らした海の見える街だった。
    52ヘルツのクジラとは、他の鯨が聞き取れない高い周波数で鳴く世界で一頭だけ。
    たくさんの仲間がいるはずなのに、何も届かない。その為世界で一番孤独だと言われている。

    心が殺されたキナコを救いだしてくれたアンさん。
    アンさんが母親にあてた手紙はいろんな感情が入り乱れて苦しくなった。

    読後に、ため息と涙で家族には苦笑されたが、
    こんなに泣いた小説は初めてかも知れない。


  • 友人からのレンタル本。感動しました。とても重いテーマが満載。でも、強さと希望、優しさ、愛と救いにも満ちています。アンさんが母に宛てた手紙には声を上げて泣けました。今夜は頭が冴えて眠れそうにありません…52ヘルツのクジラの声カセットを聴いて、眠りにつきたいな。

  • 52ヘルツのクジラは正体不明の種の個体であり、他のくじらよりも高い周波数で鳴く。そのため、個体間での意思疎通はできず、世界で最も孤独なクジラとされている。そんな孤独をモチーフにした小説。

    主人公の貴瑚は、子どものころよりネグレクトを受けている。成人してからも家にしばりつけられ、限界になっているところを友人の美晴と美晴の同僚のアンさんに助けられる。なんとか自立をし、幸せをつかもうとするが…

    傷ついた貴瑚は祖母が最期を過ごした大分に引っ越すが、そこで同じように虐待されている少年に出会う。少年をなんとか助けたいともがきながら、自分も前に向かっていく。

    貴瑚のキャラクターの不安定さはあえてなのかな。わりと強め。そこだけがちょっと気になった点。

    アンさんのところが本当に切なかったなあ…そこがとてもよかった。

  • 初読の作家さんです。まずこの表紙と意味深で美しい題名で心を掴まれました。まさにジャケ買い。よく見たら凪良ゆう推薦みたいな帯だし、これは結構期待出来るかも。
    と、思って読んだら見事当たりでした。
    虐待、ネグレクトで傷ついた女性と少年が出会う事で、新たな力を得て一つずつ人生を歩もうとする感動作で、割とよくありそうな設定ですが、有りそうな設定という事はそれだけ普遍性があるという事でもあり、料理人の腕によっていいものに仕上がる可能性もあるという事だと思います。
    セクシャリティーの問題なんかも含んでいるので、確かに凪良さんとも通ずる雰囲気がありました(これは見解として浅すぎますけど)
    52ヘルツのクジラという他のクジラと意思の疎通ができない姿と、自分たちの小さな声が世界の誰にも届かないと思っている彼らの姿をリンクさせ、しかもそれが印象的な題名になっている。非常に纏まりの有る素晴しい作品です。

  • 虐待や孤独、友情 まっすぐに
    評 柴田聡子(シンガー・ソングライター) どうしん
    https://www.hokkaido-np.co.jp/sp/article/442213?rct=s_books

    中央公論新社
    https://www.chuko.co.jp/tanko/2020/04/005298.html

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著者プロフィール

町田そのこ

1980年生まれ。福岡県在住。「カルメーンの青い魚」で、第十五回「女による女のためのR-18文学賞」大賞を受賞。2017年に同作を含む『夜空に泳ぐチョコレートグラミー』でデビュ。他に『ぎょらん』(新潮社)、『うつくしが丘の不幸の家』(東京創元社)がある。

「2020年 『52ヘルツのクジラたち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

町田そのこの作品

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