- Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784120052989
作品紹介・あらすじ
「わたしは、あんたの誰にも届かない52ヘルツの声を聴くよ」
自分の人生を家族に搾取されてきた女性・貴瑚と、母に虐待され「ムシ」と呼ばれていた少年。
孤独ゆえ愛を欲し、裏切られてきた彼らが出会う時、新たな魂の物語が生まれる。
注目作家・町田そのこの初長編作品!
感想・レビュー・書評
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『クジラ』と聞いて、何を思い浮かべるでしょうか?
“ホエールウォッチング”、とその生態を鑑賞するイメージが思い浮かぶ一方で、”捕鯨”、そして”食す”というイメージも浮かびます。”見る”対象であり、”食べる”対象でもあるという、なんとも相反した対象として位置づけられる『クジラ』。そんな生き物は他にいないのではないか?と思えるくらいに『クジラ』とは不思議な、もしくは微妙な立ち位置にいる生き物だと思います。そんな『クジラ』は声を出しコミュニケーションをとっているとも言われます。実に何百キロもの先まで届くというその声。『クジラはね、海中で歌を歌うようにして仲間に呼びかけるんだって。すごいよね。あんなに広大で深い海の中で、ちゃんと仲間に声が届くんだよ。きっと、会話だってできてる』という『クジラ』のコミュニティ。そんな声には、携帯電話の電波のように周波数があります。いくら強い電波を出したとしても、その周波数を受けることのできない携帯電話ではその通信を受けられないのと同じように、届く声と届かない声があるという『クジラ』の声。概念こそ違えどこれは人間も同じです。人間にも届く声と届かない声があります。そんな届かない声、言わば”声なき声”に光を当てるこの作品。いくら叫んでも、いくら求めても、誰にも気づいてもらえない声がある。そして、誰にも気づいてもらえない人がいる。この作品は、そんな人たちの声に静かに耳を傾け、”群れ”で生きていく人間を感じる物語です。
『明日の天気を訊くような軽い感じで、風俗やってたの?と言われ』、言葉の意味が分からずきょとんとしたのは主人公の三島貴湖(みしま きこ)。『はっと気付いて、反射的に男の鼻っ柱めがけて平手打ちした』という展開。『失礼なことを言ってきた男は、わたしが家の修繕をお願いした業者』の村中。『すんません、すんません。眞帆さんに悪気はねえんす。ただ、頭の中のこと垂れ流しで』と謝るのは部下のケンタ。『職に貴賎はない。それは分かっているけれど、しかしあまりにも無神経な物言い』と感じる貴湖。『ばあさんたちの噂とは違うみたいだから』否定してやろうと思ったと言い訳する村中。『そういう仕事に就いたことはない。追ってくるようなヤクザもいない』と言いながらも『だんだん腹が立って来る』貴湖。『なんでわざわざ、こんな説明をしなきゃならないんだ』、『ああ、もう。引っ越してくる土地を間違えたのかな。他人と関わり合いたくなくてここまで来たのに』と三週間前に越してきたことを後悔する貴湖。『一緒の空間にいたくない』と思い、『床直したら、さっさと帰って。十八時まで出てるから』と言い残して家を出る貴湖。『住む家は、小高い丘のほぼ頂上にある』という貴湖の家。『あの家で、静かに暮らすつもりで越してきた。ひとりでそっと生きていきたかった』という貴湖。『まさかこんな風に土足で踏み込んでくる人間がいるなんて』、『ムカつく』という貴湖は『MP3プレーヤーを取り出し』、『イヤホンを耳に』します。『目を閉じて、耳を澄ます。遠く深いところからの歌声が、鼓膜を揺らす』というその再生音。『泣いているような、呼びかけているような声』を『聴きながら、アンさんを思い出す』貴湖。『アンさんだったら、笑うだろうな』、『でも、アンさんはもういない』と思う貴湖は『どうして、わたしを一緒に連れて行ってくれなかったの?』と呟きます。そんな時『手の甲に何か当たって目を開け』ると勢いよく雨が降りだし雨宿りすることにした貴湖。そんな時ひとりの子どもが傘もささずに歩いてきました。『ねえ、あんた。こっちで雨宿りしたら?』と思わず声をかける貴湖。『線の細い体つきで、中学生くらいの女の子』だと思う貴湖は、さらに『おいでよ』と手招きします。『女の子は足を止め、不思議そうにわたしを見つめた』という次の瞬間、再び歩き始め、『あっという間に、雨の向こうに消えていった』というその『女の子』。そんな『女の子』とやがて運命の再会をすることになる貴湖。そしてそのことが『ひとりでそっと生きていきたかった』という彼女の人生を大きく動かしていきます。
「52ヘルツのクジラたち」というなんとも印象的な書名のこの作品。『クジラ』というと、私も”ホエールウォッチング”で船上からその姿を見たことがあります。海中から潮を吹き上げその巨体を一瞬見せたかと思うとまたすぐに海中へと戻っていくその巨体。体長が4mより長いと『クジラ』と分類され大きいものでは30メートルにもなるというその巨体。しかし一方で彼らが生息する海はあまりに広く、あまりに深いものです。そんな大海原を一生移動しながら過ごす彼らは『だいたい10から39ヘルツっていう高さで歌』い、仲間通しのコミュニケーションを取っていると言われています。そんな大切なコミュニケーションの手段にも関わらず、他の『クジラ』と異なり52ヘルツという極めて高い周波数を出すもの、それが”世界でもっとも孤独なクジラ”と言われ、この作品で象徴的に取り上げられる『クジラ』です。そんな『52ヘルツのクジラに重ねてイメージしたのは、声なき声を発している存在でした』と語る町田そのこさん。『声なき声』という言い方は色んな場面で使われますが、この作品で町田さんが光を当てていくのは『虐待にあっている子どもなど、切実に助けを必要としている人たち』です。実母からの虐待を受けて育った主人公の貴湖。そんな貴湖は『言うことをきけ。パン。頬が鳴り、わたしはその衝撃で目を覚ます』と、母親から離れても過去の記憶が夢にたびたび蘇るほどの辛い過去を抱えていました。そんな貴湖について、『クジラ』が”音”で仲間の気配を察していくのに対して、”匂い”で同類を嗅ぎ分けるというこんな表現が登場します。『この子からは、自分と同じ匂いがする。親から愛情を注がれていない』というその表現。そんな『孤独の匂い』を出会った中学生『52』から感じ取る貴湖。『この匂いはとても厄介だ。どれだけ丁寧に洗っても、消えない。孤独の匂いは肌でも肉でもなく、心に滲みつくものなのだ』と絶妙な表現で虐待による『孤独』に光を当てていきます。私たちは日々の集団生活を営む中で不思議とこのような科学的には検知しようのない感覚を察することがあるように思います。貴湖が感じるのは『孤独の匂い』ですが、それは人によって異なると思います。私にも上手く言葉にするのが難しいですが、そのような人の『匂い』を感じる、もしくは感じたことがあります。それは『わたしのように』と貴湖が語る通り、自分と同じ何かしらその集団の中で、自分と同類であることを察するものなのだと思います。”心の機微”という言い方がありますが、おそらくはそれを察する中で感じる、不思議な人間の感覚、それこそがこの『匂い』という表現で表されるもの。貴湖は、『この匂いが、彼から言葉を奪っているのではないかと思う』と、人間社会で最も重要なコミュニケーション手段である言葉が、この『孤独の匂い』によって削がれていると、さらに切り込んでいきます。そして、そのことと52ヘルツという他の『クジラ』には聞こえない声を出す『クジラ』のことを上手く重ね合わせながら物語は展開していきます。そんな『クジラ』というどこか神秘性を帯びた生き物を対比させることによって、知能が高く人間と同じ哺乳類でもあるその存在が感じる大海原での孤独感を上手く滲ませながら独特な世界観を作り出すことに成功しているように感じました。
そして、そんな主人公の貴湖は『今でも、眠れない晩や寂しくて死にそうな時には52ヘルツのクジラの声を聴いて』心を落ち着かせています。人が生きていく中で言葉はとても大切です。一人になりたいと思う時間があったとしても、ずっと人とのコミュニケーションがない時間が続くと、人はそれに耐えられなくなっていくものです。主人公の貴湖も『もう、誰とも関わり合いたくない。そう願ってそれを叶えた』にも関わらず、一方で『温もりを求めている。寂しいと思ってしまう』と感じています。『寂しさを知る人間は、寂しさを知ってるからこそ、失うことに怯える』という人と人との関わり合いの大切さ。コミュニケーションとは、その双方が声を発しながら成り立っていくものです。声なき声に耳を傾けて、その声を聞くことができたなら、今度はそれに応えることで始めて交わりが生まれていきます。『ひとというのは最初こそ貰う側やけんど、いずれは与える側にならないかん。いつまでも、貰ってばかりじゃいかんのよ』という人と人のコミュニケーション。これができなければ、やはり声なき声はいつまでも聞こえないのと同じことなのだと思います。『一度目は声を聴いてもらい、二度目は声を聴くのだ。このふたつの出会いを、出会いから受けた喜びを、今度こそ忘れてはならない』と貴湖が思い至るその先の人生。そこには声なき声というものがこの世にあることを身をもって経験した貴湖だからこそ、今度は自身がその声に耳を傾けることができるんだ、貴湖の苦しみは、その声に耳を傾けて、その声を受け止めることができたことで、ようやく次のステージへと進むことができるんだ、そう思いました。
『52の声を最初に聴いたのは貴瑚一人だったかもしれないけれど、彼女をきっかけに52のまわりには人が増えていった。人はそんなふうに“群れ”となって生きていくんじゃないのかな、と思います』と語る町田さん。人は”群れ”の中で生きる生き物です。多くの人々と関わり合う毎日の中では、無意識のうちに聞き逃してしまう声も多々あるのだと思います。聞こうとしなければ聞こえてこない声もあるのだとも思います。そして、ニュースとなって初めて、そこに”声なき声”を発していた人がいたことを知る私たち。そんな”声なき声”の存在を『クジラ』というまさかの存在を象徴的に重ね合わせて描いていくこの作品。
手を差し伸べられた過去を思い、『あんたには、もっと仲間がいるかもしれない。ううん、きっといる』と信じて、今度は手を差し伸べる側に回る貴湖。”ひとりじゃない”、と、”声なき声”に光が当たるその結末に、”群れ”で生きる人間社会に救いの光を見た、そんな作品でした。 -
暗黒書物愛好家
私が勝手に自分のサブタイトルにしているキャッチフレーズである。その名に恥じぬよう意図的に..と言いたい所だが残念ながら必然的に本棚は真っ暗闇だ。
そんな中、結構前に涙活を始めた友人からポイッと手渡されたのが本書だ。
人間性ドン引かれるの承知で白状すると、
「文庫本出る前に読んで売ろ( ˙σω˙ )ホジホジ」
が本書を手に取った動機であるごめんなさいごめんなさいごめんなさい。
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【かつて52ヘルツの孤独な歌声を聞き取り共に泳いだ心優しいクジラがいた。】
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一度は救われたその思い出を握りつぶしてしまった過去のトラウマを抱え1人田舎町に移り住み隠居生活を始めるキナコ。
そんな彼女の分厚めなシールドを簡単に突き破ってくる特殊能力「良い奴等」の新友と親友。
52ヘルツの届かない声で唄い続けるムシと呼ばれた少年。
キナコや少年の置かれた境遇は不条理を通り越している気もしたが、それと一蹴出来るとは言えない。
人と人との共鳴をこんなに美しい表現で表すなんて...未知でまだ無色の世界に色が広がってゆく様な感覚だった。
ただ登場人物達が振り切った善と悪で極端に分かれているのでやはり違和感は拭えない。
「良い話に慣れていないから...」 を言い訳にするが、心身共に疑心と俗悪で満たされた私は純度100の綺麗な心では読み切れなかった。
だが、その視点からでも見えたものはある。
それは...
【暗黒書物愛好家は感動モノに弱い】
もう、ドバドバ泣きましたね。
「良かったねぇ...良かったねぇぇぇ。゚(゚´Д`゚)゚。」状態でした(笑)
52ヘルツで唄える者は52ヘルツの声が聞こえるのかもしれない。
52ヘルツのくじら「たち」
読み終えた今はこのタイトルが深く染みますねぇ。涙活の友人よ...ありがとう。
本書では「たった一頭」とされている52ヘルツのくじら。まだ届いていないだけでどこかにいるかもしれませんね。今もどこかで孤独な唄を歌っているのだろうか。-
ほん3さんこんばんは♪
ほん3さんもいつも見捨てず遊びに来てくれてありがとうございます。゚(゚´Д`゚)゚。私はまだここに居るんだなぁ......ほん3さんこんばんは♪
ほん3さんもいつも見捨てず遊びに来てくれてありがとうございます。゚(゚´Д`゚)゚。私はまだここに居るんだなぁ...とウルウルします。
私もほん3さん追い掛けていっぱい暗黒書物を漁らなくては!!!笑
これからもお世話になります(´>∀<`)ゝ2023/05/14 -
NORAさん、こんばんは~^^
珍しいチョイスだと思ったらそんなわけが(笑)
で、やられてしまったわけですね。
たまには違う味のも...NORAさん、こんばんは~^^
珍しいチョイスだと思ったらそんなわけが(笑)
で、やられてしまったわけですね。
たまには違う味のものを冒険してみるのもいいかもですな♪2023/05/14 -
土瓶さん、こんばんは♪
言うなれば涙活の巻き添えです(笑)
ホントそうですねぇ。
皆さんのレビューで満足してましたが、自分で手に取ってみる...土瓶さん、こんばんは♪
言うなれば涙活の巻き添えです(笑)
ホントそうですねぇ。
皆さんのレビューで満足してましたが、自分で手に取ってみるとまた違う世界が見えてとても楽しかったです(*๓´˘`๓)2023/05/14
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届かない声をあげる人たちの話。
読み進めれば進めるほど、とてもつらくて、でもそんな中、親友の美晴に救われる感じがとても良かった。
不況やコロナでお金だったり、心に余裕の無い人がどんどん増えている今、そばに美晴のような人がいるといないではきっと全然違うんだと思う。-
2024/04/23
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コメントありがとうございます。
やっぱりそばに寄り添ってくれる人がいると救われますよね。月並みですが、できるだけ自分もそうで有りたいと思いま...コメントありがとうございます。
やっぱりそばに寄り添ってくれる人がいると救われますよね。月並みですが、できるだけ自分もそうで有りたいと思いました。2024/04/24
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【読もうと思った理由】
元々本屋大賞1位の文庫化された作品は全て読んでいた。「52ヘルツのクジラたち」は、まだ文庫化されていなかったが、たまたま行った図書館で、貸し出し可能状態で置いてあったので借りて読む。
文庫化を待つより図書館の方が早く読めると分かり、今後の図書館利用の方法が広がった。
【あらすじ】
52ヘルツのクジラとはー
他のクジラが聞き取れない高い周波数で鳴く、世界で一頭だけのクジラ。たくさんの仲間がいるはずなのに何も届かない、何も届けられない。そのため、世界で一番孤独だと言われている。
自分の人生を家族に搾取されてきた女性・貴瑚と、母に虐待され「ムシ」と呼ばれていた少年。孤独ゆえ愛を欲し、裏切られてきた彼らが出会い、新たな魂の物語が生まれる。
【読後の感想】
今までそれなりに本を読んできたが、こんなに心を動かされた本は、記憶にない。
それほどに、胸に心に言葉が突き刺さる、感動作だ。
ページ数は単行本で260ページ程。
特に難解な表現もないので、ゆっくり噛み締めて読まなければ、4〜5時間で一気読みできてしまう小説だ。
最近理解するのが難しい本を、徐々に読むようになってきたので、本の読み方が変わってきた。なので、あえてゆっくり一語一語を噛み締めつつ読んだ。
ネタバレになってしまうので、内容は書けないが、貴瑚が実家を出で行くシーンは、この上なく感動するシーンだ。このシーンのみで付箋を5.6箇所貼り付けてしまった。小説は単行本は買わない主義なのに、この本だけは何度も読むために、文庫化を待てずに単行本を購入してしまうんだろうとさえ思ったほどだ。
【読後に得た気づき】
多分人間ってどんなに大人になって人格が向上しようと、生きていく上で不安は無くならないと思う。そんな不安で堪らなくなったときに、常にそばに居て、自分の味方でいてくれる人が一人でも居てくれたら、この上なく安心して生きていけるんだと思う。
貴瑚が心に大きな傷を抱えながらも、相手の支えになり続けようとする姿に共感し、感動した。
【雑感】
やはり本屋大賞1位は裏切らない。今年も4月12日発表予定だが、今から発表が待ち遠しい。-
こんばんは。
この本いいですよね!
図書館で借りて読み、しばらくしてもう一度読みたくなり借りに行きましたがずっと貸し出し中で、結局古本屋で購...こんばんは。
この本いいですよね!
図書館で借りて読み、しばらくしてもう一度読みたくなり借りに行きましたがずっと貸し出し中で、結局古本屋で購入して読み直しました。
子育て真っ最中の身には、とても迫るものがあり、子どもに愛を伝えることの大切さをひしひしと感じました。
また、よい作品がありましたら、共有させてください!2023/04/01 -
ぴーぽんさん、コメントを下さりありがとうございます!この本、本当に良いですよね!僕も凄く好きな本です!プロフィールを拝見させて頂くとスポーツ...ぴーぽんさん、コメントを下さりありがとうございます!この本、本当に良いですよね!僕も凄く好きな本です!プロフィールを拝見させて頂くとスポーツ系の本がお好きだと書いていたので、本屋大賞繋がりで、佐藤多佳子氏の「一瞬の風邪になれ」は凄く良かったです!高校3年間の陸上部短距離選手の青春の物語ですが、大人になってから読んでも、不思議な程、ストーリーに凄くハマりました。また阿部暁子氏の「パラスター」は過去、唯一涙を流して読んだ本なので、感動系がお好きであればオススメです!今後とも宜しくお願い致します。2023/04/01
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ユウダイさん、早速おすすめの本を教えて下さりありがとうございます。
娘2人も読書好きで、特に下の中学生の娘がスポーツ&感動ものがすきなので、...ユウダイさん、早速おすすめの本を教えて下さりありがとうございます。
娘2人も読書好きで、特に下の中学生の娘がスポーツ&感動ものがすきなので、『パラスター』読んでみて良かったらお薦めしてみようと思います!
ありがとうございました。2023/04/01
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他者の声をきくこと。簡単ではなく、寄り添って想像してゆっくりときこえてくる。安心して話せる人がいること。そのことの尊さ。
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R4.10.17 読了。
終始いろんな意味で泣けてしまった作品でした。52ヘルツのクジラの存在も知りませんでした。
まさに「人は人によって傷つくけれど、人は人によって癒される。」存在なんですね。
今度は町田そのこさんの穏やかな作品を読みたいですね。
・「それはパンのヒーローの笑顔と重なった。あのヒーローは、私欲のない神さまみたいな存在だ。ひとのしあわせだけを願い、そのためにいつだって迷いなく動けるヒーロー。ああ、そうか。このひとは本当に、そういうひとなのだ。パズルのピースが収まるように納得して、だからわたしはカバの子どもになったみたいに素直に『ありがとう』と言った。」
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つらく重いストーリーと思い積読していた小説。
読んでよかった!
大事な人の死、虐待と最初は重いけど、最後は希望に溢れて、読後は前向きな気持ちになれた。
人との出会いと別れをとおして、主人公が少しずつ成長するストーリー。
誰にも届かない52ヘルツの声は、みんなもっていると思う。
その声を聞いてくれる人と出会えたら、とても幸せなことだと思った。
人情味あふれる温かな作品の"コンビニ兄弟"でファンになった町田そのこさん。
"52ヘルツのクジラたち"は真逆で、暗い中に光があるストーリーだけどよかった。
幅広い作風を描ける町田そのこさんはすばらしい! -
ページを捲る手を止められませんでした。そして読み終わった今、とても疲れています。夢中になってしまう本は体力を消耗する‥‥
何を書いたらいいのか、何を書いてもネタバレになってしまう気がして。何の予備知識もなしに読んでもらいたい。
頼れる人のいる幸せ。そして時が経てば自分が人から頼られる存在になっていられるように。
さすが、本屋大賞ノミネート作品。私も書店員ならこの本、推します。
わたしも無私のこころで相手を思い、祈り守ろうとしたアンさんの存在が大きすぎて。こんな悲劇はおきてほしくなかったというのが本音...
わたしも無私のこころで相手を思い、祈り守ろうとしたアンさんの存在が大きすぎて。こんな悲劇はおきてほしくなかったというのが本音です。
アンは最期に何を思ったんだろうって想像すると、ほんと胸が詰まります。
アンは最期に何を思ったんだろうって想像すると、ほんと胸が詰まります。